こんばんは、紫栞です。
今回は、アニメ『サマータイムレンダ』の感想と紹介を少し。
こちら、ウェブコミック配信サイトおよびスマートフォンアプリの「少年ジャンプ+」で2017年から2021年まで連載されていた田中靖規さんの漫画作品
を原作とするアニメで、2022年4月から9月まで放送されていました。全25話。
TOKYO MXでの放送で、ネットだと当初はDisney+とTverのみの配信だったようですが、今はAmazonPrimeなど各サイトで配信させています。
私は原作漫画などの事はまったく存じ上げなかったのですが、YouTubeで”第一話で衝撃的な展開をするアニメ“てな動画で紹介されていて、気になってアマプラで観てみたらハマってしまいましたので、最終回を観終わって感動の勢いのままにオススメ記事をば。
あらすじは、
幼馴染みの小舟潮が亡くなり、葬儀に参列するため2年ぶりに和歌山県の故郷・日都ヶ島(ひとがしま)に帰省した網代慎平は、葬儀の後で親友の菱形窓からある疑惑を聞かされる。女児の小早川しおりを助けるため海難事故で死んだとされている潮だが、その遺体には首を絞められて抵抗したような痕跡があり、他殺の疑いがあるというのだ。
次の日、小早川しおりの一家が謎の失踪。その一報を聞き、取り乱した潮の妹・澪から「しおりちゃんは海難事故の数日前に自分そっくりの女の子を見て以来、誰かに見張られているような気がすると不安がっていた」と知らされる。会話中に通りかかった島民の猟師・根津銀治郎は「それはこの島に古くから伝わる風土病で“影の病”だ」と言う。
影の病にかかると、「影」を見るようになる。その「影」は本人を殺して入れ替わり、家の者も皆殺しにする。
それを聞き、澪はさらに「お姉ちゃんが死ぬ三日前にお姉ちゃんそっくりの人物を見た」と告げるが――。
と、第一話はこんなようなあらすじ。
この第一話ラストで衝撃の展開がある訳ですが、ここまでのストーリーだけで不可解さと不穏感が漂いまくっていて、ホラーミステリ好きとしてはそそられる。
第一話の衝撃を是非とも味わって欲しいので、予備知識無しのまっさらな状態で鑑賞するのがオススメ。
※以下、若干のネタバレ含んでの感想となりますので未視聴の方注意~
今作は、ドッペルゲンガーとタイムリープが掛け合わされたもので、ドッペルゲンガー部分に哲学者のドナルド・デイヴィッドソンが考案した思考実験「スワイプマン」(沼男)をテーマとして入れている。原子レベルで身体の構造も記憶も知識も完全にコピーされた人物は、オリジナルと同一人物だといえるのか?といった思考実験ですね。
今作に登場する小説家が『沼男』という小説を発表している設定ですし、劇中でもこの思考実験について言及があります。
主人公は2018年7月22日から7月24日の間にタイムリープを繰り返し、島にはびこっている得体の知れない「影」と対決していく。
部類としては考察系になるのでしょうが、SFで、サスペンスで、ミステリで、バトルアクションもので、ラブストーリーで・・・と、いった、様々な要素が盛込まれている何だか贅沢なアニメとなっております。
これだけてんこ盛りにすると破綻してしまいそうなところですが、上手い具合に展開させているなぁと。
前半はジャパニーズホラー色強めの不穏なミステリで、後半は仲間が増えてジャンプらしいバトルアクションものとなっている感じでしょうか。
しかし急激な変化って訳ではなく、あくまで自然な流れで、作品雰囲気も一貫しているのでまとまりが良い。考察もちゃんと終盤まで楽しめますしね。
しかし、後半の主題歌はあまりにもバトルアクションソングって感じで最初驚きましたが。でもこの主題歌は作者の田中靖規さんの意向らしいです。個人的に前半の主題歌の方が好き。
頭脳派の主人公と強いヒロインというのも良い。ま、後半はヒロイン何でもありっぽい強さになっていましたが・・・。私は頼れる大人の南雲先生(南方ひづる)と根津さんのコンビが好きでした。
タイムリープものですと似通った作品がどうしても多くなるのですが(だって、悲劇を回避するために過去に戻ってやり直すってのがタイムリープものの基本設定ですから、どうしたってそれは「話が似てる」ってなるでしょうよ)、今作は民俗学的な孤島ミステリといった古めかしい舞台装置と題材に、テレビゲーム的に表現されたタイムリープ能力という、古典と近代が合わさった世界観と、頭脳とアクション、両方のバトルが描かれているのが特徴的。
高評価の一方で、「つまらない」「意味不明」「展開が遅い」などの意見もあるようですが、タイムリープものなのでどうしても同じ場面の繰り返しになるのと、時系列が細かく、設定も複雑なので、ながら見していると途端に置いてけぼりをくらってしまうからだと思います。
真剣に観ていても「影」の能力部分などに関しては私も途中こんがらがって何度も説明を聞き直したりした。
ま、そもそも分りやすいのが好きって人には向かないですかね。ミステリ・考察系が好きな人に全振りした作品だとは思います。
毎話、最後に惹きつける展開をするので先が気になってしょうがなく、私はほとんど一気に観たので展開の遅さは気にならなかったのですが、通常放送の周一で観ていた人なら展開が遅いと感じたかもしれないですね。一気観がオススメ。
島に古くからはびこっている化け物の「影」に対して、「データ」「コピー」「上書き」とか言っているのが何やら新鮮。画の演出もプログラム的なノイズが走る描かれ方になっています。
タイトルの「サマータイムレンダ」の“レンダ”はコンピューター用語の“レンダリング”から採られたもの。
『サマータイムレンダ』は、2018年7月22日から24日までの夏の数日間を、処理を加えて生成する物語なんですね。
このタイトルが持つ意味は、最終回で綺麗に帰結する。11週目ではなく、再構築された世界。
いやはや、お見事で文句の付けようもない最終回でしたね。まさかこんなに良い終わり方をしてくれるとは思っていませんでした。劇中でも「これはボーナスタイム」って言っていましたし。感情移入しながらもずっと「最後を思うと気が重いな~・・・」だったので。
「だ、大丈夫なはず・・・!」と、思いつつも「このアニメ、最後まで何が起こるか分らんぞ・・・」なんてハラハラしてしまいましたが、無事25日を迎えてやっと安心した(^_^;)。
ラブストーリーもとってつけたものではなく、「影」との闘いを通してお互いの気持ちを再認識して深めているのが観ていて伝わってくる。これまたちゃんと帰結していますね。みんな一途で、移り気なキャラクターがいないのも良かったです。
24話で闘いの決着はつき、最終回の25話は丸々エピローグ的な内容となっているのですが、ストーリーは違わないものの、この最終回はアニメオリジナル部分がかなり追加されたものになっているのだとか。原作と見比べるとまた面白そうですね。
『サマータイムレンダ』の最終回その後が描かれた原作者の田中靖規さんによるスピンオフ漫画『サマータイムレンダ2026未然事故物件』と、
半田畔さんによる小説『サマータイムレンダ2026 小説家・南雲竜之介の異聞百景』
がそれぞれ出版されているらしいので、こちらも是非今後チェックしたいと思っております。
ではではまた~