夜ふかし閑談

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佐々木事務所シリーズ 3作品まとめて解説 夏のオススメシリーズ~

こんばんは、紫栞です。

今回は、芦花公園さんの【佐々木事務所シリーズ】をご紹介。

 

異端の祝祭 佐々木事務所シリーズ (角川ホラー文庫)

 

佐々木事務所シリーズとは

【佐々木事務所シリーズ】は心霊案件を扱う佐々木事務所が、依頼を受けて奇怪な出来事に挑んでいくシリーズ。

ジャンルとしては民俗学・都市伝説ホラー。扱うのはいずれもガチの心霊現象で、超自然的現象ありきのシリーズですが、人怖系ホラー要素とミステリ要素もあるので、ホラー慣れしていない人にもオススメのシリーズ。

どの本も300ページほどで、“怖すぎない”のも読みやすいですね。

 

主要人物は佐々木事務所所長の佐々木るみと、その助手の青山幸喜

 

るみは小太りで一見年齢も性別も不詳気味の三十代前半の女性で、心霊現象解決の能力だけでなく、宗教や民俗学全般に豊富な知識があるが対人関係が不得手。個人的に、何で名前を平仮名にしたのかなと思う。名前が平仮名表記だと読んでいてつっかえてしまう事が多々ある・・・

 

青山は子犬のような見た目で人当たりの良い20代後半の青年。大学のゼミで先輩だったるみを慕っていて、事務所を手伝うというのも自らの希望。実家がプロテスタント教会でありながら、カトリック教会のような悪魔祓いもやっているという変わり種で、るみの助手をしながら実家の教会仕事も手伝っている。

 

他、作中では“ほぼ最強”の能力者として描かれる、四国に住む訛りの強い拝み屋イケメン・物部、絶世の美青年で老若男女、誰彼構わずに誘惑することが出来る片山敏彦などがレギュラーとして登場しています。

 

※シリーズ外ではありますが、芦花公園さんの商業作家デビュー作『ほねがらみ』と一部キャラクターが共通しているので、先に読んでおくとより良き。『ほねがらみ』はこのシリーズよりも直球のホラー小説でめちゃ怖です。

 

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ストーリーだけでなく、このような能力と個性の強いキャラクターでも愉しませてくれるシリーズですね。

一応各物語は独立したものですが、人間関係がその都度前の事件を受けて変化していくので、刊行順に読むのが基本のシリーズとなっております。本にはシリーズ名も番号も書かれていないので、くれぐれも間違えないように気をつけて下さい。

 

 

2023年8月時点で刊行されているのは三作品。では、一冊ずつご紹介~

 

 

 

 

 

 

『異端の祝祭』

 

『異端の祝祭』については前に記事でまとめたので、詳しくはこちらを読んで欲しいのですが↓

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タイトルの通り、カルト教団の祝祭が行なわれようとしていて云々といったストーリー。

恐ろしい能力を持った敵が現われ、怪異も起こりますが、この物語で最も怖いのはカルト教団にハマってく過程ですね。

 

 

 

『漆黒の慕情』

 

塾講師の片山敏彦は、存在するだけで注目を集めてしまう絶世の美青年。常に周りから羨望の眼差しを向けられる敏彦だが、あるときから異質な視線と得体の知れぬ黒髪の女性につきまとわれ始めた。周囲の人間に危害が及び、怪異にも悩まされだした敏彦は佐々木事務所を訪れる。

一方で、小学生の間では「ハルコさん」という奇妙な噂が囁かれていて――。

 

簡単にいうと、ストーカー話。心霊現象と都市伝説が絡んでややこしくなっていますが、単純に厄介な者にストーキングされましたって話ですね。

ミステリ的仕掛けが施されていますが、読み慣れている人なら犯人はすぐに分ると思います。

規格外なストーカーですが、ストーキングされる片山も規格外な美の化身なので、解決の仕方もまた調子外れなものになっている。

 

 

 

『聖者の落角』

 

佐々木事務所に相次いで同様の不可解な相談が持ち込まれる。病院に現われ、難病の子供たちと話をしていくという謎の黒服青年。この黒服青年の話を聞いた、“見た”、子供たちは、身体的な病は完治するものの、奇怪な行動をして以前とはまるで別人のようになってしまうという。

助手の青山が協会の仕事で不在のなか、るみは一人で調査を開始するが、調査を進めれば進めるほど恐ろしい疑惑に苛まれていって・・・・・・。

 

とある疑惑がずっと纏わり付くお話・・・なんですが、この疑惑、ちょっと短絡的に考えすぎなんじゃないのかって気がしましたね。もうちょっと突っ込んだ情報集めてから断定しないと。

いつもは基本二人での調査ですが、今作ではるみ一人。片山に手伝ってもらったりもしますが、色々と青山くんの偉大さが分る物語となっています。

 

 

 

 

 

 

 

美醜と不快感

このシリーズ、容姿が優れた人物がやたらと出て来ます。特に、男性が美形ばかり。レギュラー人物の青山も物部も片山(片山敏彦に至ってはもう「誰も贖えない美」というとんでもないもの)も、そろいもそろって美形ですし、各事件関係者にも必ず容姿が優れた人物が絡んでくる。しつこいほど、美醜につられる人物の揺れ動きが描かれています。

「美人だから優遇される」ってな考えがずっとつきまとっているのですよね。

 

現実には、美的感覚は人それぞれなので、造形に対して「優れている」「劣っている」の判別はそんなにハッキリさせられるものでもなく、作中ほどの万人に通じるような「なんでも切符」状態は有り得ないと思うのですが。態度や表情にも左右されるところが大きいですしね。

 

このシリーズの場合、るみが幼少の頃に「醜い」という理由で酷い虐待やいじめを受けていて、容姿に対して強いコンプレックスを持っているという設定なので、このように美醜についてのしつこい描写があるのだろうとは思いますが。

あんまり「美人だから」「美人だから」と繰り返されると、妬み根性丸出し感があって、読んでいて気分の良いものではない。

ま、片山敏彦に関しては凄すぎてもはや笑えてきますけどね(^_^;)。

 

 

気分の良くなさは作中全体に漂っています。

事件内容はもちろんですが、るみや青山くん含め、100%好感を持てる人物がいないんですよね。どの人物も不快にさせる部分を持っていて、好きになりきれない。しかし、嫌いにもなりきれない。好感と嫌悪が交互にくる感じ。

 

しかし、この人物描写が規格外な出来事と人物ぞろいの世界にリアリティを与えているのかなと思います。あまりに好感度が高い主要人物ばかりにしてしまうと、能力や設定も相まって何やらポップな話になりそうですものね。

 

 

一話完結物の予定調和ではなく、巻を増すごとに人間関係が変化していくので、今後のシリーズの展開にも注目です。まだまだ暑い日が続くようですので、この夏是非。

 

 

ではではまた~

 

 

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