夜ふかし閑談

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『ψの悲劇』ネタバレ・感想 完結まであと一作!

こんばんは、紫栞です。
今回は2018年5月に発売された、森博嗣さんの『ψの悲劇』をご紹介。

ψの悲劇 The Tragedy of ψ (講談社ノベルス)

 

あらすじ
〈死ぬ自由が自分にはある。なにか具体的な不満があったわけではない。自分の意思で自由に行動できるうちに、皆の前から消えようと思う。探さないように。〉
と、書かれた手紙を残し、元大学教授の八田洋久(はったひろひさ)博士は失踪した。
一年後、博士と縁のある者達が八田家に集い、“八田洋久の失踪について、誰も知らない情報を持っている”という島田文子と名乗る女性が、八田博士の実験室にあったコンピュータから「ψの悲劇」と題された、博士が書いたのだと思われる奇妙な小説を発見する。
その日の夜、八田家の飼い猫が謎の死をとげ、翌朝には実験室で招待客のうちの一人が他殺体となって発見された。
この事件と博士の失踪には何らかの関係があるのか?島田文子が八田家を訪れた真意とは?
導かれるのは驚愕の解――。

 

 

 

 

 

Gシリーズ
今作は【Gシリーズ】後期三部作の二つ目。シリーズでは11作目の作品となります。この後期三部作ですが、別名で“悲劇三部作”(エラリー・クイーンの悲劇四部作をもじっていて、作中にも各章の前に引用があります)ともなっており、前作が『χの悲劇』

 

 

 次作予定作品は『ωの悲劇』で、作者の森博嗣さんは「Gシリーズは全12作」と明言されておりますので、次作でGシリーズは完結となります。ですので、『ψの悲劇』は完結作の一個手前の作品ですね。
Gシリーズは9作目の『キウイγは時計仕掛け』

 

 

までは大学生の主要人物たちがギリシャ文字に絡んだ一連の事件に遭遇していくもので、大まかな流れとしては、語り手の加部谷恵美から聞いた事件を、探偵役として海月及介が解くといったもの。途中、【S&Mシリーズ】犀川創平や西之園萌絵【Vシリーズ】瀬在丸紅子など、別シリーズの主要人物たちがお話に登場してミステリとは別で群像劇の様相を帯びてきます。
ですが、後期三部作の始まり『χの悲劇』でこの流れをぶった切り、時間軸が大きく進んで語り手も変わり、今までの主要人物たちも登場しない予測不能な展開になっています。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~(『χの悲劇』を未読な人も注意)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SF
森博嗣作品はもはやミステリではない」と言われるようになって久しいですが、確かにこの『ψの悲劇』もミステリというよりはSFでしたね、完全に。
前作『χの悲劇』で時間がだいぶ進んだ訳ですが、今作『ψの悲劇』はどの時間軸が舞台なのかなぁ~と思っていたら、『χの悲劇』よりさらに後の未来でした。「あらすじ」で上記したように、一応殺人事件は起きますが、添え物程度の扱い。後半はロボットだの人工知能だのの話が盛り沢山のバリバリのSF世界に突入します。
近年の森作品は殺人事件に重点が置かれていないものがほとんどですね。毎回頑固に殺人事件発生させる必要も無いのでは?と、思うのですが・・・どうなのでしょう?

 

作品自体も単体で楽しむことが出来る作りになっているとは言い難いです。長年森博嗣作品を読んできた読者じゃないとわからない部分だらけで、もうそういった読者に向けてのみ書かれている作品でしょうね。新規のファンを取り込もうとかは無いというか。【S&Mシリーズ】から続く、壮大なサーガ。すべてがFになるを読んだときは、まさかこんな領域にまで達するとは思ってもみませんでしたよ・・・。

 

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八田洋久
前作『χの悲劇』では語り手が島田文子で、島田さんが肉体としての死を迎えるところまでが描かれるのにくわえ、Gシリーズの主要人物の一人、海月及介の素性の一部が明かされるなど、ファン必見な展開でした。
さて、この後どうなるんだ~!?って感じだったのですが、今作『ψの悲劇』では前作同様島田さんが新たな姿・ニュータイプ島田として登場する以外はシリーズに関係した人物も見当たらず、謎が増えた感じ。
特に今作の中心人物「八田洋久」は色々と思わせぶりな描写も多く(プロペラとか、死んだ奥さんとか)、読者的には「いったい何者なんだ!?」と、考え出すと頭が痛くなる(笑)
最終作の『ωの悲劇』で正体わかるのか・・・・・・それとも【wシリーズ】で、とか・・・。う~ん、頭痛い(^^;)


中盤ははっちゃけた島田さんに引っ張られて軽快な雰囲気で読めましたが、最後の最後がゾッとする終わり方でしたね。
八田博士が生体にこだわった理由って何なのでしょう?この世界ではロボットも人間と見た目が変わらず、周りにも気が付かれない程なので、“生体”にメリットがあるとも思えないのですが。孫を犠牲にするくらいだし、何か訳があるんですかねぇ・・・。

 

 


次で完結!
【S&Mシリーズ】【Vシリーズ】【四季】と続き、Gシリーズと平行して展開されていた【Xシリーズ】も終了していますので、

 

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今著者が抱えているシリーズは残すところGシリーズと【Wシリーズ】のみとなりました。Wシリーズの前に【百年シリーズ】があって、こちらはすでに完結していますが、この二つのシリーズは完全にSFで現代よりだいぶ進んだ時間軸の世界が舞台。

Gシリーズは『キウイγは時計仕掛け』までは比較的地続きな感じだったのが「後期三部作」に入ってからは百年シリーズとWシリーズまでの空白期間を埋める方向でお話が進行しています。明かされる事情も今作『ψの悲劇』では百年シリーズとWシリーズに絞られていました。


時代がどんどん未来に向かっているので、読者的に馴染みのある犀川先生や萌絵、紅子さんや加部谷、山吹などの主要人物たちのその後とかはもう語られないのかしら・・・と、思うと残念で寂しいですが(特に別シリーズでも触れられていない山吹は気になる・・・)しかし、森さんの事だから最終作の『ωの悲劇』でまた時間軸が過去に戻るという事もあり得るかな?とも思います。Gシリーズはまだ放置されている謎が多々ありますからねぇ。完結作をどのようにもっていくのか大変気になるところです。

 

Gシリーズ完結編の『ωの悲劇』は2019年ではなく、おそらく2020年に刊行になる予定とのこと。その間にWシリーズの方を終わらせるらしいです。

と、なると、また新たなシリーズが開始されない限り、森作品の壮大なサーガの最終作は『ωの悲劇』となるってことなのでしょうか、ねぇ・・・?


全ての謎が回収される、長年の読者が報われる素晴らしいラストを期待したいところです。ホント、最終作読み終わったら「今まで読んでて良かった~!」と叫びたいもんだ(^_^;)

 

 

 

 

 


ではではまた~