夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

江戸川乱歩 有名作詰め合わせ!『江戸川乱歩傑作選』

こんばんは、紫栞です。

皆さんは誰もが知っている有名作家の何となく輪郭だけでも知ったかぶりして語りたいといった欲求が湧いてくることはないだろうか?本を全く読まないような人でも作家の名前だけは一般的知識として知っている。それくらいに著名な作家の代表作、世間に知れ渡っている作品タイトルが雑談の合間に出てきたときに「この話って、コレがこうなってこうなるオチなんだよね~」とか、本を読まない人の前で“さも自分は読書家だ”的振る舞いをしたいといった願望が・・・。

まぁただの格好つけなんですけど(^_^;)

しかし、有名作家の代表作・一般常識として知れ渡るほどの小説作品ならいっちょ読んでみてどんなもんか確かめてみたいというのは読書が生活の一部になっている人なら誰でも大なり小なり思う事かと思います。でもいざ読んでみようと思っても短編とかだと作品の発表年代順になっていたりだとかして、なかなか有名作だけ拾い読み出来る本って少ないですよね。没後何年も経っているような作家で、作品数が多いものは特に。

そこで今回紹介したい本はコレ

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

 

新潮文庫から出している『江戸川乱歩傑作選』です。

江戸川乱歩は日本人なら知らない人はいないと言っても過言では無い作家ですよね。日本での探偵小説の基礎を築いたのは勿論ですが、他に幻想小説怪奇小説家としても有名です。でも一般的認識としては“変態的小説”を書く作家ってイメージが強いかもしれませんね。作品が映像化などされる際は“変態”的部分がクローズアップされて描かれることが多いですから。「なんかよく知らないけど、かなりエロくてグロい話ばっかなんでしょ?」みたいな。

まぁ後期の怪人二十面相とか少年探偵団の方のイメージが強い人はまた違った認識してるでしょうけど。

 

この『江戸川乱歩傑作選』は初期の代表作9編が収められています。 『二銭銅貨』『二癈人』『D坂の殺人事件』『心理試験』『赤い部屋』『屋根裏の散歩者』『人間椅子』『鏡地獄』『芋虫』の9編ですね。

どうです?聞いたことあるタイトルばっかでしょ?なんとも雑学欲を満たしてくれそうな(笑)乱歩知ったかぶりキメたいぜ!って人にはおすすめの一冊です。

二銭銅貨』はデビュー作、『D坂の殺人事件』は皆様ご存じ明智小五郎の初お目見え作品で、『屋根裏の散歩者』『人間椅子』『芋虫』は奇抜な着眼点と変態性が有名な作品。

私自身、本を手にとって目次見たときに「おう!なんといいとこ取りな作品集!」と思い、買ったクチです。

二銭銅貨』はかなり真面目に本格推理物書こうとしてたんだなぁ~と思ったし、『D坂の殺人事件』は明智小五郎のイメージが思っていたのと全然違って驚きました(まぁこの話の時って明智小五郎はまだ書生で若造なんですけど)読んでみて一番意外だったのは『人間椅子』ですね。こんなオチだったのか~と。

個人的には『芋虫』好きです。手足が無く、口がきけない夫との二人っきりの生活で、夫を意のままに扱うことが出来る事に優越感を抱いていた妻が“夫の眼”のみに追い詰められて――からのラストまでの流れが良いです。

 

江戸川乱歩は海外の本格推理物に強い影響を受けて、それを本筋にしたい思いが強かったみたいですけど、人気が出たのはエログロの嗜好が強い作品の方のが多くって本人的には葛藤があったみたいです。小説の内容で批判されたりとか。戦中戦後の時代的背景もあるでしょうけど。

私はこの本を含め数冊読んだだけですけど、べつに官能小説ばりのドエロな描写がある訳じゃなく(あたりまえだ)結構普通に読めます。「う~ん。変態だなぁ~」とは思うんですけど(笑)

でも誰しもが少年愛少女愛、人形愛やフェチシズムサディズムなどの変態的嗜好は持ち合わせている訳で・・・それらの嗜好が堂々と書かれた作品が大衆受けしたっていうのはある意味必然かなぁと思うんですよね。 そこにこの奇抜な着眼点。屋根裏から毒垂らして殺せるか試してみようとか、椅子の中に入るとか・・・もの凄いインパクトですよね。それを作品として昇華出来ているってのが乱歩作品の素晴らしさ・・・だと思うんだけどなぁ~(数冊読んだ程度なのであんま偉そうな事は言えない^_^;)

 

江戸川乱歩傑作選』は短編集としてはかなり楽しめる本だと思います。バラエティに富んでいて読んでいて飽きさせません。江戸川乱歩を初めて読む人にはおすすめするのにちょうど良い本かと。

コレを読んで貴方も乱歩知ったかぶりキメませんか?

ではではまた~

 

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)