夜ふかし閑談

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スマホを落しただけなのに 小説 あらすじ・感想 リアリティのあるホラー

こんばんは、紫栞です。
今回は志駕晃さんのスマホを落しただけなのに』をご紹介。

スマホを落としただけなのに (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

2118年11月上映予定の映画の原作本ですね。

 

あらすじ
なんでこんなことになってしまったのだろうか。
事の発端はスマホを落したことだった。
都内に住むOL・稲葉麻美は、ある日彼氏である富田誠のスマホに電話をかける。しかし、電話にでたのはハスキーボイスの知らない男だった。富田は泥酔してスマホをタクシーの中に落とし、そのスマホをこのハスキーボイスの男が拾ったのだという。
拾い主の男はスマホを返却するが、男の正体は狡猾なクラッカー。富田のスマホの待ち受け画面に設定されていた麻美の姿と、電話でのやり取りで麻美のことが気に入った男は、富田のスマホから得た情報から麻美の個人情報を抜き出し、人間関係を監視し始め、SNSを介して罠を張り巡らしていく。
一方、神奈川の山中では身元不明の女性の遺体が次々と発見されて――。

 

 

 

 

 

 

50代の新人作家
この『スマホを落しただけなのに』は、第15回このミステリーがすごい!」大賞隠し球の『パスワード』を改題・加筆修正したもので、志駕晃さんのデビュー作。
隠し球”って何?って感じますが、最終選考まで残って大賞は逃したものの、編集部推薦で刊行したよ~ってなことらしいです。お節介で余計なお世話な個人的意見ですが、題名を『パスワード』から『スマホを落しただけなのに』に改題したのは大正解だと思います。与えるインパクトが全然違いますし、『スマホを落しただけなのに』という題名の方が作品にずっと合っていますね。『パスワード』だと本屋に並んでも広告を見てもあまり興味をそそられないんじゃないかと。

 

作者の志駕晃さんですが、1963年生まれでデビューしたときは既に50代。元ラジオディレクターで、今作はニッポン放送のエンターテインメント開発局長という要職に就きながらの執筆だったという異色の経歴の持ち主。
※2作目の『ちょっと一杯のはずだったのに』はラジオ業界が舞台の作品らしいです↓

 

ちょっと一杯のはずだったのに (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

ちょっと一杯のはずだったのに (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

 

 

SNSを利用しての犯罪という現代的な題材を扱っている作品なので、読む前は思い込みから若い作者を想像していたので以外でした。しかし、読んでみると胸のこと“おっぱい”とか、下着を“パンティー”と表記するところがなんか、あの、ソレっぽいので(笑)作者の経歴見て妙に納得しました(^_^;)

 

※追記。なんと、11月6日に『スマホを落しただけなのに』の続編が発売されたみたいです!続編があるようなお話だとは思ってなかったので意外・・・↓

 

 

 


SNSの恐怖
このミステリーがすごい!」からの出ですが、この作品はミステリー色というか推理小説的要素はさほどではないです。どちらかというとサスペンスでホラーって印象でしょうか。

お話はスマホの拾い主の男視点のAパート、麻美視点のBパート、捜査中の刑事二人のCパートの三つの視点で語られていきます。この視点の変化でスピーディーに読み進められ、先も気になって一気読みしてしまうといった感じ。

 

今やスマホは最も身近なツール。ネットも多くの人が日常的に利用するのが当たり前の時代です。肌身離さず持っているぶん、公共の場で落したり忘れたりする事も多い。この小説では最悪の人物にスマホを拾われてしまったことから始まる恐怖が全面に描かれていています。しかも、スマホを落したのは狙われることになる主人公ではなく、主人公の交際相手で、主人公に直接的な非はありません。まさに不運としか言いようがなく、平穏に過ごしていた人間が“知り合いがスマホを落した”という日常茶飯事的な事柄で人生をめちゃくちゃにされるというのは、誰にでも起こり得る状況なだけに現実的な恐ろしさがあります。
この本で取り上げられているのは主にフェイスブックですが、スマホに依存している生活、セキュリティの弱さ、システムの盲点・・・などなど。皆が無知なままに当たり前に利用しているスマホSNSは実は大きなリスクが伴うものなのだと嫌というほど痛感させられますね。

あと、どんなに親しい人物にもやっぱり裸の写真は撮らせちゃ駄目なんだなと思いました(^^;)

 

 

映画・キャスト
11月公開の映画は監督が『リング』シリーズ仄暗い水の底から』『クロユリ団地』などホラー映画で有名な中田秀夫さん。なので、やっぱり映画もミステリーよりホラーテイストよりのものになるのかな?と思います。

 

キャストは以下の通り
稲葉麻美北川景子
富田誠(麻美の彼氏)-田中圭
毒島徹(刑事)-原田泰造
加賀山学(刑事)-千葉雄大
浦野善治(インターネットセキュリティの専門家)-成田凌
小柳守(麻美の元同僚)-バカリズム
武井雄哉要潤
杉本加奈子高橋メアリージュン

 

キャストに関しては個人的には異論は無いです。刑事さん二人は本読んで想像していたのとちょっと違いますが、全体的に順当な感じ。


原作の麻美は綺麗な黒髪のストレートヘアの美女で、その特徴が元で狙われる設定。北川景子さんは茶髪のイメージが強いですが、予告動画などを見ると黒髪になっているので原作の設定に合わせたのだと思います。

原作だと武井は大学時代の先輩、加奈子は同大学出身の友人です。映画の公式サイトだと加奈子が「職場の同僚」となっていますね。びみょ~に変えていますが、お話の中での役割は大体同じだと思います。武井がプレイボーイの女好きなのも。

他、公式サイトですとサイバー犯罪者の大野俊也(酒井健太)、富田に言い寄る女性で天城千尋(筧美和子)と名前が出ていますが、この二人は映画オリジナルですね。


映画の予告映像を観ると麻美の交友関係は映画の方が原作より酷い事になっていそうな感じがしますが・・・どうなんでしょう。

 

 

 

 


以下若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



一気読み出来る面白い作品ではあるのですが、デビュー作だからというのもあるのでしょうけど、なんか色々と言いたい部分がチラホラあります(^^;)

 

サイコキラー
スマホの拾い主の男が、若い黒髪の女性ばかりを殺害しているサイコキラーだというのは物語の比較的早い段階で判明します。で、このサイコキラーの男、母親がネグレクトで自殺。女性に母性を求めて母親と同じ髪型をした女性を次々殺害していき、殺害時には被害者の腹部を滅多刺し。最後、逮捕された際には「見つけてくれてありがとう。このまま止めてくれなかったら、もっと女を殺さなければならなかった」と発言。
・・・・・・まるでプロファイリングものの典型を羅列しているような印象で、犯人視点での心情描写もそこまで突っ込んで書かれていませんし、何というか“プロフィール紹介をしているだけ”と感じてしまいます。
サイコキラーの内情が主の物語ではないってことなのでしょうけど、これならいっそ、犯人の生い立ちなどはまったく伏せたままで話しを進めて、最後に刑事さんにまとめて言わせるくらいでよかったんじゃないかなぁと。

 


男性の文章
主人公の稲葉麻美ですが、まず読んで思うのは、いかにも男性が想像する女性像だなぁと。人を見るときにいちいち打算的になっていたり、「女性ってこうだろ?」みたいな雰囲気を感じてしまいますね。文章も男性作家特有の匂いがプンプンします。特に“パンティー”の表記がね・・・(^^;)
そんな訳で、感情移入出来そうな、出来なさそうな微妙な主人公ですね。言動もなんだか一貫性がないような気がするし。

彼氏の富田は富田で純粋で良いヤツだとは思うのですが、終盤、犯人との取引に応じてせっかくの拘束を解いてしまうのには「馬鹿か?」となりましたね。反撃されるに決まっているのに・・・。

 



このミステリーがすごい!」大賞での選考で警察捜査の描写の甘さが指摘されているようですが、捜査描写もさることながら、気になるのは刑事二人が山中で話す話題の中に必要性がないものが多いような気がしてならないところです。

遺体発見現場で蛭だの猪だの熊だの、聞き込みした人が「くそ熱い中」って言ったりだの。ミステリー脳(笑)な人間としてはこの描写も何かの伏線か?結末に関係するのか?視点が三つにわかれているけど、まさか時間軸がズレているとか?と、色々勘ぐってしまうのですが、どの描写も特別結末には関係なく。大いに肩透かしをくらった感・・・まぁミステリー脳で読んでしまうとって話ですけど(^_^;)


しかし、じゃあこれらは何のための描写だったんですかね?読者を陽動するための確信的なものなのか。それともユーモアのつもりなのか。だとしたらユーモアだと気が付かれもしないってのはどうなんだ。

あと、アスペルガー症候群の話も出て来るのですが、これも何のために出してきたのかわかりませんね。個人的にはちょっと変わっているってだけで、すぐにアスペルガーだの何だの言い出す風潮って大っ嫌いなんですが。


結末
犯人なのですが、ちょっと解りやすすぎますね。一番怪しい人物がそのまま犯人で「あ、いいんだそれで」といった感じ。
で、終盤、お話は犯人特定よりも麻美の過去の謎がメインとなります。サイコキラーの犯人で引っ張りますが、実はお話のメイントリックはこっちなんですね。


一ひねりではありますが、上記したように、文面を読んでいるともっと大仕掛けや大どんでん返しが潜んでいるのかと期待してしまうので、この手のトリックが使われるミステリー小説を読み慣れている人にとっては物足りなさを感じてしまうかなぁと思います。
ホラー、ミステリー、パニック小説など様々な要素が入っているお話ですが、様々な要素が入っているために全体の描写が浅くなってしまっている印象。

 

個人的にはやはりミステリー小説としてよりも、ホラー小説として読むのがオススメですね。SNSを利用している人は特にリアルな恐怖を感じる事が出来ると思います。スマホSNS依存への問題提起的側面もあるので、日常的にSNSを利用する人にこそ読んで欲しい作品です。映画で気になった方は是非是非。

 

 

スマホを落としただけなのに (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

スマホを落としただけなのに (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 

※漫画もある↓

 

このマンガがすごい! comics スマホを落としただけなのに (このマンガがすごい!Comics)

このマンガがすごい! comics スマホを落としただけなのに (このマンガがすごい!Comics)

 

 

 ※続編もね↓

 

 

 

ではではまた~