夜ふかし閑談

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『御手洗潔シリーズ』ドラマ・映画 悔やまれる、大人の事情・・・

こんばんは、紫栞です。今回は御手洗潔シリーズ】の映像化作品について少し。

 

探偵ミタライの事件簿 星籠の海

 

前の記事で【御手洗潔シリーズ】についてまとめましたが、

 

www.yofukasikanndann.pink

 

このシリーズは2015年に単発スペシャルドラマ『天才探偵ミタライ~難解事件ファイル「傘を折る女」~』(短編集『UFO大通り』に収録されている「傘を折る女」が原作)が、

 

UFO大通り (講談社文庫)

UFO大通り (講談社文庫)

 

 

2016年には『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』のタイトルで映画化されています。

 

 

探偵ミタライの事件簿 星籠の海

探偵ミタライの事件簿 星籠の海

  • 発売日: 2016/12/30
  • メディア: Prime Video
 

 

単発スペシャルドラマですと主演の御手洗潔玉木宏さん、石岡和己役堂本光一さんが演じています。

御手洗潔シリーズ】は生活環境が時代と共に変化するシリーズで、原作では1994年に御手洗が脳科学者として海外に行ってしまって以降、日本に帰らずじまいの設定ですが、このドラマでは御手洗と石岡君が馬車道の部屋で同居生活している設定となっています。

やっぱり同居時代がこのシリーズの黄金期(?)ですからね。映像化するなら御手洗潔と石岡コンビが一緒にいて、ホームズ役とワトソン役やってるパターンですよ。

 

ドラマの原作である「傘を折る女」は短編で、ラジオ番組の投稿からストーリーが展開する流れは面白いのですが、ミステリとしては推理も仕掛けも結構無理がある作品(^_^;)。そこがまた【御手洗潔シリーズ】“らしさ”なのかもですが・・・。

シリーズの特徴である御手洗と石岡君の掛け合いはドラマ用の脚色や改変があるもののコミカルで楽しかったので、ファンの間やネットでは盛り上がりました。

 

この単発スペシャルドラマは映画化を見据えての企画だったらしく、同じく玉木宏さん主演で翌年の2016年に『星籠の海』を原作とする映画が公開されたのですが、

 

星籠の海(上) (講談社文庫)

星籠の海(上) (講談社文庫)

 

 

映画では助手役が石岡くんから変更。広瀬アリスさんが演じる映画オリジナルキャラクターの小川みゆきが助手役となっています。一応電話で少し(本当に少し)石岡くんが登場してはいるのですが、この際の声も堂本光一さんではなくって藤尾勘太郎さんが演じています。

 

この助手役の変更ですが、当初は映画でも堂本光一さんが続投で出演する予定だったのが、ドラマの視聴率が振るわなかったので所属事務所からNG が出たんだ・・・・とか。

原作者の島田荘司さんがツイートしたりして話題になったりもしたのですが・・・実際のところはどうなのでしょう?

個人的に、こんなことを作者がツイートで暴露しちゃうのはファン心理としては微妙ですが、真相はどうあれ“大人の事情”での降板は間違いないでしょう。主演はドラマと同じなのに、ドラマで相棒役をしていた人物が映画で不在なのはかなり不自然ですからね。

制作側も石岡和己が不在なのは痛手だと重々承知しているのか、作中で石岡くんの名前を度々出すなどの配慮がされていましたが、コレ、原作シリーズ知らない人には訳分からないだろうし。

肝心の「御手洗潔」の人物像も映画では説明不足ですね。石岡君が不在な時点で原作ファンにはウケが悪くなってしまうのだから、もっと原作をまったく知らない人でも愉しめるようにした方が良かったのでは。

 

原作の『星籠の海』は「福山を舞台にした映画を創りたい」という映画化ありきで書かれたものなのですが、シリーズの特色であるダイナミックな仕掛けや奇抜さは薄い作品なので、「せっかく御手洗潔シリーズの映画化ならもっと“らしい”過去の作品をやれば良いのに」と個人的には思いましたね。

良くも悪くもね、「そんなバカな!?」という度肝を抜かすものが御手洗シリーズだと思う。

 

映画はドラマ版と制作スタッフが異なり、『相棒』の制作スタッフが担当。全体的に重々しい画と雰囲気で、シリーズのワトソン役である石岡くんがいないし、石岡くんの前じゃないから御手洗の変人ぷりが発揮されないしで(ドラマ版の御手洗も原作よりクールでしたが、映画はより物静かな人物に)結果的に【御手洗潔シリーズ】らしさが皆無の、よく分からない事件ものになってしまっていました。

 

原作とは人物設定など細部が変えられています。原作の事件関係者たちはそれぞれ「うわぁ」っていう女性だったり、情けなさ過ぎる男性だったりと、ムカムカする登場人物たちが多く登場し、(特に女性学者さんは御手洗シリーズでは珍しく仕事第一の女性かと思ったら、やっぱり結婚願望が強い女性で何だかもの凄くガッカリした。どうしても女はそんなもんだと言いたいみたいですね・・・)偽装工作もえげつないのですが、映画ではすべて「普通」になっていた。そもそも事件関係者の内面描写自体が少ないんですけど。原作よりムカムカしないし引かないものの、酷く単調な作品に。

劇場まで観に行ったのですが、観終わっての一番の感想は「退屈」でしたね(^_^;)。

 

私としては、ドラマの方がコミカルで御手洗と石岡くんの掛け合いも楽しかったので好きなのですが、残念ながらDVD化もされていないので今となっては観るのが困難に。ホント、大人の事情が悔やまれる・・・。堂本光一さんの演じる石岡くん、結構良かったんですけどねぇ。ドラマのコンビのまま映画化されて欲しかったなぁ。

 

御手洗役の玉木宏さんは、作者の島田荘司さんご指名でのキャスティングなんだとか。映画化前は【御手洗潔シリーズ】の初期の数冊しか読んでいなかったので(映画館行く前にシリーズ一気読みした)、「そんなにイケメンのつもりで書いていたのか。全然そんなつもりで読んでいなかったぞ」と、驚いた(^_^;)。その後読み進めて、原作でもちゃんと美形設定なんだと理解したのですけども。

 

作者ご指名なのでアレなんですが、役作りなのか声質なのか、セリフが聞き取りにくいのが個人的にちょっと「う~ん」でしたね。推理ものでは探偵役のセリフが聞き取りにくいのは致命的ですから。玉木宏さんは好きな役者さんなんですけど。

 

人気シリーズであるにも関わらず、三十年以上映像化されなかったのは作者の島田さんが作品数の少ないうちに映像化されて悪い影響を受けることを恐れていたためらしい。機が熟し、御手洗潔を演じて欲しい役者を見つけて・・・と、満を持しての映画化だったと思うのですが、色々残念な形になってしまいましたかねぇ・・・。

 

何作もある人気シリーズですので、また新たに映像化されてもいいのではないかと。これで映像化はこれっきりというのは如何にも勿体ない。

ドラマ版のディスク化は今からだってして欲しいもんですが、難しいでしょうか。

 

大人の事情・・・憎い・・・・!

 

 

ではではまた~

 

※漫画も出ています↓