夜ふかし閑談

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『ほねがらみ』あらすじ・感想 怖い!“あの”物部も苦戦した怪異とは

こんばんは、紫栞です。

今回は、芦花公園さんの『ほねがらみ』を読んだので感想を少し。

ほねがらみ (幻冬舎文庫)

 

『ほねがらみ』は2021年に刊行されたホラー長編小説。2020年にWeb小説サイトカクヨムにて発表された「ほねがらみ――某所怪談レポート」がネットでバズり、それを改題して書籍化したもの。芦花公園さんの商業作家デビュー作です。

 

夏に芦花公園さんの【佐々木事務所シリーズ】を夏にまとめて読んだのですけど↓

 

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【佐々木事務所シリーズ】と『ほねがらみ』とは、物語の形式は異なるものの、共通したキャラクターが出てきていて繋がりがあるとのことで、今作も流れで読んでみました。

本当はこの本も夏のうちに読みたかったのですが、ずれこんでスッカリ涼しい季節になってしまった。

繋がっているのは、祓い屋の物部さんと、佐々木るみと青山幸喜にとっての大学時代のゼミの教授・斎藤晴彦が登場しているところ。今作を読むと、物部さんが車椅子生活になった経緯を知ることが出来ます。

 

芦花公園さんは2018年から〈カクヨム〉での投稿を続けていて、書籍化されていないお話にも物部さんやるみがちょこちょこ登場したりしているようです。

 

kakuyomu.jp

 

それとどうやら、単行本刊行当初はパクリ騒動で一悶着あったようですね。

 

note.com

 

私が買ったのは文庫版なので、問題の箇所は修正されているようですが。単行本の方なら確認が出来るのかしら。

 

 

 

 

あらすじは、

オカルト好きで大学病院勤務の男性医師「私」が、趣味の怪談収集をするうちに共通項に気がつき、繋がりをたどっていくというストーリー。

 

「今回ここに書き起こしたものには、全て奇妙な符合が見られる」「私は、読者の皆さんとこの面白い感覚を共有したいのである」ってことで、時期も体験者も違う各怪談話の符合から地域の特定諸々を考察してルーツを探っていこうという“テイ”で書かれた、モキュメンタリーホラー小説。

 

ホラーだとルポ風、実録もの風に描く作品が多いですね。

 

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やっぱり「実話ですよ」という演出は直接的な怖さがありますからね。『リング』などに代表されるような拡散・感染系ホラーは特に。

 

 

洒落怖掲示板で繰り広げられるような盛り上がりを紙の本でやりたいという趣向ですと「私」による前説で書かれています。

洒落怖のまとめ動画などが好きな私としては、怪談話が紹介されて、その都度「私」による考察が入るという構成は面白かったです。

時代がバラバラで人物など読んでいても結構こんがらがるので、合間合間に情報を整理してくれる考察は非常に有り難く感じられる。コレがないと読み進めるのがちょっと厳しいですね。

 

 

「私」がルーツを探っていくうち、周囲で異変が起こり、第三者だったはずが怪談の当事者となってしまうという流れ。安易な気持ちで調べると恐ろしい目に遭う、“知ること”こそが禁忌という、ホラーの定石ですね。

 

 

 

 

 

 

 

怪談話の断片から地域を特定し、「家系」を特定し、謎を追求していく訳で、そこがミステリのように面白いのですが、最後は解明放棄状態になってしまうのでどうも釈然としない。鳥海さんとか、終盤でいきなり登場してきて思わせぶりな描写してそのままだし。他にも投げっぱなしで説明していない部分が多いし。

一応「■■■■■んよね」に入ると思われる言葉、「骨がらみ」の意味などは示されているのですが、あまり感慨が湧かないというか、「ふ~ん」って感じで終わってしまう。謎解きの爽快感や解った時に立ち上る恐怖がないんですよね。

 

ホラーとは全部解明されると怖くなくなるもの。だからあえて謎を投げっぱなしにしていかようにも考察出来るようにしているのでしょうが、中盤までミステリ色が強いのでこの締め方は無責任だって風に思ってしまう。

 

 

後、個人的にどうかと思うのは、モキュメンタリーとしての描き方が崩壊し、途中からほとんど一人称での小説になってしまうところ。

 

フェイク・ドキュメンタリーとして書いているなら、最後まで貫いて欲しい。

折角の空気感が壊れるといいますか。小説として書かれた方が、臨場感があって怖いという人もいるでしょうが、私的にはいきなり創作感を強くされると怖さも半減する。洒落怖スレもそうでしょ?

 

 

とはいえ、やはり十分に怖いは怖いです。真夜中に暗い部屋で読みたくはないなぁと。直球のホラー小説ですね。

怒濤の「ズ」攻撃は最初のページめくった瞬間はビビったものの、あまりにページを割いているので「いや、長ぇな!」と、思わず笑ってしまいましたが(^_^;)。

 

日本の因習にキリスト教が絡むのは『異端の祝祭』と共通している。

 

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この題材がお好きなようですね。

【佐々木事務所シリーズ】でも思いましたが、この作家さんは不快感を与える気持ち悪い人物の描写が上手い。作中にもありますが、もはや怪異より怖いです。

 

 

ミステリとしては釈然としない物語ですが、洒落怖っぽいものが好きな人、ゾッとしたい人にはオススメの一冊です。気になった方は是非。

 

 

ではではまた~