こんばんは、紫栞です。
BSジャパンで放送されていた連続ドラマ『命売ります』、最終回を迎えましたね。
このドラマの原作本である三島由紀夫の小説『命売ります』については前に当ブログでまとめましたが↓
今回はドラマを最終回まで観終わっての感想を少し。
ドラマ全体の感想としては、「しっかりしたドラマだったなぁ」という印象です。万人受けとかは狙わずに、独自の雰囲気を貫いたまま最後までやりきったって感じですね。
毎回、羽仁男(中村蒼)の命を買いに依頼人が来てウンヌンという形式でのドラマでしたが、結局、原作のストーリーにそってのお話は一話二話までで、それ以降は完全にドラマオリジナルでした。最初の方にあったお色気路線も四話目ぐらいからはもう鳴りを潜めていましたね(笑)
現在設定として
原作は1968年(昭和43年)の作品でその当時の時代背景が描かれ、ストーリーにも影響していますが、ドラマ版は時代設定が現在に直されているので、依頼内容も現代社会ならではのものが多かったですね。第五話のブラック企業のお話などはまさに現代ならでは。全10話ということで、原作よりも依頼人の数もレパートリーも様々で、依頼人達の「命を売る人間をどう利用するか」の悪知恵の仕方をブラックユーモア的に、滑稽に、愚かに、面白く描いていました。
原作とは違い、ストーリー全体にネットやSNSが大いに関係してくるのも現在ならではですね。まぁ、現在設定のドラマではもはやネットやSNS抜きのストーリーは不自然なのかも知れないですが。
原作と違うところ
原作とドラマは違うところだらけですが、特に一番大きな違いとしては、原作はハードボイルドなドタバタ劇だったのに対し、ドラマは各依頼人達の事情や心情に強いスポットがあたっていたところですかね。思想的な部分などが強めでした。
原作はですね、終盤はもうハチャメチャな展開するんですよ。
秘密組織・ACA(アジア・コンフィデンシャル・サービス)という胡散臭い組織がお話に関わり、大使館の暗号解読をしたり、「お前警察のスパイだろ」と勘違いされて消されそうになり、太腿に小さな針の発信器仕込まれたり・・・・・・。
かなり荒唐無稽でユーモラスな展開をします。(几帳面に伏線張られているし、造りはだいぶ凝っている話なのですけど)こんなB級スパイ映画みたいな話の中で、主人公の羽仁男の心境の変化が真剣に描かれているのがチグハグで面白いところなんですが。
ドラマではネットなどに情報が出回ったせいで羽仁男の命が狙われるといった展開になっていましたね。同じ命を狙われるにしても、原作と比べるとかなり現実的で情報化社会の怖さみたいなものが漂っていました。
そして、羽仁男の命を利用しようとする依頼人達が皆、天罰をうけるかのように破滅したり死んでいってしまったりで、終盤はそのことに羽仁男が苦悩する展開。
“他人の命を利用しようとするような奴はどんな大義名分があろうと愚か者だ”
という思想が各話で示されていました。
最初の依頼人である老人(ドラマでは岸宗一郎という名前で田中泯さんが演じていました)が後半で再登場するのは原作と同じですね。この老人の立場はだいぶ異なるんですけども。
最後
原作は命を狙われ、死の恐怖におびえる羽仁男が警察に駆け込むも、冷たくあしらわれてしまう・・・という場面で終わります。
ドラマでは改心して真っ当に生き始めようとしているところに、老人が命がけのゲームを持ち掛けてきて・・・・・・でしたね。人間椅子の主題歌が流れて終わり。
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原作同様、何とも言えない終わり方でしたが、「羽仁男が改心しました!めでたしめでたし」で終わるのもこのドラマには似合わないので、このような形になったのかなと。原作のラストを反映させた結果かなとも思います。
あと、ドラマは薫くん(前田旺志朗)や喫茶店の二人(YOU・田口浩正)が最後まで羽仁男と一緒にいてくれて良かったなぁと。原作だと最後、羽仁男は孤独に戦っていたので・・・(^^;)
原作の持ち味や設定をいかしつつ、上手く現在設定に直して、原作とはまた別の独自の面白さのあるドラマに仕上がっていたと思います。原作を読んでいても十分楽しめるドラマでした。
ドラマ観て気になった人は是非原作も読んで比べてみて下さい。
ではではまた~