こんばんは、紫栞です。
今回は、アニメ『ミギとダリ』を観たので感想を少し。
こちらは2017年から2021年まで連載されていた、佐野菜見さんによる同名漫画作品
を原作とするアニメで、2023年末のクールで放送されたもの。全13話。
アマプラの見放題対象だったのと、作画の雰囲気に惹かれて観てみました。原作は未読です。
あらすじ
舞台は1990年の神戸。オリゴン村在住の園山修・洋子の老夫婦は、養護施設から秘鳥(ヒトリ)という少年を養子として迎え入れる。
しかし、秘鳥は実は双子の少年「ミギ」と「ダリ」が入れ替わりながら演じている、“二人一役”で成り立っているものであった。
二人の目的はオリゴン村にいるはずである実母を殺した犯人を突き止め、復讐すること。園山家に引き取られるように画策して老夫婦に取り入ることに成功し、園山家を根城にしながら、二人は双子だという正体を隠してオリゴン村の村民達に探りを入れていくが――。
最初に誰もが多少困惑するのは舞台設定かと思います。アニメだと特に。
ミギとダリは金髪の美少年だし、村の景観も西洋の片田舎って感じなので、てっきり海外が舞台だと思ってしまうところですが、舞台は日本の神戸市北区。オリゴン村は架空の村ですが、アメリカ郊外を模しているニュータウンって設定なのですね。
神戸は60年代後半から80年代終わりまで外国人居留地がありましたので、西洋人や文化が混在しているってことかなどとも思ってしまいますが、登場人物は皆ゴリゴリの日本名ですので、西洋人っぽく見える人も、あくまで村のコンセプトに合わせてアメリカ風に振る舞っている日本人ってことのようです。洋子ママとかね。洋子ママが困惑の元なのよ・・・。
とはいえ、ミギとダリは正真正銘の金髪碧眼美少年で、実母も金髪で名前はメトリーなので、やはり外国人居留地があったことも設定に盛込まれているのでしょうけど。
でも、元孤児だとからかわれるシーンはあっても、髪の色などを揶揄されるシーンはないんですよね。日本なのにアメリカ風という独特の世界観自体が、漫画的ファンタジー設定なのかも。いずれ、今作では深く考える必要のないことなのですが。
舞台設定以上に困惑するのが、美麗な画による耽美な雰囲気の中で繰り出されるシュールなシーンの数々。
全く前情報無しで観ていると「何だこれ」なのですが、原作者の佐野菜見さんはこういったシュールギャグが持ち味の作家さんなのだそうで、
慣れてくるとこの独特さがクセになって面白い。クスクス笑ってしまいます。
とはいえ途中、ジャグだとしてもちょっと引いてしまうシーンもありますので(^_^;)、観る人を選ぶといいますか、好みがハッキリ分かれる作品ではあるでしょうね。
導入部分の一話二話で荒唐無稽なシュール展開がドンドンと描かれるので、この調子で事件についても真面目にはやらずにギャグ一辺倒でいくのかと思ってしまうのですが、これがちゃんと、サスペンスミステリ部分は想像以上に確りとしており、人物の成長や青春はことのほか爽やかに描かれ、決着しています。
シュールギャグとサスペンスミステリと青春ドラマ。諸々の“混然”を愉しむ作品ですね。
「オリゴン村」に何かあるのではというところからミステリ部分が展開されていきますが、この物語では描かれるのはほぼ「園山家」と「一条家」のみ。なので容疑者の推測も容易で、奇をてらった展開や度肝を抜かすようなどんでん返しなどはありません(あくまで“ミステリ部分は”ですけど)。どこか怖い、おどろおどろしい雰囲気で実直にサスペンスミステリを魅せてくれます。
綺麗にキチンと終わっていて申し分のない最終回ですが、兄弟として顔の相異に気がつかなかったのかという疑問と、一条英二の妹・華怜についての説明の不十分さは個人的に引っかかりましたね。
ま、そんな些細なこと、吹っ飛ぶぐらいの良い最終回だったので「ま、いっか」ではあるんですけど。
私はですね、サリーちゃんがとてもツボでしたね。あのミステリアスな容姿と男を手玉に取る立ち振る舞いが非常に好み。〇装なのが残念なくらいです。別の声優さんを使っているのかと思ったのですが、村瀬歩さんが演じ分けていらっしゃるのですね。全く違和感なく、キャラクターデザインにも合っている声で凄いなと感服いたしました。
おかしみ溢れる秋山や、誰よりも冷静な最年少・華怜ちゃんも好き。みっちゃんには色々と驚かされましたね。最終回でもあのようなご活躍をされるとは。
原作者の佐野菜見さんは癌で2023年8月に36歳の若さで他界されたため、2021年末に連載を終えた『ミギとダリ』が最後の漫画作品となりました。
このアニメは佐野さんが他界されてから2ヶ月後に放送開始というタイミングに。佐野さんは原作者としてギリギリまで制作に関わっていたそうで、最終回には追悼メッセージが出されました。フランス語なのでわからなかったのですが、「佐野菜見さんを偲んで」と書かれていたようです。
『ミギとダリ』を書き切ってくれたことに感謝ですが、佐野先生の次回作がもう見られないというのは残念でなりません。
アニメ制作の方々も先生に完成品を見ていただくことが出来なかったのは無念だったろうと思います。そんな先生への想いもあって、このアニメは極上の仕上がりになったのでしょうね。
気になった方は是非。
ではではまた~