夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『夜市』小説 あらすじ・感想 怖い。けれども美しい幻想ホラー 夏のオススメ本~⑧

こんばんは、紫栞です。

今回は、夏のオススメ本で恒川光太郎さんの『夜市』(よいち)をご紹介。

夜市 (角川ホラー文庫)

 

傑作幻想ホラー小説

『夜市』は2005年に刊行された中編小説集。第12回ホラー小説大賞受賞作し、第134回直木賞候補にもなった「夜市」と、書き下ろしの「風の古道」が収録されている小説集で恒川光太郎さんのデビュー作。

 

「夏なので有名ホラー小説読みたい!」とネットで検索した際、残穢

 

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と同様に各サイトでオススメされていたので、この度読んでみました。

 

中編で、「夜市」が70ページちょっと、「風の古道」が100ページちょっとといったボリュームですが、2編とも計算し尽くされた無駄のない構成と、幻想的な世界観、哀しく切ない読後感で、とんでもなく素晴らしく美しいホラー小説となっています。

賞の受賞も名作と謳われるのも納得の作品ですね。

 

 

 

 

各話・あらすじ

 

●「夜市」

大学二年生のいずみは、高校時代の同級生である裕司から「夜市に行ってみないか?」と誘われる。裕司に連れられて夜に岬の森へ行ってみると、そこでは人ならぬものが様々な品物を売る市場が開かれていた。

どうやら異界であるらしいこの夜市では、望むものが何でも手に入るという。

裕司は小学生の頃に夜市に迷い込み、「現世に戻るためには買い物をしなければならない」と言われて一緒にいた幼い弟を売って「野球の才能」を買ってしまった。現世に戻ると、裕司の弟は最初から“存在していない”ことになっており、裕司は確かに野球部で活躍することが出来たが、弟を売ってしまった罪悪感は消えることなく裕司を苛んだ。

裕司が今夜、夜市を訪れた目的。それは弟を買い戻すことだった――。

 

弟を買い戻すのにわざわざ事情を知らないいずみを付き合わせるという時点で読者は悪い予感がするかと思いますが、その悪い予想は痛切に翻される。そこで終わっても短編として十分完成されたものとなるところでしょうけど、この物語はその先にさらに驚愕の真相があり、それでいて蛇足感がまったくない。物語の完璧な構成に感服します。

 

夜市の設定からして「欲」がテーマの一つとして描かれているので、ホラー小説を読んでいる意識もあって人間の悪意や邪さが垣間見える展開だろうと思ってしまうところですが、この「欲」の描き方も読者の予想を超えた描き方をされていて驚く。

“ここでは無欲なる者はどこにも行けない。”という一文で納得すると同時に深い哀しみに襲われるラストですね。

 

「夜市」は映画化の話が過去にあったようですが頓挫したんだとか。二時間でやるには話を膨らませないと厳しいとは思いますが、一時間のドラマとかには凄く向いてそう。民放向きではないかもですけど。アニメ映画にも向いてそう。世界観がちょっとジブリぽさがある。

 

2018年に奈々巻かなこさん作画で漫画化されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

●「風の古道」

「私」は七歳の時、公園で父とはぐれて不思議な道に足を踏み入れた。その時はお稲荷さんの裏から出て自宅に戻ることが出来たが、後になって、あれはどうやら現実に存在する道ではないようだと幼いながらに悟った「私」は、禁忌のように誰にもその道のことを話さずにいたが、12歳の夏休みに心霊スポットの話になって思わず親友のカズキにその秘密の道のことを話してしまった。

話を聞いて面白がったカズキに「今からその道に行ってみよう」と提案され、「私」はカズキを連れて再びお稲荷さんの裏に訪れた。秘密の道に入ることが出来た「私」とカズキは、最初のうちはお化けが通る異界の道を冒険し楽しんでいたが、いくら足を進めても道の出口にたどり着くことが出来ずに途方に暮れる。

道にあった茶店で店主と客に話を聞いてみると、ここは「古道」といわれる大昔から日本にある道で、決して普通の人間が足を踏み入れたてはいけない特別な道であり、正式な出口まではまだまだ相当距離があるという。

その晩は茶店に泊めてもらい、翌日「私」とカズキは茶店の客だったレンに案内してもらい、出口を目指すこととなった。

しかし、その道中で思わぬ災厄に見舞われて――。

 

 

異界の「道」が舞台の物語で、すぐ其処に現世が見えているのに向こう側からは認識されないし戻れないというのが面白い。

物語は「私」の回想話となっていて、序盤は「私」とカズキの夏休みの不思議体験ってな感じでノスタルジックに、途中から古道の永久放浪者であるというレンの出生とそれに絡んだ物語が展開される。

このお話も「ああ、アレがコレに、ソレがアレに繋がるのね」といった具合に無駄のない構成で、美しい世界観だけでなくエンタメとしても愉しませてくれるものになっています。カズキの顛末とレンの辛いけれども愛情に溢れた出生話が泣ける。

“道は交差し、分岐し続ける。一つを選べば他の風景を見ることは叶わない。”

恐ろしくも儚い、やるせない人生の一場面を描いた物語ですね。

 

「風の古道」は2006年に木根ヲサムさんが「ネモト摂」名義で漫画化。週刊ヤングサンデーにて全5話の短期連載でした。

その後、設定や登場人物を一部引き継いだ形で2007年に「まつはぬもの~鬼の渡る古道~」というタイトルで漫画化されています。

 

 

こちら、なんとアクションものになっているのだそうで、原作とはかけ離れた作品なんだそうです。確かに表紙だけみても如何にも少年漫画といった雰囲気。

 

最初に「風の古道」というタイトルで連載されたものは原作に忠実なものだったようですが、こちらはどうやらコミックが刊行されていないようで今となっては読むのが難しいみたいです。

 

 

 

 

異世界と現世

「夜市」も「風の古道」も民俗学などから題材をとり、さらに発展をさせた異世界と現世の物語となっています。

構成の素晴らしさに唸らせられますが、エンタメ的な面白さだけでは終わらない感慨深い読後感がとにかく良い。哀しくも美しい、だからこそ怖いという紛れもないホラー小説ではあるものの、恐ろしさを凌駕する切なさと感動のある幻想小説でもあります。

 

ストーリーだけでなく、幻想的な世界観と文体がたまらない2編ですので幻想文学好きやホラーが苦手な人にも読んで欲しい作品。夜、薄暗い部屋でムードたっぷりのなか読むのがオススメです。

 

この夏、是非いかがでしょうか。

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

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『ダイナー』映画 ネタバレ・感想 ひどいのか?面白いのか?奇天烈映画

こんばんは、紫栞です。

今回は、映画『Dinerダイナー』を観たので感想を少し。

Diner ダイナー

 

平山夢明さんの小説『ダイナー』の実写映画化作品ですね。原作小説については前にこのブログで記事を書いたんですけど↓

 

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映画化で興味を持って読んでみたら、す~ごく面白くって感銘を受けまして、大好きな小説となりました。

しかしながら、読むきっかけとなった映画に関しては、公開と同時に酷評の嵐でレビューもさんざんだったので、観るのを躊躇していたんですよね。原作が気に入りすぎたので余計に・・・。アマゾンプライムで見放題対象になっていたので、やっとこさ観てみました。

 

 

観てみての率直な感想としては、まぁ、評価が低いのも頷けるというか、原作ファンは到底納得しないだろうし、原作をまったく知らない人も「なんじゃコリャ」と思うような映画になっているな~と。

しかし、全部ひっくるめてこの奇抜さがとにかく好きだという人もいるだろうとも思う。とにかく、好き嫌いがハッキリ分かれる作品ですね。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

原作も世界観は独特なのですが、この映画は原作とはまた別の方向に独特です。

ティム・バートンチャーリーとチョコレート工場不思議の国のアリスみたいなのをやりたいのか、いつもの蜷川実花監督の極彩色に玩具箱みたいなゴテゴテ感と気味の悪さが追加されている。観ていて、「あ~ティム・バートンやりたいんだな~」て。

 

それでも“らしさ”は出したいのか、花まみれなのは相変わらずですけど。

ダイナーというのは元々、北アメリカ特有の簡易食堂のことなのですが、店内にアメリカらしさがまるでない。これはやはり、むやみに花を飾っているせいだと思うのですが・・・ダイナーに花、いらないよ(^_^;)

 

店内がこんななので、いきなりハンバーガーを出されると割と戸惑う。そして、肝心のハンバーガーが美味しそうに見えない。

画の色合いに全力投球なせいか、ハンバーガーまで毒キノコみたいな派手派手しい極彩色なんですよね。映えはする(のかどうかも微妙ですが)、しかし食べたくはない。食べると死にそうなんですもん。

 

「目が疲れてしょうがない」「下品にしか見えない」など嫌悪感を抱く人もいるでしょうが、ティム・バートンを感じつつも作り込まれた美術と他映画にないカラフルな画は見物で、この作品の特色なのですが、ハンバーガーは物語の要なので“美味しそうに見える”ことに重点を置いて欲しかったですね。

 

 

画はともかくとして、いただけないのはやはり脚本。

原作小説との違いについては、合っているところを言う方が簡単なくらいに違うところだらけなのですが、オリジナル要素満載でやるにしてももうちょっとやりようがあっただろう・・・というか、まとまりがなさすぎる。

 

映画は原作小説よりもボンベロ(藤原竜也)とカナコ(玉城ティナ)とのラブストーリーがどうやら主軸の物語となっています。

原作ファンからするとボンベロとカナコの間にある愛情はこんな普通の恋愛的なやり取りじゃないだろうとか言いたくなるところですが(ラブはラブなんですけどね)、ま、映画は別物なんだってことで良いという事にしても、ラブストーリーの進め方が強引過ぎる。

 

原作小説ではボンベロの相棒である犬の菊千代をカナコが助けたことがきっかけで二人の関係性が変化するのですが、映画だとそこのシーンが曖昧なので、いきなりボンベロがカナコのこと名前で呼ぶようになって、優しくなって、命がけで庇ってくれて・・・と、急にどうした!?状態。カナコもボンベロにいつ惚れたんだお前状態で、終盤でこれまたいきなりキスシーンがあって困惑する。

急すぎて二人の心情の変化についていけないのですよね。ラブストーリーやりたいならもっとそうなる段階を丁寧に描いて欲しいところ。

 

 

 

個性豊かでグロテスクな殺し屋が次々に登場するのが『ダイナー』という作品の特徴ですが、確かにアクが強い殺し屋たちが豪華キャストでたくさん登場するものの、みんなさほど見せ場もないままあっという間に退場してしまう。

 

一応原作のスキン(窪田正孝)とキッド(本郷奏多)のエピソードが前半の主になっているのでこの二人は他の殺し屋たちより出番が多いですが、それでも“多少”って感じで、「あら、もう退場か~」となる。役者による再現も良く、二人が辿る展開は原作に沿っているものの、なにやら物足りなさが。

 

それというのも、過去の生い立ちなどの説明が全部省かれているので観ていても「いきなり豹変して、よく分からないけどヤバイ人だな」で終わってしまうんですよね。

 

スキンは母親が作ってくれたスフレが~と言って写真チラ見せするだけだし(ちなみに、スキンの母親は木村佳乃さん。写真のみの出演)、キッドはヤバイ整形繰り返していてもう長くないと説明されるだけだし。ま、原作のキッドの生い立ちなどはエグすぎて出せないのかも知れませんが・・・。

 

『ダイナー』は原作も漫画版も設定・描写もろもろグロテスクなのですが、この映画はそういった描写がないので苦手な人でも大丈夫です。人はバンバン死にますけど、殺戮シーンは花が散ることで表現されています。なぜか。

キッドが菊千代に頭をかぶりつかれる場面は忠実にやっていましたけど。銀魂思い出して少し笑いそうになってしまった(^_^;)。その後頭から血をダラダラ流したままボンベロに言われて退店していましたけど、あれはあの後死んだということで良いのだろうか。

キッドの合成ですが、やっぱり不自然なので個人的には無理に合成はしなくても良かったのではないかと思いますね。

巨大犬の菊千代は良く出来ていました。でも、原作よりも存在が蔑ろにされていて、その点はファンとしては残念です。(原作ファンの観点から感想を述べるなら、他も残念なところだらけなんですけど・・・)

 

 

スキンとキッドが退場した後は本当によく分からないドタバタ殺戮劇となる。

組織の内部抗争なのですが、小栗旬土屋アンナ奥田瑛二も即退場です。特に、小栗旬さんの即退場っぷりはビックリする。真矢ミキさんだけ少し長く観られるかな。

 

他、メイクが濃くって分かりにくいですが、斎藤工佐藤江梨子武田真治金子ノブアキ、秒というか、ほぼワンカットでのみで品川徹川栄李奈板野友美が出演。

 

今は亡き組織のボス・デルモニコの姿として蜷川幸雄さんを描いた絵画が出て来るなど、キャストの無駄遣いと言ってしまえばそれまでですが、無闇矢鱈に豪勢です。「どこに誰がいるか探してみてね!」といった、贅沢な遊びを提供して下さっていますので、映画を観る際はそのように楽しんでみて下さい。

 

 

 

 

 

最後はどう?

さて、どうやらラブストーリーであるらしい映画『Diner』。ラストシーンは生死不明だったボンベロが、メキシコで店を開いて待っていたカナコの元に菊千代と共に現われて抱擁するところで終わっています。

 

どう考えてもボンベロの生存は不可能だろう状況からのハッピーエンドなので無理があると思われるところですが、実はこれ、メキシコの「死者の日」だから、死者のボンベロがカナコに会いに来たということなのではという説が。

ボンベロは黒ずくめの服装だし、わざわざメキシコなのもこのためかとしっくりくるので、それが正解なんだろうなと私も思いますが・・・・・・しかし、個人的には気づかないふりでハッピーエンドだということにしておいた方が良いのではないかと。その方が娯楽としてスッキリする。

 

原作小説はカナコが見せ開いていつかボンベロが来てくれるのを待っているところで終わっていて、戦闘の最終的な状況もあやふやにされているので、原作は映画よりもボンベロの生存の可能性が高いのですよ。

続編として『ダイナーⅡ』も小説連載していましたし(2019年6月を最後に更新ストップしていますけど・・・)

 

なので、ファンが望むハッピーなラストを見せてもらったと思っておきましょうよ、と。

 

 

そんな訳で、評価の低さやひどいと言われるのは十分に理解出来るけれども、徹底的に嫌いにもなりきれない映画というのが私個人の感想ですね。

 

河合孝典さんによる漫画版『DINER ダイナー』も原作とはストーリーも変えられて独自の作品となっていますし、

 

 

この映画も別物として(滅茶苦茶だけど)楽しめば良いんじゃないかと思います。

 

数名、メイクが濃くって誰だか分からない方もいますが、主演二人をはじめとして役者がいつもとはまた違う印象で綺麗に撮られていて、毒々しい画面には見応えもありますので、この世界観がちょっとでも気になった方は是非。

 

 

 

映画が気に入った人も気に入らなかった人も、原作は別次元で素晴らしい最凶エンタメですので、映画で納得せずに是非読んで下さい!お願いします!

 

 

 

ではではまた~

 

 

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『紅だ!』桜庭一樹の新シリーズ?あらすじ・感想

こんばんは、紫栞です。

今回は桜庭一樹さんの『紅だ!』を読んだので感想を少し。

紅だ! (文春e-book)

 

あらすじ

東京の新大久保駅近くに構える百人町第百ビル一階、元チキン屋の探偵事務所「道明寺探偵屋」。

社員は女子テコンドーの元オリンピック選手・真田紅(さなだくれない)と、元警視庁勤務の黒川橡(くろかわつるばみ)の二名のみのこの探偵社に、一人の謎の少女が飛び込んできた。

チキン屋と勘違いして飛び込んできたらしきその少女は、自らをハイタカだと名乗り、妙な流れから紅にボディーガードを依頼する。大金を所持しており、何者かに追われている“如何にも訳あり”な様子のハイタカを訝りつつも、紅は依頼を受けることに。

 

同じ頃、「道明寺探偵社」のもう一人の社員である橡は警視庁勤務時代の先輩である藤原から偽札事件の調査を依頼されていた。

 

大規模な偽札事件と命を狙われる少女・ハイタカ。やがて、二つの事件は繋がり始めるのだが――。

 

 

 

 

 

 

バディものエンタメ小説

『紅だ!』は2022年7月に刊行された長編小説。

長編とはいっても、200ページもないので実質は中編小説ぐらいのボリューム。ライトノベルから一般文芸まで書く桜庭さんですが、今作は書き下ろしであるもののだいぶライトノベル寄りの作品となっているのでより読みやすいです。

 

男女バディものでミステリエンタメ、ライトノベル寄りということで、桜庭さんのライトノベルの代表作GOSICKシリーズ】を彷彿とさせる作品ですかね。

 

【GOTHICシリーズ】はメルヘンチックな世界観で展開されるミステリ小説でしたが、こちらは現在の日本(※作中で描かれているのは2019年11月の数日間)が舞台で、30歳の女性と28歳の男性とのコンビものなので、ファンタジックさのない現実的な物語となっています。

 

この本を見て誰もが(年代にもよるかもしれないですが・・・)気になるのはこのタイトルだと思いますが、実は皆が思う通りでして、主人公の名前が紅(くれない)なので、XJAPANのあの有名な雄叫びを真似していつも橡を驚かせており、死んでしまった「道明寺探偵社」のオーナー・道明寺葉との思い出の曲が「紅」だということで、作中で歌っている場面もあります。

 

 

 

序章?

読後感はかなり軽いのですが、執筆時期が『少女を埋める』とかぶっていて、作者が問題にも直面していたためか、かなりその影響を受けているように思える。

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登場人物の謎の少女・ハイタカの設定はモロで、田舎で少女、「女で頭が良いのも考えもの」という台詞は『少女を埋める』にもあったので、“閉塞的世界での女性差別”について、読者に向けて更にダメ押しでメッセージを送っているのかなぁと。ラストの展開もしかり。

紅と橡の人物設定にしても、女性の紅の方が年上で戦闘能力が高いなど、ジェンダーを意識している感じ。他関係者も、能力が秀でている人は女性だし。

 

別に悪くはないのですけど、自叙伝・私小説を読んだ後に普通の小説で同じテーマを描かれると、書き手の思想・主張ばかり透けて見えてしまう気がしてちょっと何だかなぁ・・・と、なってしまう。

作品に作者の思いが投影されるのは当たり前のことなんですけどね。

 

少し童話的な描き方をするのは桜庭さんのいつもの作風ではありますが、30歳と28歳のコンビにしては人物の描き方が幼稚な気がする。ま、現実的には30前後でもこれくらいの子供っぽさがあるものなのかも知れませんが。

偽札事件にしても、そんなに簡単に上手くいくとは思えないのでリアリティはないですかね。

成人コンビで刑事事件を扱う物語なら、もっと一般文芸よりの雰囲気と文章で書いて欲しいなぁと個人的には思うところ。

 

 

この物語、「道明寺探偵社」のオーナーだった道明寺葉の死についても謎のままで、紅と橡も葉さんの死でのわだかまりを今回の事件で払拭し、晴れてバディとして再出発ってところで終わっていますので、今作はまだ序章ってな感じなのですが続くのでしょうか?シリーズ化させるつもりなのですかね?

※シリーズといえば、GOSICK の続編シリーズ途中で止まっているけどどうなってんだ・・・。

 

序章感が強く、まだなんとも言えないのですが、今後があるなら読んでいきたいと思います。

ライトなエンタメで読みやすいので、気になった方は是非。

 

 

ではではまた~

『GOTH』映画・漫画・番外編のアレコレまとめ

こんばんは、紫栞です。

前回の記事で乙一さんの『GOTH』という小説作品について紹介したのですが、

 

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今回は『GOTH』を原作とする漫画・映画と、番外編『GOTHモリノヨル』についてのアレコレについてまとめて紹介したいと思います。

GOTH[ゴス] デラックス版 [DVD]

 

 

では順番に紹介していくのですが、第一に言っておきたいのは、漫画版も映画も番外編も、本編の原作小説を読んでからにして欲しいということ。

原作は叙述トリックもののミステリ小説なので、“小説の状態”がやはり一番愉しめるものとなっています。映像ものを先に見てしまうと、原作のせっかくの仕掛けが半減してしまい、初読での驚きが永遠に味わえないものとなってしまうのですよ。

 

なので、これから紹介するものは原作小説を読み終えた状態で愉しんで欲しいと一読者として切に願うところであります。是非原作小説を先に・・・!

 

 

 

 

漫画

2003年刊行。コミックス全1巻。

大岩ケンヂさんによるコミカライズ作品で、リストカット事件」「暗黒系」「土」「記憶」の四話収録。

リストカット事件」「暗黒系」「土」の3話は比較的原作に忠実に漫画化されていますが、最終話にあたる「記憶」だけ前後編になっていて、原作の最終話である「声」の要素がミックスされたオリジナルストーリーになっています。

 

原作小説は全6編(※番外編を除く)ですが、「犬」だけが完全に漫画化されていないってことですね。ま、「犬」は内容が内容なので、漫画化は難しいのか(^_^;)。

 

この本は大岩ケンヂさんの初単行本作品で、この本が刊行された少し後に代表作のNHKにようこそ!を刊行しています。

コミックスに寄せたあとがきで乙一さんが「GOTHのコミカライズをしたことが汚点になるのではないか」と危惧されていますが、もちろんそんなことはない。乙一さんの原作もこのコミカライズも素晴らしいです。

 

キャラクター造形だけでなく、全体の作画雰囲気が原作小説の世界ピッタリに表現されていて、基本シリアスなところにクラスメイトとのやり取りやト書きのコミカルさが入るのがより乙一作品らしさが出ていて良い。主役の二人も原作よりは人間味があるキャラクター像になっていますね。あと、原作よりも少しエロくなっています。

 

私はこの漫画版だと「土」の描き方が凄く好きですね。「リストカット事件」は原作を読んだ時のゾッとする感じが半減されていて少し残念。原作と順番を変えて、「リストカット事件」を最初に持ってくるのは良いチョイスだと思いますけど。

乙一さんのユーモア溢れるあとがきもイチ押しポイントです。

 

 

映画

2008年12月公開。「僕」本郷奏多さん、森野夜高梨臨さんが演じています。

 

 

2005年から数年間、乙一作品が続けざまに映画化される流れがあったのですが、この映画もその只中での作品ですね。

私はこの映画化が決まる一~二年前に乙一にドはまりしまして、その時点で発表されている乙一作品は全部読み終わっている状態でした。『GOTH』は本の仕掛け的に映像化は無理だろうと思って期待していなかったので映画化と聞いてちょっと驚いた記憶。

 

そんな訳で『GOTH』を映画化するならなんてそれまで考えもしなかったのですが、「僕」役の本郷奏多さんに関しては監督も言っていたと思いますが、はまり役云々の前に、決定前から当時は他に適任が浮かばないといった感じだった。今だって浮かばないですけど。

なので、キャスト発表を聞いた時は「ですよね~」という納得が強かったですね。いざ映画を観てみたら、予想以上に怪しげで危険な色気全開だった。

 

でも今原作読み返してみると、雰囲気はともかく髪型以外の容姿の特徴は森野の方にすべて当てはまるなという気がしますね。ま、性別が違うんですけど。

 

高梨臨さんはこの映画がスクリーンデビュー作。後にテレビでよく観るようになったのですが、映画の時とはイメージが違っていてテレビ観ていても最初はなかなか気が付けなかった。『GOTH』では温度のない陶器みたいな美少女といった印象になっています。

 

二人とも大岩ケンヂさんの漫画版からそのまま抜け出してきたみたいで見た目の再現度が高いので、漫画版を読んだ後だと妙に感心するだろうと思いますね。

 

ストーリーは原作の「暗黒系」と「記憶」がミックスされたものに「リストカット事件」の要素が少し付け加えられているといったもの。

 

上手い具合にまとめられてはいるのですが、ストーリーを混ぜたためかホラーともミステリとも言い難いあやふやなものになっているなぁと。グロテスクさも控えめなので、ホラー・ミステリとして愉しませてくれる原作とは別物ですね。

漫画版読んだ後だと、「土」もやって欲しかったなぁ~と。フェンス越しに犯人と対峙する場面、映画で見てみたかった。個人的に、一話ずつ区切られたオムニバス形式でも良かったのではとも思う。

 

あと、この映画ではストーリー的に関係無いのだから、主人公の名前はぼかして欲しかったですね。これから原作小説読もうって人に不親切だというか、配慮が足りないでしょう。

 

画にだいぶこだわりが窺える作品で、役者も映像も美術も美しいので、ホラー・ミステリといったエンタメ作品というよりは、絵画的というか、芸術性を愉しむ作品なのかなと思います。主役二人が原作よりクールな人物像になっているのも、美しさに特化するためかと。

 

しかし、アパート暮らしなのに森野のあの作り込まれた部屋にはちょっと笑ってしまいますけどね(^_^;)。あと、この犯人はアーティストだ云々の映画オリジナルの台詞は、あまりにも陳腐なので「僕」に言わせない方が良かったと思う。なんかゲンナリする。

 

原作ファンだけでなく、役者のファンも絶対に観るべき作品ですので是非。

 

 

それはそうと、実は『GOTH』はアメリカでも映画化企画が2007年に持ち上がったらしいのですが、その後今日に至るまで音沙汰なしです。

ま、アメリカの方はとりあえずつばを付けておくといいますか、権利だけさっさと手に入れたものの企画が頓挫するということがざらにあるようなので・・・。ある日いきなりアメリカ版やるよ!ってなこともなきにしもあらず。一応。

 

 

 

 

 

番外編『GOTHモリノヨル』

 

 

こちら、2008年の映画との連動企画で発売された本。

 

中身は乙一による6年ぶりの『GOTH』新作「GOTH番外編 森野は記念写真を撮りに行くの巻」が前半に80ページほど収録。本の後半は森野夜役を演じた高梨臨さんの写真集となっています。

 

80ページとはいえ、字が大きいので30分あれば読み終えてしまえる短さなんですけど。実はこれ、作者の乙一さんは“写真集の巻末のオマケ”のつもりで書いたものだったようです。乙一さんとしては映画に出演した高梨臨さんを被写体とした“森野夜の写真集”にそえる文章を寄稿したつもりが、いざ本が出来上がってみたら自分の小説の方がメイン扱いになっている仕上がりだったので、「話が違うじゃないか」となったらしい。

 

で、写真の方はというと、これがお世辞にも良い写真とはいえない。これで1600円+税というお値段だったことで当時だいぶ批判的な声があったようです。

“被写体の森野夜を殺人犯が撮っている”というコンセプトのため、わざと素人が撮ったような不出来な仕上がりの写真にしているとのことですが、そんなの説明されなきゃ分かりませんしね。同時収録されている話の内容に完全に合わせた写真という訳でもないし、購入者が文句を言いたくなるのも分かる。

 

私は当時、「6年ぶりのGOTHの新作」ってので舞い上がって値段なんて気にせずに即買ったんですけど。

書き下ろし小説の内容に満足したのでもの凄い不満を覚えたりはしなかったのですが、写真に関しては「何がしたいのかはなんとなく分かるけど、なんか中途半端だな~」と思いましたね。肝心の森野が死体のフリをしている写真がなく、ストーリーも見えてこない連写写真で意味不明なんですよね。なにやら変態的だなぁというのがつたわるだけ。

 

個人的に、森野だけで「僕」の写真がないのがガッカリだった。コンセプト的にしょうがないのでしょうけど。そんなコンセプト買った時は知らんし。これなら映画の場面写真を載せてくれた方がずっと嬉しかったですね。

 

2013年にこの本の小説部分のみを抜粋した文庫本が発売されたのですが、

 

 

この文庫版のあとがきで乙一さんはこのことで色々とがっかりしたり考えさせられたりして、諸々トラウマになって『GOTH』の続編を書かない理由にもなっていると書かれています。

ひょっとしたら続編が刊行される可能性があったということにまず読者としては驚き。これを知らされると「なんと罪深い本・・・!」ってなりますね。

 

文庫版あとがきでは乙一さんの『GOTHモリノヨル』への愚痴なんだか持ち上げているんだかな意見が細かく書かれていて、小説も微妙に加筆修正されているのでファンは必見です。

加筆修正されていると最近知って電子書籍で文庫版を買って読み比べてみたんですけど、個人的に私は最初の写真集版の文章の方が好きですね。気になる人は是非両方手に入れて読み比べてみて欲しいです。

 

 

しかし、GOTHの続編・・・・・・!なんとかトラウマを克服して書いてくれないものでしょうかねぇ・・・無理かも知れないですけど、微かな望みを抱いてしまうところ。お願いできないもんでしょうか(>_<)。

 

 

漫画、映画、番外編諸々。GOTHファンは是非。

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

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『GOTH』乙一 小説 あらすじ・解説 悪趣味な二人の暗黒系青春ミステリ

こんばんは、紫栞です。

今回は乙一さんの『GOTH』(ゴス)をご紹介。

GOTH【3冊 合本版】 『夜の章』『僕の章』『番外篇』 (角川文庫)

 

GOTHとは

『GOTH』(ゴス)は乙一さんの連作短編小説集。ライトノベル雑誌に掲載されていた連作短編でしたが、ライトノベルとしてではなく一般小説として発売された珍しい作品で、第三回本格ミステリ大賞受賞作。コミカライズと映画化もされている人気作で、乙一さんの代表的連作短編集です。

※漫画版と映画について、詳しくはこちら↓

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昔、乙一作品は残酷系の“黒乙一と爽やか切ない系の“白乙一などとファンの間でジャンル分けされたものでしたが、『GOTH』は“黒乙一”至高の代表作ですね。

 

内容は、異常な事件や殺人犯、悲惨で悲痛で不条理な死、人間の残酷な面など、忌まわしく嫌悪されるものに対して暗い魅力を感じる悪趣味な高校生男女コンビ「僕」と「森野夜」が、町で起こる猟奇的な事件に次々と巻き込まれていくといったもの。

基本的に、ヒロインの森野が毎度猟奇殺人犯に狙われて、探偵役の「僕」がひそかに助けるといった流れ。

 

ゴス文化については一概にはどういうものか言い表すのが難しく、作者の乙一さんも深く考えずにタイトル付けたら各方面からツッコまれて、配慮が足りなかったとあとがきで詫びていますが、この本では“ゴス”は“暗黒よりなもの”というざっくばらんな意味で使われているだけで、ゴスファッションなどはまったく関係ありません。

 

元々「暗黒系」という短編を単発もののつもりで書いたところ、担当編集者さんが登場人物の高校生コンビを気に入ったので連作ものになったとのこと。こういう話を聞くと、名作誕生の裏には担当編集者さんの力量があるのだなぁと思いますね

 

執筆当時、乙一さんは23歳。衝撃の16歳で小説化デビューした乙一さんですが、

 

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出版界でのライトノベルの地位の低さを痛感されることが度々あったらしく、ライトノベルの読者に本格ミステリの面白さを知ってもらおうという想いもあって『GOTH』を書いたとのこと。それで通常は賞とは無縁だとされるライトノベル本格ミステリ大賞とっちゃったんですから凄いんですけど・・・。

 

そのため、『GOTH』は本格ミステリの要素、叙述トリックなどが随所に仕込まれている連作短編となっています。仕掛けの素晴らしさだけでなく、連作ものならではの登場人物たちの微妙な関係性なども絶妙で、私も乙一作品のなかで一番好きな作品です。

 

 

 

 

 

読む順番

2002年にGOTH リストカット事件(「暗黒系」、「リストカット事件」、「犬」、「記憶」、「土」、「声」収録)というタイトルで単行本が刊行され、

 

 

 

後の文庫化の際に『GOTH 夜の章』(「暗黒系」、「犬」、「記憶」収録)『GOTH 僕の章』(「リストカット事件」、「土」、「声」収録)と二冊に分けて刊行されました。

 

 

 

 

リストカット事件」の位置が変えられている訳ですが、ここで注意すべきなのは必ず『夜の章』を読んだ後に『僕の章』を読むこと。順番を間違えると台無しになってしまう仕掛けがあるので、くれぐれも注意です。

※同様に、絶対に原作小説よりも先に映画と漫画版を見ないで下さい!原作の驚きと感動が台無しになります。

 

十年以上前に私が買ったのは文庫版でしたが、全編合わせて300ページちょっとしかないのに何故わざわざ分冊にしたのか謎。しかも単行本と文庫版では収録順も異なっていて、本に番号も振られていないため、読者を混乱させる。

 

さらに、2008年に公開された映画との連動企画で書かれた番外編の存在もあって、こちらは最初写真集こみの単行本『GOTHモリノヨル』というタイトルで刊行された後に、

 

 

小説部分のみを抜粋したうっすい文庫本がシリーズの三冊目として刊行されるなど、

 

 

なんだか何重にもややこしいことに・・・。

 

しかしながら、このややこしさを解消させる【3冊合本版】が2016年に刊行されたようですので、

 

 

今回は【3冊合本版】に収録されている順番で各話簡単にご紹介。(※この合本版には『GOTHモリノヨル』の写真は収録されていません)

 

 

各話・あらすじ

 

「暗黒系 Goth」

森野夜は一冊の手帳を拾う。その手帳には攫った女性を殺害し、山奥で切り刻む過程が書かれていた。最近騒がれている連続猟奇殺人犯の手帳なのではないかと考えた森野夜は、手帳に記されているまだ発見されていない被害者の死体を探しに行こうと「僕」を誘う。

 

リストカット事件 Wrist cut」

「僕」がまだ森野と一度も言葉を交わしたことのなかった高校二年の五月末のこと。森野はセクハラまがいのことをしようとした教師を撃退し、学内でちょっとした有名人になった。実は、この出来事には春先から続いていた連続手首切断事件が関係していた。「僕」は今でも、森野の白い手首を見る度にひそかにその事件を思い出す・・・。

 

「犬 Dog」

町で飼い犬の連続誘拐事件が発生。事件に興味を持った「僕」は、一人調査を開始する。

 

「記憶 Twins」

不眠症になった森野は、安眠のための紐を買うのに付き合ってくれと「僕」を誘う。森野は度々不眠症になることがあり、その度に首に紐を巻き付け、死体になった自分を想像して目を閉じると眠れるのだという。買いに行った先で、森野は「僕」にずっと以前に首吊り自殺で死んだ双子の妹・夕のことを打ち明ける。

 

「土 Grave」

人を生きたまま箱に閉じこめ、地面に埋めたいという考えに取り憑かれた男・佐伯は、近所の親しかった男児・コウスケを生き埋めにし、殺害した。三年が経ち、また同様の行為をしたくなった佐伯は道で見かけた少女を拉致し、箱の中に入れて庭に埋める。少女が持っていた学生証には森野夜と書かれていた。

 

「声 Voice」

郊外にある病院の廃墟で北沢博子という女性が惨殺される猟奇事件が発生した。事件から七週間後、被害者・北沢博子の妹である夏海は、学生服を着た少年からテープを渡される。そのテープには殺される直前の姉が夏海へ残したメッセージが録音されていた。テープの続きがどうしても聞きたい夏海は、警察に通報すべきだと思いつつも事件の犯人だと名乗る少年の指示に従う・・・。

 

番外編 森野は記念写真を撮りに行くの巻

死体の撮影をするため、女性の殺害を繰り返していた「私」は、七年前に最初の殺人を犯した山に再び訪れる。事件によって有名な心霊スポットとなったかつての犯行現場には、制服姿の少女の先客がいた。森野夜と名乗ったその少女は、犯行現場で記念写真を撮るためにここを訪れたのだという。「私」は森野を殺害し、被写体にしようと考えるが・・・。

 

 

以上、番外編も入れると全部で7編。

 

 

個人的には、やはり単行本の表題にもなっているリストカット事件」が一番好き。最初にある一文を読んだ時の、ゾッとすると同時にインモラルな恋愛を感じさせられたのがいまだに忘れられない読書体験として残っているし、この感覚は『GOTH』という物語集全体を表しているものだと思う。

「土」で「僕」が犯人を追い詰めていく過程も好きだし、「声」はこの連作短編の最後に相応しい仕掛けの物語ですね。

話を順に読み進めていくと、「僕」の狂気がドンドンと増していくように読める。なので、最終話の「声」で、「コイツ・・・とうとうやっちまったのか」と読者に思わせるのですが・・・あらためて考えてみると、狂気が増しているなんてことはなくて、最初っからフルにヤバイヤツなんじゃないのかって気がする。

 

短いですが、シリーズファン的に番外編は絶対に外せない代物で、「読むっきゃない!」な内容。メイン二人の関係性もそうですが、ちょっとした小ネタも効いていてファン心がくすぐられます。

 

 

 

 

 

以下、若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪物と少女

読んでいると雰囲気に飲まれてさほど気にならない(と、私は思っている)のですが、この連作短編集は設定にだいぶ無理がある。

一つの町にシリアルキラーがこんなに何人もいてたまるかって感じだし、悪趣味で自ら首を突っ込んでいくアホ二人ではあるものの、森野はあんまりにも殺人犯の引きが良すぎるし、都合良く事件に巻き込まれすぎ。

 

文庫版『GOTH 夜の章』のあとがきで、作者の乙一さんはダークファンタジーを目指していたと書かれています。

 

(略)『GOTH』に登場する犯人たちは、人間ではなく妖怪だと考えて下さい。それと対決する主人公の少年も、敵と同等の力を持った妖怪です。もう一人の主人公の少女は、強い霊感があるせいで妖怪が近寄ってくるという特異体質の女の子です。異世界を彷彿とさせる設定やアイテムや用語を使用していないので、現実を舞台にした小説だと思われがちですが、作者の心の中ではおとぎ話のようなものでした。

 

(略)怪物と怪物の頂上決戦。妖怪大激突。そして恋愛要素あり。といった脳天気な小説が『GOTH』です。

 

大石ケンジさんによる漫画版で原作者としてよせたあとがきでは、森野は“毎回、なぜかクッパにさらわれるピーチ姫”との暴露もされています。この当時は、乙一さんユーモア溢れるあとがき書いてくれていたんですよねぇ・・・。

 

 

主人公の「僕」はこの本の探偵役ですが、推理力だけで真相を解き明かしているのではない。犯人側、怪物・妖怪側への同調・共感があるからこそ思考の先読みが出来る訳で。毎度見事にどの犯人よりも上手を行っているということは、作中一番の危険人物で、怪物で、ラスボスは「僕」なんですね。

 

似通った趣味ではあるものの、森野は生い立ちもあって“ぶっている”、思春期特有の“装い”の延長に過ぎないが、「僕」はモノホンといいますか、別次元の非人間なんです。

 

そんな「僕」が、森野のことをひそかに他の殺人者たちから守り続けているのは一見すると謎です。およそ人間らしい感情を「僕」は持っていませんからね。森野の前ではお調子者の演技をしなくていいし、貴重な存在だからってだけとは思えない。

 

「声」の終盤、「僕」は北沢夏海に「森野さんに愛情を抱いているから?」と問われて、

 

愛情ではありません。これは執着というのですよ、先輩・・・・・・。

 

と、心の中でつぶやいていますが、愛情ってのは、結局のところ相手に執着している状態に他ならない。

だから、「僕」は否定しているけれども、実は普通に好き・・・というか、怪物なりに愛情を抱いているということなのだろうと思う。

最初のお話である「暗黒系」から考えると、最終話の「声」番外編では明らかに森野への執着心が増していますし、守ろうという意識も強くなっていますからね。

でももし他の殺人犯に森野を殺されてもどうこうしてやろうって気はないってところが「う~ん」なんですけども。

 

森野も「僕」のこと好きなんだけど、相容れない存在であることに気づいていて苦しんでいるといったところ。

 

普通の人間の少女が、怪物に恋をしてしまった。怪物と少女の恋。まさにファンタジーですね。

 

やるせなくって厄介で面倒くさい二人の関係性であります。ミステリの仕掛け以上に、そこが凄く魅力的な作品。

暗黒系青春ミステリ小説。まだ読んでいない方は是非。

 

 

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

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『残穢』実話!?厄介なホラー あらすじ・解説 夏のオススメ本~⑦

こんばんは、紫栞です。

久しぶりに、今回は夏のオススメ本で小野不由美さんの残穢』(ざんえ)をご紹介。

残穢(ざんえ) (新潮文庫)

 

あらすじ

二〇〇一年末、作家を生業とする「私」の元に届いた一通の手紙。それがすべての端緒だった。

ホラー小説のシリーズを持っていた「私」は、かつてあとがきで読者に実体験の怖い話を募集しており、およそ二十年が経ったいまでも時折、読者からの実話怪談の手紙が来る。この手紙もそんな読者からのものだった。

 

手紙の主は三十代の女性・久保さん(仮名)。編集プロダクションでライターとして勤務している彼女は、首都近郊にある賃貸マンションに引っ越したばかりなのだが、その部屋では何かが畳の表面を擦るような音がし、得体の知れない気配がするという。

「私」は過去にこの話と似た怪談話が違う読者から寄せられていたことに気が付き、手紙の住所を確認してみると、久保さんからの手紙とまったく同じ所番地が書かれていた。それぞれ、同じマンションの別の部屋で起こった怪異だったのだ。

久保さんと連絡を取り合い、マンション住人に聞いてもらったところ、このマンションでは何故か人が居着かない部屋があるのだという。

個々の部屋の問題ではなく、マンション全体、土地自体に関係する“何か”なのではないかと久保さんと二人で土地の歴史を調べてみると、次々と因縁が浮かび上がっては怪異と結びついていった。

果たして、これは〈穢れ〉の感染なのか?

調べを進めるうち、「私」も久保さんもこの土地の〈穢れ〉の渦に巻き込まれていき――・・・。

 

 

 

 

 

 

実話(風)怪談

残穢』は2012年に刊行された長編ホラー小説で、山田周五郎賞受賞作

ホラー小説で検索すると必ず表示されるような有名作で、映画化もされています。夏なので、有名ホラー読みたいぞ!と、なってこの度読んでみました。

 

小説作品ですが、ドキュメンタリー風味に書かれている作品で、作中の「私」が長期にわたって手紙をくれた読者と共に怪異、土地の因縁を、時代を遡って調べていく過程がルポルタージュ的に描かれています。

「私」は作中では氏名が明かされていないのですが、作家としての経歴、大学時代の逸話、同じく作家である夫の存在など、作者の小野不由美さん自身が「私」なんだと連想出来るようになっていて、本の冒頭で触れられている“ホラー小説のシリーズ”とは1989年から始まった【悪霊シリーズ】全7巻のこと。今は改題されてゴーストハントシリーズ】として新訂版で出されているのですが、

 

 

 

改題前の【悪霊シリーズ】だった頃の本のあとがきで読者の怪談話を募集していたのだそうです。

 

その他、平山夢明さんや福澤徹三さんなど、実在の作家がそのままの名前で登場しています。平山さんは京極夏彦さんの『虚実妖怪百物語』でも登場人物として描かれていたのですが、

 

京極作品の方ではもっと癖のある砕けた人物として描かれていたため、この作品の平山さんはだいぶおとなしいというか、凄く真人間っぽくてギャップを感じる。小野さんの前ではこういった振る舞いだということなのでしょうか。

 

また、この本と同時期に読者から寄せられた怪談体験を元に書かれた挙編怪談をまとめた本『鬼談百景』が刊行されています。

 

 

残穢』の文庫版に収録されている中島晶也さんの解説によると、

 

『鬼談百景』に収められている怪談の数は、書名に反して全九十九話。『残穢』はもちろんそれ一冊でも独立して読める小説ではあるが、『鬼談百景』の作者自身の体験を綴った長編版にして、「現実に怪を呼ぶ」と百物語では禁忌とされる百話目としても読めるように書かれている。

 

とのこと。

版元は違うものの、“対をなす姉妹編”となっているのですね。

面白い仕掛けだとは思いますが、正直、まとめて読みたいとは個人的に思えないですね。怖いんで。百話目として完成させたくないですもん。

 

ドキュメンタリーを装いつつの小説作品とはいうものの、この作品は全部が創作だとは信じがたいものとなっています。

土地の因縁がどんどんと繋がっていくのはミステリ的で、怪奇現象にしては“ハマりすぎてる”と思えて「なるほど創作か」なのですが、細かな部分、ちょっとした不気味さや判別不能な些細な事柄があまりにもリアリティがある。モデルにしているものがないとこんな文章は到底書けないだろうと。

だから、何割かは実話だと思うのですよ・・・。作者の小野不由美さんはどこまでが創作かを明かしていないので確かめようもないのですが・・・このわからなさ具合がもう怖いですね。

 

ルポ風の淡々とした文章で、幽霊や化け物に襲われる鬼気迫るようなハラハラドキドキホラーではないため、「怖すぎる」という前評判を聞いて読んでみた私は最初「なんだ、怖くないじゃん」となったのですが、後からジワジワと怖い。よくよく考えるとかなり怖い。厄介なホラー小説となっています。

 

 

 

 

 

映画

2016年に『残穢-住んではいけない部屋-』というタイトルで実写映画化されています。主演は竹内結子さん。

読むのは比較的平気だが、ホラーを映像で観るのはビビって躊躇するタイプの私ですが、アマゾンプライムの見放題にこの作品が入っていたので怖いけれども観ました。

 

 

この映画、検索すると「ディレクター失踪」だの「具合悪い」だの「呪われる」だのと、物騒なワードがわんさか出て来るのですが・・・ま、こういった噂があったほうがホラー映画は箔がつくものなのか。怖いので深追いはしませんけども。

 

作家の名前をそのまま出す訳にはいかないのか、登場人物名が微妙に変更されているのが何やらおかしい。小野不由美さんの夫である綾辻行人さんにあたる役である直人(滝藤賢一)や、平山夢明さんにあたる役の平岡芳明(佐々木蔵之介)がちゃんと御本人っぽい服装しているのもフフッってなりますね。

久保さん(橋本愛)と福澤徹三さんにあたる役の三澤徹夫(坂口健太郎)は原作の年齢よりも若く設定されています。

 

過去の因縁話や、イタズラ電話の「今何時ですか」など、映像や音声がつくとやはりより怖くなる。ラストのビデオに映り込んでいる赤ん坊や、奥山家の絵などはビビって直視出来なかった(^_^;)。結構素敵な絵っぽかったので、怖さでちゃんと見られなかったのは残念。自分の度胸のせいですけど。

 

途中まではほぼ原作通りの展開なのですが、最後が変えられていましたね。

原作は劇的な出来事が起きないままなところがリアリティがあって怖く、そこが他のホラー作品とは違う点で持ち味となっているのですが、映画はラストにホラーシーンが追加されていて、それが蛇足だったなと。あれで普通のホラー作品と同じになってしまったというか、せっかくのドキュメンタリー感が薄れてしまった印象。

 

しかし、やっぱりよくあるドッキリ驚かす系のホラーとは違うので、ホラー映画が苦手な人でも観やすい作品になっているかと思います。ま、観た後に後悔はするかもしれませんが。

 

 

 

 

 

 

残留する穢れ

「穢れ」とは、死・疫病など、忌まわしく、不浄で、共同体に異常をもたらすもの、避けるべきだと信じられている観念のこと。

 

この小説は、怨みを伴う死が「穢れ」となって新たな死を引き起こし、その死がまた「穢れ」となって感染していくという、途方もない「穢れ」の感染拡大の、元は何なのかと時代を遡って追っていくドキュメンタリー・ホラー(風味)。

 

前に『呪術廻戦』のアニメを観ていたら当然の用語のように「残穢」と登場人物が語っているシーンがあったのですが、残穢』と書いて“ざんえ”と読ませるのは小野不由美さんによる造語で、仏教用語などのように普遍的に使われているものではありません。

ザックリとした解釈ではありますが、“残り続ける穢れ”という意味で『残穢』なのだと思います。

 

忌まわしい土地の記憶など時代を遡ればどの場所でもあるはずで、人が死んでいない場所など何処にもないはず。「十年前にここで死んだ・・・」と言われれば怖いですが、「江戸時代に・・・」などと言われると、「え?そんなに昔」となって恐怖も薄れるものです。

が、この本ではその恐怖の薄れを許してくれない。むしろどんどんと「穢れ」が上塗りされていって、より恐ろしく、強い「穢れ」としてひたすら残留していく、時代を遡ることで恐怖が増していく厄介な代物となっています。

とんでもないパワーを持った幽霊やら怪物が襲ってくるというものではなく、古くから根ざし続けているもののため、一過性の恐怖で治まってくれないのですね。読者の今後の日常に支障を来す恐怖感なのです。

 

極めつけが、“聞いても伝えても祟る”などと、読者をどん底にたたき落とすような恐ろしいことを言い出してくる。読ませといて。

山本周五郎賞の選考委員の一人、唯川恵さんも「実は今、この本を手元に置いておくことすら怖い。どうしたらいいものか悩んでいる」と、仰っている通り、もはやこの本自体が「穢れ」に“なってしまう”のですね。

 

 

そんな訳で、いつもとは一味違ったホラー小説を読みたい人にはオススメの一冊です。この小説を読んで一番恐怖することが出来るのは引っ越しを控えている人ですね。読めば引っ越しが怖くなること間違いなしですから。

 

この夏、是非読んでみてはどうでしょうか。

 

 

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

 

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『扉は閉ざされたまま』犯人・伏見と碓氷優佳の頭脳戦!倒叙モノの有名作 あらすじ・感想

こんばんは、紫栞です。

今回は石持浅海さんの『扉は閉ざされたまま』をご紹介。

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

 

あらすじ

大学時代、軽音学部内で酒好きのたちが集まっていたサークルでも特に仲の良い集団だった別名『アル中分科会』。この度、メンバーの一人の発案により、ペンションで卒業後初めての同窓会をすることになった。

伏見亮輔はこの機会を利用し、後輩の新山を殺害する計画を立て、実行に移す。

客室で殺害し、事故を装う偽装をして扉を閉ざし、密室殺人を完成させた。

 

室内で新山が死んでいる事を知らない同窓会メンバーたちは、最初のうちは移動でつかれて熟睡してしまっているだけだろうと放っていたが、いつまで経っても部屋から出て来ず、呼び掛けにも応じない様子に不審を抱き始める。

 

伏見の狙いは朝になるまで密室の扉を開けさせないこと。

閉ざされた扉の前で途方に暮れるメンバーたちを巧みに誘導する伏見だったが、『アル中分科会』メンバーの姉と共に同窓会に参加していた碓氷優佳は、わずかな情報から事件性を感じ取り、扉を開けることを強く主張して――。

 

 

 

 

 

 

倒叙モノ

『扉は閉ざされたまま』は2005年に刊行された石持浅海さんの長編小説で【碓氷優佳シリーズ】の第一作目。

上記したあらすじからも解ると思いますが、ミステリではあるものの、最初から犯人が分かっている状態から始まる『刑事コロンボ』『古畑任三郎』形式の、“倒叙ミステリ”ものとなっています。

 

この『扉は閉ざされたまま』は倒叙モノではかなり有名な作品でして、ミステリランキングやオススメサイトにも良く載っていたので他の本と一緒に数年前に購入したのですが、読まないまま数年間ほったらかしていました。この度やっと読んでみた次第です。

 

私が読んだのは文庫版で、この文庫版には「終章」の後に「前夜」が収録されているのですが、この「前夜」は文庫版刊行の際に加筆されたものらしいです。先に刊行されていた単行本には収録されていないので、要注意ですね。今買うならやはり文庫でしょう。

 

 

2008年には碓氷優佳役を黒木メイサさん、伏見亮輔役を中村俊介さんでWOWOWの「ドラマW」で単発ドラマ化されています。

 

 

この時、二夜連続でこの本の続編である『君の望む死に方』

 

 

 

 

 

の単発ドラマも放送されているのですが、こちらでは碓氷優佳役を松下奈緒さんが演じていてキャストが違います。二夜連続放送なのに何でキャスト変えたんですかね?謎・・・。

 

 

 

 

 

二人の頭脳戦

この小説、もの凄いトリックやら驚きは特にないんですよね。密室の仕掛けも、被害者をどのように誘導したのかも最初の段階ですべて明かしてしまっています。

じゃあ読みどころは何処なのかというと、伏見と優佳の頭脳戦。物語の語り手は一貫して伏見ですが、犯人の伏見の視点で恐ろしいほど頭が切れる美女・碓氷優佳が事件に迫る様子がスリリングに描かれる、犯人と探偵役、二人の頭脳戦に重点が置かれた作品。これぞ“倒叙モノ”といったシンプルなド直球の作品になっています。

 

犯行内容が読者にすべて明かされた状態からスタートしていますが、「動機」「伏見が扉を閉ざしたままにしておきたい理由」が分からないままお話が展開されていく。読者はこの二つの謎を追うべく読み進めていくと。ホワイダニットで読者を引っ張っていく訳で、これもまた倒叙モノのド直球ですね。

 

面白いのは、死体が確認されない、事件発生の有無も分からないままに推理小説としてロジックが展開されていくところ。タイトルの通りに“扉は閉ざされたまま”で物語は進み、犯人と探偵役の攻防に決着がつき、最後に密室が開けられたところで終わるという構成になっています。

 

碓氷優佳は完全に推測だけで事件の発生を確信し、殺人であることとその犯人を断定する。

事件そのものが確認されていない状態なのにすべてを完結させるとは、碓氷優佳は恐ろしい女性ですね。

探偵役であるものの、碓氷優佳はある意味冷たい、通常の倫理観から少し外れた人物として描かれていまして、この設定がラストで効いてきています。

 

 

 

 

動機

最後に明かされる“動機”ですが、これがちょっと釈然としないというか・・・もう少し粘って説得して欲しい!

見切りを付けるのが早すぎるというか。だって、絶対あの被害者そこまで“アレ”に対して頑なな信念なんて持っていなかったろうと思う。“遊び”をやめさせることは出来なくとも、“アレ”を捨てさせることは出来たはずですよ。と、いうか、“遊び”に関しても然るべき手段を使えば社会的に貶めることが十分出来たのではって気が・・・。

殺すくせに被害者に妙な情けをかけている(つもりでいる)のも何だか気に食わない。じゃあ何で殺す決断するんだよ。

 

文庫版の加筆部分である「前夜」は伏見の動機について補強するものなのでしょうが、これを読んでも伏見に共感は出来ないですね。勝手な正義感で突っ走っている人物だなーと。被害者ももちろん最低ではあるのですけどね。

 

 

 

 

“その後”が気になる

この物語の終わり方ですが、個人的には好きな終わり方ではない・・・ですけども、非常に続きが気になる終わり方になっています。単発作品だっていうならそれで納得するのですが、続編があるよってなると、その後どうなったのか知りたい・・・。碓氷優佳は一風変わったタイプの探偵役ですので、後に続くシリーズ作品も型にはまらない独特なものになっているのではと思います。

 

何はともあれ、倒叙モノの魅力がたっぷり詰まった作品ですので、気になった方は是非。

 

 

 

ではではまた~