こんばんは、紫栞です。
今回は、映画『Dinerダイナー』を観たので感想を少し。
平山夢明さんの小説『ダイナー』の実写映画化作品ですね。原作小説については前にこのブログで記事を書いたんですけど↓
映画化で興味を持って読んでみたら、す~ごく面白くって感銘を受けまして、大好きな小説となりました。
しかしながら、読むきっかけとなった映画に関しては、公開と同時に酷評の嵐でレビューもさんざんだったので、観るのを躊躇していたんですよね。原作が気に入りすぎたので余計に・・・。アマゾンプライムで見放題対象になっていたので、やっとこさ観てみました。
観てみての率直な感想としては、まぁ、評価が低いのも頷けるというか、原作ファンは到底納得しないだろうし、原作をまったく知らない人も「なんじゃコリャ」と思うような映画になっているな~と。
しかし、全部ひっくるめてこの奇抜さがとにかく好きだという人もいるだろうとも思う。とにかく、好き嫌いがハッキリ分かれる作品ですね。
以下ネタバレ~
原作も世界観は独特なのですが、この映画は原作とはまた別の方向に独特です。
ティム・バートンの『チャーリーとチョコレート工場』や『不思議の国のアリス』みたいなのをやりたいのか、いつもの蜷川実花監督の極彩色に玩具箱みたいなゴテゴテ感と気味の悪さが追加されている。観ていて、「あ~ティム・バートンやりたいんだな~」て。
それでも“らしさ”は出したいのか、花まみれなのは相変わらずですけど。
ダイナーというのは元々、北アメリカ特有の簡易食堂のことなのですが、店内にアメリカらしさがまるでない。これはやはり、むやみに花を飾っているせいだと思うのですが・・・ダイナーに花、いらないよ(^_^;)。
店内がこんななので、いきなりハンバーガーを出されると割と戸惑う。そして、肝心のハンバーガーが美味しそうに見えない。
画の色合いに全力投球なせいか、ハンバーガーまで毒キノコみたいな派手派手しい極彩色なんですよね。映えはする(のかどうかも微妙ですが)、しかし食べたくはない。食べると死にそうなんですもん。
「目が疲れてしょうがない」「下品にしか見えない」など嫌悪感を抱く人もいるでしょうが、ティム・バートンを感じつつも作り込まれた美術と他映画にないカラフルな画は見物で、この作品の特色なのですが、ハンバーガーは物語の要なので“美味しそうに見える”ことに重点を置いて欲しかったですね。
画はともかくとして、いただけないのはやはり脚本。
原作小説との違いについては、合っているところを言う方が簡単なくらいに違うところだらけなのですが、オリジナル要素満載でやるにしてももうちょっとやりようがあっただろう・・・というか、まとまりがなさすぎる。
映画は原作小説よりもボンベロ(藤原竜也)とカナコ(玉城ティナ)とのラブストーリーがどうやら主軸の物語となっています。
原作ファンからするとボンベロとカナコの間にある愛情はこんな普通の恋愛的なやり取りじゃないだろうとか言いたくなるところですが(ラブはラブなんですけどね)、ま、映画は別物なんだってことで良いという事にしても、ラブストーリーの進め方が強引過ぎる。
原作小説ではボンベロの相棒である犬の菊千代をカナコが助けたことがきっかけで二人の関係性が変化するのですが、映画だとそこのシーンが曖昧なので、いきなりボンベロがカナコのこと名前で呼ぶようになって、優しくなって、命がけで庇ってくれて・・・と、急にどうした!?状態。カナコもボンベロにいつ惚れたんだお前状態で、終盤でこれまたいきなりキスシーンがあって困惑する。
急すぎて二人の心情の変化についていけないのですよね。ラブストーリーやりたいならもっとそうなる段階を丁寧に描いて欲しいところ。
個性豊かでグロテスクな殺し屋が次々に登場するのが『ダイナー』という作品の特徴ですが、確かにアクが強い殺し屋たちが豪華キャストでたくさん登場するものの、みんなさほど見せ場もないままあっという間に退場してしまう。
一応原作のスキン(窪田正孝)とキッド(本郷奏多)のエピソードが前半の主になっているのでこの二人は他の殺し屋たちより出番が多いですが、それでも“多少”って感じで、「あら、もう退場か~」となる。役者による再現も良く、二人が辿る展開は原作に沿っているものの、なにやら物足りなさが。
それというのも、過去の生い立ちなどの説明が全部省かれているので観ていても「いきなり豹変して、よく分からないけどヤバイ人だな」で終わってしまうんですよね。
スキンは母親が作ってくれたスフレが~と言って写真チラ見せするだけだし(ちなみに、スキンの母親は木村佳乃さん。写真のみの出演)、キッドはヤバイ整形繰り返していてもう長くないと説明されるだけだし。ま、原作のキッドの生い立ちなどはエグすぎて出せないのかも知れませんが・・・。
『ダイナー』は原作も漫画版も設定・描写もろもろグロテスクなのですが、この映画はそういった描写がないので苦手な人でも大丈夫です。人はバンバン死にますけど、殺戮シーンは花が散ることで表現されています。なぜか。
キッドが菊千代に頭をかぶりつかれる場面は忠実にやっていましたけど。銀魂思い出して少し笑いそうになってしまった(^_^;)。その後頭から血をダラダラ流したままボンベロに言われて退店していましたけど、あれはあの後死んだということで良いのだろうか。
キッドの合成ですが、やっぱり不自然なので個人的には無理に合成はしなくても良かったのではないかと思いますね。
巨大犬の菊千代は良く出来ていました。でも、原作よりも存在が蔑ろにされていて、その点はファンとしては残念です。(原作ファンの観点から感想を述べるなら、他も残念なところだらけなんですけど・・・)
スキンとキッドが退場した後は本当によく分からないドタバタ殺戮劇となる。
組織の内部抗争なのですが、小栗旬・土屋アンナ・奥田瑛二も即退場です。特に、小栗旬さんの即退場っぷりはビックリする。真矢ミキさんだけ少し長く観られるかな。
他、メイクが濃くって分かりにくいですが、斎藤工・佐藤江梨子・武田真治・金子ノブアキ、秒というか、ほぼワンカットでのみで品川徹・川栄李奈・板野友美が出演。
今は亡き組織のボス・デルモニコの姿として蜷川幸雄さんを描いた絵画が出て来るなど、キャストの無駄遣いと言ってしまえばそれまでですが、無闇矢鱈に豪勢です。「どこに誰がいるか探してみてね!」といった、贅沢な遊びを提供して下さっていますので、映画を観る際はそのように楽しんでみて下さい。
最後はどう?
さて、どうやらラブストーリーであるらしい映画『Diner』。ラストシーンは生死不明だったボンベロが、メキシコで店を開いて待っていたカナコの元に菊千代と共に現われて抱擁するところで終わっています。
どう考えてもボンベロの生存は不可能だろう状況からのハッピーエンドなので無理があると思われるところですが、実はこれ、メキシコの「死者の日」だから、死者のボンベロがカナコに会いに来たということなのではという説が。
ボンベロは黒ずくめの服装だし、わざわざメキシコなのもこのためかとしっくりくるので、それが正解なんだろうなと私も思いますが・・・・・・しかし、個人的には気づかないふりでハッピーエンドだということにしておいた方が良いのではないかと。その方が娯楽としてスッキリする。
原作小説はカナコが見せ開いていつかボンベロが来てくれるのを待っているところで終わっていて、戦闘の最終的な状況もあやふやにされているので、原作は映画よりもボンベロの生存の可能性が高いのですよ。
続編として『ダイナーⅡ』も小説連載していましたし(2019年6月を最後に更新ストップしていますけど・・・)。
なので、ファンが望むハッピーなラストを見せてもらったと思っておきましょうよ、と。
そんな訳で、評価の低さやひどいと言われるのは十分に理解出来るけれども、徹底的に嫌いにもなりきれない映画というのが私個人の感想ですね。
河合孝典さんによる漫画版『DINER ダイナー』も原作とはストーリーも変えられて独自の作品となっていますし、
この映画も別物として(滅茶苦茶だけど)楽しめば良いんじゃないかと思います。
数名、メイクが濃くって誰だか分からない方もいますが、主演二人をはじめとして役者がいつもとはまた違う印象で綺麗に撮られていて、毒々しい画面には見応えもありますので、この世界観がちょっとでも気になった方は是非。
映画が気に入った人も気に入らなかった人も、原作は別次元で素晴らしい最凶エンタメですので、映画で納得せずに是非読んで下さい!お願いします!
ではではまた~