こんばんは、紫栞です。
今回は東野圭吾さんの『マスカレード・ナイト』を読んだので感想を少し。
あらすじ
警視庁からの委託を受けた民間団体が設置している「匿名通報ダイヤル」からの情報提供によって、練馬のワンルームマンションで独り暮らしの若い女性の他殺死体が発見される。被害者女性は妊娠しており、被害者宅に出入りする男性の姿が複数の人物に目撃されていた。警察は被害者の周辺を徹底的に捜査するも、いまだにその男性の身元を特定することは出来ずにいた。
そんな中、警視庁に密告状が届く。密告状の文面は次のようなものだった。
『警視庁の皆様
情報提供させていただきます。
ネオルーム練馬で起きた殺人事件の犯人が、以下の日時に、以下の場所に現われます。逮捕してください。
12月31日 午後11時
ホテル・コルテシア東京 カウントダウン・パーティ会場
密告者より』
密告状の内容を受けて「ホテル・コルテシア東京」に潜入捜査をすることを決定した警察。以前に同ホテルにフロントクラークとして潜入経験のある新田浩介はその経験を買われて再度潜入捜査官に任命される。
潜入捜査官にあたり、フロントクラークからコンシェルジュとなった山岸尚美にも再度捜査への協力が求められた。
奇しくも再びホテルでの事件捜査に関わることになった新田と山岸。二人はホテルに訪れる様々な仮面を被った客の中から殺人犯を見つけ出すことが出来るのか――。
シリーズ3作目
この『マスカレード・ナイト』は『マスカレード・ホテル』
から続く【マスカレードシリーズ】の第3作目。
2作目の『マスカレード・イブ』
は1作目の『マスカレード・ホテル』の前日譚にあたるお話が収録された短編集なので、『マスカレード・ホテル』の続編という点ではこちらの『マスカレード・ナイト』が正式な長編2作目となります。
お話は『マスカレード・ホテル』での事件から数年後。新田は相変わらず警視庁の刑事で、尚美はホテルの受付業務であるフロントクラークの仕事からお客様の様々な要望を聞く係であるコンシェルジュになっています。
コンシェルジュ業務ということで、宿泊客の要望は前作よりかなり突っ込んだものになっています。読んでいるとですね、ホント大変な仕事だなぁと思うのは勿論なんですが、こんな個人の込み入ったこと、ただ宿泊しているってだけでホテルの人間に頼むかな・・・高給取りはそうなのか・・・?とか疑問。尚美は「ホテルマンに『無理です』は禁句」という信念のもと、無理難題にも果敢に健闘しますが、果たしてここまでする必要があるのか・・・と。まぁ、これらの無理難題にも実は訳があるというのが終盤には明らかになるんですけどね。
公式の作品紹介のページなどを見ると“あのホテルウーマンと刑事のコンビ再び”とか書いてありますが、新田は前回の経験からまたフロントクラークへの潜入捜査で、氏原という新たな男性のホテルマンが指導係につき、尚美は尚美でコンシェルジュですので、さほど二人で話す場面も無く、コンビでどうこうといった印象は前作よりだいぶ薄れています。
進展は・・・?
警察関係者やホテルの上層部などの人間関係は前作からほとんど同様。能勢さんが所轄から捜査一課に栄転しています。今回も情報を掴むたびにホテルにいる新田にビールの差し入れ持って報告しに来てくれます。個人的に能勢さんが好きなので栄転していて嬉しかったです(^^)新田の能勢さんへの信頼度もだいぶ上がっていますね。
今作で登場するフロントクラークの氏原さんですが、最初は頭でっかちのいけ好かない人物といった感じですが、この人はこの人でプロフェッショナルなのだなというのが段々とわかってきて最終的には好感がもてる人物となっています。
前作『マスカレード・ホテル』を読んだ人なら、新田と尚美の仲は恋愛として発展しているのかというのがまずは気になるところだと思うのですが、これがなにも起こっていない(^^;)前作の最後で二人で食事していたのにねぇ・・・。どうもあれっきりで特に連絡も取り合ったりしていなかったようです。だから今作で二人は数年ぶりの再会。何だか肩透かしな感じ・・・。
以下がっつりとネタバレ~
感想
今作は登場する宿泊客の大半がお話の主軸の事件に関わっているので無駄が少なく纏まっており、華やかな仮装パーティ会場がクライマックスの舞台になっているところはシリーズのテーマである“仮面”とマッチしていて良いです。
しかし、お話の盛り上がりに欠けるというか、前作よりもエンタメ的楽しみが少なくなっている印象を受けました。尚美が殺されそうになるのも「またか・・・」と思ってしまいましたし(^_^;)ドキドキする間もなく比較的すぐに助かるのも若干拍子抜け。腕時計の伏線は「あ~」と感心しましたが。
メインのトリックは宿泊客の仲根緑が実は女装した男性だったというものですが・・・これは前作のトリックを踏襲しているものですが、前作よりわかったときの驚きが・・・「はぁ、男性だったの。それで?」てな感じで一気に謎が解明される爽快感がないんですよね。(頭の良い人は違うんでしょうけど^^;)
犯人達の行動も何だか不自然で無理矢理感が否めません。女性二人の方ですが、取引にこんなに大々的に警察を巻き込もうとするのは、ただ脅して金を巻き上げるのが目的なだけなのにリスクが高すぎて普通はしないでしょうし、仲根緑(森沢光留)はいくらなんでも偽装のストーリーを作る過ぎというか、悪ふざけが過ぎると思います。接触している時間が長ければ長いほど女装がばれるリスクも高まるのに・・・。「年末にシティホテルに何泊もする女など不自然で怪しまれるだろうから」とのことですが、仕事などを装えば大丈夫なのでは?今のご時世、皆が皆年末休んでいるって訳でもないのだし。
日下部が実はホテル側の人間で尚美をテストしていたというのも最後に明かされますが、従業員のテストに一般の宿泊客である仲根緑を巻き込むのも不自然ですよね?ホテルの人間ならばお客に無駄な時間を過ごさせることは職業倫理に反するのでは。本気で仲根緑がタイプで「あわよくば・・・」と考えていたとしか思えない(笑)
450ページほどあり、通常のボリュームは十分あるお話なのに、終盤が急ぎ足になっていると感じてしまう点も少し残念ですね。犯人達にはそれぞれ結構な込み入った事情があるぶん、丁寧な描写がないと薄っぺらく感じてしまうと思います。
今後
尚美がロサンゼルスに勤務することが決まったところでお話が終わっていますが、今後このシリーズは書くつもりあるのでしょうか。書くとしたら今度の舞台はロサンゼルスになるんですかね~。
そして、最後にまた食事の約束している新田と尚美。進展は・・・う~ん・・・。この二人は恋愛とかそういった関係性のものではないのかも知れないですね。そういった想いの寄せ方は双方していないのが現状です。このラストの食事の約束も、食事したらその後はまた機会が無ければ連絡取り合ったりとかしなさそう。
次作でいきなり恋愛関係になっていたらビックリしますけどね~。どうなんでしょう。気になるところですが。
色々と好き勝手に感想を述べましたが、シリーズの第1作、第2作を読んだ人はやっぱり読むべき作品だと思います。映画が公開されれば文庫も発売される・・・と、思いますので(^^;)、映画で気になった方も是非是非。
※2020年、文庫発売されました↓
ではではまた~