夜ふかし閑談

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御子柴礼司シリーズ 4作品まとめて紹介!あらすじ・順番・他作品との繋がりなど~

こんばんは、紫栞です。
今回は中山七里さんの【御子柴礼司シリーズ】(みこしばれいじシリーズ)4作品をまとめてご紹介。

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)

 

御子柴礼司シリーズとは
すこぶる優秀だが、被告に多額の報酬を要求する悪辣弁護士・御子柴礼司を主人公としたリーガル・サスペンスのシリーズ。
法廷での弁舌で愉しませてくれるのは勿論ですが、推理小説的な仕掛けもあり、終盤にはいつも驚きの真相が用意されているのが特徴。

このシリーズの最も大きな特徴は、主人公の御子柴礼司(旧姓・園部信一郎)が14歳の時に女児殺害事件の犯人で〈死体配達人〉と呼ばれて世間を騒がせ、少年院に入ったことがあるという異例の過去を持っている点。
少年院での経験や出来事を経て自らの罪に向き合う人生を歩むことを決意。名前を変えて弁護士となり、独自の贖罪の道を歩んでいる次第。
※御子柴の犯した罪や少年院での出来事の詳細についてはこちら↓

 

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“人殺しの経歴を持つ悪辣弁護士”という肩書きから、概要を読んで心根の腐った悪人を描くシリーズなのかと勘違いするかもですが、シリーズのテーマはあくまで「贖罪」。なので、御子柴の人間的な葛藤がいずれの作品でも主軸として描かれています。

 

 

 

 

 


順番と各作品の特徴
【御子柴礼司シリーズ】は表紙などにシリーズの番号などは書かれていないので、うっかりすると順番を間違えてしまうってな事態になってしまうこともあるかも知れません。一応それぞれ独立したお話になっているので、どこから読んでも愉しめる作りになってはいますが、個人的にはこのシリーズは順番通りに読むのが大事だと思います。作品ごとに状況も御子柴の心情も変化していくので。成長(?)を見守るというか。あと単純に、次作に前作の事の成り行きが書いてあったりするのでネタバレをくらってしまうというのもある(^^;)。

 

 

そんな訳で、順番にご紹介~

 

 


●『贖罪の奏鳴曲』(しょくざいのソナタ)

 

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)

 

 

初っ端から御子柴が死体を捨てているところが描かれるという衝撃的なシーンから始まる今作。
保険金殺人事件を巡る法廷劇と、死体遺棄事件を調べる刑事の捜査と、並行してお話が進んでいきます。途中の第三章では御子柴の少年院時代のことが章を丸々使って描かれています。
今作で登場する刑事は中山七里作品ではお馴染み、埼玉県警捜査一課の古手川・渡瀬コンビ。比較的出番が多く、重要な役割もしていますので、このコンビを目当てに読んでもファンは楽しめると思います。※作品どうしの密接な繋がりや事件全体の詳細などは、やはりこちらの記事を御参照下さい↓

 

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ラストは中山七里作品らしいどんでん返しが炸裂していますが、人工呼吸器をウンヌンの前に起こった事故を警察関係者が誰も気に留めなかったのには読んでいて違和感がありましたね。
シリーズが続いている事実から一目瞭然なのでもう書いちゃいますが、今作の最後で御子柴は刺されて生死を彷徨います。

 

 


●『追憶の夜想曲』(ついおくのノクターン)

 

追憶の夜想曲 御子柴礼司 (講談社文庫)

追憶の夜想曲 御子柴礼司 (講談社文庫)

 

 

死の淵から生還したものの、前作で死体遺棄をしていた御子柴。「弁護士はどうなる!?」って感じなんですが、これが弁護士会の大物の働きかけによって事なきを得ており、問題なく弁護士を続けています。「そんなことで良いのか」と言いたくなるけども・・・まぁ流して読みましょう(^^;)。


病院を退院してすぐに、御子柴は主婦の夫殺しの弁護を他の弁護士から奪い取って事件に取り組みます。主婦の夫殺しの真相もさることながら、御子柴が何故、金にならないこの事件の弁護に執着するのかが謎。どちらも最後には驚きの真相が明かされるので必見です。

中山七里さんの別シリーズ【岬洋介シリーズ】の岬洋介の父親・岬恭平が法廷で対決する検事として登場しています。現在没交渉である息子の話もチョロッと作中でしていますね。

夫殺しの真相は、なんとも悲惨で気持ち悪い(本当に気持ち悪い)真相なんですが、被告人の幼い娘・次女の倫子の存在が作品全体に癒やしをもたらしています。御子柴と倫子のやり取りがどこか微笑ましくて良いですね。(「この人、昔五歳の女児殺したんだよなぁ・・・」という事実が読んでいると頭をよぎりますが・・・)

 

 

 

●『恩讐の鎮魂歌』(おんしゅうのレクイエム)

 

恩讐の鎮魂曲 (講談社文庫)

恩讐の鎮魂曲 (講談社文庫)

 

 

前作で〈死体配達人〉だった過去が明るみになってしまった御子柴。依頼人が激減し、虎ノ門にあった事務所も移転。嫌がらせを受けたり非難されたりの日々の最中、今度は御子柴の少年院時代の教官だった稲見が、老人ホームで介護士を殺害した容疑で逮捕される事件が発生。恩師のため、御子柴は前作以上に強引な方法で他の弁護士から弁護をもぎ取ります。

第一作『贖罪の奏鳴曲』での御子柴の回想内で大きな存在感を放っていた稲見教官。「え?あの稲見教官が?」と、一作目を読んだ読者なら誰でも興味をそそられるあらすじですね。
稲見教官は御子柴に「贖罪」を教えた大恩人。今の御子柴があるのは稲見さんのおかげで、御子柴としては何としても自分が弁護して救わなくてはと意気込む訳です。いつもは冷静沈着な御子柴ですが、恩師の弁護とあって気負うあまりにいつもの冷静さを欠いてしまう部分もあったりと、だいぶ人間的な(?)御子柴が見られます。
勝訴のため必死になる御子柴と、潔く罪を受け入れたい稲見さんとの行き違いがやるせない。

今作は御子柴にとっては苦々しい結末となっています。突飛な弁論は面白いし、納得の出来るものなんですが、でもこの結末はしょうがないかなぁと思います。だって稲見さん頑固なんだもの。“隠された悪意”についても、この程度なら唯のお遊びの領域で、とっちめるような事でもないって思いますし。


シリーズ的には御子柴の成長譚として大きな転換期になっている作品だと感じます。
埼玉の事件ということで、渡瀬がほんの少し登場しています。

 

 


●『悪徳の輪舞曲』(あくとくのロンド)

 

悪徳の輪舞曲 (講談社文庫)

悪徳の輪舞曲 (講談社文庫)

 

 

御子柴としては思い通りの結末にならなかったものの、前作での法廷での弁論で注目され、少しずつ仕事量が増えてきた御子柴法律事務所。ある日、御子柴の妹・が30年ぶりに御子柴の前に現われ、弁護を依頼する。それは、旦那殺しの容疑で逮捕された母・郁美の弁護だった。

御子柴の家族は、十四歳で御子柴が逮捕されて1年後に父親が自殺。母と妹は夜逃げ同然に逃げ出し、行方知れずとなっていました。今作の旦那殺しの“旦那”は、母・郁美の再婚相手ですね。


前三作でも「家族のことはどうとも思っていない」と言い続けていた御子柴。早々に自殺してしまった父、一回しか面会に来なかった母に対し、思う事はなにもない。犯行前だって“家族”を実感することはなかったと妹の梓に対し、他人のように冷淡に振る舞う御子柴ですが、兄に恨みつらみを抱いている妹に罵倒されての売り言葉に買い言葉、さらに稲見元教官に諭されてで依頼を受けることに。(前作の出来事から稲見さんに定期的に会うようになっているようでなにより。このまま二度と会わないって感じかとか思ってたんで・・・)

それにしても、妹の梓や母親の郁美に投げつける御子柴の主張はあまりにも身勝手が過ぎると思いますね。

御子柴の育った家・家族は特に責められるようなことはしていないんですよ。暴力を振るっていた訳でも、育児放棄されていた訳でもなくって、普通なんですよね。犯行前の御子柴に危険行動があったなんてこともないし、これで「怪物を怪物のまま育てた家庭が悪い」「どんな目にあっても家族なんだから自業自得」と世間に言われ続けるのはあまりに理不尽。こんなことになったのはすべて御子柴のせいなのに、「その苦しみに自分は関係ない」なんて・・・え?どの口が言ってる?ってなものです。

今まで母親のことは避けるように語ってこなかったこのシリーズですが、今作を読むと、御子柴が意外と母親が面会に一度しか来なかったことや、少年院退院後もほっとかれていたことを根に持っていたのがヒシヒシと伝わってくる。あんなに家族を無視していたのはある種の強がりなんだなぁ~と。
御子柴のこの家族に対しての強がりの傲慢さは、終盤に明かされる事実によって完膚なきまでに打ちのめされる結果に。


稲見さんの事件に続き、またも御子柴の想いを揺るがす事件ですね。
個人的に、散々な目に遭ってきたものの、梓と郁美は親子として今も良好な関係を築いているのに安心しました。今作で知らされた事実は御子柴にとって絶対に悪いものではないと思うので、今後の変化にまた期待です。

 


以上、2019年現在で4作品の刊行。

 

 

 

 

 

 

 

 


どんどん読みましょう
実は私、当初は『連続殺人鬼カエル男』との繋がり、

 

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『連続殺人鬼カエル男ふたたび』で登場した御子柴

 

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の詳細が知りたくって第一作の『贖罪の奏鳴曲』を読んだ次第で、シリーズ全部を読むつもりはなかったのですが、困ったことに面白く、読めば読むほど先が気になって全部読んでしまった(^_^;)。

どの作品も一気読みでしたね。非常に読みやすいんですよ。スピード感があるといいますか。その分、どの作品もラストはもうちょっとページ使って余韻を存分に書いて欲しいなぁ~なんて思いもしますが。衝撃の事実を知らされてすぐに幕なので、次作はどうなるのかが気になっちゃうんですよね。ここら辺も作者の計算なんでしょうか・・・。

 

【御子柴シリーズ】は元々、『贖罪の奏鳴曲』の一作で終了の単発ものの予定だったそうです。続きを読みたいという要望が多くってシリーズ化されることになったのだそうで、一作目で御子柴の生死を不明なままにしといて良かったと作者談。(ホントはハッキリと死なせちゃうつもりだったらしい)
シリーズ化を想定しないで書かれたとは思えないほどに見事に繋がっていて感服ですね。殺さないでいてくれてホントに良かった(^^;)。

 

シリーズを通して描かれているのは、やはり30年前の女児殺害に対しての「贖罪」だと思います。被害者遺族、少年院での恩師、自身の家族と、次々と直接的な試練ととれる事件に見舞われている御子柴。今後はどんな事件に直面していくのか、どう御子柴が変化していくのかが気になるところ。

 

どんな状況になっても御子柴の事務所を辞めない事務員の日下部洋子と、二作目の『恩讐の夜想曲』に登場以来、作品の最後にいつも登場してくれる倫子なども今後どのような働きをするのか気になるところ。どちらもこのシリーズの中ではオアシス的存在なので今後ももれなく登場して欲しいのですが・・・。

 

上記の4作品、すべて2019年12月開始の連続ドラマ『悪魔の弁護士・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~』で映像化で、キャストは御子柴が要潤さん、洋子がベッキーさんとのこと。個人的に洋子のキャストが意外。ドラマではどんな風になっているのかにも注目ですね。

 

ドラマと次作、楽しみに待ちたいと思います!

 


ではではまた~

 

 

 

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