夜ふかし閑談

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『今昔百鬼拾遺 河童』あらすじ・感想 多々良センセイも登場のシリーズ第二弾!

こんばんは、紫栞です。
今回は京極夏彦さんの『今昔百鬼拾遺 河童』をご紹介。

今昔百鬼拾遺 河童 (角川文庫)

あらすじ
昭和二十九年、夏。東京では浅草を中心にして男ばかりを狙う覗き魔が横行しており、“昭和の出歯亀”などと呼ばれて世間を賑わせていた。
そんな中、薔薇十字探偵社に模造宝石に関した依頼が舞い込み、調査が手詰まりになった探偵助手の益田龍一は「奇譚月報」の記者・中禅寺敦子から知恵を拝借しようと相談を持ち掛ける。話を聞くうち、依頼された模造宝石事件と殺人の疑いがある二件の奇妙な水死事件との間に関連性が浮上。事実確認をしようとした矢先に第三の水死事件が発生し、敦子が事件現場に駆け付けると、そこには遺体の第一発見者として女学生の呉美由紀と妖怪研究者・多々良勝五郎がそろっていた。
複雑に蛇行する夷隅川水系で発見される珍妙な水死体。果たして薔薇十字探偵社に持ち込まれた依頼、そして“昭和の出歯亀”との繋がりは?
敦子は美由紀、多々良、益田らと共に怪事件の謎に迫るが――。

 

 

 

 

 

 

 

 


第二弾
百鬼夜行シリーズ】

 

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最新スピンオフ『今昔百鬼拾遺』( こんじゃくひゃっきしゅうい)、3社横断3ヶ月連続刊行企画の第二弾。第一作の講談社タイガから刊行の「鬼」に続き、今回は角川文庫から刊行の「河童」です。

 


※第一作「鬼」についてと3社横断3ヶ月連続刊行企画の概要や詳細についてはこちら↓

 

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※2020年8月追記。

三社横断企画のはずですが、結局講談社から三作をまとめて一冊にしたものが『今昔百鬼拾遺 月』として刊行されました↓

 

 

色々と「どういうことだ?」って感じですが・・・レンガ本で読みたいならこちらをどうぞ。

 

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前作と同様、敦子と美由紀ちゃんを中心にお話が構成されていますが、前作では敦子視点の語りのみでしたが、今作は美由紀ちゃん視点と敦子視点で語りが交互になっています。敦子と美由紀ちゃんは前作での事件以来、月に一二度会う“年の離れた友達”といった間柄になっているようです。なんだか微笑ましい・・・。


ページ数は前作の「鬼」より100ページ程多く360ページぐらい。通常、360ページあれば立派な長編小説。しかし、レンガ本に毒されているシリーズファンとしては、やっぱり短編読んでいる気分ですね。「もっと長くてもいいのよ」とか思ってしまう。カドブンのインタビュー記事によると、著者の京極さんとしても短編書いている感覚のようです(^^;)ですよね・・・。

表紙写真と口絵のモデルは今田美桜さん。前作同様、今巻もお面に隠れて顔は出ていません。本当に最後まで顔出ししないのだろうか・・・。

 

冒頭に美由紀ちゃんと学友達との会話があるのですが、「~ですわ」「~なのじゃなくって?」といったお嬢様口調で(美由紀ちゃんは普通の口調)河童だのお尻だの肛門だのの話をしているのが凄くシュールで可笑しいです。
水死事件自体も“お尻を丸出しにして川を流れている遺体”ってことで作中でとにかく「尻」「尻」連呼して「下品で申し訳ない」と何度も言っています。
「河童」は【百鬼夜行シリーズ】の本編でも派生作品でも度々妖怪の蘊蓄話の中で出て来るのでシリーズファンとしては馴染み深いですが(ま、「鬼」も「天狗」もそうなんですけど)、今作は直球で「河童」にフューチャーしているお話ということで「河童」が持ち合わせている下品さが話題の前面に出ているので、前作よりもコミカルな印象ですね。コミカルなのは今回のゲストキャラによるところも大きいかもですが。

 

 

 


登場人物
今回は上記のあらすじにもあるように、薔薇十字探偵社の益田龍一と【百鬼夜行シリーズ】のスピンオフ『今昔続百鬼』

 

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の主役で本編にも時偶出て来る多々良勝五郎センセイ、『格新婦の理』

 

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で登場した磯部刑事などが登場しています。作中に「津畑は態度が余りにも悪いので内勤の庶務になった」と出て来ますが、この「津畑」は「津畠」の表記ミスだと思われるんですけども・・・どうなんでしょう。

 

『今昔百鬼拾遺』は美由紀ちゃんが中心人物の一人なので『格新婦の理』関連の事柄や人物がどうしても多くなりますね。

 


益田と多々良センセイがいることによってコミカル要素が強くなっているように感じる。益田は『格新婦の理』以来ホント出番が多いですよねぇ。役割的に扱いやすいのかな。どんどんお調子者に拍車がかかっているような。(薔薇十字探偵社に居るせいか?)
今作では改めて女性ウケの悪さが浮き彫りになっています。団子屋の女将には怒られるし、美由紀ちゃんには迷惑がられるし、敦子も扱いが酷くなっていくし。

「敦子さん、最近僕に風当たりが強い気がしますがね」

なんてセリフも出て来ます(笑)。

 

あと、多々良センセイがいるってことで必然的に妖怪蘊蓄が多く出て来ますね。榎木津ほどではないにしろ、多々良センセイも超個性的で周りが扱いに困る人物なんですが、刑事さんや他の編集者が辟易する中、敦子が見事に操縦(?)していてなにか感心。さすが京極堂の妹。

 

また、角川の企画としてTwitter上で行われた『虚談』刊行記念「『虚談』のカバー写真は誰だキャンペーン」

 

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のクイズ正解者十五名の氏名が作中に盛込まれているんだそうな。『今昔百鬼拾遺』は企画まみれの刊行ですね~。

 

 

 

 

新情報
前作は昭和29年の春先のお話で、今作は夏で前作から数ヶ月経っている設定。3月の段階で中禅寺秋彦榎木津礼二郎栃木で遭遇した事件に関わっている最中だとされていましたが、今作では中禅寺秋彦はまだ担ぎ出されていないものの、東北の方で事件が発生してこじれているらしいです。


“栃木の事件”がおそらく長らく刊行が待ち望まれている【百鬼夜行シリーズ】の長編『鵼の碑』だと思われるのですが、ここにきてまた新情報ですね!これは既に『鵼の碑』以降の長編の構想が出来上がっているということでしょうか!?(京極さんのことだからもっと先までの構想もあるかもですが)ワクワクですね(^o^)

 

“栃木の事件”について、益田と敦子の会話では

「栃木の事件は、兄貴も最初からいたでしょう?」
「ありゃ事件なのかどうなのか、最後まで判らなかったんですよ。何がどうなってんだか、何回聞いたって今でも解りません」
「榎木津さんの説明だからでしょう?」

と、あります。


榎木津の説明じゃ解らんだろうなぁというのはその通りなんでしょうが、わかりやすい事件や犯人がいて云々という話では無さそうですね。
あと、この会話から察するに、鳥口や敦子同様、益田も“栃木の事件”には不参加のようですね。栃木に居なかっただけで東京での場面には登場するのかもですが。うーん。どんなメンツでの事件となっているのでしょう。なんにせよ、もういい加減読みたい。

 

 

 

 

 

 

 

 


戦後
事件内容としては宝石奪取事件での人間関係が結構複雑。“昭和の出歯亀”の目的や犯人は割とすぐ見当が付きましたが、仕掛け部分は説明されると簡単なんですけども、私は思い至りませんでした。


今作は戦後の混乱期の事情が事件に深く関わっています。このシリーズの時代設定ならではですね。出自での差別、戦争責任での皇室への国民の感じ方などが事件に強く関係しています。

年号が変わったばかりのこのタイミングで皇室をお話で扱うのは凄くタイムリーな感じ。戦争責任に関しては難しい問題ですよね。作中では「どの考えが正しい・間違っている」といった決めつけや押し付けはされていません。私的に、思想の押し付けをしないところが京極作品の好きなところです。作家さんによってはホント押しつけがましく書く人いますからね・・・(^^;)

あと、史実の第五福竜丸事件」について途中少し触れられています。原子力災害については今読むとどうしても震災の事を考えてしまいますね。

 

今作も最後に美由紀ちゃんがキレてます。カドブンの著者インタビューによると、『今昔百鬼拾遺』は敦子が理論を述べて美由紀ちゃんが最後にキレるのがお約束らしいです。ラストで美由紀ちゃんが指摘している事柄には色々救われる思いがあって良かったですね。
思想や信仰が最後の最後で取っ払われて、正直な思いが勝つ。

ジワジワとクルものがあります。


しかし、この真相なら、お母さんの事についてもうちょっと詳しい記載が欲しかったなって気もしますが。やっぱり「もっと長くてもいいのよ」ですね(^^;)

“宝物の行方”については最後の敦子の言葉で上手い具合にオチがついていて綺麗です。

 

 


次作!
次作「天狗」は2019年6月26日、新潮文庫からの刊行となります。

 

 

 

なんと、「天狗」には篠村美弥子嬢がご登場されるのだとか。『百器徒然袋 雨』「鳴釜」に登場し、あまりの格好良さで全てをかっさらっていった、あの篠村美弥子さんですよっ!

 

 

 

 

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楽しみすぎる(>_<)


次作も読むっきゃありませんね。

 

※読みました!詳しくはこちら↓

 

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ではではまた~

 

 

 

 

 

 

 

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