夜ふかし閑談

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『岸辺露伴 ルーブルへ行く』あらすじ・感想 読んで、“見る”。アートなマンガ作品!

こんばんは、紫栞です。

今回は荒木飛呂彦さんの岸辺露伴 ルーブルへ行く』をご紹介。

 

岸辺露伴 ルーヴルへ行く (愛蔵版コミックス)

 

ルーブルへ行くッ!

岸辺露伴 ルーブルへ行く』は2009年にフランス・パリのルーブル美術館が展開するBD(バンド・デシネ)プロジェクトの第五弾作品と書き下ろされたフルカラー漫画作品

 

「BD(バンド・デシネ)」というのは、フランス語で「デッサンの描かれた帯」という意味で、コマが連なって表現されているものの、日本でいう漫画とはちょっと違って、フランスではエンタメというより芸術として捉えられている。

・・・と、この本では説明されているのですけど、現物を見たことがないので正直よく分からないですね(^_^;)。続き絵で表現されたアートということでしょうか?

 

で、ルーブル「BD(バンド・デシネ)プロジェクト」ってのは、ルーブル美術館出版部がBD作品でより多くの人にルーブルの魅力を知ってもらうために展開しているプロジェクトで、フランス国内外の作家にルーブルを題材にしたBD作品の執筆を依頼、単行本にして出版するというもの。日本の漫画家に参加して欲しいと思ったルーブル美術館出版部が、荒木先生御指名で依頼してきたのだとか。

「何やら知らぬが、ルーブル関連の企画作品らしい」という、あやふやな認識だけで購入したので、思っていた以上にビックなお話で驚きました。さすが荒木先生だ・・・。

上記したように、BD作品は芸術として捉えられおり、エンタメとは異なるのですが、日本の漫画家に依頼するということは、“漫画を描いて欲しい”ということなのだろうということで、いつもの荒木飛呂彦作品同様、今作も確りとエンタメとして愉しめるストーリー漫画となっています。

 

ルーブルのプロジェクトでの作品なので、もちろん最初はフランス語での単行本発売。その後、2010年に『ウルトラジャンプ』誌面で日本語モノクロ版が掲載、2011年に本来のフルカラーで日本でも単行本が発売されました。

 

一時、絶版状態で新品が入手困難だったようですが、再版されたのか、今はUJ愛蔵版が普通にネットなどで購入できる状態です。書店ではなかなか扱っていないらしく、「売ってない」という声が多いようですが。

 

愛蔵版のサイズは26×18.6センチ。本編は123ページで、巻末には著者インタビュー収録。定価は2667円+税。

 

大きくて値段もお高いので、私もまずは実物を見てみたいと書店を巡ったものの見付けられず。「こうなったら届いてからのお楽しみだッ!」と、勢いのままにネットで購入しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あらすじは、

10年前の夏、投稿用のマンガ原稿を描くために祖母の家に夏休みの間逗留していた学生の岸辺露伴(当時17歳)は、祖母が貸していた部屋に入居していた女性・藤倉奈々瀬から、300年ほど前に山村仁左右衛門という絵描きが描いたという、この世で「最も黒い絵」――“最も邪悪な絵”が、パリのルーブル美術館にあると奇妙な話を聞かされる。

夏の間に藤倉奈々瀬は部屋を飛び出してそのまま行方知れずに。その年の秋に漫画家デビューした露伴は仕事に夢中になり、いつしか絵のことも藤倉奈々瀬のことも記憶から薄れていった。

それから10年の歳月が流れたある日、ふとしたきっかけで「最も黒い絵」のことを思い出した露伴は、好奇心と青春の慕情から絵の存在を確かめるべくルーブル美術館を訪れるが――。

 

てなことで、タイトルの通りに岸辺露伴ルーブルに行くお話。

 

超長編漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部「ダイアモンドは砕けない」に登場する、漫画家・岸辺露伴が主役で、自身の体験を語るという形式になっています。

ジョジョのキャラクターが主人公ではあるものの、岸辺露伴「ヘブンス・ドアー」という、“生物を読み書きできる本のようにし、本になった対象の情報を読み取ったり、新たな事項を書き加えて行動を制限することができる”スタンド能力(超能力)を持っている事だけ分かっていれば、読むのに支障のないように描かれています。内容もバトルものではなく奇譚話なので、スピンオフの短編漫画シリーズである岸辺露伴は動かないの延長というか、豪華版みたいなものですね。

 

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岸辺露伴は動かない』が好きな人は絶対に気に入るお話になっていると思います。

 

当初は60ページほどのものを予定していたようなのですが、日本でのエピソードを追加したら倍のページ数になって、最終的に123ページになったのだとか。100ページ以上の漫画がフルカラーで、荒木先生の絵で読めるなんて、とんでもなく贅沢だという気がする。

 

今作は主に三つの篇に別れていて、日本が舞台の前篇はセピア調、ルーブルに舞台を移す中篇はピンク、ルーブルの地下に入ってからの後篇は青、と、パートごとに基調になる色合いが分けられています。

“荒木先生のカラー絵”ということで、原色のど派手な色合いを連想してしまうところでしょうが、さすがにそれだと「読む側が疲れるな、ヤバイな」と、いうことで、ストーリーを読んでもらうためのバランスで描いたとのこと。私も読む前は「フルカラーって、まさか全ページど派手配色なのか?それだと目がチカチカしそう・・・」とか少し心配していたので、先生のこの配慮はもの凄く頷けるし感謝しました。

表紙絵はビビットカラーですけどね。

 

岸辺露伴 ルーヴルへ行く (愛蔵版コミックス)

岸辺露伴 ルーヴルへ行く (愛蔵版コミックス)

 

 

トリコロールの三色を意識して描かれたらしいです。非常に目を惹く表紙絵で良いですねぇ。アート。

2009年に発表されたものなので、絵柄は七部のころですね

 

 

追加されたというセピア調の日本が舞台でのエピソードが個人的に好きで、追加されてつくづく良かったなぁと。元旅館で展開される一夏の淡い初恋が、少し妖しく、古風に描かれているのがロマン映画的。カラーで描かれているので、より映画を観ているような感覚になれます。

奈々瀬は離婚間近の21歳。人妻。調子よく喋っていたと思ったら次の瞬間急に怒り出したり、いきなり泣き出したりする情緒不安定気味の女性なのですが、思春期の男子はこういう訳のわからない女に訳のわからぬままに惹かれてしまうものなのかも知れない。長じると厄介そうな女性には近づかないほうが無難ってなるのかもですが・・・。

 

露伴の初恋が描かれ、露伴の祖母も出てきたりと、大変に興味深いエピソードですが、「17歳の時点でスタンド能力を持っている」「17歳の時点で投稿用のマンガ原稿を描いている」、「27歳の露伴が学生服姿の康一や億泰と会っている」などなど、様々な矛盾点から、『ジョジョの奇妙な冒険』第四部「ダイヤモンドは砕けない」に登場する世界、露伴とは異なります。

四部では露伴は20歳で、16歳の時には既に代表作の「ピンクダークの少年」を連載していたという設定でしたからね。なので、六部で世界が一巡した後なのだろうと思われる。仗助らしき人物が後ろ姿しか描かれていないのもその関係ですね。・・・これ、ジョジョを知っている人じゃないと「な、何を言っているのかわからねーと思うが」な話なのですけども(^_^;)。

ま、矛盾を見付けても設定を受け入れて楽しみましょう。

 

岸辺露伴は動かない』同様、奇抜さ・超変人っぷりも四部の露伴より抑えられていて、知的な印象。「描かれてないとこで変な事もしてたかも」と、荒木先生はインタビューで仰っていますが。

 

中篇と後編である、パリへ行ってからの展開はホラーサスペンス風味で、どう切り抜けるのかとハラハラしますし、最後に明かされる真相も奇妙に驚かしてくれて余韻が残る。

 

ストーリーはもちろんですが、今作はやっぱりいつも以上に絵を存分に愉しめる代物で、全ページ“絵画”としての見応えがある。一度読み終わった後も“画集として”何度もページを眺めてしまいます。

私が特に好きなのは「僕の名前は」といっている最初のページの露伴の顔と、前篇で奈々瀬が洗濯物干している場面。いつもより色合いが抑えられてはいますが、色の配色や塗り方はもう全体的に好き。

 

 

 

 

買って損なしッ!

大きいし、値段も高いしで、ジョジョファンでも買うのを躊躇する人多いかなぁと思いますが、画集は通常3000円前後するもの。今作は画集というだけでなく、ストーリー漫画まで確り楽しめ、巻末にはインタビューも収録されているのだから、この価格は良心的。むしろ安いッ!お得ッ!

前に紹介した乙一さんのジョジョ小説『The Book ~jojo’s bizarre adventure 4th another day~』

 

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で、「最高の漫画家だよ。彼の作品はもうアートの領域だとおもう」というセリフが出て来ますが、まさにそう。荒木飛呂彦先生は日本を代表するアーティストの一人なのだと実感させられる本になっておりますので、コアなファン以外の人にも読んで、“見て”欲しい作品です。

少しでも気になった方は是非是非。

 

 

岸辺露伴 ルーヴルへ行く (愛蔵版コミックス)

岸辺露伴 ルーヴルへ行く (愛蔵版コミックス)

 

 

 

ではではまた~