夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『秘密season0』7巻 〈冬蝉〉あらすじ・感想

こんばんは、紫栞です。
清水玲子さんの『秘密season0 7巻〈冬蝉〉』が発売されました。読み終わったので少し纏めと感想を。

秘密 season 0 7 (花とゆめCOMICSスペシャル)

表紙が綺麗~!・・・って、毎回言っているような気がしますが(^^;)ギムナジウムものみたいに見える表紙だと思うのは私だけでしょうか。しかし、中身は今回も一話完結型近未来警察ミステリなので誤解なさらぬよう。

 


あらすじ
2061年3月。75年ぶりに接近するハレー彗星と、ハレー彗星探査機「すいせい2」打ち上げの話題で持ちきりの日本。
そんな中、病死した遺体から脳ばかりが奪われる奇妙な事件が発生。いずれも衛星探査・宇宙工学・宇宙開発研究に長年関わってきた「偉人」たちの「脳」だった。

一体誰が、何のために「脳」を集めているのか?一体何に「利用」しようとしているのか?そして、この「盗難事件」は「第九」や「MRI捜査」に関わりがあるものなのか?

薪と青木は捜査を開始、やがて犯人を特定して身柄を拘束するが、犯人の語る“脳集め”の目的は驚くべきものだった――。

 

 

 

 

 

2061年
前回の〈増殖〉は2冊使っての事件でしたが、

 

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今回の〈冬蝉〉は1冊で1つの事件です。230ページぐらいで、シリーズの他の事件のものと比べても少し短めですかね。
今作は〈増殖〉では2067年だった時間軸から遡って2061年が舞台。青木が「第九」に配属されてから1年2ヶ月後。【秘密シリーズ】

 

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の2巻と3巻の間、

「鎌倉一家惨殺事件(露口絹子事件)」

 

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の後、「チャッピー連続殺人事件」

 

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の前ですね。

このころは「第九」が解体されて全国展開される前なので、まだ皆で捜査していた頃ですね~。青木もまだ薪さんのこと怖がって言われる事にホイホイ従っていた頃です。2067年になっても怖がってはいますが・・・。言う事聞かなくなってきていますかね(^^;)
薪さんも鈴木のことについてまだ気持ちの整理が出来ていない段階の頃ですね。

 

もうこの頃のお話は“新章”としてはやってくれないと思っていたので嬉しかったです。(読み切りとかではあるかなとは思っていましたが・・・)と、いっても、薪さんと青木と岡部さん以外でまともに登場してくれたのは曽我さんぐらいでしたので、いつもとさほどメンバーの代り映えはしないですが。

今回はコンパクトな内容でしたし、お話に必要じゃなければ登場させないってことでしょうかね。しかしまぁ、久々に従順な青木が見られて楽しかったです。「肩車しましょうか」とか上司に素で言う神経ってどうなんだ(笑)190の男に肩車されたら高すぎる。おんぶ位で丁度いいんじゃない?(そういう問題じゃないけど)「走ったら危ない」だの「貴方一人じゃ危ない!!」とか、姫扱いか(笑)

 

この時代設定にしたのはハレー彗星の地球への次回接近が2061年夏だと考えられているからですね。今回は宇宙工学・・・毎回毎回、どこからくる着眼点なんだと作者の清水さんには感服いたします。テーマ選びが秀逸・・・!

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辛い
今回のお話はですね、読んでいて非常に辛かったですね~(-_-)


早い段階で犯人が特定されるのですが、大事なのはその後からでして「他の臓器と同じように「脳」も後世の為に役立てるべきだ」つまり、立派な研究の為になるならば故人の同意を得て「脳」をみても良いではないかとの主張と、「いかなる理由があろうと、犯罪捜査以外で情報を得る為に“脳”をみることは許されない」という薪さんの主張とで対立。犯人と薪さんとの真っ向勝負の様子が描かれています。

 

テーマとしては「MRI捜査」という捜査方法自体への正当性の疑念ですね。捜査だからといって個人のもっともプライベートな「領域」を侵す権利があるのかという。このテーマは「鎌倉一家惨殺事件(露口絹子事件)」でも描かれていましたが、今回はまた別視点からの掘り下げ。

 

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薪さんは作中で、大義名分があれば「脳」をみてもいいという「前例」を作ってしまえば、今後歯止めが利かなくなると言って犯人の行いを激しく糾弾します。
確かに、いったん枠組みを広げたらどんどん「線引き」が曖昧になって「脳」をみることが“あたりまえ”の世の中になることは容易に予想出来ることですよね。薪さんはそういった状況になることを恐れている訳で、正しい主張だと思いますが、一方で


「故人」の「領域」を侵す「権利」は無い 誰にも!どんな理由があっても!


と、言うならば、犯罪捜査でだって利用するべきでは無いのでは?とも思いますね。思っちゃうだけに、かつての恩師に薪さんが糾弾される場面は読んでいて辛かったです。

 

終盤で青木が“必要枠だから”みたいな事を言いますが、わかりはするけど、素直に納得は出来ないのが正直なところ。
しかし、単純に、目の前に問題を解決させる事が出来る「技術」があるならば、使いたくなってしまうのは人として当然かなとも思います。
本能や倫理との板挟みで難しい問題ですね。私はどんなご立派な理由があっても、自分の「脳」なんて他人様に絶対見られたくないですが(^^;)

 


犯人
今回の犯人の“冴子さん”ですけど、この人も色々と痛々しくて辛い(-_-)
昔は天才美少女と周りに将来を嘱望されていて、夫の住田にも崇拝に近い愛情を向けられていた冴子さん。しかし、様々な出来事で研究者として上手くいかず、「こんなはずじゃなかった」と薪さんに嫉妬心を剥き出しにしたり、「住田と結婚していなければ」と後悔の念を口にしてしまったりする始末。ですが、人殺しまでして論文を完成させようとしたのは夫にまた「やっぱり君は凄い、天才だ」と認めてもらいたかったから。愛憎が複雑に絡み合っている状態ですね。

作画も“老い”が残酷に描かれている感じで痛々しさに拍車をかけています。ここら辺また計算し尽くされている漫画だなぁと感服しますね。


夫の住田先生ですが、別に冴子さんに愛想を尽かしている訳では決してなく、今でも大学時代と同じように、妻が年老いても、研究者として成功していなくっても、純粋に妻のことを想っています。
う~ん、しかし、純粋に想われ続けるというのも、それはそれで辛いのかもしれないですね。相手が愛情を向けている自分は偶像だと思ってしまうというか。“崇拝”は励みにもなるが、重荷にもなるってことなんですかねぇ・・・。うーむ。

 

終盤、薪さんは住田夫婦に何故こんなにも非道な仕打ちを・・・と、思ってしまったのですが、青木が


「あの時 薪さんがああまでして冴子先生から生前自供をとったからこそ 死後冴子先生の遺体を傷つけるMRI捜査をせずに済んだ」


という部分を読んで「そ、そうか!私の理解が足りなかった!ごめんね薪さん!」と申し訳ない気持ちに(笑)
この真相がわかるとより辛いですね。住田先生も奥さんが「脳」見るために人殺ししたこと棚に上げて薪さんのことを糾弾していましたけど、気持ちが落ち着いたら薪さんの秘めた想いに気が付いてほしいなぁ~と切に願いますね(T_T)

 

 

鈴木
さて、また辛さに拍車をかけるのが鈴木との思い出なのですが・・・。鈴木はアレ、薪さんに声かけて、来てくれる望み薄だと感じたからダメ元でやっぱり雪子さん誘ってみたって事なんですかね。「雪子はダメだ」って拳握って力説していたのに。鈴木・・・罪深い男だなまったく。


薪さんって、やっぱり鈴木のこと“そういう意味”で好きだったのかなぁ~(いまさらですが)。


“鈴木以外はみんなかえってくる”
っていうのが今回のお話の辛さにトドメを刺す感じでした。

 

 


そんなわけで、色々と辛いお話でしたが、非常に感慨深くて今回も上質のミステリ漫画を楽しませてもらいました。感謝感謝。


次巻ではまた時間軸が元に戻るんですかね。〈増殖〉の後、山城などどうしているのか気になるところですが。コミックス派として気長にまた待ちます(^^)

 

※出ました!詳細はこちら↓

 

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ではではまた~

 

 

『探偵が早すぎる』原作 ネタバレ・感想 ドラマとの違いなど~

こんばんは、紫栞です。
今回は井上真偽さんの『探偵が早すぎる』をご紹介。

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ)

2018年の7月から日本テレビ系で放送予定の連続ドラマの原作本ですね。

 

あらすじ
「私はそのトリックを、まだ仕掛けてさえいないんだぞ・・・・・・」
父の死により五兆円もの莫大な遺産を一人で相続することになった女子高生の一華(いちか)。その遺産を狙い、一族たちは彼女を事故に見せかけ殺害しようと試みてくる。命を狙われ、外の人間も信用できなくなった一華にとって、唯一信頼できる味方は使用人の橋田のみ。その橋田は一華の現状を打開するため、知り合いの“探偵”を雇った。その探偵とは、“事件が起こる前にトリックと犯人を看破し、事件を未然に防いでしまう究極の探偵。

一華を事故死に見せかけようと完全犯罪のトリックを仕掛けてくる複数の刺客たち。探偵は事件を“すべて起こさせずに”一華の命を守り抜くことができるのか――?

 

 

 

 


トリック百花繚乱。
井上真偽さんの本を読むのは初なのですが、ドラマ化されるのと設定が面白そうだったので読んでみました。
講談社タイガからの刊行で上下巻2冊です。講談社タイガだと最初から文庫での刊行なので買いやすくって良いですね。1冊300ページくらいで上下巻あわせて600ページほど。


お話は各章で区切られていて、登場人物達は皆個性豊か。コミカルにテンポ良く進むし、出てくるトリックも奇抜なものばかりで楽しませてくれるので、最後まで面白く読めました。
重要な箇所は太字になっているなどの配慮もあって読みやすいです。なんか親切(笑)

上巻では三つの殺害未遂事件が描かれ、下巻のほうでは一華の父の四十九日の法要での一日の出来事が描かれています。上巻が小手調べ、下巻が“いざ本戦”って感じですね。
下巻のトリックの応酬はもう息つく暇もありません。まさにトリック百花繚乱。そしてそのトリックをことごとく潰していく探偵の凄まじさと忙しさ(笑)必見です(^^)

 

 

確かに早すぎる
ミステリ小説のジャンルとしては“倒叙モノ”に分類されるつくりになっていますね。一華の視点がところどころで入りつつ、犯人たちの頭の中の犯罪計画が犯人視点で描かれる。

・・・と、言ってもすべての犯行は実行前に阻止されてしまうし、上巻はともかく、下巻はあまりにも犯行予備軍の人たちが多く、仕掛けられているトリックも次から次に出てくるので、「ミステリで倒叙モノ」というよりは、“仕掛けられた罠をすべて見抜き、ゴールまで無事たどり着くことができるのか”といったサバイバル・ゲーム的要素が強いので、倒叙ミステリの印象は薄いです。
しかし、改めて考えてみると倒叙ミステリ以外の何物でも無いんですけどね。やっぱり、「犯人に事件を起こさせてもくれない」ってところが大きいですかね。斬新な設定だ・・・。

このお話なんですが、単に犯行を阻止するだけでなく、犯行を計画した人物には「犯行計画をどの点から見抜いたか」「計画内容のどこが悪かったか」を当人に語って屈辱を与え、ご丁寧に『トリック返し』と称してきっちりと仕返しもして、犯人を完膚なきまでに叩きのめします。
ここら辺が読んでいて痛快なのですが、犯人始点なので読んでいると登場する数々の犯人の方々がもういっそ不憫というか、可哀想にもなってきますね(^^;)

 


ドラマとの違い
ドラマのキャストは以下の通り
千曲川滝藤賢一
十川一華広瀬アリス
大陀羅朱鳥(あけどり)-片平なぎさ
橋田政子水野美紀
城之内翼佐藤貫太
山崎未夏南乃彩希
阿部律音水野麻里奈
大陀羅麻百合結城モエ
十川純華新山千春
大陀羅壬流古(ミルコ)-桐山漣
大陀羅亜謄蛇(あとうだ)-神保悟志

 

凄くゴテゴテしい名前が並んでいますが(笑)

公式サイトに掲載されている順に書きましたが、原作を読んだ身としては何でこの順番で登場人物が並んでいるのか少し疑問。

原作では一華は高校生の設定なのですが、ドラマでは大学生ってことで主要人物の千曲川と橋田も年齢が上がっていますね。原作では二人とも年齢不詳で実年齢は明かされていないのですが、20代ぐらいってなっています。


原作から一番遠い容姿をしているのは千曲川光を演じる滝藤賢一さんですね。原作ですと千曲川さんは、
髪は肩まである茶髪で整った顔立ち。目は細くて若干色白。体格は華奢だが肩幅はある。
と、いう。一見すると男か女かわからない容姿をしていて、実際セクシャリティ
性別は男。心は女。しかして性的指向は同性愛。
てな複雑な設定なのですが、キャストが滝藤さんなのでここら辺の設定はガラッと変えるのかなと思います。そのままやったらやったで面白そうな気もしますが・・・(^^;)

一番気になるのは“城之内翼”ですね。原作にはいない人物なのでドラマオリジナル。「一華が恋心を抱く大学の同級生」らしいです。原作には恋愛要素が皆無なんですけどね。こういうオリジナルの追加はドラマで良くある傾向だって気がしますね~。


あと、“十川純華”って誰だ?って最初思ったのですが、これは一華のお母さんですね。原作だと既に亡くなっていて、“お母さん”と出てくるだけで実名は出て来ないです。わざわざキャストがつくということは、ドラマではお母さんにまつわるお話が展開されるのかも知れないですね。

原作だと一華の命を狙ってくる一族たちはもっといまして、特に気になるのは沙霧(さぎり)と尼子(あまご)の二人。今のところキャスト一覧に名前がないですが、後半で登場する・・・と、思いたい。この二人は原作では(色々と)とんでもない美女で、尼子の方はアルビノという設定なのでキャストが大変気になりますね。

あと、千曲川さんの『トリック返し』なのですが、かなり過激なものもあるのでドラマではどうするのかも気になるところです。

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 


実はこの『探偵が早すぎる』、お話の主軸は一華と使用人の橋田との信頼感でして、“探偵”の千曲川さんは作品の中心人物という訳ではありません(そう見せかけている感じはあるんですけどね)。

千曲川さんが登場するのは、計画が失敗に終わって混乱している犯人の前に現われるというのがほとんどで、水面下で動いている為、主人公の一華に直接対面するのも上巻の最後でやっとですし、下巻の方でも一華と千曲川さんとのやり取りはほとんどありません。千曲川さんは謎解きの時のみ登場する“解答者”みたいなもので、人物の掘り下げなどもほぼ無し。単に男か女かもよくわからない得体の知れない人物といった感じですね。

 

それとは対照的に多いのが一華と橋田、二人のやり取り。一華はツンデレな(?)橋田のことが大好きで、五兆円という莫大な財産を手放さない理由の中には、自分が一文無しになったら使用人の橋田は自分から離れてしまうのではないかとの恐れが含まれています。

千曲川さんの“探偵”としての“技”は『目には目を』で知られるハンムラビ法典から生まれた『タリオ』という遠い昔から受け継がれてきた技術で
“考え無しに罪を犯そうとする愚か者に、その被害者の立場を疑似体験させ、その身に猛省を促す――”
と、いったもの。(いきなり何だか“アレ”な事言い始めたなって感じですが:笑)実は橋田もこの『タリオ』で、千曲川さんの師匠なのだという事が最後に明かされます。

終盤、追い込まれて千曲川さんはトリと探偵役を橋田に譲る(奪われる)展開に。千曲川探偵はいわばミスリードで、やっぱり大元というか本命は橋田のほうなのだと示される形ですね。


一華と橋田の会話からお話が始まり、最後も二人の会話で締めになっているので、この小説は一華と橋田の二人を描きたい物語なんだなぁ~と。
この『探偵が早すぎる』、検索すると検索候補に「百合」と出てくるんですが(^^;)そう出て来ちゃうのも二人の関係性が主で描かれているからなのだと思います。確かに一華は橋田への想いの寄せかたが乙女チックだなぁという箇所が多々ありましたからね・・・・・・。

ドラマではキャストのトップに千曲川光がきているので、原作とは別で千曲川さん中心のお話になっていそうな雰囲気がしますね。それだと全くの別物として楽しむって事になりそうな予感。どうなるんでしょう・・・。

 

続編
この小説、綺麗に終わっているような気もしますが、一方では一華たちの目的だった「殺人未遂の証拠を掴んで裁判に持ち込み、民法八九一条の相続人の欠格事由で一族たちを相続人から永久排除する」の、裁判がまだこれからという状態で、ラスボス的ポジションの大陀羅亜謄蛇と朱鳥は子供達に競わせただけで直接の手出しをしていないので裁判でも言い逃れ出来てしまいそうな気がして「これで本当に終わっているのか?」との疑念が若干残ります。


もし続編が刊行されるなら絶対に読みたいと思うのですが・・・どうでしょう。同じ講談社タイガ『今からあなたを脅迫します』

 

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みたいに、ドラマ放送中に新刊刊行されたりしないかなぁ~。

個人的に続編希望です(^^)

 

コミカルなミステリが好きな人にはオススメ。ドラマで気になった人も是非読んでみては如何でしょうか。

 

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

 

 

 

探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (下) (講談社タイガ)

 

 

ではではまた~

『ψの悲劇』ネタバレ・感想 完結まであと一作!

こんばんは、紫栞です。
今回は2018年5月に発売された、森博嗣さんの『ψの悲劇』をご紹介。

ψの悲劇 The Tragedy of ψ (講談社ノベルス)

 

あらすじ
〈死ぬ自由が自分にはある。なにか具体的な不満があったわけではない。自分の意思で自由に行動できるうちに、皆の前から消えようと思う。探さないように。〉
と、書かれた手紙を残し、元大学教授の八田洋久(はったひろひさ)博士は失踪した。
一年後、博士と縁のある者達が八田家に集い、“八田洋久の失踪について、誰も知らない情報を持っている”という島田文子と名乗る女性が、八田博士の実験室にあったコンピュータから「ψの悲劇」と題された、博士が書いたのだと思われる奇妙な小説を発見する。
その日の夜、八田家の飼い猫が謎の死をとげ、翌朝には実験室で招待客のうちの一人が他殺体となって発見された。
この事件と博士の失踪には何らかの関係があるのか?島田文子が八田家を訪れた真意とは?
導かれるのは驚愕の解――。

 

 

 

 

 

Gシリーズ
今作は【Gシリーズ】後期三部作の二つ目。シリーズでは11作目の作品となります。この後期三部作ですが、別名で“悲劇三部作”(エラリー・クイーンの悲劇四部作をもじっていて、作中にも各章の前に引用があります)ともなっており、前作が『χの悲劇』

 

 

 次作予定作品は『ωの悲劇』で、作者の森博嗣さんは「Gシリーズは全12作」と明言されておりますので、次作でGシリーズは完結となります。ですので、『ψの悲劇』は完結作の一個手前の作品ですね。
Gシリーズは9作目の『キウイγは時計仕掛け』

 

 

までは大学生の主要人物たちがギリシャ文字に絡んだ一連の事件に遭遇していくもので、大まかな流れとしては、語り手の加部谷恵美から聞いた事件を、探偵役として海月及介が解くといったもの。途中、【S&Mシリーズ】犀川創平や西之園萌絵【Vシリーズ】瀬在丸紅子など、別シリーズの主要人物たちがお話に登場してミステリとは別で群像劇の様相を帯びてきます。
ですが、後期三部作の始まり『χの悲劇』でこの流れをぶった切り、時間軸が大きく進んで語り手も変わり、今までの主要人物たちも登場しない予測不能な展開になっています。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~(『χの悲劇』を未読な人も注意)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SF
森博嗣作品はもはやミステリではない」と言われるようになって久しいですが、確かにこの『ψの悲劇』もミステリというよりはSFでしたね、完全に。
前作『χの悲劇』で時間がだいぶ進んだ訳ですが、今作『ψの悲劇』はどの時間軸が舞台なのかなぁ~と思っていたら、『χの悲劇』よりさらに後の未来でした。「あらすじ」で上記したように、一応殺人事件は起きますが、添え物程度の扱い。後半はロボットだの人工知能だのの話が盛り沢山のバリバリのSF世界に突入します。
近年の森作品は殺人事件に重点が置かれていないものがほとんどですね。毎回頑固に殺人事件発生させる必要も無いのでは?と、思うのですが・・・どうなのでしょう?

 

作品自体も単体で楽しむことが出来る作りになっているとは言い難いです。長年森博嗣作品を読んできた読者じゃないとわからない部分だらけで、もうそういった読者に向けてのみ書かれている作品でしょうね。新規のファンを取り込もうとかは無いというか。【S&Mシリーズ】から続く、壮大なサーガ。すべてがFになるを読んだときは、まさかこんな領域にまで達するとは思ってもみませんでしたよ・・・。

 

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八田洋久
前作『χの悲劇』では語り手が島田文子で、島田さんが肉体としての死を迎えるところまでが描かれるのにくわえ、Gシリーズの主要人物の一人、海月及介の素性の一部が明かされるなど、ファン必見な展開でした。
さて、この後どうなるんだ~!?って感じだったのですが、今作『ψの悲劇』では前作同様島田さんが新たな姿・ニュータイプ島田として登場する以外はシリーズに関係した人物も見当たらず、謎が増えた感じ。
特に今作の中心人物「八田洋久」は色々と思わせぶりな描写も多く(プロペラとか、死んだ奥さんとか)、読者的には「いったい何者なんだ!?」と、考え出すと頭が痛くなる(笑)
最終作の『ωの悲劇』で正体わかるのか・・・・・・それとも【wシリーズ】で、とか・・・。う~ん、頭痛い(^^;)


中盤ははっちゃけた島田さんに引っ張られて軽快な雰囲気で読めましたが、最後の最後がゾッとする終わり方でしたね。
八田博士が生体にこだわった理由って何なのでしょう?この世界ではロボットも人間と見た目が変わらず、周りにも気が付かれない程なので、“生体”にメリットがあるとも思えないのですが。孫を犠牲にするくらいだし、何か訳があるんですかねぇ・・・。

 

 


次で完結!
【S&Mシリーズ】【Vシリーズ】【四季】と続き、Gシリーズと平行して展開されていた【Xシリーズ】も終了していますので、

 

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今著者が抱えているシリーズは残すところGシリーズと【Wシリーズ】のみとなりました。Wシリーズの前に【百年シリーズ】があって、こちらはすでに完結していますが、この二つのシリーズは完全にSFで現代よりだいぶ進んだ時間軸の世界が舞台。

Gシリーズは『キウイγは時計仕掛け』までは比較的地続きな感じだったのが「後期三部作」に入ってからは百年シリーズとWシリーズまでの空白期間を埋める方向でお話が進行しています。明かされる事情も今作『ψの悲劇』では百年シリーズとWシリーズに絞られていました。


時代がどんどん未来に向かっているので、読者的に馴染みのある犀川先生や萌絵、紅子さんや加部谷、山吹などの主要人物たちのその後とかはもう語られないのかしら・・・と、思うと残念で寂しいですが(特に別シリーズでも触れられていない山吹は気になる・・・)しかし、森さんの事だから最終作の『ωの悲劇』でまた時間軸が過去に戻るという事もあり得るかな?とも思います。Gシリーズはまだ放置されている謎が多々ありますからねぇ。完結作をどのようにもっていくのか大変気になるところです。

 

Gシリーズ完結編の『ωの悲劇』は2019年ではなく、おそらく2020年に刊行になる予定とのこと。その間にWシリーズの方を終わらせるらしいです。

と、なると、また新たなシリーズが開始されない限り、森作品の壮大なサーガの最終作は『ωの悲劇』となるってことなのでしょうか、ねぇ・・・?


全ての謎が回収される、長年の読者が報われる素晴らしいラストを期待したいところです。ホント、最終作読み終わったら「今まで読んでて良かった~!」と叫びたいもんだ(^_^;)

 

 

 

 

 


ではではまた~

 

『犯人たちの事件簿』3巻 金田一少年の事件簿外伝 感想・まとめ

こんばんは、紫栞です。
今回は金田一少年の事件簿シリーズのスピンオフ作品金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(3)』をご紹介。

金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(3) (講談社コミックス)

早いもので、このスピンオフも3冊目なんですね~。この表紙はKC23巻のパロディ。

金田一少年の事件簿 (23) (講談社コミックス (2383巻))

 

今回は金田一37歳の事件簿(1)』と同時販売でした。

 

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この2冊刊行の前の週に金田一くんの冒険(2)』が発売。

 

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小学生、高校生、中年とそれぞれの世代の金田一を短期間で続けざまに読み、もう何が何だか・・・(^^;)特に『金田一くんの冒険』を読んだ後に『金田一37歳の事件簿』はギャップが激しかったですね・・・。

 

 


3冊目ともなるともうお馴染みだとは思いますが、こちらのスピンオフの概要はもちろん

“最強で最凶な名探偵・・・・金田一一・・・・・・!!これは・・・・そんな少年に不幸にも出会いそれでも犯罪を追い続けた・・犯人たちの物語である!!”

と、いうマニアックなギャグ漫画。

 

3巻で収録されているのは
金田一少年の殺人』『仏蘭西銀貨殺人事件』の二つ。最後に書き下ろしの「外伝煩悩シアター」のミニ漫画が3ページ入っています。もちろん今回も“本編”と合わせて読めばさらに楽しめる作りになっています。見たことないくらい本家の模写が多いスピンオフ漫画・・・。

 


では以下ネタバレ感想~

 

 

 

 

 

 

 


ファイル7金田一少年の殺人」(本家ではファイル10)

 

 犯人:都築哲雄
いつも犯人を追いつめる側の金田一が追われる側になるってことで、本家では人気の高い事件である「金田一少年の殺人」。この『犯人たちの事件簿』は通常はマガジンポケットでの連載ですが、このお話は短期出張連載でマガジン本誌に掲載されましたそうな。なので、犯人の都築さんも最後に「失礼しました 週刊少年マガジンをお読みの皆さん20年ぶりです 昔は硬派なイメージでしたが随分ラブコメが増えましたね」とか、いるせぇ事を言っている(笑)


この事件のメイントリックは“ドア渡り”ですね。結構秀逸なトリックですよね、なんだか。評価する声も多く、わかりやすくて良いのですが、実際にやるとなると大変なんじゃない?と、思う人もいるようで、「水曜日のダウ〇タウン」でもこのトリック検証していましたね・・・。やっぱり犯人の都築さんも

「中年オヤジにはこたえる・・・・ッ!!」

と満身創痍になっている。本家でトリックの再現をした金田一もちょっと汗かいていましたしね(^_^;)


この事件では犯人も暗号解読をしなくちゃいけない立場だったんですよね~。被害者の皆さんは別に何をしたわけでもなく、ただ伝言を託されただけなのにポンポンと殺されちゃって・・・都築さんがもっと早く暗号解いていたらこんなに被害者出なかったろうに・・・都築さんも最後に反省していましたね。


二人の奇妙なスケープゴート生活が可笑しい。究極の「犯人ここにいるよ状態」笑いました。犯人視点としてはテンション上がるレア状況ですよね、これ。

 

 


ファイル8仏蘭西銀貨殺人事件」(本家ではファイル17)

 

 犯人:鳥丸奈緒
このお話、5話分使われていて今までの『犯人たちの事件簿』の中では最長。本家のシリーズの中ではそんなに目立つ事件でもないと思うし何でだろう・・・?
この事件ですが、“精神的双子”という無根拠なものに頼りきっての殺人計画で、世間的には賛否が分かれる作品なのですよね。私はわりと好きなお話なんですけど。


このころの本家は絵柄がキラキラしていたのですよねぇ~。このお話はファッション業界という華やかな世界が舞台ってことで、特にキラキラしていました。メグレ伯爵も“キラキラ男”で本家でも周りが思いっきり引いていましたからね(笑)
この漫画でも触れられているように、メグレ伯爵って何で登場させたのか当時本家を読んでいたときも疑問だったんですよね。「葬送銀貨」の説明させる為だけのキャラクターみたい。奈緒子さんも言っているように

「もうなんか・・・・一瞥するだにポンコツ・・・・!!」

だし。ホント、ただキラキラしてる人(^^;)


「タバコで雰囲気を出しつつ ますみに電話をかける」笑いました。そうなんです、異様なほどタバコの煙漂っていましたからね、本家。

 

 

 

 


犯人総選挙
この『犯人たちの事件簿』なんですが、前回の2巻発売記念で「犯人総選挙」がおこなわれました。
犯人総選挙?そんなの高遠さんが1位に決まってる・・・と、思いつつ、抽選結果を見てみたら・・・


1位 地獄の傀儡師(魔術列車殺人事件)157票
2位 七人目のミイラ(異人館村殺人事件)85票
3位 巌窟王(金田一少年の決死行)48票

 

ほらね。
2位3位も思った通りの犯人がランクインしていますね。「七人目のミイラ」は切なかったからなぁ~。今作の3巻ラストで奈緒子さんが

金田一に匹敵する程の生い立ち・・・・」

と言っていますが、「七人目のミイラ」は生い立ちの面では高遠さんより壮絶なんじゃないかと思う。高遠さんは生い立ちがまだ全て明かされていませんしね・・・。本家も明かす気が残っているのか微妙なとこですが・・・(^^;)

 

この「犯人総選挙」の結果を受けて、次巻では遂に『魔術列車殺人事件』の犯人視点を描いてくれるんだそうです。『魔術列車殺人事件』やっちゃうと、このスピンオフ終わるんじゃ・・・なんて気もしてしまいますが。言わばこの漫画におけるラスボスですからね。3巻は事件数が二つで前2冊より一つの事件が長かったですが、4巻は1冊丸々『魔術列車殺人事件』かも。発売予定は2018年秋頃。

とにかく、次巻も必ず読まねば・・・!ですね(^^)

※4巻の詳細はこちら↓

 

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ではではまた~

 

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『金田一37歳の事件簿』1巻 あらすじ・感想 ”大人版”シリーズ開幕~

こんばんは、紫栞です。
待ちに待った金田一少年の事件簿の“大人版”、金田一37歳の事件簿】が発売されました~。さっそく読んだので、感想や気になったことを纏めようかと思います。

金田一37歳の事件簿(1) (イブニングKC)

 

表紙がマガジンコミックス一作目のパロディになっていて『犯人たちの事件簿』となんだか似たようなノリですね。

 

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でも中身は“少年”のとき同様の本格ミステリでギャグじゃない(ギャグもあるけど)。

イブニングKCだと一般的なコミックスよりちょっとデカイんですね。通常版と特装版があって、特装版は表紙の色が赤(通常版は青)で4大特典付き。お値段は1000円超え。

 

 特典はなにが付いてくるのかというと・・・
●「容疑者になれる権」応募専用ハガキ
●はじめ、明智、ファントム・クリアファイル3種
●フキダシ付き特性メモ帳
●「金田一少年の事件簿」92年当時第一巻デザインポストカード
の、4つ。
「容疑者になれる権」ってなんぞ?と疑問だったのですが、どうやら当たると漫画内に名前を登場させてくれるって事らしいです。

私は・・・通常版を買いました。

 


あらすじ
金田一一37歳。高校時代に数多くの難事件を解決してきたが、今は小さなPR会社の営業部主任で、イベント企画などの仕事に追われるいちサラリーマンとしてうだつの上がらない日々を過ごしていた。
ところがある日、仕事で離島リゾートでの婚活ツアー企画を押し付けられ、企画書を見てみるとツアーの場所はかつて三度も『オペラ座の怪人』になぞらえた連続殺人の舞台となり、その全ての謎を解いた金田一もよく知るあの「歌島」だった。
悪い予感しかしない。もう謎は解きたくない。と、どうしても気が進まない金田一だったが、呪われた館「オペラ座館」はもうない。もう事件なんて起こらない!起こるワケがない!!と自身に言い聞かせ、今度はツアーの引率として仕事で「歌島」に舞い戻ってきた金田一。過去の出来事は忘れて仕事に臨もうとするが、そんな金田一の思いを踏みにじるかのように、やっぱり今回も“ファントム”による惨劇は幕を開けてしまうのだった――。

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20年後のみなさん
ストーリーもさることながら、まず気になるのは【金田一少年の事件簿】の登場人物達の20年後の現在ですよね。
金田一は上記のあらすじの通りだとして、この第1巻で明かされているのは・・・

 

美雪大手航空会社のチーフパーサー
剣持警部警察は退官している
明智警視出世して警視長になっている
佐木竜二大手映像会社課長
村上草太地元信用金庫の課長。概婚。子供2人。

 

剣持警部と明智さんは「そりゃまぁそうですよね~」で、佐木と草太は「ぽいわ~」って感じ。明智さんは結婚しているのか気になるところですが・・・まだよくわからないです。

1巻だと、美雪は名前が出て来るのと、金田一と連絡取り合っている様子のみで実際に登場はしてくれませんでした。残念(-_-)

 

そして、容姿の変化なのですが・・・みなさん不思議なくらい全然変わっていない。20年だよ?5年とかじゃないよ?って言いたくなるのですが・・・。人物の容姿はもう開き直ってまったく変えない方針なんですかねぇ・・・。金田一とか、「お前社会人になってもその髪型か」とか思ってしまう。

 

 


『歌島リゾート殺人事件』
と、いう事件名なんですね。今回は。ファン的にはオペラ座”が題名から抜けてるっ!ですが、「オペラ座館」がもうないのだからしょうがないか(^^;)


※過去三回のオペラ座館連続殺人事件についての詳細はこちら↓

 

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今回は「歌島」で婚活ツアーってのが妙な雰囲気。しかし、社会人ならではの題材ではある。
美雪が不在なので、金田一の部下・葉山まりん(きらきらネーム・・・)ちゃんが助手ポジションを務めています。可愛いけども、今後はどうなるのだろうか。美雪が助手してくれないってのはファンとしては寂しいのですが・・・。


この1巻では事件はまだ解決しません。もう1冊丸々使いそうな感じですがどうなんでしょう。


最初の殺人でシャンデリアが落下しなかったので驚きました。まさかのシャンデリア落ちなしか!?とか不安(?)になりましたが、その後やっぱりシャンデリア落下したので杞憂だった(笑)


ミステリの場合、脈で死亡判断するときはほぼほぼ死んでいないというのが定石なので(ボールとか現場に転がっている場合は特に)最初の段階では桜沢さんは死んでいないんですよね、多分。だとすると脈をはかった麻生さんが怪しいですが・・・。胸が丸出しになったときにあった黒子も気になりますしねぇ。犯人がルームサービスのふりしているシーンがあるので、冬木さんも怪しいですけど。でもミスリードかも・・・う~ん。


あと、今回の4代目ファントムは入念な計画は立ててなさそうですね。そしてなんだか性格悪そう(笑)歴代ファントムに怒られるぞ。

 

「戦争中にたくさん人が死んだ島だってリゾートになってる~」と作中で度々出て来るんですけど、じゃあ「墓場島」とかも今はリゾート地になっているのかなぁ~とか思う。

 

金田一少年の事件簿File(14) (講談社漫画文庫)

金田一少年の事件簿File(14) (講談社漫画文庫)

 

 今後出る・・・かも?

 

 

 

 

 

 


なぜ「解きたくない」のか?
今作で「もう謎は解きたくないんだぁぁぁ~!!」と繰り返し言う金田一ですが、なぜそんなに解きたくないのでしょうか?
そもそも、今のPR会社には新卒で入ったとのことですが、高校を卒業してから20年の間に殺人事件には遭遇しなかったのかしら。高校時代にあんなに“死神体質”を発揮していたのに?普通に考えると二時間ドラマの主人公よろしく、仕事の引率先でことごとく事件に遭遇するのが自然なんじゃないかと思うのですけども。


読んでいると、どうも何か決定的な事があって「もう謎は解きたくない」と言っているみたいなのですが・・・。推理のせいで誰か死んじゃったとか?その“何か”で持ち前の死神体質も鳴りを潜めたってことなんですかね?

気になるのは高遠さんとはどうなったんだってところですが・・・。1巻の段階ではまだ高遠さんの話はまったく出て来てない状態です。大変気になりますね。

 

 


解くしかない
本の最後に金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』からのメッセージ、“初代ファントムから4代目ファントムへの警告・・・!!”が載っています↓


“もう謎は解きたくないって言ってるし流石に大丈夫でしょ・・・”そんな甘い考えは捨てろ・・・!!
気づけば謎を解き始め、犯人を追い詰め始める男・・・それが金田一一なのだ・・・!!

初代ファントム・有森もこう言っていることですし、2巻ではズバッと謎を解いてくれるでしょう(^^)事件以外にも気になるところがいっぱいあるので、今からもう2巻が楽しみです。新しい決めゼリフも爆誕するんだそうな。2巻の発売予定は2018年10月とのこと。発売されたらまたこのブログで纏めたいと思います!

 

※まとめました。2巻の詳細はこちら↓

 

 

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ではではまた~

 

 

 

金田一37歳の事件簿(1) (イブニングKC)
 

 

 

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『金田一くんの冒険2 どくろ桜の呪い』感想・あらすじ

こんばんは、紫栞です。
今回は今月の7日に発売された金田一くんの冒険(2) どくろ桜の呪い』をご紹介。

金田一くんの冒険 2 どくろ桜の呪い (講談社青い鳥文庫)


金田一少年の事件簿】でお馴染みの金田一一が小学六年生のころの冒険を描く、講談社青い鳥文庫から刊行のシリーズ。シリーズ第1弾の『からす島の怪事件』に続く第2弾ですね。

 

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あらすじ
ある日、はじめと美雪が朝早くに登校すると、六年生の各クラスの黒板に謎の文字が落書きされていた。一組から六組まで記された文字を順番につなげると「どくろざくらにちかづくな」という文章になる。どうやら校庭の端に植えられている『どくろ桜』をさしているらしい。
『どくろ桜』は不動小学校に一本だけある桜の木で、花が咲くと“どくろ”の顔に見えて気味悪がられており、木の下には“どくろ先生”に食べられた生徒の死体がたくさん埋まっているという、不動小学校七不思議の一つとして数えられる怪談のあるいわくつきの桜だった。学校では今、この『どくろ桜』を切って新しい遊具を設置する計画が持ち上がっていたのだが――。
はじめたち『冒険クラブ』は「六年生全教室黒板落書き事件」の調査を開始。しかし、調査を進める『冒険クラブ』には次々と恐ろしい出来事が。これは『どくろ桜』の呪いなのか?はたして一連の事件の犯人は誰――?

 

 

 

 

 


シリーズ第2弾は学校が舞台。学校でミステリといえば七不思議。金田一少年で七不思議ですと『学園七不思議殺人事件』をどうしても連想してしまうところですが。

 

 

今作で中盤に出てくるトリックがまた『学園七不思議殺人事件』のメイントリックを連想させるものです。これはあえてなのか、それともただのレパートリー不足なのか・・・。いずれにせよ、小学校の頃にこのトリックを暴いていたなら『学園七不思議殺人事件』のメイントリックなんて一ちゃんには余裕だなという気はする(^^;)

 

前作同様、語り手は終始美雪です。いまさらですが、美雪はむかっしから一ちゃんのことが好きなんだな~というのが伝わってくる・・・。

 

 

さて、今作で注目すべきは千家貴司が登場する点ですね。千家は『首吊り学園殺人事件』

 

金田一少年の事件簿File(8) (講談社漫画文庫)

金田一少年の事件簿File(8) (講談社漫画文庫)

 

 

『魔犬の森の殺人』

 

 

に登場する、金田一少年ファンとしては善くも悪くも忘れられない人物なのですが。


今作では秀才の優等生で生徒会長。一ちゃんをライバル視しているような、美雪に気があるような・・・という描写があります。


・・・・・・なんだか色々と違和感が。


小学校の頃ってそうだったのかい?そうなのかい?う~ん。
まぁそんなこと言うと『魔犬の森の殺人』のときも十分違和感はあったんですけども(^_^;)

今作だと「勝負しないか、金田一とか言い出す千家ですが(ここもまた違和感ですが)、結局お話は全然勝負しないまま終わりました。千家は今後またこのシリーズに登場するのかな。『冒険クラブ』のメンバーじゃないし、最初の“おもな登場人物”に名前がないからレギュラー入りではなさそうですけど。脇では登場しそう。

 


お話は金田一少年シリーズらしくって良かったです。個人的には前作の『からす島の怪事件』より好み。
どうでもいいことですが、読んでて意外だったというかショックだったのが、タイムカプセルが何なのか知らないと登場人物達が言うところですね。今の小学生知らんのか・・・なんだか哀しい(笑)

 

シリーズはまだまだ続きそうですね。また半年後ぐらいに刊行されるのかな?次回作も楽しみです。

 

ではではまた~

 

 

 

『検察側の罪人』 原作小説 ネタバレ感想 驚きの内容とは?

こんばんは、紫栞です。
今回は雫井脩介さんの検察側の罪人をご紹介。

検察側の罪人 文庫  (上)(下)セット

8月24日公開予定の映画「検察側の罪人」の原作本ですね。

 

あらすじ
東京地検の検事・最上毅。彼には「根津女子中学生殺害事件」という、犯人が捕まらないままに時効をむかえてしまった忘れられない事件があった。被害者の女子中学生は最上が大学時代に親しくしていた寮の管理人夫婦の娘だったのだ。
事件から23年が経った2012年4月、大田区浦田で「老夫婦刺殺事件」が発生する。検事として捜査に立ち会った最上は、容疑者リストの中に“松倉重生”の名前を見付けて驚愕する。松倉は「根津女子中学生殺害事件」当時、最有力容疑者として名前が挙がっていた男だった。
最上は今度こそ松倉に法の裁きを受けさせようと決意するが、松倉は時効が成立した「根津女子中学生殺害事件」の犯行は認めたものの、「老夫婦刺殺事件」に関しては一貫して犯行を否認し続ける。やがて捜査線上には別の容疑者も浮上してくるが、最上は松倉犯人説にこだわり続け、捜査方針を変えようとはしなかった。

最上の指導のもと、「老夫婦刺殺事件」を担当することになった新人検事・沖野啓一郎は尊敬する最上検事の期待に応えようと、最上に言われるまま激しい尋問で松倉を締め上げるが、頑として口を割らない松倉の様子や事件現場状況などから、松倉が犯人だとはどうしても思えなくなり、最上が指示する強引な捜査方針に疑問を抱くようになる。
そんな中、新たな証拠が発見され、松倉は逮捕されるのだが――。

 

 

 

 


検察小説
犯人に告ぐ』『クローズド・ノート』『火の粉』『ビター・ブラッドなどなど、著作が数多く映像化されていて大変人気のある作家である雫井脩介さんですが、私は今作が初めて読んだ雫井作品です。映画の予告編を観て気になったので読んでみました。

作品一覧を見てみてもわかる通り、雫井さんは多くのジャンルを手がけていらっしゃいますが、今作はとにかく“検事”のことが描かれている“検察小説”。
「時効」がテーマの一つで、2010年に改正刑事訴訟法が執行されて死刑に相当する殺人罪の公訴時効が廃止されたが、執行前に時効を迎えていた事件は改正前の期間が適用されるため、犯行を行った時期によっては罪科に処されるに済む人間がでてしまうという現実や、検事一人の裁量で事件の流れを決める事が出来てしまう司法制度の問題点などが描かれています。


率直な感想
私にとって初めての雫井作品だった訳ですが、非常に面白かったです。
上下巻で分冊になっている文庫版で読んだのですが、上巻の終盤(つまり物語の中盤)で予想外の展開に驚き、下巻に入ってからは最上と沖野の対立・・・と、いうか、沖野がどのように真相にたどり着くのかが気になって一気読みでした。主要二人はもちろんですが、他の登場人物達の“善くも悪くも人間くさいやり取り”も読んでいて面白かったです。
そして、読み終わってまず思った事は、「映画はどの程度まで原作にそったストーリーにするのかなぁ」と。原作通りだとキャスト的には結構な問題作で、今までにない新鮮な(?)作品になるのではってな気が・・・。

 

 


映画

映画の監督はクライマーズ・ハイ』『日本の一番長い夏』などの原田眞人さん。

 

現在わかっているキャストは以下の通り


最上毅木村拓哉
沖野啓一郎二宮和也
橘沙穂吉高由里子
丹野平岳大
弓岡大倉孝二
小田島八嶋智人
高島矢島健一
諏訪部利成松重豊
白川雄馬山崎努

 

調べると他の役者さんの名前も出ているのですが、どの役をやるのかがまだ明記されていないので・・・。
原作での重要人物である「松倉」が何故かキャスト欄に明記されてないのが疑問。映画の予告映像を観るぶんには酒匂芳さんが松倉を演じてるってことで間違い無いとは思うのですが・・・。この予告映像を観た感じでは、松倉は原作以上に腹が立つ人物像になっていそうですね(^^;)

木村拓哉さんと二宮和也さんが共演することで話題になっている今作。原作は最上と沖野の対決が大きな見所なので、映画ではどのように対決シーンが仕上がっているのか気になるところですね。容姿は二人とも原作から大きく外れているってこともないと思います。特に沖野は原作では“童顔で30代の年相応には見られない”という設定ですしね。


個人的には商売人弁護士・白川雄馬山崎努さんが演じるというのが意外でした。白川と山崎さんだと風格の雰囲気(?)が別物だって気がするのですが・・・。松倉もそうですが、人物像はそれぞれ原作とは多少変えているのかも知れないですね。

 

 

 

 

以下ガッツリとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人殺し
最初は松倉が「老夫婦刺殺事件」の犯人だと心から信じ、今度こそ法の裁きを受けさせようと純粋に奮闘していた最上ですが、松倉の犯行として辻褄が合わない不都合な飲食店のレシートを家宅捜索で発見、そのレシートを捜査陣に見つからないように破棄したところから道をふみはずし、松倉の部屋から持ち出したものを殺人現場に放置して証拠品を捏造しようとしたりするなど、完全な犯罪行為をしてしまう最上。もはや「老夫婦刺殺事件」の犯人を特定することから“松倉を「老夫婦刺殺事件」の犯人にすること”にしか考えが及ばなくなっていきます。
違法行為や無理な指示で何とかして松倉を逮捕しようとする最上ですが、新たな容疑者・弓岡嗣郎が捜査線上に挙がり、弓岡が犯人だと認めざるおえない状況に陥ると、さらに驚くべき行動にでる。なんと、弓岡を自らの手で計画的に殺害してしまうのです。

友人である丹野の自殺に啓示を受けた気になった最上は

やってもいない罪をかぶせることにこそ――それも己の罪過を上回る今回の事件のような罪をかぶせることにこそ――断罪を逃れた松倉に下される天誅として、大きな意味が出てくるのではないか。

 

それこそが自分にしかできないことで、

 

二人もの命を奪った凶悪犯だ。
松倉を裁くためだからといって、この男を逃がしていいわけはない。
罰せられるべき男なのだ。

 

との考えから弓岡を殺し、弓岡が所持していた「老夫婦刺殺事件」の凶器を松倉の部屋から持ってきた新聞紙に包んで証拠品を捏造。逮捕見送りになる寸前だった松倉を一転して逮捕させることに成功する。

 

しかし、この発見された凶器の不自然さによって警察の捜査への疑惑が決定的になった沖野は、検事を辞めることを決意。冤罪を晴らそうと松倉の弁護士に接触して検察側、つまり、最上と対決することとなる。

 

私、読んでいてですね、最上が人殺しまでしてしまうのには驚きました。レシートを破棄した段階で「あーやっちゃったー」って感じだったのですが、まさか計画殺人までしでかすとは・・・。文庫だと最上が犯行をおこなったところで上巻が終了するので、読者としては間髪入れずに下巻へ急げ~!です。

 

 

 


正義?
この小説では一応、最上にも沖野にも感情移入出来るように書いている雰囲気なんですが、私個人としては最上には全然感情移入出来ない・・・と、いうか、終始最上に対してはムカムカしながら読んでしまいましたね。
松倉も弓岡もどうしようもないくらい腹立たしい人物なので気持ちはわからないでもないですけど、やっぱり“法律”という圧倒的な力を使える立場の人間が、個人的感情で無罪の人間を陥れようとするのは理不尽で容認出来ないですね。しかも最上は「正義」をおこなっているつもりでいるってのがまた(-_-)

 

最後に最上の犯行を暴いた沖野は“最上はずっと検事だったのだ”みたいな事いいますが、正直言って、人殺しが「正義」とか偉そうに何言ってるんだ、人を殺した時点で検事どころか他にも色々と失格だよ。と、思う。

なので、終盤にはこう、最上にビシッと「なんてバカなことをしたんだ」と言ってくれる人がいるだろうと思って読み進めていたのですが、皆何故か逮捕された最上に同情的で「なんで?」って感じでした。特に、沖野が面会の時に言ってくれるかと期待していたのに「最上さんの力になりたいんです」とか言い出したのには肩透かしで非常に残念。沖野は最後“自分がやったことは「正義」だったのか”と悩みますが、別に悩む必要ないと思う。

 

個人的には法律は正義の為にあるというより、社会秩序のためにあるって思っているので、終盤のまとめ方とかにはちょっとモヤモヤしてしまいました。非常に面白い小説には違いないんですけどね。

 

あと、諏訪部の麻雀のくだりって何のためにあったのかわからないんですが・・・私の読解力が足りないんですかね。私は麻雀に無知な人間なので読んでてちょっと“アレ”だった(^^;)

 


しかし、原作通りなら木村拓哉さんは冤罪をつくろうとする人殺し検事の役を演じるってことですよねぇ・・・出演作全部観ている訳ではないので断言は出来ませんけど、今までにない役柄で斬新なような。代表作のドラマが検事でヒーローなのに・・・

 

 

この映画では真逆だと。う~ん(^_^;)

 


まぁ、色々と気になるところではありますが、原作は「正義」の考え方で意見がわかれる人もいるでしょうが、作者の雫井さんが意識しているという「読者がずっとページをめくりたくなるストーリー」ってのは、まさにその通りという小説なので、読んでいて夢中になれるには必至です。

ちょっとでも気になった方は是非是非、読んでみては如何でしょうか。


ではではまた~

 

検察側の罪人 上 (文春文庫)

検察側の罪人 上 (文春文庫)

 

 

 

検察側の罪人 下 (文春文庫)

検察側の罪人 下 (文春文庫)