夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』弁護士・御子柴礼司 モデル・他作品との繋がり解説~

こんばんは、紫栞です。
今回は中山七里さんの『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』をご紹介。

贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫)

あらすじ
御子柴礼司はどんな罪状で起訴されようが、必ず執行猶予を勝ち取るかわりに、被告に多額の報酬を要求することでウラの筋では有名な悪辣弁護士。
かつての名前は『園部信一郎』。二十六年前、十四歳のときに幼女バラバラ殺人を犯し、〈死体配達人〉と呼ばれて世間で恐れられた殺人犯だった。逮捕され、少年院に収監された後に名前を変えて弁護士となったのだ。
そして四十歳となった現在、御子柴はまた一つの遺体を遺棄しようとしていた――。

入間川の堤防で三十代前半だと思われる男性の死体が発見される。判明した死体の身元は加賀谷竜次。強請屋として有名なフリーライターだった。埼玉県警捜査一課の渡瀬と古手川は、加賀谷が最近何かと騒がれている東條家の三億円保険金殺人について調べていたこと、その過程で事件の担当弁護士・御子柴礼司が、四半世紀前に起きた猟奇殺人事件の加害者少年〈死体配達人〉であったという事実を知ったらしいことを突き止める。
脅迫してきた加賀谷を御子柴が殺害したのではないかと捜査を進める渡瀬と古手川だったが、御子柴には犯行時刻に鉄壁のアリバイがあった。

弁護士として三億円保険金殺人事件を追う御子柴と、その御子柴を追う渡瀬と古手川。二転三転する二つの事件の真相とは?

 

 

 

 

 

 

 


異色の前歴を持つ弁護士
『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』は中山七里さん初のリーガル・サスペンス小説で、【御子柴礼司シリーズ】の第一作目。

上記のあらすじを読むと、アリバイ崩しがメインの推理小説だと思われるでしょうが、実際は弁護士・御子柴による法廷劇が中心のリーガルもの。


冒頭から遺体を遺棄している御子柴の視点が描かれて驚き、その御子柴が弁護士であることに驚き、さらに少年時代に猟奇殺人の前歴があることに驚き・・・で、のっけから驚きの連続なんですが、死体遺棄をしていた経緯は一旦展開的に保留され、三億円保険金殺人の法廷論争がメインとして話は進んでいきます。法廷戦術や事件の供述調書、見取り図や証人尋問など、細部にわたって詳しく書かれていると感じました。この法廷劇だけで充分に読みごたえがあります。

しかし、「それだけで終わらないのが中山七里作品だよ」といった具合に、法廷劇だけでは終わらずに、ミステリとして驚きのどんでん返しな真相が待ち構えています。真相が何度もひっくり返るので、「え?え?」と息つく暇も無く驚き続ける感じですね。最終ページまで気が抜けません(^^;)。

リーガル・サスペンス、ミステリの要素に加えて、大きく扱われているのは少年法の是非と主人公の過去、殺人罪に向き合う“想い”です。


今作は四章から成る構成ですが、第三章「償いの資格」では章の全てを使って御子柴の少年院時代の出来事が描かれています。保険金殺人やフリーライター殺人の事件と直接関係が無いながらも非常に引き込まれる内容で、物語りの中盤の章に持ってきていることからも、今作はこの第三章を書くことが著者の主たる目的なのではないかと。それは『贖罪の奏鳴曲』というタイトルにも表れていますね。

 

 

 


モデル
弁護士としての腕は一流であるものの、そのスキルと引き替えに依頼人には法外な報酬を要求するヤクザな商売をする一方で、一文の得にもならない国選の事件を引き受けたりもする、まるで“弁護士会ブラック・ジャック”のような御子柴ですが(ホント、『ブラック・ジャック』がエンタメ界に与えた影響は大きいなぁ・・・)、その設定以上にこの主人公が特異なのは、少年時代に殺人を犯して逮捕された過去があるという点です。

 

主人公の御子柴が少年時代に犯した殺害事件というのは、近所に住んでいた五歳の女児を殺害後バラバラにし、生首を郵便ポストの上に、右脚を幼稚園の玄関に、左脚を神社の賽銭箱の上に・・・と、一日に遺体一パースずつ人目に付きやすい場所に遺棄するというもので、逮捕後に語った殺害動機は「とにかく人を殺してみたかった。相手は誰でも良かった」
なんとも愉快犯じみていて、猟奇性が高い事件でした。

 

犯行内容や十四歳男児の凶行であること、世間での事件の扱われ方などから、一九九七年に起きた『神戸連続児童殺傷事件』、いわゆる酒鬼薔薇聖斗事件”を連想する人が多いと思います。非常にセンセーショナルな事件でしたし、この本の参考文献にも『少年A 矯正2500日全記録』

 

少年A 矯正2500日全記録 (文春文庫)

少年A 矯正2500日全記録 (文春文庫)

 

 

とあるので、著者も『神戸連続児童殺傷事件』を意識して設定に盛込んだことは間違いなさそうですが、この事件と同様に著者が意識したと思われる事件が一九六九年に起きた『高校生首切り殺人事件』(サレジオ高校首切り殺人事件)
男子高校生がいじめに耐えかねて同級生を殺害した事件で、少年犯罪であることや殺害後に首を切断しているなどの類似から『神戸連続児童殺傷事件』と対比して語られることも多い事件ですが(動機や状況は全く異なるので本来は対比して語るようなものではないと思いますが)、この事件の犯人は少年院出所後に名前を変えて司法試験に合格、弁護士となって事務所も持っていたといいます。二〇〇六年に出版された奥村修司さんのルポルタージュ「心にナイフをしのばせて」

 

心にナイフをしのばせて (文春文庫)
 

 で話題になり、ネットに実名や顔写真が出回ったことによって結局廃業してしまったようです。意見が一方に偏っているため、この本自体も批判の対象になったようですが。

 

猟奇殺人を犯した人物が弁護士に。一般的に受け入れがたいことではありますが、少年犯罪は前科がつかないので実力さえあれば弁護士にだってなれるということなんですね。御子柴礼司の設定は明らかにこの事件加害者の実例を受けてのものだと思われます。

 


ドラマ
『贖罪の奏鳴曲』は二〇一五年にWOWOWでテレビドラマ化されています。

 

連続ドラマW 贖罪の奏鳴曲 DVD BOX
 

 全四話で、主演の御子柴礼司役は三上博史さん。
中山七里作品初のテレビドラマ化作品。概ね原作通りのストーリー展開のようですが、犯人像などは結構変更があってラストの決着の付き方も原作とは違いがあるようです。

 

そして今年、二〇一九年一二月にフジテレビ系「オトナの土ドラ」枠にて『悪魔の弁護士 御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲』というタイトルで連続ドラマ放送が決定しています。(長いタイトルですね・・・)
こちらの御子柴役は要潤さん。

タイトルに“贖罪の奏鳴曲”とありますが、このドラマでは概在の【御子柴礼司シリーズ】四作、『贖罪の奏鳴曲』『追憶の夜想曲』『恩讐の鎮魂歌』『悪徳の輪舞曲』を全て映像化するようです。一つの事件を二話ぐらい使ってといった感じでしょうか。
キャストに古手川と渡瀬の名前がないので、ひょっとしたらこのドラマでは登場しないのかもしれません。この一作目の『贖罪の奏鳴曲』は終盤かなり渡瀬が良いところかっさらっているんですけどね・・・。

 

 

 


「カエル男」との繋がり
今作は同著者による『連続殺人鬼カエル男』とお話上、密接な繋がりがあります。

 

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古手川・渡瀬コンビは著者の他作品でも度々登場するコンビなのですが、『贖罪の奏鳴曲』は古手川が埼玉県警に配属されて一年が過ぎた頃のお話で、時系列としては『連続殺人鬼カエル男』事件の割とすぐ後頃。作中に『連続殺人鬼カエル男』での出来事を示す記述が多数出て来ます。

そして、『贖罪の奏鳴曲』第三章「償いの資格」では『連続殺人鬼カエル男』に登場した有働さゆりが旧姓の「島津さゆり」として登場しています。御子柴と同時期に少年院に収監されており、院生が一同に会しての合唱会で島津さゆりのピアノ独奏ベートーヴェンピアノソナタ〈熱情〉」を聴いたことで御子柴は欠落していた感性が目覚め、気持ちが変化していくという訳で、重要な役割を担っています。


この少年院でのことがあって、『連続殺人鬼カエル男』の続編『連続殺人鬼カエル男ふたたび』では御子柴はさゆりの担当弁護士として古手川と渡瀬に再度接触しています。

 

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『連続殺人鬼カエル男』→『贖罪の奏鳴曲』→『連続殺人鬼カエル男ふたたび』と読んでいけば各繋がりを愉しめるファンサービスな作りになっていると。
ただし、順番を間違えるとネタバレをくらうので注意が必要ではあります。私自身も『連続殺人鬼カエル男ふたたび』の方を先に読んだ(この作品に御子柴が出て来たからこそ『贖罪の奏鳴曲』を読もうと思ったのですが)ので、『贖罪の奏鳴曲』での御子柴の処遇については最初からネタバレをくらっての常態ではありました。それでも面白く読めましたけどね。

 

 

 

 

 

 

 

贖罪
今作のテーマはやはり“贖罪”。

多くの人々は面白半分で猟奇殺人を犯した人間などは「化け物だ」という風に捉え、いつまでも危険因子で本質的更生など不可能な存在だと考える向きが強いと思います。まして未成年だったという理由だけで刑事罰を受けず、前科も残らず、名前を変えて司法に携わる仕事についているなど、事件に直接関係が無い人間でも聞かされれば憤りを感じるところですよね。


御子柴も少年院に入ってばかりのころはおよそ罪の意識もない“欠落した”少年でした。なるほど「化け物」な少年で、斜に構え、態度だけ取り繕って少年院での生活をやり過ごそうとしているのがアリアリと見て取れる。およそ本質的更生とは無縁そうな腹立たしいガキです。
ところが、この少年院で島津さゆりのピアノや教官の稲見、同じ院生の雷也次郎と出会い、接していく中で変化が生じてきます。そして院内で起こった事件、自身がしでかしてしまった事によって自らの罪を心から悔いるようになります。雷也と次郎の顛末は本当に悲痛ですね・・・。雷也の母親、いくらなんでも骨ぐらいは引き取れよと思うのですが・・・。

 

悔いたところでどうすることも出来ないのだと絶望する御子柴に、担当教官である稲見は

「後悔なんかするな。悔いたところで過去は修復できない。謝罪もするな。いくら謝っても失われた命が戻る訳じゃない。その代わり、犯した罪の埋め合わせをしろ」

「お前は既に他人の人生を奪っている。だから他人のために生きてこそ埋め合わせになる」

と言います。
ホント、周りに確りと物事を教えてくれる大人がいるいないで人生が変わってしまうものだなぁと深々と思うところですが。稲見のこの言葉と雷也の語っていた将来の夢を受け、御子柴は弁護士を目指す。


御子柴が依頼人に法外な報酬を要求するのは自分が殺した女児の家族や怪我を負わせてしまった稲見などに毎月多額の金を送っているためという事情も終盤で明らかに。
物語りの最後、御子柴が儲からない国選の仕事を引き受けたり、今回の事件で自分の身を危うくしてまで母子を救おうとしたのは何故なんでしょうと疑問を口にした古手川に、渡瀬は「きっと自分が救われたかったんだろう」と答えます。

 

死ぬまで他人のための人生を歩こと。救われたいと願いながら、救われずに苦しんで罪を忘れずに生きていくこと。でも、そんな苦しみも結局は自分の為の行いであること。


もとより人殺しは償えるようなものではないですよね。刑務所に何年入ろうと、多額の金を渡そうと、いくら善行をしようと、償いにはならない。ならないけども続ける。死ぬまで罪と向き合って、生き続けることから逃げないのが、罪人が最大限できうることなのかなぁと。だから御子柴に安楽の日々は今後も訪れない訳で。

 

『贖罪の奏鳴曲』は元々単発ものとして書いていたらしく、シリーズ化は見据えてなかったとのこと。しかし、これだけ盛りに盛った設定をしょわされている主人公ですから、この一作で御子柴を描ききるのは無理というものです。単純に一作で終わらせるには勿体ない主人公ですし、シリーズ化されたのは当然といえる。
直接殺害した訳ではないものの、死体遺棄した事実はどうなるんだとか、御子柴の幼少期とか、母親と妹とか、気になることが山ほどありますので、【御子柴礼司シリーズ】続けて読んでいきたいと思います。

 


ではではまた~

 

 

贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫)

贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫)

 

 

 

 

 

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『金田一37歳の事件簿』5巻 ネタバレ・感想 華道家事件決着。そして“あの”ホテル再び・・・!

こんばんは、紫栞です。
今回は金田一37歳の事件簿』5巻をご紹介。

金田一37歳の事件簿(5) (イブニングKC)

 

2019年10月23日に発売された今巻。通常版と特装版ありで、特装版の方は「激レアポストカードブック」付き。

 

 

今までの文房具グッズや扇子やら箱だのと比べると、比較的“普通”な特典という気が。

ポストカードブックの中身はポストカード全28枚とステッカー一枚といった仕様。“激レア”とついていますが、ポストカードの絵柄は金田一少年の事件簿の頃のコミックスの表紙絵などのようです。私が買ったのは通常版なので詳しくは分からないのですが、書き下ろしイラストは一枚あるかないかですかね。37歳の方のイラストを目当てに買うと後悔するのではと思うので注意が必要でしょうか。

通常版のお値段は693円。特装版は1540円。

通常版の方が表紙のバックが緑っぽく、特装版は青みがかっています。

 


5巻は前巻からの「京都美人華道家殺人事件」が7話と、「函館異人館ホテル新たなる殺人」(!)1話を収録。「京都美人華道家殺人事件」の完結がメインの巻ですね。

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~(犯人の名前も書いているのでご注意下さい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●「京都美人華道家殺人事件」
この事件のあらすじ、他諸々の詳細はこちらの記事の通りなんですが↓

 

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リベンジポルノ画像の双子の入れ替わりや、犯人に関してはこの記事に憶測で書いていたことがほぼ当たっていましたね。

死ぬ前に雁流が言っていた「サイコ」は逆さ富士の“西湖”のことで、後ろに置かれていた花瓶の模様のことを言っていたというのは気が付かなかったですね~。咳をしていたことばかりに気を取られて、花瓶の模様にはまったく注目出来てなかった(^^;)。咳をするため後ろを向いたということが重要な点なのね。


悔し紛れという訳じゃないですけど、正面向いてから「サイコやないか?」って言うの、ちょっと不自然じゃない?ま、後ろ向いたまま発言したらあからさますぎて漫画的にダメなんでしょうけど。
しかし、人が普通に出入りしていた部屋の花瓶の中に生首がずっと入っていたとは考えるだに恐ろしい・・・。「魔術列車殺人事件」のときの団長の首を思い出しますね。

 

 

足跡無き殺人のメイントリックは「そんなものがあるんだ~」と。便利ですね。文明の利器!コリャ知らないと当てられないや。見事なトリックですが、人一人背負って狭い足場を歩いていくのは大変だろうなぁ・・・

桜子を殺したのが薫子で、薫子と雁流を殺したのが黒樹という真相なんですが、黒樹さんは薫子殺害に関しては十分に正当防衛なんだから(なんせ、相手が鬼の形相で鉈振り回して襲いかかってきた訳だし)、わざわざ雁流を殺害してまで隠そうとしなくてもよかったのでは。黒樹さんは根が良心的なぶん、雁流を殺してしまったのが悔やまれますね。

薫子は薫子で、擦り付けるために桜子を殺害する前に、リベンジポルノの脅迫者の殺害を考えるのが普通じゃないか?とチト疑問。黒樹も薫子も無我夢中で冷静に考えて行動出来なかったってことなのかな。薫子の方は手の込んだ計画殺人なのでなんともはやですが。ま、それだけ病んでいたと・・・。

 


戻ってきた
この京都編、良かったですね。個人的には37歳になってからの事件の中では今のところ一番好きです(まだ3つの事件しかやっていませんけどね)。


「歌島リゾート殺人事件」「タワマンマダム殺人事件」

 

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では事件や犯行に直接関わる部分がコミカルでお軽い感じで、新鮮で気楽に読めるものの、従来の【金田一少年の事件簿】ファンとしては“殺人行為”をするに至る背景に“重さ”がないのはやっぱりどうかなと思っていたので。動機面は重々しく描くのがこの本格推理漫画の持ち味ですからね。そこを変えられるのは抵抗がある。


今作は事件に対しては確りシリアスに描かれていてぶち壊すようなギャグもなく、本来のシリーズ雰囲気に戻っている印象でした。犯人の黒樹さんや被害者の桜子さんの詳細や事情が悲しくて切なくって「これぞこの漫画シリーズの醍醐味だな」と。

金田一も本来の調子を取り戻してきている様子で、推理や犯人を追い詰める場面などに従来のキレが。

 

 

他に・・・

山科刑事、金田一のこと何か調べてくれるかなぁ~と期待していたのですが、さほど目立った動きはしてくれないまま終わっていましたね(^^;)。

お話の都合上なのでしょうが、何もしないにしても会社の上司と部下が出張中にラブホテルに泊まるのは私個人の感覚では絶対NG です。結果的に泊まることにはならなくってホントに良かった安心した(-_-)。

しかし、この事もあって、まりんちゃんへの印象がちょっと変わっちゃったなぁ。思っていた以上にしたたかな女なのかもしれません。
やはり、美雪に早く登場して欲しいと願うばかりです。ずっと言っていますけど。いつまで言い続ければいいのだろう・・・。

 

 

 

 

 


●「函館異人館ホテル新たなる殺人」

異人館ホテル!ふたたび!!

ここでまた「歌島」同様の“ふたたびネタ”が。目次見たとき思わず変な声でた(笑)


「歌島リゾート殺人事件」の方はオペラ座館が既にないということもあって、さほど過去の事件との関連性などはなかったのですが、今作はどうなるのでしょうか。この巻には1話しか収録されていないのでまだどんな事件が起こるのかも分かりませんが。
金田一少年の事件簿】の異人館ホテル殺人事件」

 

 

は“赤髭のサンタクロース”という怪人名で、佐木が殺されたり、麻薬が絡んでいたりといった事件だったんですけどね。

前の事件との繋がりとかがあった方が長年の読者としては楽しめるんだけどな~とか思ったり。また劇団が絡んでくる事件ではあるようですが。「函館ウォーズ」という、なんともキラキラした演劇のようです。現代の風を感じる・・・。

 


いつきさん
この1話目で【金田一少年の事件簿】での主要人物の一人、フリーライターいつき陽介が登場しました。

現在52歳。フリーライターを現役で続けているようで、他の皆様と同じく容姿もさほど変わっていませんが、金田一少年の殺人」の事件の際に引き取って養子にしたみずほちゃんがもう30歳で結婚して子供がいるとのことで、改めて20年という月日の重大さにショックを受ける。
あのみずほちゃんが30歳子持ち・・・20年経っているのだから当たり前なんだけど、サラッと言われているぶん衝撃がある(^_^;)。


いつきさんは劇団の取材をしに来ているので、金田一やまりんちゃんと一緒に事件に関わってくるのが予想されますが・・・。その過程で金田一の20年の間にあった“何か”の新情報出してくれますかねぇ・・・。次でもう6巻目ですし、そろっと過去の事情が明かされてきても良さそうなモノだと思うのですけども。

 


驚異的!

今巻には新キャラで警視庁捜査一課・警視の幸村真之介(27)が登場しています。


この人、登場して早々に明智さんに「驚異的連続殺人犯――!それが“金田一一”の正体なのだとしたら・・・!!」と大真面目な顔で大胆な仮説を口にしています。なんでも、こんなに事件に遭遇するのは偶然じゃなく、20年間の沈黙を破って殺人鬼が復活したのだから正体を暴かねばと。

明智さん、聞いている途中で耐えられなくなってお腹抱えて笑っていましたけど(^^;)。


「これは果たして偶然なんでしょうか?」と言われても、それが本格推理モノの主人公が背負わされる“死神体質”なのだから、残念ながら偶然ですとしか言いようが無い。

しかし、それにしても壮大な仮説ですよね。仮説通りなら驚異的過ぎる殺人犯ですよ。でもまぁ、野放しにしたら「今後犠牲者は増える一方です!」というのはある意味正解ではある。

 

幸村さんは若きイケメンエリート刑事とのことですが、上記の発言から考えるに次巻でもトンチンカンな振る舞いをしそうな予感。ホントに金田一に対して殺人犯の疑いを持って接するつもりなのかな?
想像するとちょっと楽しそうではありますね(^_^)。


そんな訳で、次巻も楽しみに待ちたいと思います!


ではではまた~

 

金田一37歳の事件簿(5) (イブニングKC)

金田一37歳の事件簿(5) (イブニングKC)

 

 

『犯人たちの事件簿』7巻 感想 Caseシリーズ突入~

こんばんは、紫栞です。
今回は金田一少年の事件簿シリーズのスピンオフ漫画金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(7)』をご紹介。

金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(7) (講談社コミックス)

今回はKCコミックの【金田一少年の事件簿】Caseシリーズの第1巻(全体で数えるなら28冊目)の表紙パロディ。

金田一少年の事件簿 (Case1) (講談社コミックス―Shonen magazine comics (2551巻))

この『犯人たちの事件簿』も前巻でFILEシリーズが終わり、

 

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この7巻からはCaseシリーズに突入です。

コミックスのデザインも本家に合わせてリニューアルですね。デザインがリニューアルされても、やっていることは同じ。今までと何ら変わらずの殺人事件漫画が繰り広げられています。ま、それは本家も同じですが。


本家では、FILEシリーズのときは1つの事件が次の巻をまたぐことがしばしばだったのですが、Caseシリーズでは読んでいてキリが良いように一冊、または二冊きっちりに終わるようになっています。なので、コミックの表紙と背表紙に事件名が大きく書かれているデザインでした。ページの制限があることが事件の詳細を描く上で困難で窮屈だと作者サイドの方で思うところがあったらしく、〈20周年シリーズ〉金田一少年の事件簿R〉の方ではFILEシリーズと同じく事件が巻をまたぐ仕様に戻っています。

※【金田一少年の事件簿】の各シリーズの詳細について、詳しくはこちら↓

 

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この『犯人たちの事件簿』7巻では、「摩犬の森の殺人」「露西亜人形殺人事件」「銀幕の殺人鬼」の3つの事件と、巻末に作者の船津紳平さんの実録漫画「新 外伝煩悩シアター」の四コマ3本収録。デザインの関係上、表紙に「摩犬の森の殺人 他」と書かれていますね。他にも本家のコミックスをパロディした“遊び”が細部にありますので、比べると楽しいです。

この表紙絵、一瞬「後ろの茶髪は誰?」と、思ってしまったのですが、千家ですね。千家は本家ではカラーイラストがなく、アニメだと黒髪でオデコのほくろもなくなっている(それだと見た目的に原作とはほぼ別人じゃんね)ため、原作のトーン髪のイメージを重視して茶髪になっているようです。どちらにしろ、カラーだと別人のようですね。

 


●ケース1「摩犬の森の殺人」(本家では20件目)

 

 犯人:千家貴司

KCコミックではCaseシリーズから巻数の表記を変えていますが、講談社文庫版ではfileで統一されています。本家ではCaseシリーズの1巻ですが、【金田一少年の事件簿】の全体では20件目の事件。ややこしいですよね、ホント・・・(^^;)。

「首吊り学園殺人事件」のときから金田一の友人として登場していた千家が犯人だったことで有名な事件。当時・・・と、いうか、今もこの犯人については色々と言われてしまいますね・・・。
犯人もさることながら、犬をフル活用したトリックというのが斬新でした。実現性は別として。この漫画での千家も犬の躾とエサ代に苦労しています。まぁそうですよね・・・あれだけの犬の数だから・・・。


この事件では本家でも導入部分の悪のりが過ぎていました。美雪、キノコでラリって家に火つけているし。普通に重罪もの。それにしても、当時本家読んだときも思いましたが、キノコ混入がなくとも元々千家は八尾の別荘を燃やす予定だったというのは、あまりにも酷い計画ですよね。目的が単に研究所の医学生たちと自然に合流するためってだけだし・・・。八尾が可哀想すぎる。
最後の犬たちの行動は確かにおかしい。本家だと感動的なシーンなので思わず流されてしまうのですがね・・・。
「と・・とりあえず金田一の横で仲間感出しとくか・・・・」に凄く笑いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

●ケース2露西亜人形殺人事件」(本家では24件目)

 

 犯人:桐江想子

高遠さんが犯人側の人間ではなく、事件に巻き込まれる第三者として登場する作品。

最終的に金田一と高遠さんとで協力して犯人を追い詰めるのですが、二人が仕掛ける罠が二重三重と手が込んでいて、犯人の桐江想子としては戦々恐々だろうな、そりゃ。と、思う・・・。金田一に加えて高遠さんじゃ、分が悪すぎますよね。窓開けっ放しにして人形を濡らしてしまったのと、幽月さんを殺してしまったのが想子さんの最大のミス。でも、行き当たりばったりの犯行にしては、この二人相手によくやったよ・・・と、言いたい・・・。


作中に出て来る、牛乳の膜で睡眠薬入りの砂糖を包むというアイディア?トリック?もなにかと話題でしたね、当時。「そんなに上手く出来るのか!?」と実験してみた読者は結構な数いると思われます。私の家は低脂肪乳しかなかったんで実験出来なかった・・・(^_^;)。

この漫画で想子さんが言っているように、かなりトリッキーな発想なんですが、金田一は腹の立つドヤ顔で難無く実証してみせています。恐ろしい・・・。痴漢から助けるために神明先生にブランデーの瓶を頭めがけて落す金田一は暴力的。本家では軽い描写でしたが、下手すりゃ死んでる。恐ろしい・・・。

 

 

 

 


●ケース3「銀幕の殺人鬼」(本家では21件目)

 

  犯人:遊佐チエミ

これ以上ないくらいに典型的な物理トリックが用いられる事件。

この漫画で遊佐チエミが「自分で考えておいて何だけど・・・・できるか!このトリック!!」と言っているように、普通は人を殺そうってときにこんなトリック考えないし使わない。でも本格推理モノなので、1%でも実行できる可能性があるならあえて奇抜なトリックを使う。夜の学校で何度も練習したというのは本家でも記されていまして、大変な努力だなぁと思った。


被害者が殺される前に説明的な独り言をベラベラ言うのもミステリの“お約束”ですね。
黒河さんみたいにオカルトチックで思わせぶりな発言をする痛々しいキャラクターが登場するのも、ミステリの定番。こうやって考えてみると、この事件は「これでもか!」というくらいにベタベタな本格推理モノだったんですね(比較的、いつもそうかもしれませんが)。しかし、美人だから雰囲気に呑まれるけど、いま読むと黒河さんみたいな先輩がいたら後輩としては確かに恥ずかしいだろうなぁと思う・・・。


あと最後のコップの水の色が変わるヤツね・・・。私も本家読んだとき、何でワザワザ血を連想させる色にするんだよと思った。ホント、犯人いじめなホラーショーですよね。

 

 

 

と、いった感じで、Caseシリーズに突入しても今までと同様にとても面白おかしく、懐かしく楽しい7巻でした。
※本家とセットで楽しみたい方はこちら↓

 

 

次巻、8巻は2020年春頃発売予定で、「天草財宝伝説殺人事件」「怪奇サーカスの殺人」「金田一少年の決死行」が予告ページを見た感じでは収録予定かと。たぶん「雪影村殺人事件」も入ると思うのですが。それだと次巻でCaseシリーズは完結ですね。


ここまでくると全ての犯人たちの苦労を見たいような気になるというもの。このスピンオフ漫画にはまだまだ頑張って欲しいです(^o^)。

 

 


ではではまた~

 

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『バードドッグ』あらすじ・感想 極道探偵による推理はいかに?

こんばんは、紫栞です。
今回は木内一裕さんの『バードドッグ』をご紹介。

バードドッグ (講談社文庫)

 

あらすじ
元ヤクザの探偵・矢能政男は或る日、日本最大の暴力団「菱口組」の直参組長の中でも唯一都内に本部事務所を構えている実力者、燦宮会会長・二木善治朗によって電話での呼び出しを受ける。なんでも、燦宮会理事長になるはずだった佐村組組長が一昨日の晩から連絡が取れなくなったという。状況から考えて殺されているとしか思われぬが、燦宮会内部の者による仕業かもしれず、警察に届ける訳にもいかず、他にヤクザ者探しを引き受けてくれる探偵社も思いつかないといって矢能に捜索を依頼してきた。
一度は断ったものの、後日探偵事務所に現われた織本美華子から、失踪した妹を捜索して欲しいと依頼される。妹・早川美咲は主婦でありながら佐村と交際していたらしく、佐村の失踪と同時期に行方知れずになっているという。
織本美華子の依頼を受けることにした矢能は、佐村組の依頼と協力を得ながら佐村と早川美咲の周辺を調べるが、調べれば調べるほど、二人が交際していたとは思えぬ事実ばかりが出て来る。
妹は姉に嘘をついたのか?何故そんな嘘を?交際が嘘ならば、二人はどうして同時期に失踪したのか?そして、佐村を殺しただろう犯人は、誰なのか?
矢能は燦宮会理事の浅木、秦、間下、冨野の四人のうちの誰かの仕業だとあたりをつけるが――。
物騒な世界で繰り広げられる、物騒な探偵による、物騒な推理が開始される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤクザだらけの推理劇
『バードドッグ』は『水の中の犬』『アウト&アウト』に続く【矢能シリーズ】(探偵シリーズ)の第3弾。
『水の中の犬』は元刑事の「探偵」の物語りがガチガチのハードボイルドでシリアスに描かれるシリーズ前日譚。

 

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『アウト&アウト』は前作で登場した矢能が主人公となり、物騒なドタバタを物騒に丸く収める、ハードボイルドでありながらコミカル色もある痛快エンタメ作品。

 

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今作、『バードドッグ』は、エンタメはエンタメでもミステリ・推理に主軸が置かれた作品。ミステリの分類としてはフーダニットにあたる(と、思う)のですが、そこはやはり【矢能シリーズ】ですので、ミステリといっても一筋縄のものではありません。被害者がヤクザなら、容疑者もヤクザ、探偵も元ヤクザという、ヤクザだらけのミステリエンタメ作品となっております。

 

 


物騒だけどコミカル
前二作以上にヤクザだらけであるものの、今作には前二作のようなハードボイルドな暴力描写はありません。おっかないセリフの応酬はこれでもかとあるんですが、登場するヤクザ達はみんな何処かしら“おかしみ”があって、読んでいるとこのおっかない応酬が楽しくなってきます。

特に佐村組若頭の外崎は、ヤクザとしてやり手なのにやたらと素直な性格をしていて可笑しい。死体を見てゲイゲイ吐きまくっていたりだとか、死体を見るのは嫌だといって逃げまくる下っ端だとか、馬鹿にされて怒り狂ったあと、褒められて分かりやすく喜んだりする理事など、ヤクザであってもどの人物も人間味があって良いです。全体的に、前作よりコミカルさが増した感じですね。

 

今作の舞台は前作『アウト&アウト』から3ヶ月後。矢能の養子となった栞ちゃんは小学三年生になっており、矢能に対しては相変わらずの古女房っぷりを発揮。敬語での小言に加え、おつまみを用意したりグラスを冷やしたりと良妻っぷりもパワーアップしています。時間の経過とともに事件の疵が癒えてきたのか、前作よりも明るくなり、大人びている中に子供らしさが垣間見え、より可愛さに拍車もかかっています。栞ちゃんに接する大人(物騒な人含む)が皆メロメロになっているのは流石。


矢能は矢能で、前作よりもさらに栞ちゃんへの溺愛っぷりに拍車がかかっています。溺愛していることに本人が無自覚なのがまた可笑しい。辞めたとはいえヤクザ者全開な厳つい男が、小学三年生の女の子に頭が上がらない図というのはこれ以上ないくらい微笑ましいですね。

 

 

 

 

“おねえさん”と対面
前作に登場した情報屋やヤクザの工藤ちゃん、匿ってくれるお婆さんや、小悪党警官の次三郎、マル暴のマンボウ顔とキツネ顔の刑事二人組など、今作でもちゃんと登場しています。ですが、いずれも今作ではサラリとした出番ですね。

次三郎が急ぎで大金を欲しがっている理由とかも明かされずじまいでしたし。ま、金に困っているのが常態だから気に留める程のことではないという事なのかもですが。少なくとも矢能は完全無視して事情を訊こうともしていません。

 

今作で注目なのはシリーズ1作目『水の中の犬』で登場していた“美容師のおねえさん”と矢能が対面しているところですね。


このおねえさんは前の「探偵」の髪を最後に切った人で、2作目の『アウト&アウト』では矢能に引き取られた栞に対し、なにかとよくしてくれる人物として説明はあったのですが、ちゃんとした登場はしていませんでした。今作では栞ちゃんに勧められて、矢能がこのおねえさんに髪を切ってもらう場面があります。
二人でかつての「探偵」について話しているのが、1作目を読んだ身としては色々と“クル”ものが。「お友だちだったんですか?」と訊かれて、矢能が「探偵」のことを「そうだな、ああ、友だちだった」と答えるのが感慨深いです。

 

おねえさんの手によって“かっこいい”髪型になった矢能、その後、ヤクザ者も例外なく、会う人会う人に髪を褒められ、一々調子が狂うといって元に戻してもらおうとまでするのですが(結局、おねえさんに「栞ちゃんが喜ぶのだから我慢しろ」とたしなめられて諦めるんですが)、小説だとどんな髪型なのだか分からないので、「どんだけ似合っている髪型なんだ?」と、読んでいて興味津々でした(^^;)。

 

矢能の印象についておねえさんに訊いた栞ちゃん。矢能になんと言っていたか聞きたいですか?と振るも、「フフフ・・・・・・」と笑って「アレはヤバいよ、って言っていました」「栞ちゃんにはまだわからないだろうけど、アレはヤバいって」と謎の発言をしますが、褒めると抵抗するタイプだから矢能には秘密にしてとおねえさんと約束したとかで、何がヤバいのか教えてくれません。今作では最後まで分らないまま終わっています。続編で明かされるんですかね?今から読むのが楽しみです。たぶん“溺愛っぷり”のことだとは思うのですが・・・。

 

あと、情報屋が「シオリンのためを思うんなら早いとこ嫁をもらえ」と言っているのが気になりますね。これも続編でなんかしらの動きがあるの・・・か?

 

 

 

ヤクザなミステリ
推理物となってはいるものの、「矢能は推理しているのか?」といわれると、正直、推理している印象は薄いです。

推理というより、ヤクザ世界での立ち回り方が上手いといった感じですかね。矢能自身は真相自体には重きを置いてない、推理小説における探偵役にあるまじき態度。でも、矢能の立ち回りによって、結果的に罰当たり者が確りと落とし前をつけさせられるという風に、事態は丸く収められます。個人的には現在70過ぎの二木の叔父貴が20年ほど前に犯したという罪の内容にドン引きだったので、叔父貴にもなんかしら罰が当たっても良かったのになぁとは思いますが(-_-)。


最終的に犯人が二人に絞られ、どっちなんですかと外崎に訊かれて矢能が「どっちにしようかな」と答えるのが、読んでいて恐ろしくも“ニヤリ”としてしまうのはこの作品ならでは。
前作『アウト&アウト』は濡れ衣を晴らそうと行動するうちに政治家の陰謀にまで行着いてしまう派手派手しいものだったので、今作はそれに比べると事件内容自体はある意味地味に感じるのですが、物騒でありながらも状況に応じての痛快な立ち回りは前作同様でシリーズの持ち味になっていると思います。


全体的にコミカルではありますが、ヤクザの世界だからこその動機や、妹が姉に嘘を言った理由などは非常に痛切で苦々しい思いに駆られます。個人的には姉が最後に矢能に言った言葉に嘘はないと信じたいですね。


『水の中の犬』『アウト&アウト』、そして今作『バードドッグ』

どれも作品ごとにまったく違う良さがありつつも、シリーズとしての愉しみもあっていずれの作品も面白く読むことが出来ました。私はもう、すっかりこのシリーズのファンです。続編の『ドッグレース』も絶対に読みたいと思います!

 

ドッグレース

ドッグレース

 

 


ではではまた~

 

 

バードドッグ (講談社文庫)

バードドッグ (講談社文庫)

 

 

 

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Cocco 本のまとめ 絵本・エッセイ・小説・・・一挙に紹介!

こんばんは、紫栞です。
今回はCoccoの書籍について、まとめてご紹介。

南の島の星の砂


Coccoは主にシンガーソングライターとして世間的には認知されているとは思いますが、実は本も結構な数を出していまして、エッセイ・絵本・小説と作家活動は多岐にわたっています。
私個人は元々歌手としてのCoccoのファンで、流れるように絵本やエッセイ集にも手を出した次第。音楽の素晴らしさは勿論ですが、Coccoは文章も凄く上手いんですよね。楽曲の歌詞からうかがい知れることではあるのですが、言葉選びのセンスが良いです。謎に包まれたCoccoの過去や私生活が垣間見られたり、文章の内容によっては特定の楽曲の丁寧な解釈が書かれていたりもするので、ファンは必見。個人的には歌手のCoccoを知らない人にもオススメできる作品ばかりです。でもやっぱりその後、歌も是非聴いてくれと言っちゃいそうではありますが・・・(^^;)。

 

 

 

エッセイ集
●『想い事。』

想い事。 (幻冬舎文庫)

想い事。 (幻冬舎文庫)

 

 2007年 毎日新聞社(単行本)

2006年4月から2007年3月までの一年間、毎日新聞で毎月1回連載されていたものを著者・Coccoが撮り下ろした沖縄の写真と共にまとめられた一冊。連載終了時に読者から「きっと本にして下さい」といったお便りが殺到したことよって生まれた本なんだそうな。当たり前ですが、新聞連載は新聞をとっていないと読むことは難しいので、ファンとしては「本にしてくれてありがとう」と感謝の気持ちを抱きます。
このエッセイでは、ジュゴン普天間基地、平和の礎、ひめゆりの塔・・・などなど、Coccoの沖縄への想いが主軸に綴られています。
文章と写真に加え、文章に添ったイラストやCoccoが15歳の時に描いた自画像や書き留めた詩が掲載されていたりと盛り沢山で、色々愉しめる一冊です。
2011年に幻冬舎から文庫版が刊行されています。

 

 


●『こっこさんの台所』

 

こっこさんの台所

こっこさんの台所

 

 2009年 幻冬舎

タイトルに“台所”とある通り、こちらは食を通じて日々を語るエッセイ集。帯に俳優の妻夫木聡さんのコメントが載っているのが結構な驚き。
刊行時には発売を記念してこの本から生まれた楽曲4曲が配信され、後にCDで発売されました。

 

こっこさんの台所CD

こっこさんの台所CD

 

 

この本は季節に添ったものになっていて、楽曲も春夏秋冬それぞれの季節をイメージした4曲となっています。
この本ではエッセイに加えて、Coccoによるお料理レシピが載っています。料理を習ったり資格を持っている訳ではないが、作るのが好きで周りにも好評なので、調子に乗せられて本にしてみたとのこと。レシピは全体的に乾物と野菜がメインの、彩りが綺麗でヘルシーそうなメニュー。料理の写真はもちろん、この頃のCoccoはイギリスと沖縄と東京を行ったり来たりする生活だったので、各場所の写真や食文化、風土の違いなども書かれています。
ファンの間では周知の事実ですが、Coccoは長年摂食障害を患っています。この本を制作中は病状が酷く、殆ど食べない生活をしていたようです。食べるためじゃなく、“食べてもらう”ためのみで料理を作っている状態だったんですね。本の担当者さんは病状改善になればという想いもあってこの本に取り組んでいたようですが、結果は芳しくなかったようです。詳しくはこちらのpapyrusのインタビューで語られていますが↓

 

papyrus (パピルス) 2009年 10月号 [雑誌]

papyrus (パピルス) 2009年 10月号 [雑誌]

 

 

このインタビューを読むと『こっこさんの台所』の捉え方が大きく変わりますね。

 

 


●『コトコノコ』

 

コトコノコ

コトコノコ

 

 


2012年 幻冬舎

こちらはCocco初主演映画KOTOKOを受けてのエッセイ集。

 

KOTOKO 【Blu-ray】

KOTOKO 【Blu-ray】

 

 

映画のワンシーンや製作風景の写真などと共に、映画の内容を想起させるCocco自身の体験や思考が書かれています。一部、写真に衝撃的なものがあったりしますが、映画のワンシーンが衝撃的なのであって、実際の場面ではないので御安心(?)下さい。
映画の『KOTOKO』自体が、監督の塚本晋也Coccoから聞いた実体験を元に製作したものなので、このエッセイは今までにないほど突っ込んだ内容になっています。“母親になる”ことによる葛藤や苦悩が痛切に描かれていますね。文章量は前二作ほど多くないのですが、題材が題材だけに、より突き刺さるものがあります。個人的にお気に入りな一冊。映画を観たなら、是非このエッセイも読んで欲しいと思います。
作中に映画の中で歌っていた曲の歌詞が載っていますが、いまだにどの曲もCDに収録されてないですね・・・。

 


●『東京ドリーム』

東京ドリーム

東京ドリーム

 

 


2013年 ミシマ社

ミシマ社創業7周年記念企画として刊行されたエッセイ集。タイトルからも判る通り、今作は東京での暮らしや想いが綴られています。この頃、Coccoは東京在住だったのさ。
刊行にあわせて同タイトルの楽曲が配信でリリースされました。後にミニアルバム『パ・ド・ブレ』に収録されています。

 

パ・ド・ブレ

パ・ド・ブレ

 

 

他のエッセイ集とは違い、こちらはカラー写真などもなく、ほぼ文章で36の断章形式。沖縄タイムスに連載されていた文章が6つ掲載されていますが、他は書き下ろしですね。
沖縄県出身であることに強い意識を持っているCocco。それ故、沖縄について多く語ってきていた印象ですが、今作では東京への想いがクローズアップされているのが少し新鮮。これを読んで、そういえば、Coccoは今までの文章でも東京を悪く言っていたことなかったなぁと気づきました。震災のことなどにも触れられています。『コトコノコ』から息子さんのことを書くことも多くなったなぁという印象。

 

 


フォトブック


『大丈夫であるように-Cocco終わらない旅-』

 

大丈夫であるように ―Cocco 終らない旅―

大丈夫であるように ―Cocco 終らない旅―

 

 2008年 ポプラ社

2008年12月に公開されたドキュメンタリー映画のフォトブック。

フォトブックなだけあって、とにかく写真が良いです。個人的に、この『きらきら』の頃のCoccoの髪型が可愛くって好き。本の最後の方に監督の是枝裕和さんの文章とCoccoの詩が載っています。どちらも直筆の形で、監督の字が凄く綺麗でビビる(笑)。フォトブックなので文量は少ないのですが、Coccoの詩も抜群に良いです。手書き文だと伝わり方がまた違いますね。
『コトコノコ』と同等にお気に入りでオススメな一冊。何度も見返してしまいます。こちらも出来れば映画とセットで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


小説


『ポロメリア』

 

ポロメリア

ポロメリア

 

 


2010年 幻冬舎

ついに出た(?)な、書き下ろし長編小説。一応架空の物語りとなっていますが、私小説ととらえてほぼ間違いないかと。中学一年になったばかりの「私」の特別な一週間が描かれています。詳しくはこちら↓

  

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絵本
絵本は三冊刊行されていて、どの作品もタイトルが「南の島の~」から始まっていて、人魚が登場する点も同じなので、シリーズものだと考えて良いのだと思います。
絵は三冊とも、紙にクレヨンを何度も重ね塗りした後に、上から先のとがったものでひっかいて削って描く「スクラッチ技法」が用いられたもの。アルバムラプンツェルのジャケットもこの技法で描かれたものですね。

 

ラプンツェル

ラプンツェル

 

 

手間がかかり、手がとんでもなく汚れる技法ですが、この技法ならではの色彩が美しいです。

 

●『南の島の星の砂』

 

南の島の星の砂

南の島の星の砂

 

 2002年 河出書房新社

Coccoは2001年に一度活動中止しているのですが、この絵本はその活動中止期間に描かれたもの。絵本がというか、本を出したの自体がこの作品が初です。
活動中止直前のシングル『焼け野が原』を彷彿とさせるような内容。文章には英語の対訳が載っています。

 

 

●『南の島の恋の歌』

 

南の島の恋の歌

南の島の恋の歌

 

 2004年 河出書房新社

こちらもまだ本格的な活動再開には至っていなかった頃の作品。しかし、購入者限定で新作CDが購入出来るという企画付きのものでした。絵本の中に入っている特別応募用紙に記入して送ると「ガーネット」「セレクトブルー」の2曲入りCDが購入出来る仕組み。

絵本ももちろん良いのですが、CDに強く惹かれて購入した記憶が。活動中止中でファンとして餓えていたので・・・(^_^;)。
「ガーネット」の歌詞の一部が絵本の一節に使われています。1作目にくらべると、色調が明るくなっているのと、絵の技術の向上がみられる。こちらも文章には英語の対訳つき。

 


●『みなみのしまのはなのいろ』

 

みなみのしまのはなのいろ

みなみのしまのはなのいろ

 

 2019年 径書房

2019年9月に出た15年ぶりの新作絵本。出版社が変わったせいか、子供が読みやすいようにするためか、前二作と違い、タイトルも中身もすべて平仮名表記で英語の対訳もついていません。
10月に発売されたアルバム『スターシャンク』の1曲目「花爛」がそのままといった内容。

※『スターシャンク』めっちゃ良いアルバムなんで聴いてくれ・・・・・・!

 

 

受ける印象は絵本と曲でだいぶ違いますけどね。
絵の色彩に関しては1作目に立ち戻るように黒が主体になっています。

 

 

 

写真集 

『8.15OKINAWA Cocco

 

8.15 OKINAWA Cocco

8.15 OKINAWA Cocco

 

 2006年 NHK出版

Cocco沖縄ゴミゼロ大作戦ワンマンライブスペシャル2006」でのステージ上のCoccoを撮影した写真集。こちらはホントにカラー写真のみで文章とかは無いですね。結構大判の本で重さもあります。

 

 

 


と、まぁ、以上が今現在刊行されている“Coccoの本”ですね。

 


私は普段は好きな歌手だからといって楽曲以外の作品にまで手を出したりはあまりしないのですが、Coccoは別格。書籍も映画も演劇も出れば買うし、読むし、観るし・・・です。

Coccoに至ってはもう、何かしら活動してくれるだけで嬉しいんですよね(^^;)。生涯ファンとして活動を追っていく所存なので、今後また発売されたら常時更新したいと思います。

 

ではではまた~

 

屍人荘の殺人(しじんそうの殺人) 感想 ネタバレ厳禁!トンデモ展開ミステリ!

こんばんは、紫栞です。
今回は今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』をご紹介。

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

第27回鮎川哲也賞、第18回本格ミステリ大賞受賞作。

 

あらすじ
神紅大学ミステリ愛好会。メンバーは会長の明智恭介と後輩の葉村譲の二人のみ。「神紅のホームズ」と学内で呼ばれ、謎解きを求めて事件に自ら飛び込んでいく明智に、後輩の葉村は助手兼ブレーキ役として監視しつつ付きそう毎日だ。
夏休み目前、「いかにも事件が起きそうだ」という理由で明智は映画研究会の夏合宿に加わろうと孤軍奮闘するが、映画研究会部長の進藤歩には再三断られ続けていた。諦めかけていた時、幾多の事件を解決に導いた探偵少女・剣崎比留子に取引を持ち掛けられる。自分と一緒に葉村と明智の二人に件の映研の夏合宿に参加してくれというのだ。
降って湧いたようなうまい話にのり、葉村と明智は剣崎と共に合宿先のペンション「紫湛荘(しじんそう)」に訪れるが、合宿一日目の夜に映研のメンバーたちと肝試しをしていた最中、“予想外の事態”に遭遇。「紫湛荘」に立て籠もりを余儀なくされてしまう。
“外の状態”に怯えながらも「紫湛荘」の中で一夜を過ごすが、夜が明けると映研部員の一人が密室の中で殺害されていた。メンバーたちはより一層の恐怖と混乱に陥っていく。しかし、これは恐ろしい連続殺人の幕開けに過ぎなかった。
常軌を逸した閉鎖空間で繰り広げられる凄惨な連続殺人。葉村たちは生き残り、犯人を突き止めることが出来るのか――?

 

 

 

 

 

 

本格推理小説界の超話題作
『屍人荘の殺人』は今村昌弘さんのデビュー作。

鮎川哲也賞本格ミステリ大賞受賞に加え、このミステリーがすごい!】第1位、【週刊文春ミステリーベスト10】 2017年国内部門第1位、【本格ミステリ・ベスト10】2018年版国内ランキング第1位。と、デビュー作にして数々の冠を獲得している華々しい作品。

 
刊行された当初は本屋さんに平積みされまくっていたので、内容を知らずとも表紙には見覚えが有る人も多いのではないかと思います。最近になって文庫版が刊行されました。

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

 

 ※電子書籍もある

 

屍人荘の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫)

 

 

只今WEB漫画サイト【ジャンプ+】ミヨカワ将さん作画による漫画も連載されています。

小説は装丁のデザインがまた良いんですよね。装画は『Another』などで有名な遠田志帆さんによるものです。

 

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本格推理小説界の人気作家10人の絶賛コメントが書かれた帯も目立っておりました。巻末には、加納朋子さん、北村薫さん、辻真先さん、鮎川哲也賞選考委員三氏の選評が掲載されています。『屍人荘の殺人』は全員一致で受賞が決定した模様。

 

物語りは上記のあらすじでも分かるように、学生グループが山荘に閉じ込められて~・・・と、いう本格推理小説におけるベタベタなクローズド・サークルものですが、クローズド・サークルに至る、その過程が前代未聞。とにかく驚かされる展開で、読むならぜ~たいネタバレ厳禁の真っさらな状態で読みましょう!
本格推理小説あるまじき展開で困惑必至ですが、そのくせ本質はガチガチの本格推理で謎解きを存分に愉しませてくれる“この分野”の傑作で、大絶賛も納得の作品です。

 

 

 


映画
映画化が決定しており、2019年12月13日に公開予定です。

キャスト
葉村譲神木隆之介
剣崎比留子浜辺美波
明智恭介中村倫也
進藤歩葉山奨之
重元充矢本悠馬
名張純江佐久間由衣
静原美冬山田杏奈
下松孝子大関れいか
星川麗花福本莉子
出目飛雄塚地武雅
高木凛ふせえり
菅野唯人池田鉄洋
立浪波流也小川雄輝
七宮兼光柄本時生


監督が木村ひさしさん、脚本が蒔田光治さん。このコンビで連想されるのはテレビ朝日系列の連続ドラマシリーズTRICKなどで、

 

トリック(1) [DVD]

トリック(1) [DVD]

 

 お二人とも作品スタイルはコミカルなミステリ作品を手掛けているイメージ。予告を観た限り、この映画もだいぶコメディ色が強そうな仕上がりになっていそうです。


映画の予告やポスターなどから受けるポップな感じは、原作を読んだ人間からすると結構な驚きで、意外な気持ちになると思います。と、いうか、私がそうなんですけど。原作もまぁコミカルな語り口の部分はあって、それが読みやすさにも繋がっている訳ですが、でもやっぱり全体としては過酷で恐くって、緊張感の方が強い状況下でのお話ですからねぇ・・・。原作のあんな展開やこんな展開をそのままやるなら、コメディとの兼ね合いは難しいのでは。もの凄くブラックでシュールなことになっちゃうんじゃ?と、思うのですが・・・どうなんでしょう(^^;)?

 

映画では浜辺美波さん演じる剣崎比留子は特徴的な恰好と言動をするキャラクターとして描かれているようですが、原作の剣崎比留子はお嬢様然とした上品な恰好で、ミステリアスななかに少女っぽさもあるといった人物像で“変人っぽさ”は特にないです。

他の登場人物達も原作より個性が強くなっていそうですね。設定が大きく変更されていそうなのは原作では映画研究会の一員の高木凛(ふせえり)と、大学オービーで御曹司と連んでいた出目飛雄(塚地武雅)。映画の公式サイトだとそれぞれ「クレーマーおばちゃん」「関西のおっちゃん」となっていますが、原作ですとどちらも若者です。

個人的に原作の高木さんが好きだったので、変更されているのはちょっと残念ですね。

 

 

 

 

以下ネタバレ!ご注意下さい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トンデモ展開
今作には驚きの点が大きく分けて二つあります(謎解きとは別で)。
そのうちの一つは実はタイトルでモロに示されているのですが、動き回る屍・ゾンビが登場すること。そう、『屍人荘の殺人』は、ゾンビに山を占拠されて館から出られなくなってしまう前代未聞のクローズド・サークルなのです。

 

斑目機関」たる特異集団がバイオテロを実行、山中で開催されていた大型ロックフェスで薬品を撒布。この薬品は死後、ゾンビ化してしまうという代物で、ゾンビもののご多分に漏れず、噛まれた人もゾンビとなって感染していって、あっという間に山中はゾンビだらけに。このロックフェス会場の近くだった「紫湛荘」はたちまちゾンビに包囲され、葉山や映研部員たちは立て籠もりを余儀なくされるという訳です。

 

鮎川哲也賞受賞作ならばガチガチの本格推理小説だろうという考えが読む前からあるので、冒頭のホテルの見取り図、大学のミステリ愛好会、夏休みに映研のホラービデオ撮影のための合宿などなど、古典をこれでもか!だなぁ~でも好きだよこの感じ(^_^)とか、思っていたところにいきなりのゾンビなのでとにかく困惑。「いったい何が始まって、何を読まされようとしているのか」といった気分に。

 

しかし、よくよく考えてみると、ホラービデオを撮影するために山中に来た大学生グループがホラーな目に遭うというのは、ホラーものの王道でもある訳で。

同じシチュエーションの王道定番二つを混ぜた、一粒で二度美味しい、お得な(?)物語りになっているのですね。別に推理物読みながらゾンビものを楽しみたいと思う人はそうそういないとは思いますが・・・(^_^;)

 

ゾンビ初心者のためのゾンビ解説者として、ゾンビ映画マニアの重元充が他メンバーに訳知り顔で「ゾンビはこういうルールだ」的なことをアレコレ言いますが、これはちょっと懐疑的な意見が湧いてしまいますね。重元さんが言うのはあくまで映画の中のゾンビの話であって、今貴方達が直面しているバイオテロゾンビには当てはまるかどうか誰も知るよしもないじゃろ・・・と、いうか、当てはまると考える方がどうかしていると思う。結果的には重元さんのいう映画のゾンビルールが作中ではそのまま適用されているから、何ともはやなことではありますけども・・・。

 

そんなこんなで、ゾンビ映画知識が所々で披露されていますので、ゾンビもの好きな人はそこら辺も楽しめるお話になっています。

 

 

 

 

明智
はて、今作の驚きの点もう一つは、登場人物の一人でミステリ愛好会会長、主人公・葉村にとってのホームズ・明智恭介の処遇についてです。


明智恭介」という名前は日本三大名探偵のうちの二人の名前を合わせた安易なものですが、この明智さんは愉快で如何にも困った癖を持った探偵然としていて、この人中心にお話が進んでいくんだろうと当然思う訳ですよ。冒頭の登場人物一覧にも一番に名前が書かれていますからね。


ところが・・・ですよ。

 

肝試し中にゾンビに襲われて登場人物の何人かはここで退場になるのですが、なんと、明智さんも退場。死んでしまいます。

 

個人的に、ゾンビが出て来る云々よりも明智さんが死んでしまうことの方がずっとショックでした。
読んでいてもしばらく立ち直れず・・・。
途中、葉山君の語りの中で生存の可能性をほのめかす部分があるので、「絶望的だけどひょっとして・・・!」なんて希望を持つんですが、結果は・・・・・・です(T_T)。

 

なので、探偵役は剣崎さんが務めることになります。明智さんのことがあるのでなかなか受け入れられないんですけどね。私個人が剣崎さんより明智さんの方が気に入っていたというのが大きいんでしょうけど・・・。

 

 

〇〇〇フル活用トリック
ゾンビが出て来たり、主人公だと思われた人物が死んでしまったりと奇抜な展開をするものの、その後の流れは本格推理小説“ソレ”です。

クローズド・サークルで密室殺人・連続殺人が発生、謎解明のために探偵役と語り手が一緒に調査し、最後は全員の前で謎解きを披露する。


外に何百ものゾンビが居る非常事態で本格推理なんてしてる場合かっ!でしょうが、ま、しちゃうんですよね。

 

ゾンビが登場するのは突飛だし、類を見ない展開ではあるのですが、今作はあくまでもゾンビを扱ったホラー小説ではなく本格推理小説。ゾンビはこの物語りでは“装置として”作用している“だけ”のものです。だけど、ゾンビなしにはこの謎解きミステリは成立しない。
ゾンビの存在があるからこその不可能犯罪。ゾンビの存在を利用しなければ成り立たちようのないトリック。
ゾンビフル活用の、特殊設定を利用した本格推理小説です。

 

具体的な謎の提示としては、ゾンビが絶対に入ってこられないはずの空間で、ゾンビの仕業としか思えない状態の遺体が発見されるというもの。
トリックはおぼろげに想像つくのですが、細部が掴めないので解決編を読んでなるほどなぁと。「ゾンビ」というワードがキーになって殆どの謎が解明されるのが綺麗ですね。
犯人当てに関しては消去法推理。これは注意深く読んでいれば読者にも消去法で当てるのは難しくないと思います。
葉村君の語り口が途中から怪しくなっていますが、ミスリードだろうと察しは付きますかね。ワトソン役が嘘をつくというのはノックスの十戒的にはアウトになるのでしょうか。でも“嘘をついている”と語りで提示されているから推理物としてはフェアなのかな。

 

 

 


人の助手をとるな
今作で探偵役の剣崎比留子さん。ミステリ愛好会に接触してきた理由は葉村君のことが“狙い”だったと中盤で明らかになります。
なんでも、剣崎さんは何処に行って何をするにも殺人事件が周りで巻き起こるという、俗に言う「死神体質」(コ〇ン君や金田〇少年でお馴染みのアレ)で、今まで数ある事件を解決してきたのも、状況的に必要に迫られて、自らの生存のために仕方なく対応していたら意図せず「名探偵」と呼ばれるようになっちゃったという、“難儀な人”なんだそうです。

で、大学で明智&葉村コンビのことを知り、「私も助手が欲しい」と葉村君を自分の助手として引き抜くために二人に接触してきた、と。


ええ、まず、助手は助手でも自分で人材発掘しろよと思いますよね。本格推理小説における助手役・ワトソン役たるもの、軽々しく専属の探偵を乗り換えるべからず。まして、探偵役が別の探偵の助手を横取りしようとするんじゃない!

 

終盤、ゾンビになった明智さんが葉村たちの前に現われ、襲いかかってきます(哀しい・・・)。葉村は“俺のホームズだ”との想いから反撃することが出来ずに噛まれそうになるのですが、そこで剣崎さんが槍で脳天をぶっ刺し、
「――あげない」
「彼は、私のワトソンだ」
と、言って明智さんを倒し、葉村君を救う。


・・・・・・カッコいいんですけども。個人的には腑に落ちないし、何か面白くない(-_-)。

 

このまま葉村君がすんなり剣崎さんの助手を引き受けてしまったら、葉村君に対しても怒りを向けるところですが、そこは「すみません。あなたの助手には、なれない」と、断ってくれました。ま、そうだよね・・・もうちょっと明智さんの余韻に浸っていて欲しいよ・・・。

 

助手を断られたものの、明智さん亡き後、剣崎さんはミステリ愛好会に入会。葉村君と剣崎さんの二人で今回の事件の発端、バイオテロを起した「斑目機関」について調べているところで今作は終了しています。


書き方が紛らわしいのか、最後に喫茶店で葉村が待ち合わせをしていた女性は誰なのかと疑問に思う人もいるようですが、これは剣崎さんで間違いないでしょう。今作は続編がありますので、そちらを読むとよりハッキリすると思うのですが・・・。

トンデモ展開に驚きはしましたが、『屍人荘の殺人』は「私やっぱり、本格推理小説好きだなぁ」と再認識させてくれた、とてもお気に入りの一冊となりました。続編も読んで、また当ブログに纏めますね。

 

魔眼の匣の殺人 屍人荘の殺人シリーズ

魔眼の匣の殺人 屍人荘の殺人シリーズ

 

 


ではではまた~

 

 

屍人荘の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫)

 

 

 

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

 

 

『Iの悲劇』感想 米澤穂信によるミステリ悲喜劇

こんばんは、紫栞です。
今回は米澤穂信さんの『Iの悲劇』(あいのひげき)をご紹介。

Iの悲劇

 

2019年9月26日に刊行された新刊ですね。


増税前に本屋行っとこうと行った先で平積みになっているのを発見してそのまま購入。この単行本の著者紹介に「現在もっとも新作が待ち望まれる作家の一人である。」と、書かれている通り、新作が出ると何も考えずにレジに持って行ってしまう。
米澤さんは頻繁に作品を出してくれる量産型の作家さんではないので(1,2年出ないとか当たり前)、昨年の12月に刊行された『本と鍵の季節』から

 

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約半年後の刊行というのは早く感じる。まぁタイミングの問題なんでしょうけど。普段全然出さないくせに同時期に三冊も四冊も出すとかありますよね・・・。

 

今作は住民皆が去って一度死んだ村・簑石村(みのいしむら)を蘇らせようと、市長肝いりのIターンプロジェクトを担当する市役所「蘇り課」の奔走が描かれる連作短編集。比較的学生ものの青春ミステリで有名な米澤さんですが、

 

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今作は限界集落をテーマにした役所職員が主役の物語りとあって目新しい感じ。大人向けには違いないですが、追想五断章』『真実の10メートル手前』

 

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などの連作短編集に比べてもう少し“おかしみ”というかコミカルさがある印象。日常ミステリほど平和的ではないが、殺人が起きる訳でもなく。隠された“悪意”が明るみになる連作短編。
著者曰く、

「ユーモアとペーソスを両輪にした、ミステリ連作」

とのこと。
目新しいテーマではありますが、読後感はやはりどこまでも米澤穂信作品で、最後には確りとした、苦々しい大きな「真相」が待ち受けています。

 

 

 

 

 

 


目次

序章 Iの悲劇
第一章 軽い雨
第二章 浅い池
第三章 重い本
第四章 黒い網
第五章 深い沼
第六章 白い仏
終章 Iの喜劇

 

「軽い雨」「黒い網」「重い本」「白い仏」以外は書き下ろし作品。第一章の「軽い雨」は【オールスイリ2010】に掲載されたもので、連作短編集として完成するまでに結構な時間を用いていますね。なんとも気長なもんですが、第一章から確りラストに向けての伏線は仕込まれているので唸るばかり。
軽い・重い浅い・深い黒い・白い悲劇・喜劇、と各章のタイトルが対比になっています。

 

市長肝いりのIターンプロジェクトとして、旧・簑石村に公募で選ばれた延べ12世帯が移住してくる訳ですが、これが何故か癖のある移住者ばかりで次々と「蘇り課」を困らせる謎や厄介ごとばかりが発生する。
「蘇り課」のメンバーは三人。出世志向が強くも、仕事には実直な万願寺邦和。人当たりは良いが、砕けた態度でいつまでも新人っぽさが抜けない観山遊香。とにかく定時に退社することを信条にしている、やる気の薄い課長・西野秀嗣


後輩と上司が万事この調子で仕事熱心という訳ではないので、結果的に真面目な満願寺ばかりが毎回苦労しているという図式。
いやぁ、市役所職員って、ホント大変だなぁと。最初は出世ばっかり考えている人種かと思われる満願寺ですが、必要以上に感情移入しないまでも住人のためにできうる限り手を尽くす、仕事に誇りを持っている“いい役人”で好感が持てます。真面目なぶん苦労を負っているところが涙ぐましい(^^;)。

 

終始、お話の語りは万願寺邦和が勤めています。パターンとしては満願寺と観山の二人が移住者間で発生した問題に奔走し、最後にそれまで我関せずな態度でいた西野課長が謎を解明、当人に追求して事を丸く収めてしまうといったもの。
汗をかいていない人がオチをかっさらっていくので、何やら妙な肩透かし感あり。不快ではないですが、若干、万願寺が気の毒。
事を収めるときの西野課長は普段のやる気のない態度とは違ってどこか威圧的なので、謎解き役というよりは、くわせものの火消し役といった印象。読んでいて抱くこの印象は、最後の最後で本来の意味が解る仕掛けになっています。

「簑石村」の由来や登場人物の名前、仏像が出て来たりなど、なんとなく全体に仏教色が漂う本になっている印象も受けます。

 

 

 

各章の概要

序章「Iの悲劇」。前口上。

 

「軽い雨」は先行して移住してきた二世帯の間に不穏な空気が漂っていたところでボヤ騒ぎが発生。放火の疑いが出るも火を放つ方法が解らない。それに容疑者にはその時間、満願寺と観山と共にいたというアリバイが。

 

「浅い池」は移住者の一人が育てていた鯉が、四方を完璧にネットで囲われた水田からどんどんと減ってしまう謎。

 

「重い本」は住民の幼い男児が行方不明に。留守宅に入り込んだとしか思えない状況だが、どうやって入ったのか。

 

「黒い網」は住人達の親睦を深めようと開催された秋祭りで食中毒が発生。倒れたのは周囲から反感を買っていた人物。誰かに一服盛られたのか?しかし、故意に食べさせる方法はないように思えるけれど・・・。

 

「深い沼」は西野課長と共に市長の前でIターンプロジェクトの進捗状況を報告しにいった後に、満願寺が東京に居る弟と祖父の法事の件について電話でやり取りするお話。

 

「白い仏」満願寺が曰く付きの仏像が安置された部屋から何故か出られなくなる。先程まで普通に出入り出来たはずの部屋の戸が、鍵も掛かっていないのに何故開かなくなってしまったのか。住人は仏像の「祟り」だと恐れ、突飛な行動に出る。

 

終章「Iの喜劇」。すべては終わり、そして真相が明かされる。

 

 


アリバイ、密室、失踪、服毒と、各章色々な謎が用意されています。ミステリとして本格的なものは「軽い雨」「黒い網」「白い仏」
「重い本」は不運としか言いようのないもので、「浅い池」はちょっと間抜けなお話。
「深い沼」は謎解きの関係ない対話ものですが、この本全体の中で非常に重要な意味を持つお話です。
終章の「Iの喜劇」で全編通してちらついていた僅かな違和感がすべて解消される“謎解き”が展開される。

 

 

 

 

 

 

 


悲喜劇
終章で明かされる「真相」は、とても苦々しく痛々しいものですが、とらえ方によってはとてつもなく馬鹿馬鹿しいもので、「なるほど喜劇だこれは」といった代物。
しかし、この「喜劇」には限界集落の現実、真実が嫌気のさすほどに表されています。笑ってしまうような滑稽な方法を用いなければいけないほどに逼迫している現状。「喜劇」に弄ばれた結果、発生するのは末端の数々の「悲劇」。大きな「悲劇」を避けるために演じられた「喜劇」とはいえ、演じていることを教えずに個人の人生を弄ぶことは許されるのか。

何ともやるせない気分にさせられます。

 

田舎者なので、この本で描かれている地方都市の現状は特に身につまされるものが。除雪問題とかは雪国が避けて通れない問題ですからねぇ・・・(-_-)。

最近このブログで取り上げた吉田修一さんの『犯罪小説集』限界集落をテーマにした短編が収録されていましたが↓

 

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最後の満願寺の問い「本当に、そうなんでしょうか」に応えるものは誰もいないままに物語りは終了しています。
内容的に続編などは見込めない作品となっていますが、この後、主人公の万願寺邦和がどのような道を選んだのか非常に気になるところです。どれが最良の選択なのかも、もはや分かりませんが・・・。“いい役人”である自身を見失わずにいて欲しいと願うばかりです。


ミステリとしての謎解きを愉しみつつ、悲喜劇も味わえる連作短編集となっていますので、興味が湧いた方は是非。

 

ではではまた~

 

Iの悲劇

Iの悲劇