夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

マリアビートル あらすじ・ネタバレ解説 王子の最後は?

こんばんは、紫栞です。
このあいだ伊坂幸太郎さんの“殺し屋シリーズ”まとめの記事で↓

 

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 シリーズ2作目の『マリアビートル』を少し紹介しました。この記事ではネタバレ無しで紹介した訳ですが、記事書いている最中『マリアビートル』はネタバレありでの、もっと突っ込んだ紹介記事も書きたいなぁ~との思いに駆られたので、今回はがっつりとネタバレして『マリアビートル』1作を掘り下げてご紹介。

マリアビートル (角川文庫)

あらすじ
元殺し屋でアルコール依存症「木村」は幼い息子に重傷を負わせた狡猾な中学生「王子」に復讐するため、東京発盛岡行きの東北新幹線〈はやて〉に乗り込む。しかし、これは「王子」が用意した罠だった。
「木村」はスタンガンで気絶させられ、気がついたときには縛られて座席に座らされていた。「王子」は自分の言うことを聞かなかったり、危害をくわえたりすれば、病院にいる「木村」の息子が死ぬ手筈になっていると言う。電話をかけて『仕事をして下さい』と「王子」が言ったら病院の近くに待機している人物が呼吸器を止める。また、携帯電話が鳴って十回コール以内に「王子」が出ない場合も同様だ、と。

同じ新幹線には取り返した人質と身代金を護送する二人組の殺し屋「蜜柑」檸檬。二人は車中で人質を何者かに殺され、身代金の入ったトランクも紛失してしまう。
その身代金強奪を指示されたツキの無い殺し屋「七尾」は、奪った身代金を手に上野駅で新幹線を降りるはずだったのだが、「七尾」の“ツキの無さ”は「七尾」を新幹線から簡単には降ろしてくれなかった。

殺し屋ばかりを乗せた新幹線は北を目指して疾走する。
東京から盛岡間、2時間30分の【殺し屋狂想曲】の幕が開く――。


シリーズ第一弾『グラスホッパー

 

グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

 

 での寺原親子が死んだ事件から六・七年経っている設定です。寺原亡き後、裏社会では今度は“峰岸”という人物が幅を利かせています。

「蜜柑」と「檸檬」が護送していたのはこの峰岸の息子でして。目を離したすきに殺害されて身代金も奪われてで二人の立場は“まずい”“やばい”という訳です。

「王子」と「木村」の攻防戦に「蜜柑」「檸檬」の最悪の状況を打開しようとする思案・行動、さらに「七尾」に次々と訪れる不運が複雑に絡み合い、お話は狡猾な中学生・「王子」対【殺し屋達】の様相を呈していきます。

 

以下ネタバレ~
※ネタバレなしの紹介はこちらの記事でどうぞ

 

 

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グラスホッパー』とのつながり
「王子」は大人達を翻弄する一環で、いつも「どうして人を殺してはいけないんですか?」と聞いています。呆れながらも満足な回答が出来ない大人達を見て心の中で蔑み・楽しんでいるのですが(ヤなガキですね~!)まぁこの質問を「木村」「檸檬」「蜜柑」にもしていくんですけど、どれも「王子」の得意の態度を崩すものではない。
この質問に対し、終盤で「王子」の態度に揺らぎを与える回答をするのが前作『グラスホッパー』での主人公「鈴木」です。亡くなった奥さんの両親に会う為に新幹線に乗っていたのですね。
「鈴木」は「王子」を翻弄する返答を繰り返し、

『数ある禁止事項の中からその質問をするのは、過激なテーマを持ち出して大人を困らせようとしているんじゃないか』

と質問をした「王子」の幼児性を指摘し、

『殺人を許したら、国家が困る。所有権が保護しなくては経済は成り立たない。そこに倫理は関係ない』

と結論を言います。

ようは“法律で決まっていて、その法律は社会を立ち回らせる為にある”ってことですね。哲学者ぶって馬鹿馬鹿しい質問をするなよ、ガキだなぁ。みたいな。
私もね、読みながらずっとそう思っていたので「鈴木」がズバリ言ってくれたときはスカッとしました(^_^)
この「鈴木」の一撃で圧倒的優位に立っていた“つもり”の「王子」の余裕は揺らぎ始めます。

 

他に新幹線の中には『グラスホッパー』で寺原を殺害した殺し屋スズメバチも乗り合わせています。前作同様、内面描写は一切無いままの登場ですね。

そして新幹線の外では〈押し屋〉の「槿」が暗躍。「王子」がいう“病院の近くに待機している人物”を殺害。結果的に窮地を救ってくれます。

ちなみに、「スズメバチ」と「槿」はシリーズ3作目の『AX(アックス)』にも登場しています。(※「蜜柑」と「檸檬」も出ています)

 

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 シリーズ三作品、すべてに登場しているのは「スズメバチ」と「槿」ですね。

 


子供と高齢者の対決
「王子」と必死に攻防戦を繰り広げていた「木村」ですが、お話の途中で退場してしまいます。え~~!木村おじさんが「王子」に勝つところが見たかった・・・と、いうか、それがこのお話のオチじゃないの~!?と、読者としては驚き・失望してしまうのですが・・・お話の後半で新幹線に60過ぎの老夫婦が乗り込んできます。この老夫婦は「木村」の両親で、息子は知らなかった事なのですが・・・実はその昔、業界でその名をとどろかせた超やり手の伝説の殺し屋だったのだっ!!な、なんだって~!?と言いたくなりますが、そうなんだそうです(笑)


そんなこんなで、「王子」との戦いは「木村」の両親に引き継がれます。
仲介業者の「繁」、〈押し屋〉の「槿」の暗躍により孫の無事が確認され、形成は一気に逆転。高齢者である「木村」の父・木村茂は「王子」に銃を突きつけながら
「いいことを教えてやるよ」と語り始めます。


「六十年、死なずにこうやって生きてきたことはな、すげぇことなんだよ。分かるか?おまえはたかだか十四年か十五年だろうが。あと五十年、生きていられる自信があるか?口では何とでも言えるがな、実際に、五十年、病気にも事故にも事件にもやられずにな、生き延びられるかどうかはやってみないと分からねえんだ。いいか、おまえは自分が万能の、ラッキーボーイだと信じているのかもしれねえが、おまえができないことを教えてやろうか」

 

「この後、五十年生きることだ。残念だが、おまえよりも俺たちのほうが長生きをする。おまえが馬鹿にしている俺たちのほうが、おまえより未来を見られる。皮肉だろ」

 

「大人を馬鹿にするなよ」

 

大人を見下している生意気なガキを、高齢者が完膚なきまでにたたきのめす。
これがあらかじめ用意されていた「王子」の倒し方なのですね~(^_^)最高に気分爽快です。

新幹線が終着駅に着くと同時に「王子」は撃たれて動きを封じられ、木村老夫婦に運び出されます。新幹線の中ですぐに殺さないのは「おまえに反省の機会をやるためだ」とのこと。

その後どうなったかが具体的にお話の中で書かれていないので「王子」の最後が疑問視されていたりしますが、ここは木村老夫婦の手で殺されたと考えて間違いないと思います。上記のセリフもそうですが、最後に「王子」が得意のカヨワイ中学生の泣き顔演技をしたさいに、木村茂は噴き出しながら
「俺は年寄りだからな、目はぼやけるし、耳は遠いし、おまえの演技もよく分かんねえんだよ。とにかくだ、おまえは、俺たちの孫に手を出した。残念だったな。諦めろ。反省したら、少しは楽に死なせてやる。人生は厳しいもんだ」
と言っているので、生かしておくつもりは毛頭無いのだと思われ。
仙台湾で身元不明の小さな死体が発見されているとのことなので・・・おそらく、たぶん、それが・・・・・・。

 


幸運と不運の対決
「王子」は自らの幸運への信頼が強い。何故かというと、今までどんなに非道な悪事を重ねても幸運によって守られてきたから。実際にお話の途中、新幹線の車中でも「王子」の狡猾さに気づいた「檸檬」・「蜜柑」それぞれに「王子」は窮地に追い込まれますが、思いがけない幸運のおかげで「王子」はその度助かります。悪人が幸運に守られる――。この状況がまた、読者が怒り・憤りを感じるところなのですが・・・。好きキャラが死んで嫌なキャラが生き延びるところもね・・・。
その一方、いつでもツキの無い殺し屋「七尾」は今回も信じられないような不運続きでいつまで経っても新幹線を降りることが出来ずにいる。


お話の後半で幸運の「王子」と不運の「七尾」が対面。

「王子」は「七尾」に対し
『これほど運に恵まれず、自分に自信のない男であれば、自由意志を奪い、誘導することは容易だろう』
と考える。


ところがどっこい、「七尾」の不運はそんじょそこらのラッキーボーイにどうこう出来るようなレベルのものではなかったのだった!


「王子」は自分に拳銃を突きつけている木村老夫婦を撃とうとしている「七尾」に気づき、自分の幸運に心中ほくそ笑むが、そこで信じがたい不運が「七尾」を襲い、「王子」と木村老夫婦を置き去りにして走り去ってしまう。
「王子」の頭は混乱します。
『理解を超えている。憤りを覚えると同時に、畏怖もあった。自分の幸運を、得体の知れない不運の怪物がかぶりつき、食い散らかしていく恐怖だ。』


「王子」の幸運に「七尾」の不運が勝った瞬間ですね。
これが木村老夫婦にやり込められる前の強力な一撃となります。自分が万能のラッキーボーイだと信じていた「王子」の世界は、自分に自信のない男・「七尾」の不運によって崩されるのです。

 


『マリアビートル』意味
てんとう虫は英語でレディバグ、レディビートルと呼ばれていて、そのレディとはマリア様のことなのだとか。


“マリア様の七つの悲しみを背負って飛んでいく。だから、てんとう虫は、レディビートルと呼ばれる。”


「七尾」は業界では天道虫と呼ばれています。そして、「七尾」こと天道虫に仕事の指示をだすのは真莉亜という女性。


以下、「真莉亜」と「七尾」の会話


ナナホシテントウムシの星の数みたいじゃない」
「だからと言って、俺のせいじゃない」
「あのさ、君はたぶん、みんなの不幸を背負って、肩代わりしているんじゃないの」
「だからついていないのか」
「そうじゃなかったら、あんなについていないわけないよ。君はみんなの役に立っているのかも」

 

「七尾」は今までにも数々のトラブルに巻き込まれ、その度に不本意ながらも活躍して、結果的に人を助けたりしているとお話の序盤で明かされています。そういう星の下に生まれたってことなんですかね~。


一見すると頼りない感じですが、やるときはやる(殺る)男である「七尾」。好きです(^_^)シリーズ三作目の『AX(アックス)』では逸話として出てきただけでしたけど、シリーズが続くなら今後登場させて欲しいなぁ。
「蜜柑」と「檸檬」も好きです。なので、死んじゃうのはショックでしたが(おかげで「王子」への怒りが増しましたね・・・)お話のラスト、意外な形で“復活”するのには少し愉快な気分になりました。

 

 

グラスホッパー』を読んだら『マリアビートル』そして『AX(アックス)』是非順番に読んで楽しんで下さい(^_^)

 

グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

 

 

 

 

 

 


ではではまた~

『今からあなたを脅迫します』1話感想 ドラマと原作との違い

こんばんは、紫栞です。
『今からあなたを脅迫します』ドラマ第1話観ました~。

今からあなたを脅迫します (講談社タイガ)


前に“脅迫屋シリーズ”まとめの記事でも原作とドラマの違いについて少し書きましたが↓

 

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今回はドラマ初回を観てわかった原作小説との違いと感想について書きたいと思います。

 

 

ドラマ第1話は小説『今からあなたを脅迫します』の第一章「脅迫が届く夜」が元。キャラクター・設定・ストーリー展開の細かな部分など、結構違う箇所が多々ありました。気になる事から順にまとめますと・・・

 

 

 

キャラクターの違い
まず気になる大きな違いは語り手の金坂澪(武井咲)ですね。語り口が敬語なのがまず驚きでしたが(原作は澪の一人称でお話が語られていますが、敬語ではないです)ずいぶんと“ポワ~”とした、天然が強調された、ある意味エキセントリックなキャラクターになっていましたね~。原作の澪もまぁ、他人の為に「三千万払う」と言うのはドラマと同じで、読んでいて読者が感情移入するタイプのキャラクターでは無いのですが、非常事態に直面したときは一般人らしくあたふたしていますから。だから初っぱなの“脅迫、人違いシーン”での脅迫屋・千川完二(ディーン・フジオカ)との電話のやり取りも面白かったんですけどね。ドラマの澪は態度が異常に落ち着いていて、二人の会話の雰囲気が異なります。原作ではもっとスピーディーというか、ポンポン会話が繰り広げられていく感じなんですけど、ドラマはゆったりした雰囲気になっているような・・・。

会話がゆったりするのは千川さんが原作より落ち着いているからというのもあると思いますが。原作では千川さんは20代前半(に、見える)で、いつもリアルな動物の絵が描かれたTシャツを着てラフな格好をしている飄々とした男なんですが、ドラマだとやっぱり年齢が上がっているぶん“大人”な感じになっていますね(まぁディーンさんですからね・・・^^;)

目黒(三宅弘城)は剽軽なキャラクターになっていましたね。原作では寡黙でクールな人物なのですが・・・。
栃乙女(島崎遥香)が一番原作通りなのかな。でも原作より頭良さそうかも(笑)

 

お隣さんの京田カオル(鈴木伸之)とBAR『青龍』のロビン(蛭子能収)とレイチェル(内藤理沙)はドラマオリジナルキャラクター。澪、おはぎ作りすぎですよね(笑)林檎三つ渡してお返しがあの大量のおはぎ・・・(^_^;)

 


設定の違い
“脅迫屋チーム”の形態が違いますね。原作だと目黒と栃乙女は千川を“手伝っている”だけで皆で集まるのも主に上野駅近くの栃乙女が住んでいるマンションなのですが、ドラマだとめっちゃアジト!で三人で共同生活している(?)みたいですね(ゴミ出し当番とか言ってたし)チーム感が強くなっているようです。あと、千川さんは馬鹿にしていましたけど、澪のアパートの部屋、大学生の一人暮らしにしては結構な広さでしたね。あれなら私、西日が強くっても全然良いわ(笑)

 


ストーリーの違い
原作の第一章「脅迫が届く夜」が60ページほどしかないので、やっぱり色々とお話がふくらましてありますね。一個一個違いを言っていくときりが無いので細かいところは割愛しますが、目立つ違いとしては依頼人である振り込め詐欺の被害にあった老婦人が登場するところ。

この老婦人、と、いうか依頼人、原作ではまったく登場しません。なのでまぁ依頼人が絡んでいる“あのシーン”も“このシーン”も無いです。
なので、最後の千川さんが犯人にする脅迫内容も異なります。ドラマでは「六百万払うか、自首するか」でしたが、原作だと「自首するか、物騒な連中に引き渡されるか」でした。確かに私も原作読んだとき「お金は・・・・・・?」とか疑問だったので、ドラマの脅迫内容の方が自然かも知れませんね(^^;)

 

表面的に違いをまとめるとこんな感じですかね。個人的には最初の“脅迫、人違いシーン”と物騒な連中とやり合うシーンは原作での好きなシーンだったのでチト残念。千川さんの「おまえこそさっきから何してるんだ?そんなモデルガンで」ってとこがかっこよかったんですけどね~。

 

 

 

総合的な感想としては第1話の時点ではなんとも言えない・・・かな。今後観てみてですね。
第2話は一週お休みで10月29日の放送みたいです。1話やって一週休みって・・・視聴者が離れちゃうんじゃないかとかお節介にも心配になりますが・・・。まぁお休みの間に10月19日に発売される原作の新刊を読んで待とうと思います。


※新刊はこちら↓

 

 

今からあなたを脅迫します 白と黒の交差点 (講談社タイガ)

今からあなたを脅迫します 白と黒の交差点 (講談社タイガ)

 

 

※前2作のまとめはこちら↓

 

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ではではまた~

『AX(アックス)』あらすじ・感想 殺し屋シリーズ最新作!

こんばんは、紫栞です。
今回は伊坂幸太郎さんの“殺し屋シリーズ”最新作『AX(アックス)』を紹介したいと思います。

AX アックス (角川書店単行本)

あらすじ
「業界内で兜と言ったら、一目置かれている。一目どころか二目も。それがこんな恐妻家だと知ったら、がっかりするやつもいるだろうな」
表向きは所帯持ちの文房具メーカーの営業マン、裏では超一流の殺し屋の「兜」は家では妻に頭が上がらない恐妻家。常に妻の機嫌を気にかけ、ビクビクしながら日々を過ごしている。高校生の一人息子・克巳も呆れるほどだ
――家族は「兜」の物騒な仕事のことはまったく知らない。
「兜」は克巳が生まれた頃から“物騒な仕事”を辞めたいと考えていた。五年前から仲介業者の「医師」に再三にわたり訴えているのだが、「引退するには、お金が必要です」と言われるばかり。しかたなく「仕事を辞めるために、その仕事で金を稼ぐ」といった不本意な状況を続けていたのだが――。

 

 

 

グラスホッパー』『マリアビートル』に次ぐシリーズ第3弾ですね。
前2作品のまとめはこちら↓

 

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前2作は長編でしたが『AX(アックス)』は全5編の連作短編です。と、いっても短編どうしに密接に繋がりがあり、各短編での事柄がラストで綺麗に集約されていくので5編で一本の長編ともいえるかもしれません。


入っている5編は
●AX
●BEE
●Crayon
●EXIT
●FINE


前半の3編が雑誌掲載されたもので、後半の2編は書き下ろし。長編だと多視点の一人称でお話が構成されていましたが、この本は全編にわたり主な語り手は「兜」です。

 

表題作の『AX(アックス)』とは“斧”のこと。お話では「蟷螂の斧」って言葉の意味で使われています。“蟷螂”はカマキリのこと。

“弱いにもかかわらず、必死に立ち向かう姿”を「蟷螂の斧」という。“はかない抵抗”の意味合いが強い言葉ですが、「兜」はこれに対し「カマキリの斧を甘く見てるなよ」と言います。本の1話目のタイトルですが、この部分が終盤にも活きてきます。


「AX」「BEE」「Crayon」“殺し屋シリーズ”で短編やるとこんな感じになるのね~と。
短編もやっぱり分類不能で展開の予想が出来ないですね。「兜」の恐妻家な部分など、コメディ・日常的な語り口の中で突如として非情な・非現実的な“殺し”の場面が現れ、事態が一変する様相は読んでいて「え?え?」の連続でした。
「BEE」は結末がクスッと笑ってしまうようなオチですけど。こういう話好きです(笑)読み終わった後〈初出〉の項を見てみたら『ほっこりミステリー』と書かれていて納得。

 

本の冒頭部分で前作での登場人物檸檬「蜜柑」が出てきて嬉しかったです。終盤には「槿」「情報屋の桃」も登場。他の殺し屋達の名前や前作での事件のことなど、会話の中で出てきたりしてシリーズ通しで読んでいる読者にとっては楽しい限りです。

 

「EXIT」「FINE」の書き下ろし2編でストーリーは一気に動きます。いきなりすぎて、その1行を読んだ時しばし呆然としてしまいました(^_^;)

しかし、この結末の為に前の3編は書かれていたのだなぁと読み終わった後実感しましたね。前半の3編があるからこそラストの切なさや感動がひとしおなのですよね・・・(T_T)

 

主人公の「兜」は非情に人間味溢れるキャラクターです。“殺し屋シリーズ”のキャラクター達は皆、思わず好感を持ってしまうようなキャラクターばかりですが、この本では1冊丸々「兜」の心情が描かれているので前2作以上に殺し屋に感情移入してしまいました。


主に“家族との日常”が多く描かれているのが親しみを覚えてしまう要因かと。


妻に対しての「兜」の恐怖心や気遣いは息子の克巳も言っていましたが、ちょっと“いきすぎ”ですね。まぁ理由があるのですが。その時の気分で言動が大いに左右されるってのは世の母親達の大半がそうだと思う。(少なくとも私の母はそうです)その面ではこの奥さんの描写は凄くリアリティがありましたねぇ。笑っちゃうくらい(私の母がそうだからそう感じるだけなのかもしれませんが)いや、でも、これくらい家で自己主張出来ないと妻としては窮屈ですよね。貞淑なばかりが良いとは思えない!(※個人的な意見です)


息子の克巳が良い子で感動します。家の中に味方がいて良かったね!って、感じで(笑)やっぱり息子は男親に肩入れするもんなんですかねー。それとも「兜」があまりにも妻の機嫌を損ねないように日々努力を重ねているから感心しているのかな(^_^;)

 

 

この本は一人の夫、そして一人の父親と〈家族〉のお話です。前2作の雰囲気とはだいぶ異なりますが、読み終わると切なくてあたたかい感動を与えてくれる1冊です。読んで後悔はないですよ~!

 

 

 

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ではではまた~

『グラスホッパー』『マリアビートル』殺し屋シリーズまとめ 最新作『AX』を読む前に~

こんばんは、紫栞です。
伊坂幸太郎さんの“殺し屋シリーズ”最新作『AX(アックス)』が発売されましたね。・・・って、発売されてから二ヶ月以上経っているのですが(^^;)最新作の紹介の前におさらいとして“殺し屋シリーズ”の前作グラスホッパー『マリアビートル』の2冊をまとめようかと。

 

“殺し屋シリーズ”とは
殺し屋ばっかり出て来る分類不能のエンターテインメント「殺し屋小説」。色々な殺し方をする「殺し屋」が数人登場し、対決していく様子が描かれます。いうなれば【殺し屋狂想曲】
殺し屋小説なので人が死ぬ場面が沢山出てきますが、読者に悲壮感を感じさせる間をあたえない疾走感溢れる怒濤のストーリー展開とどこか軽快な語り口が持ち味。
グラスホッパー』『マリアビートル』の長編2冊は数人の登場人物が交互に語り手を務める多視点の一人称でお話は構成されています(新刊の『AX』は連作短編で一人の殺し屋の一人称みたいです)。

数人の思惑が巧妙に交わっていく様がとにかくお見事。
殺し屋達には業界での屋号があり、各語り手の文が始まる前にその語り手の名前の判子が押されているのがシリーズで一貫しての本デザインの特徴ですね。
シリーズとはいえお話自体は独立したものなので、続編形式ではないです。各本単独でも十分面白く読める作りではありますが、前作での登場人物がチラッと出てきたり思わぬ繋がりがあったりするので順番に読むのがオススメ。


グラスホッパー

グラスホッパー (角川文庫)

あらすじ
妻を殺した男に復讐するためにその男の父親が経営する非合法な会社《令嬢》に入社した元教師の鈴木。しかし、鈴木の目の前で妻を殺した男は車に轢かれてしまう。どうやら〈押し屋〉と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。結果的に復讐を横取りされてしまった鈴木は《令嬢》の人間に命じられるまま〈押し屋〉の後を追う。そこで見たのは妻と幼い子供のいる温かい家庭だった。その光景に戸惑う鈴木に〈押し屋〉に敵を討とうとする《令嬢》からの電話がかかってくるのだが・・・――。
一方、偶然〈押し屋〉の“殺し”を目撃し過去の仕事のやり残しを精算しようとする自殺専門の殺し屋「鯨」、上司に一矢報いるため手柄を立てようと思い立ったナイフ使いの殺し屋「蟬」も〈押し屋〉を殺すべく居所を探し始める。

 

シリーズ第1作目。

タイトルの『グラスホッパー』はバッタって意味です

「鈴木」「鯨」「蟬」の三人が交互に語り手を務めています。皆の注目の的(笑)でお話のキーマンである〈押し屋〉の名前は「槿」(※『むくげ』ではなく『あさがお』と読みます)。槿は一人称の語りが無く、寡黙で考えが読めないミステリアスな人物として描かれおり、さほど喋ってないくせにお話の中で異様なほどの存在感を放っています。

「蟬」の由来は終始喋りまくってうるさいから。
「鯨」の由来は長身でデカイから。
鯨の“自殺専門”とはどういうことかというと、対象に語りかけて相手が自ら死を選ぶように仕向ける殺し方をするのです。直接手は下さないのですね。超自然的な力が働いているかのような方法で得体が知れず、不気味なところがお話に絶妙なアクセントを与えています。鯨の愛読書がドストエフスキーの『罪と罰』なところもなんとも。また、鯨には過去に殺した人間が見える幻覚症状に悩まされているという一面が。
蟬の上司・岩西に対しての複雑な思いや葛藤なども見所。もちろん鈴木の亡き妻への思いも。

 

非情な殺しの場面ばかりなのに読後感はどこかあたたかい作品ですね。

 

2015年に実写映画化されました↓

 

グラスホッパー スタンダード・エディション [DVD]

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伊坂さんの別作品『魔王』と『グラスホッパー』を再構築した大須賀めぐみさんの漫画シリーズ『魔王 JUVENILE REMIX』もあります。

 

魔王 1―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)

魔王 1―JUVENILE REMIX (少年サンデーコミックス)

 

 同名のキャラクターが登場したりしているんだそうな。

 

 

マリアビートル

マリアビートル (角川文庫)

あらすじ
元殺し屋でアルコール依存症「木村」は幼い息子に重傷を負わせた狡猾な中学生「王子」に復讐するため、東京発盛岡行きの東北新幹線〈はやて〉に乗り込む。しかし、相手にしてやられてしまい・・・・・・。
同じ新幹線には取り返した人質と身代金を護送する二人組の殺し屋「蜜柑」檸檬。その身代金強奪を指示されたツキの無い殺し屋「七尾」も乗り合わせていた。
殺し屋ばかりを乗せた新幹線は北を目指して疾走する。
東京から盛岡間、2時間30分の【殺し屋狂想曲】の幕が開く――。

 

 

シリーズ2作目。

タイトルの『マリアビートル』は天道虫を表わしています。

登場人物の一人「七尾」は業界では「天道虫」と呼ばれているのです(ただし、本人はそう呼ばれるのが好きではない)真莉亜という女性から仕事の指示を受けています。七尾の“ツキが無い”部分がお話のキーになっていますね。

 

シリーズ第一弾の『グラスホッパー』より登場人物・語り手が増え、新幹線内での2時間30分という限られた空間・時間の中で登場人物の思惑が前作以上に複雑に絡み合い、スピード感溢れるストーリーが展開されます。
前作より、より一層エンターテインメントに特化した作品だと思います。個人的にはこの『マリアビートル』の方が好み。しかし、『グラスホッパー』の知名度に押されてあまり世間に知られていないような気がしますね・・・(^^;)『マリアビートル』も映画化されないのかな~。2018年2月に舞台化が決定しているみたいですけど。確かに舞台向きのお話だと思いますのでこの決定には凄く納得。


七尾と真莉亜の会話が好きです。檸檬と蜜柑のキャラクターややり取りも好き。


前作を読んでの経験から登場人物の半分ほどは死んでしまうとわかっていて、(悲しくなるので)あまり感情移入しないように気を付けてみても所詮無駄なあがき(笑)殺し屋だけど人間味溢れるキャラクター達に好感を持ってしまいます(殺し屋達に好感を持ってしまうのは前作も同様ですね)。

 

 

『マリアビートル』にはわかりやすいヒール役がいます。狡猾な中学生「王子」です。コイツが、もうね・・・もの凄い腹立つっ!!読んでてホント「早く死んでくれないか」と思う。今まで読んできた数ある小説の中でもトップクラスのムカツク悪役ですね。中学生の王子より殺し屋達の方が善良に思えてきてしまう不思議・・・。


で、この最高に腹の立つ狡猾な中学生・王子がどうなるのかですが・・・これが、最高にスカッとする結末が用意されています。ムカツキながらも最後まで読み続けて良かった~!と思いました(^_^)これぞエンタメ小説!

※ここら辺の詳細はこちらの記事でどうぞ↓ 

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お話の要所要所で前作のキャラクターが数人登場します。やはり順番に読むのが一番シリーズを楽しめるかと

 

グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

 

 

 

 この2作を読んだら次はシリーズ最新作の『AX(アックス)』をどうぞ~↓

 

 『AX(アックス)』のまとめ記事はこちら↓

 

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ではではまた~

『今からあなたを脅迫します』原作小説 シリーズ紹介・ドラマと原作との違いなど

こんばんは、紫栞です。
今回は2017年10月15日から日本テレビ系で放送が開始されるドラマ『今からあなたを脅迫します』の原作小説を紹介しようと思います。

今からあなたを脅迫します (講談社タイガ)

ドラマのあらすじをネットで見て面白そうだと思い、購入して読んでみました。

“脅迫屋シリーズ”と銘打たれているシリーズで現在『今からあなたを脅迫します』『今からあなたを脅迫します 透明な殺人者』の2冊が刊行されています。今月19日にシリーズ第3弾の新刊『今からあなたを脅迫します 白と黒の交差点』が発売されるみたいですね。

 

小説の作者は藤石波矢さん。私はこの本読むまでまったく存じ上げなかったのですが、本の〈著者紹介〉によると
“1988年栃木県生まれ。『初恋は坂道の先へ』で第1回ダ・ヴィンチ「本の物語」大賞を受賞し、デビュー。軽妙なセリフ廻しと卓越した物語構成が持ち味。エンターテインメント小説の未来を担う、要注目の新星。”
ほうほう。
まだデビューして3・4年の駆け出しの作家さんなんですね~。デビューしてほんの数年で著作がドラマ化・・・凄いですな。


シリーズ1冊目『今からあなたを脅迫します』

 

今からあなたを脅迫します (講談社タイガ)

今からあなたを脅迫します (講談社タイガ)

 

あらすじ
私が帰宅すると、郵便ポストに白い封筒が届いていた。五〇七号室の自室に入り、封筒の封を切ってみると、中に入っていたのは一枚の紙切れとメモリーカード。逡巡しつつもパソコンにメモリーカードを挿入すると、動画が再生された。映し出されたのは殺風景な部屋、椅子に縛り付けられた男、その男に銃を突きつける覆面の男だった。
覆面の男は自身のことを「脅迫屋」だと名乗り
『ある依頼主からの依頼で俺は君たち、振り込め詐欺犯を脅迫する。命が惜しければ被害者から騙し取った金を払うこと。ナオコさん。拒んだら君の元カレ、サトウさんは明日には死ぬ』
と、脅迫してきた。
私は酷く混乱した。振り込め詐欺?脅迫屋?サトウの命?何がどうなってるの?何よりも、
「ナオコって誰よ」
私の名前は金坂澪。大学生だ。断じてナオコじゃないし、サトウなんて知らないし、恋人なんていたこともない。
この覆面男、脅迫する相手を間違えている――!?

 

 

 

と、この人違いから物語りは始まる訳ですね。
普通ならこの後警察に連絡するなり、無視するなりするところなんですが、主人公の澪は極度のお人好しで無駄にお金持ち。赤の他人のサトウの為に要求金額の三千万を払うとアホなことを言い出し、思わず脅迫屋も困惑。『またこちらから電話する』と言い残して電話を切られた翌日、脅迫の本来の相手・葛城菜穂子の遺体が発見されて~・・・・・・で、澪は事件に巻き込まれていき、気づけばテロ事件の渦中へと追い込まれていく――ってのがシリーズ1冊目の大まかな流れ。

出だしの“人違い場面”の二人の応酬がなんとも面白いです。ドラマでどのように再現されるのか楽しみですね~(^_^)
読む前はドラマの紹介などのイメージから「コンビもの」を想像していたのですが、実際に読んでみての印象としては「コンビもの」って感じとはちょっと違いますね。脅迫屋を始めとした“裏家業”の世界に善良な女子大生が関わっていく、いわば“冒険もの”の印象が強いです。


このシリーズ1冊目、三百ページちょっとで五話構成。一~三は一話完結型でお話が進んで、四・五話目でそれまでのストーリーが繋がる構成なんですが、ページも話数も少ないので終盤に向かっての澪の心境の変化になんだかついて行けないと感じてしまいました。ドラマではここら辺の違和感が払拭されたら良いなぁと思います。


原作とドラマとの違い
ドラマでの主要人物のキャストは
千川完二(脅迫屋)―ディーン・フジオカ
金坂澪武井咲
目黒(泥棒)―三宅弘城
栃乙女ハッカー)―島崎遥香
轟雄之介(澪の祖父)―近藤正也

ですが。


現在わかっている原作との大きな違いは千川さんの年齢ですね。原作だと二十代前半ですから。お話上、別段若い必要はないかとは思いますが、千川さんの飄々とした感じがドラマではどう表現されるのか大いに気になるところです。


あとドラマの公式ホームページを見ると、「隣に引っ越してくる好青年」「BAR青龍の二人」やら、オリジナル要素・キャラクターが追加されているみたいです。まぁ原作の内容量が少ないですからね、連ドラでやるにはお話追加したり・膨らましたりが必要なのだと思います。

※追記。ドラマ第1話を観て判明した違いはこちら↓

 

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シリーズ2冊目『今からあなたを脅迫します 透明な暗殺者』

今からあなたを脅迫します 透明な殺人者 (講談社タイガ)

あらすじ
怪しいナンパ師・スナオと澪が公園の植え込みから生えた自転車の謎を追ううちに、闇金業者と対決することに。しかし、対決相手は謎の事故死を遂げ、その現場では澪の前から姿を消した脅迫屋・千川の姿が目撃され――。

 

 

シリーズ2冊目ですが、この本ドラマでやるのかどうか微妙なところですね。それというのもお話上、脅迫屋である千川さんの出番が少ないんですよ。お話の大部分は澪とナンパ師・スナオの二人が事件を追う流れですからね。千川さんは後半でやっと出てきます。ドラマでやるにしてもキャストの都合上、大きな変更が必要なんじゃないかと。(ディーンさんが不在じゃ色々と問題だよね^^;)


私は一作目よりもこのお話の方が好みです。些細な自転車の謎から闇金業者との対決になっていく過程が面白いです。各章の間にある「幕間」が解明部分で一気に繋がるところも良いですね。


エンターテインメント作品で“脅迫”をして解決させるお話だというので、もっとスカッとするストーリー展開を予想していたのですが、結末部分は割とモヤモヤが残る読後感ですね。悪いヤツが野放しみたいなのも結構あります。シリーズ今後への繋ぎなのかもしれないですが。


原作小説の『脅迫屋シリーズ』は2冊目の段階では「これから面白くなっていく途中」って感じです。発展途上。今月19日にでるシリーズ第3弾ではどうお話が展開されるのか楽しみですね。読んだらまた記事書きたいと思います。ドラマの感想も。

 

※一話試し読み出来るみたいです↓

 

 

 

今からあなたを脅迫します (講談社タイガ)

今からあなたを脅迫します (講談社タイガ)

 

 

 

今からあなたを脅迫します 透明な殺人者 (講談社タイガ)

今からあなたを脅迫します 透明な殺人者 (講談社タイガ)

 

 

※新刊はこちら↓ 

今からあなたを脅迫します 白と黒の交差点 (講談社タイガ)

今からあなたを脅迫します 白と黒の交差点 (講談社タイガ)

 

 

ではではまた~

作家アリスシリーズ(火村英生シリーズ)漫画まとめ 5冊一挙紹介!

こんばんは、紫栞です。
今回は有栖川有栖さんの『作家アリスシリーズ』(火村英生シリーズ)

 

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 のコミカライズ作品をまとめたいと思います。

臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート ロシア紅茶の謎【新装版】 (あすかコミックスDX)

『作家アリスシリーズ』は一部作品が漫画家の麻々原絵理依さん作画であすかコミックDXから「臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート」の題名で5冊刊行されています。
2000年から2003年までの間に短編集2冊、長編が上下巻で2冊出されました。いやぁ古いなぁとか思ってしまいますが、まぁ原作は92年からやっているのでね・・・。この4冊は2013年に新装版が出されて、2015年には新たに1冊短編集が発売されて計5冊に。10年以上経ってから新たにってなんか凄いですね。

 

では順番に紹介

臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート ロシア紅茶の謎

 

 

短編集。
●ロシア紅茶の謎
●動物園の暗号
●人喰いの滝
●猫と雨と助教授と
の4編収録。
こちらは2000年発行『臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート①人喰いの滝』

 

 の新装版。原作小説は「ロシア紅茶の謎」「動物園の暗号」『ロシア紅茶の謎』から。

「人喰いの滝」『ブラジル蝶の謎』「猫と雨と助教授と」ペルシャ猫の謎』からですね。いずれも講談社で展開している国名シリーズ収録のお話。
凶器紛失の謎、暗号解読、足跡トリックと如何にも本格ミステリなお話が選ばれていますね。作家アリスシリーズの概要を示すのに1冊目がこういうラインナップになるのは納得。「猫と雨と助教授と」はミステリではなく数ページのオマケ的作品。

新装版だとあとがきで麻々原さんの書き下ろし2ページ漫画「動物園の人喰いの謎」が入っています。こちらはもちろん原作にある話ではなく麻々原さんのオリジナルです。アリスがかわいい(笑)

 

臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート 朱色の研究Ⅰ・Ⅱ

 

 

 

 

長編。
の方は「朱色の研究 夕陽丘殺人事件」

 ※旧版はこちら↓

 の副題でアリスのマンションの近くで起きた殺人事件のお話。原作も二部構成ですからね。漫画も綺麗に2冊にわかれての収録。
巻末にシュルレアリスムの午後」という話が入っていますが、こちらは原作だと『ダリの繭』愛蔵版

ダリの繭 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

角川ビーンズ文庫版下巻

臨床犯罪学者・火村英生の推理 III ダリの繭(下) (角川ビーンズ文庫)

に収録されているもの。小説はアリスとお隣さんの真野さんとのお話なのですが、漫画だとアリスと火村の話に変えられています。

の方は「朱色の研究 枯木灘殺人事件」

 ※旧版はこちら↓

 の副題。お話の後編ですね。『朱色の研究』は私が大好きな長編小説の一つなのですが、動機面などが少し複雑なんですよね(私はそこら辺の描写が凄く好きなのですが)漫画は原作の要所要所が上手くまとめられて読みやすくなっていると思います。「このシーンは外しちゃダメよね」って箇所がちゃんと描かれていますね。
『朱色の研究』はドラマでも放送されましたが、1話目から伏線張って、二週使ってやったくせに内容はダメダメすぎてもう驚愕。怒り心頭で当時周りの友達に愚痴りまくっていました(^_^;)もう絶対に『朱色の研究』はドラマ観ただけでわかった気には間違ってもならないでほしい。原作読むのが一番ですが、面倒くさいって人はせめてこの漫画読んで下さい・・・!

※小説はこちら・・・!

朱色の研究 (角川文庫)


巻末に「朱色の研究室」という麻々原さんのオリジナルおまけ漫画が入っています。おもろい(^_^)新装版はⅠにもⅡにもあとがき部分に四コマ漫画があります。


臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート ブラジル蝶の謎

 

 

短編集。
●わらう月
●201号室の災厄
●ブラジル蝶の謎
3編収録。
他に麻々原さんの書き下ろしオリジナル漫画
●或る日の出来事[賢者の贈り物編]
●或る日の出来事[新刊発売記念編]
●2001号室の災厄
の3編も収録。
こちらは2003年発行『臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート④201号室の災厄』

 

 の新装版。新装版は巻末におまけ漫画「ガラパゴス携帯の謎」が入っています。
「わらう月」は原作小説だとペルシャ猫の謎』「201号室の災厄」は角川からの『暗い宿』収録作品ですね。
原作のお話もバラエティに富んでいて書き下ろし漫画もいっぱい入っていてで楽しめる1冊。「ブラジル蝶の謎」はやっぱシリーズ的にやっとかないといけないお話ですよね・・・。「201号室の災厄」は火村先生がカッコイイ。原作もカッコイイですが、漫画にされるとよりカッコイイですな。「わらう月」は倒叙モノなんですが、漫画でやってくれるのかと嬉しくなりました。
麻々原さんの書き下ろしも面白いです。[賢者の贈り物編]のくじ引きの場面で火村が残念賞を念頭に、アリスが特賞に思いをはせているってのがもの凄く“らしい”(笑)


臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート 英国庭園の謎

 

 

●英国庭園の謎
●暗い宿
の2編とASUKA2014年三月号ふろく小冊子掲載の「茶色の研究」が収録されています。こちらは麻々原さんオリジナルですね。あと、あとがき部分に四コマ漫画。この四コマ一番笑いましたね(^o^)
この本は2015年刊行なので現在感がありますね。絵柄とか服装とか。原作小説はどちらも表題作の通りです。絵柄は変わっていますが、中身は前の火村とアリスのままで安心。

新装版は短編集のタイトルすべて国名シリーズで統一されましたね。ロシア、ブラジル、英国~と、原作の順番通りなのですが・・・次があると期待するなら今度は『ペルシャ猫の謎』か!?でも、ペルシャ猫の謎は漫画向きではないような・・・すっ飛ばして『マレー鉄道の謎』か『スイス時計の謎』かしら?どっちも凄く読みたい!マレー鉄道は長編ですけどね。
個人的な疑問ですが、長編漫画は何故『朱色の研究』をやったのだろう?『ダリの繭』とかの方が一部読者層にウケが良かったのでは・・・とかお節介な事考えてしまいますが(^_^;)長編ならダリ繭漫画になっているの見てみたいですねぇ・・・。


あとコミックス以外に雑誌『ダ・ヴィンチ』2つのアリスシリーズ大特集に麻々原さんの書き下ろしオリジナル漫画が掲載されています。こちら↓

 

ダ・ヴィンチ 2016年4月号
 

 漫画以外にもシリーズ解説や有栖川さんのロングインタビュー、対談、読者の声など有栖川ファン必見の雑誌です。オススメ。

 

 

最後に
麻々原絵理依さんはBL作家さんですが、この漫画シリーズはもちろんBL漫画ではないので“そのような”シーンは無い(あたりまえだ)。十年の時を経て絵柄がだいぶ変わっていますが、私個人としては近年の絵柄の方が原作の雰囲気には合っていると思います。「二人ともイケメンになってる~」とかの指摘をされたりしますが(原作者の有栖川さんも角川ビーンズ文庫版のあとがきで書いていましたね・・・) 

 まぁASUKA連載ですからねぇ。女性向けの絵柄になりますよ。こちらの角川ビーンズ文庫版は麻々原さんが表紙と挿絵を担当しています。


漫画は麻々原さんの書き下ろしが面白いです。キャラクターの“つかみ”がちゃんと出来ていて「うんうん、こういう事言いそう」って素直に読んでて思わせてくれます。特にアリスの“そこはかとない可愛さ”は上手く表現されている・・・と、思う。どうでもいいことですが、漫画だと火村先生、トレードマークの白ジャケあんま着てないですね。

 

原作にあるギャグが削られていたりするので(項の問題とかでしょうがないんですが・・・^^;)原作のギャグが大好き!な私としては漫画だけでなく原作も続けて読んで~!とは言いたいですが、シリーズのだいたいの雰囲気をつかむには良いと思います。もちろん原作小説読んだ人にもオススメ。

いかがでしょうか?

 

 

 

暗い宿 (角川文庫)

暗い宿 (角川文庫)

 

 

 

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ではではまた~

米澤穂信 作品一覧・解説 ※随時更新

こんばんは、紫栞です。
今回は小説家の米澤穂信さんについてご紹介。

米澤穂信と古典部

作風・特徴
殺人事件を扱っている作品は少ないですが、しっかりとした理責めの推理小説を書かれています。学生が主役の「日常の謎」モノが多く、ノンシリーズの『ボトルネック』までは青春・思春期とミステリの組み合わせで作品を出されていました。近年は別テーマのお話やシリーズも展開するようになりましたね。


日常の謎」を扱ったシリーズ以外の作品は結構後味の悪いお話が多いです。秘められた悪意が暴かれる、知らない方が良かった事を知ってしまうといった結末が大半ですかね。しかし、不快感はさほど無く、読んでいてこの後味の悪さが癖になります。文章が端正なのと仕掛けの巧みさに感心してしまうからでしょうか・・・。


青春ミステリとはいっても青春の綺麗で爽やか・希望に溢れた部分にスポットをあてるのではなくって、思春期に陥る不安や葛藤・生きづらさが描かれています。代表的シリーズの〈古典部シリーズ〉も“ほろ苦さ”がウリ(?)ですからね。
私は米澤さんの青春ミステリ以外の作品も大好きです。ターゲット層が上の世代の作品も良作揃いですので、どんどん書いてほしい(もちろん青春モノのシリーズも書いてほしいですが)


男性的な欲を匂わせない主人公が多いです。実は私、読み始めた頃、名前と文章の雰囲気から若手の女性作家さんなのだと思い込んでいたんですよね(笑)後にテレビで音声と顔写真を観てびっくりした(^_^;)

 

 


作品一覧


古典部シリーズ

 

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米澤さんの代表的シリーズ。アニメ化され、映画化も。青春ミステリで「日常の謎」モノですね。
氷菓(連作短編)第五回角川小説大賞(ヤングミステリー&ホラー部門)奨励賞受賞作。
愚者のエンドロール』(長編)
クドリャフカの順番』(長編)
遠まわりする雛』(短編集)
『二人の距離の概算』(長編)
『いまさら翼といわれても』(短編集)

 

小市民シリーズ
こちらも青春ミステリの「日常の謎」モノ。“小市民”を目指す、恋愛関係にも依存関係にもない互恵関係にある高校生男女が主役。『冬期限定~』で完結するはずですが、2009年以降刊行されていません。いつでるのか・・・。


春期限定いちごタルト事件』(短編) 

 

夏期限定トロピカルパフェ事件』(連作短編)

 

 

秋期限定栗きんとん事件』(長編)

 

  

 ※三作目は上下巻にわかれています。

 

 

ベルーフ(大刀洗万智)シリーズ
さよなら妖精』に登場する大刀洗万智を探偵役に据えたシリーズ。『さよなら妖精』のときは高校生で、ベルーフシリーズでは新聞記者を経てフリージャーナリストになった大刀洗が描かれます。“ベルーフ”っていうのは〈天職〉の意味で名称に使用しているんだとか。シリーズとはいってもお話は独立しているのでバラバラに読んでも大丈夫です。
『王とサーカス』(長編) 

王とサーカス

王とサーカス

 

 

『真実の10メートル手前』(短編集) 

真実の10メートル手前

真実の10メートル手前

 

 

 

S&Rシリーズ
シリーズ化を想定して書かれたとのこと。確かに内容やキャラクターはシリーズ化を念頭において書いたんだなと思わせるものですが、2005年に一作刊行されて以降何の音沙汰も無いです。はたして続きはでるのか・・・。


『犬はどこだ』(長編) 

犬はどこだ (創元推理文庫)

犬はどこだ (創元推理文庫)

 

 

 

シリーズ外作品


さよなら妖精』(長編)

 

さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

 
さよなら妖精【単行本新装版】

さよなら妖精【単行本新装版】

 

  上記の理由から〈ベルーフシリーズ〉を読む前に是非こちらを。この小説、元々は〈古典部シリーズ〉三作目・完結編として予定されていたものらしいのですが、様々な事情でレーベルを変えて東京創元から刊行されることに。結果的に読者層が広がり、〈古典部シリーズ〉も続くことになりで、読者的には万々歳ですね。一応「日常の謎」ものではありますが「戦争」が関わってくるので結末の重さはシリーズ作品とはだいぶ異なります。

 

ボトルネック』(長編)

 

ボトルネック (新潮文庫)

ボトルネック (新潮文庫)

 

 もう青春の痛さ・苦さ大爆発の長編。読後の絶望感は凄まじいです。パラレルワールドが舞台のお話で主人公の心情が深く描かれています。ミステリ色は薄めですかね。

 

インシテミル』(長編)

 

インシテミル (文春文庫)

インシテミル (文春文庫)

 

 アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』へのオマージュ的作品で「クローズド・サークル」をとことん追求しています。米澤さんの作品の中では今のところ一番王道の本格推理小説ですね。2010年に実写映画化されていますが、何故「インシテミル」の題名なのか疑問なくらい小説とは内容が違います。“原作”というよりは“原案”って感じですね。

 

儚い羊たちの祝宴』(連作短編)

 

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

 

 お嬢様達が集う読書サークル「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件が収められたられた短編集。どす黒くって耽美な暗黒ミステリ。出て来るお嬢様達が無慈悲すぎてなんだか人間離れしています。

 

『追想五断章』(長編)

 

追想五断章 (集英社文庫)

追想五断章 (集英社文庫)

 

 五つの「結末のない物語(リドルストーリー)」を作中に埋め込んだ本格ミステリ。お話の作りが精巧で感嘆します。

 

『リカーシブル』(長編)

 

リカーシブル (新潮文庫)

リカーシブル (新潮文庫)

 

 「子供」という立場の苦さ・辛さが重くのしかかる青春ミステリ。地方都市ミステリでもあり、町全体の妙な雰囲気や伝説に町に引っ越してきた血の繋がらない姉と弟が迫ります。二人のやり取りがそこはかとなく楽しくってそこが救い。

 

『折れた竜骨』(長編)

 

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

 

 第64回日本推理作家協会賞受賞作。魔術や呪いが横行するファンタジーな世界で「推理」の力によって犯人を導き出すことが出来るのか?ってなお話。「ファンタジーだ~」と思って新鮮な気分で読んでいたら、終盤は骨太な謎解きミステリになっていて「こんなものまで書けてしまうのですか・・・!」と色々と驚きを与えてくれます。

 

『満願』(短編集)

 

満願 (新潮文庫)

満願 (新潮文庫)

 

 第27回山本周五郎賞受賞作。これぞ至極の短編集。どのお話も完成度が高いです。後味の悪い読後感も冴え渡っていますね。読んで損はない一冊。

 

 

 

進化
米澤さんは2001年から活動されていますが、量産型の作家さんではないので作品数はさほど多くないですね。短編が多いので単行本にまとまるまで時間がかかるというのもありますが。個人的には〈小市民シリーズ〉の完結編はいい加減出してほしいな~とか思いますね・・・。
量産型じゃないぶん、作品一つ一つの完成度は高いです。青春ミステリの枠組みを外してからは色々な種類のミステリを書かれていますが、ドンドン進化していってるなぁ~と本が出る度感じさせてくれる作家さんですね。
今後もますますのご発展をお祈り申し上げます!

 

 

 

ではではまた~