夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『巷説百物語シリーズ』刊行順・事件年表・他シリーズとの繋がりまとめ 幻の事件とは?

こんばんは、紫栞です。

今回は京極夏彦さんの二大妖怪シリーズの内の一つ『巷説百物語シリーズ』をご紹介。

巷説百物語 (角川文庫)

二大の内もう一つは『百鬼夜行シリーズ』ですね。

 

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巷説百物語シリーズとは

江戸時代から幕末、明治が舞台。昭和を舞台とする『百鬼夜行シリーズ』に繋がる構造になっています。

道を通せば角が立つ。

道を外せば深みに嵌まる。

彼誰誰彼丑三刻に、そっと通るは裏の径。

所詮浮き世は夢幻と、見切る憂き世の狂言芝居。

見過ぎ世過ぎで片をばつけて、残るは巷の怪しい噂――。

現実ではどうにも処理できない困った問題、八方塞がりの状態を“妖怪”という人知を越えたものを持ち出すことで丸く収める“妖物遣い”の又市と仲間達の仕掛けが描かれる一話完結型の連作小説。

仕掛けの仕上げに又市が「りん」と鈴を鳴らして「御行奉為(おんぎょうしたてまつる)」と唱えて締めるのがオキマリ。

私的なことですが、上の文句の“道を通せば角が立つ。道を外せば深みに嵌まる”っての、歳を経る毎にもの凄く実感する(笑)

 

怪異・謎を妖怪と名付けて論理的・科学的に祓い落す陰陽師中禅寺秋彦が登場する『百鬼夜行シリーズ』とは真逆の事をして又一は事を丸く収める。完全な裏返し、『百鬼夜行シリーズ』の対極にあるシリーズです。

 

あと、又市達はコレとは別シリーズの【江戸怪談シリーズ】・「嗤う伊右衛門」「覘き小平治」「数えずの井戸」にも出て来ます。

 

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特に「嗤う伊右衛門」は又市がガッツリと重要な役どころで出て来るので必読。

 

 

 

 

読む順番はどっちのシリーズが先でもいいと思います。

 

最初の2冊巷説百物語』『続巷説百物語は“御行の又市”達の仕掛けに偶然巻き込まれた後、彼ら“向こう側”の人間と関わっていく“こっち側”の人間・戯作者志望の山岡百介を中心に描かれています。てっきりこの流れのまま第三弾にいくのかと思いきや、『後巷説百物語』でシリーズは大きく変動します。

 

私は後巷説百物語『前巷説百物語がお気に入り。ちなみに好きキャラは“山猫廻しのおぎん”。あのしゃべり方が良いんですよね~。色っぽい。又市の口調も好きですけどね。

 

 

 

 

刊行順

とりあえず順番にご紹介。

巷説百物語

 

 

 

百介と又市が出会うシリーズ第一弾。色々な語り手でお話が成り立っているスタイル。

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『続巷説百物語

 

 

 

一作目と同じように又市達の仕掛けが描かれますが、語りの視点が百介中心なので、こちらはより主要キャラクターの掘り下げがされています。

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後巷説百物語

 

 

 

第130回直木賞受賞作。時代は前作からだいぶ進んでの40年後。明治になったばかり。元幕府の若者4人が「一白翁」こと山岡百介に不思議・奇妙な事件を相談しにやって来て、老いた百介の昔語りを4人に聞かせる設定。『巷説百物語シリーズ』ではこの本の最終話「風の神」が時系列では『巷説百物語シリーズ』の最後になります。泣ける。感動のラストです。百介にとっての“百物語”はここで完結ですね。

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『前巷説百物語

 

 

 

又市が百介と出会う前のお話。“御行”の又市が出来上がるまでの“百物語”はじまりの物語。若き日の又市ということで、又市がかなり青臭い(笑)終盤はかなり辛い展開ですね~。これだけの経験をしたからこそ“御行の又市”は出来上がったのだなぁ、と。「旧鼠」での林蔵との会話と、又市が啖呵切るところが凄く好きです。

 

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『西巷説百物語

 

 

 

第24回柴田錬三郎賞受賞作。続・後・前ときたから次は何だと思ったらまさかの方角。上方(西)を舞台に“靄船の林蔵”が仕掛け人を担うスピンオフ的1冊。「これで終いの金比羅さんや」が締めゼリフ。上方の妖怪達が使われています。前作に比べると林蔵がだいぶ格好良く感じる。モテ男ですね。

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『遠巷説百物語

 

 

『西巷説百物語』から11年ぶりのシリーズ第六弾。十一年の時を経て、【巷説百物語シリーズ】再始動です。

今度の舞台は遠野で、仕掛け人は長耳の仲蔵。こちらも『西巷説百物語』と同じくスピンオフ的印象ですが、次作の最終作へ繋がる事柄が多く出て来ます。

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事件年表

巷説百物語 ●続巷説百物語 後巷説百物語 ●前巷説百物語 ●西巷説百物語 ●遠巷説百物語

 

182~年 

 ●寝肥 1年後

 ●周防大

 ●二口女

 ●かみなり

2年後

 ●山地乳

 ●旧鼠

4年後

嗤う伊右衛門』(江戸怪談シリーズ)又市登場

7年後

『覘き小平治』(江戸怪談シリーズ)治平・徳次郎登場

?年後

『数えずの井戸』(江戸怪談シリーズ)又市・徳次郎登場

12年後

 ●小豆洗

 ●野鉄砲

 ●白蔵主

 ●狐者異

13年後

 ●舞首

 ●飛縁摩

 ●芝右衛門狸

 ●船幽霊

14年後

 ●塩の長司

 死に神

 ●柳女

 ●桂男

 ●赤えいの魚

 ●遺言幽霊水乞幽霊

 ●鍛冶が嬶

 ●夜楽屋

 ●溝出

15年後

 ●帷子辻

 ●豆狸

 ●天火

 ●野狐

 ●山男

 ●手負蛇

18年後

 ●五位の光

20年後

 ●老人火

1845年

 ●歯黒べったり

 ●磯撫

 ●婆山

1846年

 ●鬼熊

 ●恙蟲

 ●出世螺

1877年

 ●風の神

 

 

 

又市の幻の事件

『西巷説百物語』が出たときに公式ホームページでシリーズ終了と言っていた記憶があるのですが、『続巷説百物語』の最終話「老人火」で又市達が江戸と大坂を股にかけて活躍した大事件の存在が匂わされています。

なんでもその事件の結果“事触れの治平”が命を落したと、又市達と浅からぬ縁があったさる高名な陰陽師が言っており、十文字屋以蔵も時を同じくして落命したとのこと。(色々と「なんだって!」って感じで読者としては気になりすぎるんですけど・・・もう!何!?)

インタビューで京極さんは「又市の幻の事件」は長編だと仰っているのですが・・・。いつかこの事件について何らかの小説で触れられたりするのかな?(それこそ『百鬼夜行シリーズ』で・・・とか)いや、出来れば宣言通り又市達の長編書いて欲しいですけど。でもシリーズ終了って言っているしなぁ・・・う~ん(^_^;)

 

※2021年、【巷説百物語シリーズ】再始動となりました!この幻の事件についてもシリーズ第七弾『了巷説百物語』で書かれることになりそうです!

 

 

 

他シリーズとの繋がり

後巷説百物語』にて、

百鬼夜行シリーズ』

 

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 陰摩羅鬼の瑕由良行房・由良昂允

 

 

鉄鼠の檻和田知念

 

 

狂骨の夢南方衆

 

が、それぞれ登場・交点しています。

しっかりとした言及はありませんが、榎木津が主役の『百器徒然袋―風』最終話「面霊気」では又市達の仕掛けを匂わせる箇所があります。

 
 
 
 
あと、集英社でのシリーズ『書楼弔堂―破曉』

 

 

三話目「方便」に『後巷説百物語』の4人の若者のうちの1人、矢作剣之進が出てきます。『後巷説百物語』最終話「風の神」でおこなった百物語怪談会についても作中で触れられています。あの怪談会から15年経っているとのことです。

そして、 最終話「未完」で百介の開版するにあたっての筆名「菅丘李山」の名前が出てきます。

 

両シリーズの繋がりを発見するのもまた一興ですね。 実はドラマ版でまた驚きの繋がりが明かされているんですが・・・

ドラマの話はこちら↓

 

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・・・・・・冊数はさほどじゃないから簡単にまとめられるだろうと思ったら大間違いでした。もう朝だし!(笑)

京極ワールドが深すぎて恐れおののく(笑)全然まとめきれてないんじゃ・・・・・・また後日っ!!

 

 

とりあえず、今回はこのへんで。

 

 

ではではまた~

桜庭一樹 最新刊『じごくゆきっ』 砂糖菓子~の後日談をふくむ7編

こんばんは、紫栞です。

今回は今年の6月に発売された桜庭一樹さんの最新刊『じごくゆきっ』をご紹介。

じごくゆきっ

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の後日談をふくむ全7編の短編集です。

 

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実は私、この単行本が出されていた事実を二ヶ月ほど知らないまま過ごしていたのですっ!不覚!

集英社からの文芸書籍の刊行って見逃しがちなんですよね~そうなのって私だけかしら?(集英社からの漫画はすぐにわかるんですけどね)

桜庭さんは集英社から本出すのは『ばらばら死体の夜』以来ですね。

 

収録作品

●暴君

●ビザール

●A

ロボトミー

●じごくゆきっ

●ゴッドレス

●脂肪遊戯

 

 

最初と最後の『暴君』『脂肪遊戯』の2編が『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の後日談ですね。

これ、読んで大抵の人が引っかかる事だと思うんですが・・・どこら辺が後日談なんだ?と。

それというのもこの2編を読んでも『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』のキャラクターが登場したり、『砂糖菓子~』での事件についての言及が話の中にあったりするわけでも無く、唯一共通してでてくるモノは“ピンク色をした霧”のみなので(これも『暴君』の方にしか出てきませんけどね)「後日談?続編か!?」と思って読むとかなりの肩透かし感があるかと。

『じごくゆきっ』の公式サイトに載っている桜庭さんの著者エッセイに

“『砂糖菓子~』と同じ世界を舞台にして”と書いてある事から察すると・・・

『砂糖菓子~』で描かれた“子供が戦う世界”――なぎさが最後の方で語っていた

「十三歳でここにいて周りには同じようなへっぽこ武器でぽこぽこへんなものを撃ちながら戦っている兵士たちがほかにもいて」

つまり“へっぽこ武器で戦っている他の兵士(子供)達にスポットを当てたお話”ということなんだと思います。

 

『暴君』と『脂肪遊戯』の中で「~のだが、それはまたべつの話だ」のフレーズが数回出て来るので同じ世界感でまだ数作書くつもりだったようですが、今のところ2編で打ち止め状態みたいです。この2編に出て来る紗沙羅はかなり良い味だしてるキャラクターなので「“べつの話”読みたいな~」と思ってしまいます。書いてくれないかな~。

 

 

 

『ビザール』『ロボトミー』『ゴッドレス』の3編は共通して脳障害が扱われているなぁと思ったら、著者エッセイによると“脳と視覚のあいだに起こるイレギュラーな病”をテーマに書かれたものらしいです。 ちなみに、題名の“ビザール”“ロボトミー”“ゴッドレス”はいずれも作中人物のSNS上で使っている名前として出てきます。

ロボトミーって題名を見たときは「え?昔の手術話?」とか思ってしまいましたが、全然違う(^_^;)

『ビザール』の主人公みたいに無理に個性をつけようとする心理ってのはよくわかるし、私の学生時代にも周りにそういう子いたな~と。

『ゴッドレス』は終盤の香さんとニノの会話、ニノが必死に言いたいことを言おうとして 何度もつっかえってしまうところ、読んでいて胸が苦しかったです。

 

『A』 はSFもの。 “アイドル”に“アイコンの神”が宿っていて・・・の未来話。出だしのアイドルの概念が完全に忘れ去られた時代ってのが面白かったです。

表題作の『じごくゆきっ』は先生と生徒(女同士)での駆け落ち話。

「金城さん。センセといっしょに・・・・・・」「じごくゆきっ」

 

 

 

 

7編全て桜庭さんらしさに溢れていて素晴らしかったです。

特に好きなモノを挙げるなら『ロボトミー』と『脂肪遊戯』でしょうか。『脂肪遊戯』は電話のシーンが面白かったです。

うーん・・・でも7編ともやっぱり同じぐらい良かったですね!

 

桜庭さんの小説は単純なハッピーエンドを迎えるものが少なく、この短編集も全話「あぁ、もう幸せ!ハッピー」といったものとはほど遠いです。ラストはどれも“痛み”を伴い、絶望が漂っている。

単行本の題名が『じごくゆきっ』なのはこの7編全てを読み終わると凄くシックリでピッタリだなぁと思います。漢字じゃなくってひらがなで、小さい“っ”が付いているところもまた桜庭さんっぽいですね。メルヘンチックな字体だが、書いてあるのは“地獄”ですよ~みたいな。

 

桜庭一樹ファンはもちろんですが、今まで桜庭作品を読んだことがない人にもオススメしたい1冊です。

さぁ、あなたもいっしょに・・・・・・じごくゆきっ

 

じごくゆきっ

じごくゆきっ

 

 

 

ではではまた~

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』感想・あらすじ 桜庭作品はコレを抜きには語れない!

こんばんは、紫栞です。

今回は桜庭一樹さんの小説砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないをご紹介。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  A Lollypop or A Bullet (角川文庫)

桜庭さんは元々少年少女向けの娯楽小説・ライトノベル作家で、この『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』も最初はライトノベルレーベルの富士見ミステリー文庫からの刊行でした。こちら↓

 

 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

 

※ 角川文庫版読んでからこの表紙見るとびっくりする(笑)挿絵も入っているみたいです。

 

その後高い評価を受けて評判になり、数年後に富士見書房から単行本が発売され、

こちら↓

 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

 

 

角川文庫でも刊行されました。

こちら↓

 

 

ライトノベル作品から一般文芸で刊行し直された希有な作品ですね。 この本で桜庭さんは一般文芸界から注目を集め、大人向け・一般文芸の作品を書くようになり、2008年には『私の男』直木賞を受賞するまでに至りました。

 

私の男

私の男

 

 

桜庭さんの作家生活において大きな転機となった作品ですね。

私個人としても、桜庭さんは少年少女向けの娯楽小説だけを書かせるには余りにも勿体ない作家さんだと思います。

 

 

 

 

あらすじ

【新聞記事より抜粋】

十月四日早朝、鳥取県境港市、蜷山の中腹で少女のバラバラ遺体が発見された。身元は市内に住む中学二年生、海野藻屑さん(一三)と判明した。藻屑さんは前日の夜から行方がわからなくなっていた。発見したのは同じ中学に通う友人、A子さん(一三)で、警察では犯人、犯行動機を調べるとともに、A子さんが遺体発見場所である蜷山に行った理由についても詳しく聞いている・・・・・・。

九月のはじめ、あたしのクラスに自分のことを“人魚”だと言い張る謎めいた美少女・海野藻屑が転校してきた。

そしていまは、十月四日の早朝。兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために――。

 

 

 

 

 

 

このお話は最初のページに【新聞記事より抜粋】が載っていまして、“あたし”とその兄・友彦が山に登りながらこれまでの出来事を回想していく構成です。新聞記事のA子さんが語り手である“あたし”(山田なぎさ)ですね。

冒頭ですでに悲劇的な結末が提示されている、ミステリー的な形式が取られています。しかし、このお話は謎解きがメインではありません。世界と“子供”との戦いが描かれた痛切な青春小説です。

 

 

砂糖菓子の弾丸とは

主人公の山田なぎさは“子供”という境遇に絶望しているリアリストで、直接的で実体のある力「実弾」を早く手にしたいと考えている。ここでの「実弾」とは主に〈お金・社会進出・働くこと〉などの意ですね。 その「実弾」主義のなぎさに対して何かと絡んでくる転校生の藻屑。藻屑は荒唐無稽な嘘ばかりつく、なぎさの兄・友彦が言うには空想的弾丸――“砂糖菓子の弾丸”をのべつまくなし撃っている少女。

なぎさは「実弾」にならないよけいなことには関わらない、一生そんなものは見ずに生きていくと心に固く誓っていたが“砂糖菓子の弾丸”である嘘つきで残酷、美しい藻屑に徐々に惹きつけられ、親しくなっていく。

海野藻屑に“はまって”しまうのですね。

 

「好きって絶望だよね」

作中の藻屑のセリフです。

このお話のテーマの一つに「虐待」があります。藻屑は父親から暴力を振るわれていて、体中痣だらけ。しかしその痣を“汚染”と言い張り、父親の事を庇いながら砂糖菓子の弾丸を撃ちつづける。

お父さんのことが、好きだから。

藻屑はこの生い立ちのせいか、愛情表現と暴力行為を混同させているところがあり、残酷なことも平気でやってのけてしまう非常に危うい存在として描かれています。

ただの酷い話では無く、愛情が見え隠れしているからこそ、この物語はどうしようもなく悲痛なのです。

一方のなぎさは子供ながらに必死にとれる行動をとり、藻屑の父に対しても面と向かって「藻屑を殴らないで!」と言います。しかし、どうにもならない。

 

『大人になって自由になったら。だけど十三歳ではどこにもいけない。』

 

それでも終盤、なぎさは藻屑と一緒に逃げようとします。まったく計画性の無い、拙くて幼稚なものでしたけど。

 

『そのままあたしはそこに立って、藻屑と一緒に行くはずのどこか遠いところを夢見ていた。そこは、ともかく、ここじゃないのだ。あたしも藻屑も自由になるのだ。』

 

しかし――・・・

 

 

 

この後に待ち構えている絶望。その後のなぎさの行動・・・もう、読んでいてもの凄く痛切なのです(T_T)

なぎさの必死の訴えを大人達が相手にせず、兄と「あるもの」を早朝に見つけに行くことになるくだりにも“子供の無力さ”を感じてやり切れない気持ちになります。

『今日もニュースでは繰り返し、子供が殺されている。どうやら世の中にはそう珍しくないことらしい、とあたしは気づく。生き残った子だけが、大人になる。』

 

 

 

うさぎ問題

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』はショッキングな場面が多い作品ですが、その中でもよく話題に上るのが“うさぎ事件”の犯人はだれか

まぁ二択なんですが・・・私としてはこの事は深く追求する必要は無いというか・・・無理に究明するのは蛇足にしかならないんじゃないかと思います。作中のなぎさは藻屑だという思いの方が強いんじゃないかな~とは思いますが。

 

 

最後に。

私はこの小説「とにかくスゴイ。どえらい作品だ」と心の底から思っているのですが・・・思いすぎているせいかなんなのか、この凄みを上手く言葉で書き表すことが出来ません・・・(^_^;)

“うさぎ事件”同様、この小説『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』には長々とした解説や疑問点への追求は無用な蛇足にしかならず、興醒めなだけなのかも知れません。それほどにこの小説自体に“力”があるのだと思います。

 

“よくはわからないが、何故かいつまでも心に残り続ける”そんな小説。

 

人によって好き嫌いがハッキリと別れる作品だとは思いますが、一読の価値大ありです!読んでみておくれ・・・!!

 

この小説の後日談をふくむ短編集がでました。詳しくはこちら↓

 

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漫画も出ているようです↓

 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上 (単行本コミックス)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上 (単行本コミックス)

 

 

 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 下 (2)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 下 (2)

 

 

 

 

ではではまた~

映画『ユリゴコロ』原作小説 あらすじ・感想 "ユリゴコロ”とは?

こんばんは、紫栞です。

沼田まほかる”さんの小説『ユリゴコロ』が実写映画化されるらしいですね。9月23日公開だとか。せっかくなので、公開前に原作小説の紹介をしようかと思います。

ユリゴコロ (双葉文庫)

あらすじ

亮介はカフェを営んでいる。カフェの従業員の千絵との結婚をひかえ、順風満帆の日々を送っていた。しかし、そんな亮介に次々と不幸が襲う。婚約者の千絵が失踪し、父親が末期のすい臓がんと診断され、追い打ちをかけるように母親が交通事故で命を落してしまったのだ。悲しみに暮れる中、亮介は実家の押し入れで4冊のノートを見つける。「ユリゴコロ」とタイトルが書かれたそのノートはある殺人者の手記だった――。

 

 

 

お話の大筋は亮介が手記を読み進めていく合間に亮介の日常の場面が入るといった構成。

「なんなのだ、これは!なぜ家にこんなものがある」と、読みながらも途中で何回かストップして(ノートに書かれている事が衝撃的すぎたりとか、時間に追われたりだとかで)文章から推理を巡らせたり、父や弟に探りを入れてみたりだのします。

ここが読者としては「おまえ、さっさと全部読めよ」とか思ってしまうんですね。 それというのも手記の部分が凄く面白いんです。「あぁ、早く、早く続き~」とこちらは気がはやっているのに亮太が途中何度も読むのストップするもんだから「なんでそこで読むの止めるの?いいとこなのに!」と。

もう何この焦らしテクニック(笑)父や弟に探り入れたりとかも全部読んでからにすればいいじゃんね。

しかし、このヤキモキする構成のおかげで気になって一気読みしちゃいます。そういう作者のたくらみなのでしょうね。

 

 

 

以下若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画との違い

映画の公式サイトを見てみましたが、両親がそろっていたという設定から“父親に男手ひとつで育てられた”というふうに変更されているようですね。

原作ですと、亮介は幼少の頃に“母親が入れ替わったのではないか”と漠然とした思いを抱えており、手記を読むと美紗子という母と同じ名前が出てきて『これは入れ替わる前の、自分の本当の母の手記なのではないか?』と考え出すんですが・・・。

確かに原作でもこの母親入れ替えは無理があるし、当人達の心情もちょっと不自然かなぁ~といった部分だったんで映画だとこの設定はカットの方が良いのかも知れません。

あとノートが4冊から1冊になっていますね。ここの変更はまぁ別にいっか(^^;)

 

 

ユリゴコロ

ユリゴコロ

 

 

お話の概要・“ユリゴコロ”とは

手記の中で語られているのは“ユリゴコロ”を探し求めて殺人を繰り返していた女がある男性に出会って“愛”に触れウンダラカンタラ・・・といったもの。

ユリゴコロ”は手記の中の女性が幼少の頃医師が母に向かって話していた“拠り所”を聞き間違えてのものと思われます。

医師がユリゴコロがないというのはたいへんなことだ」「この子なりの何かのユリゴコロを見つけ出せればいいのだが」などと言うのを聞いて「みんなが持っているらしいものが、なぜ私にだけないのか」「なんとかして私もユリゴコロを手に入れたい」とぼんやりといつも思うようになる。そして殺人行為にユリゴコロを見いだして・・・。

ユリゴコロ”とは何か?というのは読み手の感じ方次第でいかように解釈しても良いのだと思います。私は“空白を埋めてくれる何か”“満たしてくれるもの”だと感じました。“愛”に出逢って“ユリゴコロ”もおのずと変わっていっていますからね。

 

 

ラストについて

実は私、この小説ラストが生理的に受け付けないんですよね(^_^;)

亮介と千絵にとっての邪魔者をお助けマンが亮介より先に手を下して抹殺するとか、解決のさせかたが即物的すぎると思うし。そもそも、何でやり手の殺し屋みたいになってんだって感じだし。しかもその後、愛を誓い合った物同士で爽やかに最後のランデブーだと。まったくふざけているのか。

 

ファンタジーやアクション物ならいざ知らず、現実社会が舞台のお話だと私はどうしても殺人者は裁かれて罪を償うべきだって思っちゃうんですよね。被害者のこととか考えると・・・“愛だとかなんだとかいう前に罪と向き合えよ”とね。

まぁ私個人の見解ですけど。人それぞれで、感動する人は感動するんだと思いますし。私は頭が固いのかな(^^;)

映画はラストどうするのか気になるところですが。同じかなぁ~。

 

 

 

 

 

色々言いましたが、家族の謎が明らかになっていく話運びは圧巻です。その先にさらに驚きの真相も待ち構えています。

 

映画が気になったなら原作読んでみるのもどうでしょう。 

 

ユリゴコロ (双葉文庫)

ユリゴコロ (双葉文庫)

 

 漫画も出てるらしい

 

コミック版 ユリゴコロ(上)

コミック版 ユリゴコロ(上)

 

 

 

コミック版 ユリゴコロ(下)

コミック版 ユリゴコロ(下)

 

 

 ではではまた~

 

清水玲子『秘密season0』5巻・6巻〈増殖〉 感想・あらすじ

こんばんは、紫栞です。

今回は清水玲子さんの『秘密season0』5巻・6巻〈増殖〉の感想をば。

 

秘密 season 0 5 (花とゆめCOMICSスペシャル)

秘密 season 0 6 (花とゆめCOMICSスペシャル)

 

表紙絵がまた美しいですが・・・6巻はともかく、5巻の表紙はなんか誤解を受ける・・・(誤解じゃないのか?)中身が事件捜査ものだとは思えない表紙ですね~。わりと毎度のことですけど(^_^;)

サブタイトルは〈増殖〉で2巻・3巻の〈原罪〉の時と同様に二冊にわかれての同時発売。

私、本屋で間違えて一冊だけ買うところでした(手にとって「あれ?今回薄いな?」と思って横見て気付いた)個人的にはぶ厚くなってもいいから一冊にまとめれば良いのに~とか思っちゃいますが・・・ま、色々出版するにあたっての事情があるんですかね。

 

 

あらすじ

あの映画を見たら死ぬ――。

2067年。ホラー映画祭で上映された「見えないともだち」を鑑賞した人が次々と全国各地で死亡する事件が発生する。MRIで脳映像を見たところ、死亡した人達は皆死の直前に謎の幻覚を見ていた。

映画祭で何らかの「ウィルス」又は「細菌」に感染したのではとの推測から映画祭で出された「ホラーフード」の業者への立入検査が入るも何も異常は見つけられず、原因を究明出来ないまま捜査は振り出しに。SNSでの噂と死者の数だけがふくれ上がっていく――。

 

 

今回も非常に面白かったですね~!『秘密』シリーズは出版が年1ペースなので出たときは毎回意気込んで読むのですが、いつも期待を裏切らない“デキ”で感心します。

※シリーズについて、詳しくはこちら↓

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前巻の〈可視光線〉とはうって変わって今回の話はスリリングな展開が多くてハラハラいたしました。

 

見たら死ぬ・・・・・・って「リング」をすぐに連想しますが(今の十代は連想しないかもしれないが)作中でも「リアル・リング」の通称で噂が拡大していく様が描かれています。この「リングもどき」から話しはプリオン感染、そしてカルト教団へ。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリオン病ふたたびで2巻・3巻〈原罪〉で登場したタジク・シャマールふたたび。この人また出てくんのかと驚きました。アレきりだと思ってたんで。〈原罪〉も今回の〈増殖〉も今後のシリーズの展開に関わってくるのかも知れません。伏線はすでに随所に張り巡らされているのかもかも。

 

序盤、かつての「第九」メンバーが勢揃いで嬉しかったです(モニターごしだけど)なんだかギャグが多かった気がしますね。

阿部定がTVから何かを切りに出て来るとか」って薪さん見た目は若いのに発想が古風だよね。エンタメ作品より史実の事件の方が詳しいということなのか?

青木が薪さんに指図するところ、岡部さんの心情凄くよくわかる(笑)この三人での場面いつも好きです。岡部さんが右往左往している感じが(笑)薪さんと青木だけだと雰囲気が変な方向に行きがちだしね・・・。

また泣いてる青木。また叩かれてる青木。泣くんじゃねー!男だろ。

タジクに「つまらない」「凡庸」言われてだいぶ取り乱してましたけど、過去にそのような理由で女にふられた事でもあるんだろうか。私は青木、全然“普通”ではないと思いますけど。

最強女子・波田野のパワーもあがっていますね。「所長も室長もみなさんスゴイですーっ♡」って言ってるけど、ある意味一番スゴイのはお前だとか思う(笑)

山城にとっては過酷すぎる事件でしたね。読んでて辛かったです。山城、今後大丈夫なんだろうか。仕事続けられるのかな~(-_-) 

 

 

 

エアミストでの感染はお話の初っぱなで「ドライミスト」への言及があるので気付きやすいですね。

後半、事件はカルト教団一色に・・・。私としては「うぁ!カルト教団キタ!」って感じなんですが。ミステリーだとよく題材に扱われますからね。カルト教団ものだと事件内容に洗脳とか入ってきて吐き気がするようなのが多いんですよね~。

カルト教団の教祖のご多分に漏れず、ハーレムを形成していた児玉良臣ですが(ここら辺も吐き気がする)、別に美人を侍らせていた訳ではないらしい。(いや、幹部以外には美人の信者もいたのかもしらんが)ここら辺が妙にリアルですね。

あの両親から光君のような美形が生まれてくるとは思えないのですが・・・それとも若い頃は児玉も美形だったのかな?

 

ラストの子供達が超恐い。ホラー映画のようだ。

カルト教団って実際のところ完全に根絶やしにするのは難しいんですよね。お話で扱う以上は後味が悪くなるのは必須なんだろうなと。園児達はこの後の行き先はバラバラになるとは思うのですが・・・。光君は何年後とかにまた出てきたりするのかな?非常に恐い感じに成長しそう。今だって十分恐いし。

 

児玉を絶命させたの、結局青木が打った弾なのか岡部さんが打った弾なのかわからずじまいですよね。波田野は青木の方だって確定させていましたけど。確かに状況的には青木の方かな~とは思いますが・・・どうなんだろう。今後またこの場面に触れることあるのかな?

 

 

後味は悪い・恐いお話ですが読みごたえたっぷりのサスペンスを楽しめました。

次回のお話は〈冬蝉〉って題名で鈴木が登場するみたいです。また楽しみに1年待つとしますか(^_^)

 

 ※次巻はこちら↓

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ではではまた~

 

 

 

 

綾辻行人『館シリーズ』まとめ 順番・概要

こんばんは、紫栞です。

今回は綾辻行人さんの代表的シリーズ、『館シリーズ』についてのまとめです。

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

 

館シリーズ』とは

すでに故人である建築家・中村青司が成り立ちに関与した館では「死に神に魅入られた」ように必ず尋常ならぬ殺人事件が発生する。その“青司の館”に魅せられ、訪ねていく寺の三男坊で(後に)推理作家の島田潔を主たる探偵役として展開されているシリーズ。

“青司の館”には必ずカラクリが潜んでおり、本来本格ミステリでは禁じ手の「秘密の通路」「隠し部屋」などがあるのがシリーズの前提条件になっています。なので密室殺人が起きてもお話上はさほどの意味をなさず、読んでて「へいへい」って感じで重要度がありません。

このような過酷な(?)舞台設定の中で読者の度肝を抜かすトリックが仕込まれています。終盤のどんでん返しや叙述トリックが多数駆使されているのがシリーズの特徴ですね。物理トリックよりも叙述系トリックに重きが置かれているので「解いてやる!」というよりは「騙されないぞ!」と意気込んで読むようなシリーズです。

 

一応、探偵役を担うキャラクターとして島田潔(この名前は作家の島田荘司から取られています)が出てきますが、シリーズの主役はあくまで“青司の館”です。特定の人物が作った“作品”に惹きつけられるように事件が発生する――“いわくつき”、なんだか怪談めいたこの設定がまさに画期的なんですね。

まぁ、行く先々で事件に遭遇する様々なシリーズの探偵達も十分怪談的ではあるんですがね・・・(^_^;)

日本のミステリ界で中村青司はもはや“たとえ”のように扱われたりしています。『探偵学園Q』の九頭龍匠や『名探偵コナン』の三水吉右衛門、『金田一少年の事件簿』の高遠・父(名前はまだ明かされてない)も中村青司の属性からのキャラクター(だと思われる)ですね。

 

何にせよ、日本のミステリファンの間では必読と言われるシリーズです。

 

 

 

順番

館シリーズ』はすべて長編でお話は個々に独立したものですが、順番通りに読むのがオススメ・・・と、いうか順番通りじゃなきゃダメ。バラバラに読むと思わぬネタバレに遭遇してしまうことがあるのでね。お気をつけ下さい(^_-)

 

十角館の殺人

 

 

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名作も名作。日本ミステリ史上の傑作の1つとされ「とにかく読まなきゃダメ!」とか言われる必読書。あまりに前評判が凄いので「なんぼのもんじゃい」と思って読みましたが・・・凄い。確かに。言われているだけのことはある。読まなきゃダメ!

 

水車館の殺人

シリーズの中では一番普通っぽい。・・・って言い方は変かも知れませんが(^_^;)。比較的王道の推理小説ですね。綾辻さんはアウトローな作品ばっか書くので逆に新鮮。とはいえ、随所に綾辻さんらしい仕掛けがやっぱりありますけども。私は好みの話です。

 

 

迷路館の殺人

ラストのどんでん返しもさることながら、シリーズ的にも重要な位置を占める作品。くれぐれも読み飛ばしせぬように。この迷路館は文字通り館の中が迷路になっていまして「なんちゅー面倒くさい館建ててんだ!絶対に住みたくない!」とか思う(笑)

 

 

人形館の殺人

よくシリーズ異色作といわれ、賛否もわかれる作品。私的には「館シリーズもとうとうこのネタ出してきたか~!」って感じでした。なんか、いつかやるだろうと予想していたんですよね(^^;)ある意味シリーズ一番の衝撃作ではある。

 

 

時計館の殺人

第45回日本推理作家協会賞受賞作。館の“内”と“外”の二方向から話しが展開されます。メイントリックはぼんやりとわかってしまう感じではありますが(個人差はあるとして)、やはりこの作り込み方は凄い。シリーズの中でも人気の高い作品ですね。

 

 

黒猫館の殺人

真相部分は「ふぁ。そうきますか」といったものですね。『館シリーズ』だからもう驚かんぞ!と、斜に構えた態度をとりたくなる(笑)ミステリー界では「手記」ってなんとも“くわせもの”ですよね~。

 

 

暗黒館の殺人

ながーい!私は講談社ノベルス版で読みましたが段組で上下二冊にわかれていました。文庫版だと全四巻

別に長い作品は読み慣れているのですが、この本は特に長く感じます。何故かというと待ち望んでいる人物がいっこうに出てきてくれないから。長々読ませておいて驚きの結末!一方でファンサービスに溢れた作品ですね。ミステリというよりは怪奇小説って感じ。よくBLくさいとか巷で囁かれていますが・・・そうかな?

 

 

びっくり館の殺人

ここにきてまさかの児童書!びっくりじゃよ(笑)子供向けに書かれているのでトリックはとてもシンプルです。文章もわかりやすく、すぐに読み終わります。メイントリックが状況を想像するとシュールというか不気味というか・・・人によっては笑いそうになるかも。

 

 

奇面館の殺人

変化球な作品が続いたので久しぶりの直球勝負の作品。

探偵役が最初っから最後までちゃんと居て皆の前で推理披露する定番の流れが綾辻作品だと新鮮に感じる不思議(笑)この作品、映像化したらかなりシュールな事になりそう。招待客の皆ずっと仮面つけていますからね。メイントリックは「そうだったのか!」よりは「は?」って感想を抱いてしまいます。

 

 

 

 

 

現在ここまでの9冊が刊行されています。

 

※スピンオフもあります↓

 

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館シリーズ』はエラリー・クイーンの『国名シリーズ』のひそみに倣って次の10作目でシリーズを完結させるんだそうです(みんなクイーンが好きなのさ・・・)。

はたして最終作はどんなお話なのか・・・まったく予想が出来ませんね!楽しみです(何時のことになるやら・・・ですが)

 

 

館シリーズ』はミステリファン、特に叙述トリック大好きな人は必ず読むべきシリーズです。「騙されないぞ!」と意気込んで読みましょう。見事に騙されたときがまた爽快ですよ~(^o^)

 

 

ではではまた~

 

 

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本多孝好『チェーン・ポイズン』 感想・あらすじ ※ネタバレなし

こんばんは、紫栞です。

本多孝好さんの『チェーン・ポイズン』読みました。簡単なあらすじと感想を少し。

チェーン・ポイズン (講談社文庫)

 

あらすじ

「本当に死ぬ気なら、1年待ちませんか?1年頑張ったご褒美を差し上げます」

一年我慢すれば何の苦痛もない、煩わしさもない、一瞬で楽に眠るように死ねる手段をくれるとその人物は言った。死への憧れを抱いていた“私”にとって、それは決して悪い取引ではないように思われた――。

持田和夫、如月俊、高田章子、この三人の自殺に奇妙な共通点を見つけた雑誌記者・原田は独自で事件を追い始める。やがてたどり着いた真相とは。

 

 

 

お話は1年後に死ぬことを決めた30代女性の“その日まで”の視点と三人の自殺の謎を追う雑誌記者の視点とが交互になって描かれています。

私は本多孝好さんの本を読んだのはコレが初ですが、重たい主題をグイグイと引き込まれる文章で最後まで読ませてくれる面白い作品でした。

養護施設のボランティアを通じて女性の心境が変化していくってのは「ちょっとアリキタリだなぁ」とか最初の方思ってしまいましたが(すみません・・・)変化の過程が自然に、丁寧に書かれていて、最終的に読者としても感情移入してしまいました。園長の息子がわかりやすいヒール役で出てきますが、私は園長の方により怒りを感じてしまいましたね。うーん(-_-)結局身内かわいさが最後には勝ってしまうもので、それが自然なことなのかなぁとは思いますが・・・しかしアンタ、責任云々を人に説いておいてそりゃないだろ・・・ブツブツ

ホスピスでの老人や院長とのやり取りが印象的ですね。「生」「死」を真っ向から扱っているこの小説では欠かせない重要なシーンです。

 

この小説は『どんでん返し』で有名な作品みたいですね。かくいう私もその手の紹介ページを見て読んでみた次第なのですが。

読み終えての感想ですと、別に『どんでん返し』ん返しが無くっても十分面白い小説なのにな ~というのが正直なところです。

“1年後に死ぬことを決めた女性の「死」を迎える為の「生」”ってお話だけで十分と思わせてくれるぐらい、ミステリー以外の箇所が良い小説ですね『どんでん返し』のところは「ああ、なるほどな」とは思いますが、この系統のミステリーを読み慣れている人にとってはそこまでの意外性はないんじゃないかと思います。

 

 

 

このお話は『眠るように楽に死ぬことが出来る毒薬』の存在によって起こる自殺の連鎖を描いたものです。

私事ではありますが、森博嗣さんの『すべてがFになる

 

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

 

 

での真賀田四季のセリフ

「死を恐れている人はいません。死に至る生を恐れているのよ」

「苦しまないで死ねるなら、誰も死を恐れないでしょう?」

をとっさに連想しました。

“何の苦しみもない”“ただ飲むだけ”という特性が境界線上でふらついている人の背中を押してしまうんですね。

“毒が背中を押す”という部分では京極夏彦さんの『邪魅の雫』も連想しますね。

 

文庫版 邪魅の雫 (講談社文庫)

文庫版 邪魅の雫 (講談社文庫)

 

 

二冊ともオススメ。

 

 

ネタバレは避けますが、この『チェーン・ポイズン』は「死」ばかり見つめていた人間が「生」へ向かっていくお話です。読後感はかなり良質ですね。オススメ~(^_^)

 

上の文庫版の表紙、なんだか恐いですね(インパクトはありますが)私は単行本で読んだので今見て驚きました(笑)単行本の表紙の方が中身の作品雰囲気には合ってると思いますよ。

 

チェーン・ポイズン (100周年書き下ろし)

チェーン・ポイズン (100周年書き下ろし)

 

 

 

チェーン・ポイズン (講談社文庫)

チェーン・ポイズン (講談社文庫)

 

 

 

 

 

ではではまた~