夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

作家アリスシリーズ(火村英生シリーズ)漫画まとめ 5冊一挙紹介!

こんばんは、紫栞です。
今回は有栖川有栖さんの『作家アリスシリーズ』(火村英生シリーズ)

 

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 のコミカライズ作品をまとめたいと思います。

臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート ロシア紅茶の謎【新装版】 (あすかコミックスDX)

『作家アリスシリーズ』は一部作品が漫画家の麻々原絵理依さん作画であすかコミックDXから「臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート」の題名で5冊刊行されています。
2000年から2003年までの間に短編集2冊、長編が上下巻で2冊出されました。いやぁ古いなぁとか思ってしまいますが、まぁ原作は92年からやっているのでね・・・。この4冊は2013年に新装版が出されて、2015年には新たに1冊短編集が発売されて計5冊に。10年以上経ってから新たにってなんか凄いですね。

 

 

 

では順番に紹介

臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート ロシア紅茶の謎

 

 

短編集。
●ロシア紅茶の謎
●動物園の暗号
●人喰いの滝
●猫と雨と助教授と
の4編収録。
こちらは2000年発行『臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート①人喰いの滝』

 

 の新装版。原作小説は「ロシア紅茶の謎」「動物園の暗号」『ロシア紅茶の謎』から。

「人喰いの滝」『ブラジル蝶の謎』「猫と雨と助教授と」ペルシャ猫の謎』からですね。いずれも講談社で展開している国名シリーズ収録のお話。
凶器紛失の謎、暗号解読、足跡トリックと如何にも本格ミステリなお話が選ばれていますね。作家アリスシリーズの概要を示すのに1冊目がこういうラインナップになるのは納得。「猫と雨と助教授と」はミステリではなく数ページのオマケ的作品。

新装版だとあとがきで麻々原さんの書き下ろし2ページ漫画「動物園の人喰いの謎」が入っています。こちらはもちろん原作にある話ではなく麻々原さんのオリジナルです。アリスがかわいい(笑)

 

臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート 朱色の研究Ⅰ・Ⅱ

 

 

 

 

長編。
の方は「朱色の研究 夕陽丘殺人事件」

 ※旧版はこちら↓

 の副題でアリスのマンションの近くで起きた殺人事件のお話。原作も二部構成ですからね。漫画も綺麗に2冊にわかれての収録。
巻末にシュルレアリスムの午後」という話が入っていますが、こちらは原作だと『ダリの繭』愛蔵版

ダリの繭 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

角川ビーンズ文庫版下巻

臨床犯罪学者・火村英生の推理 III ダリの繭(下) (角川ビーンズ文庫)

に収録されているもの。小説はアリスとお隣さんの真野さんとのお話なのですが、漫画だとアリスと火村の話に変えられています。

の方は「朱色の研究 枯木灘殺人事件」

 ※旧版はこちら↓

 の副題。お話の後編ですね。『朱色の研究』は私が大好きな長編小説の一つなのですが、動機面などが少し複雑なんですよね(私はそこら辺の描写が凄く好きなのですが)漫画は原作の要所要所が上手くまとめられて読みやすくなっていると思います。「このシーンは外しちゃダメよね」って箇所がちゃんと描かれていますね。
『朱色の研究』はドラマでも放送されましたが、1話目から伏線張って、二週使ってやったくせに内容はダメダメすぎてもう驚愕。怒り心頭で当時周りの友達に愚痴りまくっていました(^_^;)もう絶対に『朱色の研究』はドラマ観ただけでわかった気には間違ってもならないでほしい。原作読むのが一番ですが、面倒くさいって人はせめてこの漫画読んで下さい・・・!

※小説はこちら・・・!

朱色の研究 (角川文庫)


巻末に「朱色の研究室」という麻々原さんのオリジナルおまけ漫画が入っています。おもろい(^_^)新装版はⅠにもⅡにもあとがき部分に四コマ漫画があります。


臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート ブラジル蝶の謎

 

 

短編集。
●わらう月
●201号室の災厄
●ブラジル蝶の謎
3編収録。
他に麻々原さんの書き下ろしオリジナル漫画
●或る日の出来事[賢者の贈り物編]
●或る日の出来事[新刊発売記念編]
●2001号室の災厄
の3編も収録。
こちらは2003年発行『臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート④201号室の災厄』

 

 の新装版。新装版は巻末におまけ漫画「ガラパゴス携帯の謎」が入っています。
「わらう月」は原作小説だとペルシャ猫の謎』「201号室の災厄」は角川からの『暗い宿』収録作品ですね。
原作のお話もバラエティに富んでいて書き下ろし漫画もいっぱい入っていてで楽しめる1冊。「ブラジル蝶の謎」はやっぱシリーズ的にやっとかないといけないお話ですよね・・・。「201号室の災厄」は火村先生がカッコイイ。原作もカッコイイですが、漫画にされるとよりカッコイイですな。「わらう月」は倒叙モノなんですが、漫画でやってくれるのかと嬉しくなりました。
麻々原さんの書き下ろしも面白いです。[賢者の贈り物編]のくじ引きの場面で火村が残念賞を念頭に、アリスが特賞に思いをはせているってのがもの凄く“らしい”(笑)


臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート 英国庭園の謎

 

 

●英国庭園の謎
●暗い宿
の2編とASUKA2014年三月号ふろく小冊子掲載の「茶色の研究」が収録されています。こちらは麻々原さんオリジナルですね。あと、あとがき部分に四コマ漫画。この四コマ一番笑いましたね(^o^)
この本は2015年刊行なので現在感がありますね。絵柄とか服装とか。原作小説はどちらも表題作の通りです。絵柄は変わっていますが、中身は前の火村とアリスのままで安心。

新装版は短編集のタイトルすべて国名シリーズで統一されましたね。ロシア、ブラジル、英国~と、原作の順番通りなのですが・・・次があると期待するなら今度は『ペルシャ猫の謎』か!?でも、ペルシャ猫の謎は漫画向きではないような・・・すっ飛ばして『マレー鉄道の謎』か『スイス時計の謎』かしら?どっちも凄く読みたい!マレー鉄道は長編ですけどね。
個人的な疑問ですが、長編漫画は何故『朱色の研究』をやったのだろう?『ダリの繭』とかの方が一部読者層にウケが良かったのでは・・・とかお節介な事考えてしまいますが(^_^;)長編ならダリ繭漫画になっているの見てみたいですねぇ・・・。


あとコミックス以外に雑誌『ダ・ヴィンチ』2つのアリスシリーズ大特集に麻々原さんの書き下ろしオリジナル漫画が掲載されています。こちら↓

 

ダ・ヴィンチ 2016年4月号
 

 漫画以外にもシリーズ解説や有栖川さんのロングインタビュー、対談、読者の声など有栖川ファン必見の雑誌です。オススメ。

 

 

最後に
麻々原絵理依さんはBL作家さんですが、この漫画シリーズはもちろんBL漫画ではないので“そのような”シーンは無い(あたりまえだ)。十年の時を経て絵柄がだいぶ変わっていますが、私個人としては近年の絵柄の方が原作の雰囲気には合っていると思います。「二人ともイケメンになってる~」とかの指摘をされたりしますが(原作者の有栖川さんも角川ビーンズ文庫版のあとがきで書いていましたね・・・) 

 まぁASUKA連載ですからねぇ。女性向けの絵柄になりますよ。こちらの角川ビーンズ文庫版は麻々原さんが表紙と挿絵を担当しています。


漫画は麻々原さんの書き下ろしが面白いです。キャラクターの“つかみ”がちゃんと出来ていて「うんうん、こういう事言いそう」って素直に読んでて思わせてくれます。特にアリスの“そこはかとない可愛さ”は上手く表現されている・・・と、思う。どうでもいいことですが、漫画だと火村先生、トレードマークの白ジャケあんま着てないですね。

 

原作にあるギャグが削られていたりするので(項の問題とかでしょうがないんですが・・・^^;)原作のギャグが大好き!な私としては漫画だけでなく原作も続けて読んで~!とは言いたいですが、シリーズのだいたいの雰囲気をつかむには良いと思います。もちろん原作小説読んだ人にもオススメ。

いかがでしょうか?

 

 

 

暗い宿 (角川文庫)

暗い宿 (角川文庫)

 

 

 

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ではではまた~

米澤穂信 作品一覧・解説 ※随時更新

こんばんは、紫栞です。
今回は小説家の米澤穂信さんについてご紹介。

米澤穂信と古典部

作風・特徴
殺人事件を扱っている作品は少ないですが、しっかりとした理責めの推理小説を書かれています。学生が主役の「日常の謎」モノが多く、ノンシリーズの『ボトルネック』までは青春・思春期とミステリの組み合わせで作品を出されていました。近年は別テーマのお話やシリーズも展開するようになりましたね。


日常の謎」を扱ったシリーズ以外の作品は結構後味の悪いお話が多いです。秘められた悪意が暴かれる、知らない方が良かった事を知ってしまうといった結末が大半ですかね。しかし、不快感はさほど無く、読んでいてこの後味の悪さが癖になります。文章が端正なのと仕掛けの巧みさに感心してしまうからでしょうか・・・。


青春ミステリとはいっても青春の綺麗で爽やか・希望に溢れた部分にスポットをあてるのではなくって、思春期に陥る不安や葛藤・生きづらさが描かれています。代表的シリーズの〈古典部シリーズ〉も“ほろ苦さ”がウリ(?)ですからね。
私は米澤さんの青春ミステリ以外の作品も大好きです。ターゲット層が上の世代の作品も良作揃いですので、どんどん書いてほしい(もちろん青春モノのシリーズも書いてほしいですが)


男性的な欲を匂わせない主人公が多いです。実は私、読み始めた頃、名前と文章の雰囲気から若手の女性作家さんなのだと思い込んでいたんですよね(笑)後にテレビで音声と顔写真を観てびっくりした(^_^;)

 

 


作品一覧


古典部シリーズ

 

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米澤さんの代表的シリーズ。アニメ化され、映画化も。青春ミステリで「日常の謎」モノですね。
氷菓(連作短編)第五回角川小説大賞(ヤングミステリー&ホラー部門)奨励賞受賞作。
愚者のエンドロール』(長編)
クドリャフカの順番』(長編)
遠まわりする雛』(短編集)
『二人の距離の概算』(長編)
『いまさら翼といわれても』(短編集)

 

小市民シリーズ
こちらも青春ミステリの「日常の謎」モノ。“小市民”を目指す、恋愛関係にも依存関係にもない互恵関係にある高校生男女が主役。『冬期限定~』で完結するはずですが、2009年以降刊行されていません。いつでるのか・・・。

 

※追記

2020年に「巴里マカロンの謎」という短編集が発売されました。どうやら『冬期限定~』の完結作の前に春期~秋期の間にあった様々な出来事を短編集として数冊刊行する予定のようです。


春期限定いちごタルト事件』(短編) 

 

夏期限定トロピカルパフェ事件』(連作短編)

 

 

秋期限定栗きんとん事件』(長編)

 

  

 ※三作目は上下巻にわかれています。

 

「巴里マカロンの謎」(短編)

 

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ベルーフ(大刀洗万智)シリーズ
さよなら妖精』に登場する大刀洗万智を探偵役に据えたシリーズ。『さよなら妖精』のときは高校生で、ベルーフシリーズでは新聞記者を経てフリージャーナリストになった大刀洗が描かれます。“ベルーフ”っていうのは〈天職〉の意味で名称に使用しているんだとか。シリーズとはいってもお話は独立しているのでバラバラに読んでも大丈夫です。
『王とサーカス』(長編) 

王とサーカス

王とサーカス

 

 

『真実の10メートル手前』(短編集) 

真実の10メートル手前

真実の10メートル手前

 

 

 

S&Rシリーズ
シリーズ化を想定して書かれたとのこと。確かに内容やキャラクターはシリーズ化を念頭において書いたんだなと思わせるものですが、2005年に一作刊行されて以降何の音沙汰も無いです。はたして続きはでるのか・・・。


『犬はどこだ』(長編) 

犬はどこだ (創元推理文庫)

犬はどこだ (創元推理文庫)

 

 

 

『本と鍵の季節』(シリーズ名不明)

 2019年に刊行された図書委員の男子高校生二人による謎解き連作短編。シリーズ化されるようです。

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シリーズ外作品


さよなら妖精』(長編)

 

さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

 
さよなら妖精【単行本新装版】

さよなら妖精【単行本新装版】

 

  上記の理由から〈ベルーフシリーズ〉を読む前に是非こちらを。この小説、元々は〈古典部シリーズ〉三作目・完結編として予定されていたものらしいのですが、様々な事情でレーベルを変えて東京創元から刊行されることに。結果的に読者層が広がり、〈古典部シリーズ〉も続くことになりで、読者的には万々歳ですね。一応「日常の謎」ものではありますが「戦争」が関わってくるので結末の重さはシリーズ作品とはだいぶ異なります。

 

ボトルネック』(長編)

 

ボトルネック (新潮文庫)

ボトルネック (新潮文庫)

 

 もう青春の痛さ・苦さ大爆発の長編。読後の絶望感は凄まじいです。パラレルワールドが舞台のお話で主人公の心情が深く描かれています。ミステリ色は薄めですかね。

 

インシテミル』(長編)

 

インシテミル (文春文庫)

インシテミル (文春文庫)

 

 アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』へのオマージュ的作品で「クローズド・サークル」をとことん追求しています。米澤さんの作品の中では今のところ一番王道の本格推理小説ですね。2010年に実写映画化されていますが、何故「インシテミル」の題名なのか疑問なくらい小説とは内容が違います。“原作”というよりは“原案”って感じですね。

 

儚い羊たちの祝宴』(連作短編)

 

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

 

 お嬢様達が集う読書サークル「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件が収められたられた短編集。どす黒くって耽美な暗黒ミステリ。出て来るお嬢様達が無慈悲すぎてなんだか人間離れしています。

 

追想五断章』(長編)

 

追想五断章 (集英社文庫)

追想五断章 (集英社文庫)

 

 五つの「結末のない物語(リドルストーリー)」を作中に埋め込んだ本格ミステリ。お話の作りが精巧で感嘆します。

 

『リカーシブル』(長編)

 

リカーシブル (新潮文庫)

リカーシブル (新潮文庫)

 

 「子供」という立場の苦さ・辛さが重くのしかかる青春ミステリ。地方都市ミステリでもあり、町全体の妙な雰囲気や伝説に町に引っ越してきた血の繋がらない姉と弟が迫ります。二人のやり取りがそこはかとなく楽しくってそこが救い。

 

『折れた竜骨』(長編)

 

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

 

 第64回日本推理作家協会賞受賞作。魔術や呪いが横行するファンタジーな世界で「推理」の力によって犯人を導き出すことが出来るのか?ってなお話。「ファンタジーだ~」と思って新鮮な気分で読んでいたら、終盤は骨太な謎解きミステリになっていて「こんなものまで書けてしまうのですか・・・!」と色々と驚きを与えてくれます。

 

『満願』(短編集)

 

満願 (新潮文庫)

満願 (新潮文庫)

 

 第27回山本周五郎賞受賞作。これぞ至極の短編集。どのお話も完成度が高いです。後味の悪い読後感も冴え渡っていますね。読んで損はない一冊。

 

 

『Iの悲劇』(長編)

 限界集落に人を呼ぶ戻す「Iターンプロジェクト」でやって来た移住者たちとの間で起こる様々な謎を、市役所職員が追っていく物語。

詳しくはこちら↓

 

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「黒牢城」(長編)

異色の戦国時代ミステリ。信長を裏切った荒木村重と、軍師の黒田官兵衛が物語の主になっており、史実を用いた巧みなミステリ小説となっています。

詳しくはこちら↓

 

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進化
米澤さんは2001年から活動されていますが、量産型の作家さんではないので作品数はさほど多くないですね。短編が多いので単行本にまとまるまで時間がかかるというのもありますが。個人的には〈小市民シリーズ〉の完結編はいい加減出してほしいな~とか思いますね・・・。
量産型じゃないぶん、作品一つ一つの完成度は高いです。青春ミステリの枠組みを外してからは色々な種類のミステリを書かれていますが、ドンドン進化していってるなぁ~と本が出る度感じさせてくれる作家さんですね。
今後もますますのご発展をお祈り申し上げます!

 

 

 

ではではまた~

 

ライ麦畑で増幅して【森博嗣】 Xシリーズ序章

こんばんは、紫栞です。
森博嗣さんの短編集『レタス・フライ』文庫版に入っているライ麦畑で増幅して」を読みました。

レタス・フライ Lettuce Fry (講談社文庫)

こちらの記事でも書きましたが、Xシリーズの主人公・小川玲子が初登場するお話ですね。

 

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文庫版のみ収録のため、講談社ノベルスで読んでいた私は長らく見落としていたので(^_^;)Xシリーズを完結まで読んだ後に、(不本意ながら)Xシリーズ序章のこのお話を最後に読むって事になっちまい「順番が・・・!」と、今まで読み損じしていたことを無念に思ったりしたんですけど、こうやってシリーズ読み終わってから序章を読むってのも面白かったです。今まで疑問だった箇所が埋まっていくのと、シリーズラストの小川さんの心情と序章での心情を頭の中で照らし合わせることが出来て、なんというか・・・より強固に“Xシリーズの完結”を享受できたな~と。

 

 

 

 

お話の概要は小川さんが死んだ“彼”の家に行って、そこにいた椙田さんにスカウトされるXシリーズ始まりの物語。

短編として「ライ麦畑で増幅して」の題名で本に収められていますが、このお話のオチは後のXシリーズ完結編『ダマシ×ダマシ』で示されています。そこまで読まないとこの短編の真価は発揮されませんね。

“彼”の手帳に書かれていた
『午前と午後が背中合わせ。
それが小川君のものだ。』
このなぞなぞの答えも『ダマシ×ダマシ』で明かされます。椙田さんみたいに鋭い人は「ライ麦畑で増幅して」を読んだ時点で解いた人もいるんじゃないかな?聞けば納得の答えですね。

 

読んで思ったのはこの死んだ”彼“怪しいなぁと。社長ってことですが、詳細が大分ぼかされていて頑なに名前が出てこないし・・・そもそも椙田さんの親友って・・・う~ん(-_-)半年後に辞めてしまったっていう女性秘書も怪しい・・・なにか仕掛けが待ち構えているかも。まったく、コレだから森博嗣ミステリィは抜けだせなくなる(笑)

 

小川さんと死んだ“彼”は
『プライベートな関係がまったくなかった。そして、まさにその点が、私の弱みだったのだ。だから私は、それが後ろめたかったのかもしれない。潔白なのが、自分で不満だった、ということだ。』


そうだったのか・・・!


コレを踏まえると『ダマシ×ダマシ』での贈り物は感動すると共に、ホント「信じられない我が儘」ですね。小川さんが「なんてことをしてくれるのぉ!」と叫びたかったのも凄く頷ける。
ライ麦畑で増幅して」を読まないままだったら、このシーンの深みがわからないままでしたね。読めて良かった!

 

私と同様にXシリーズ全部読んだのにこの短編を読み損じていた人はもちろん、短編だけよんでXシリーズは読んでない人は「ライ麦畑で増幅して」とXシリーズ是非合わせてお読み下さい。そうすべき!!

 

レタス・フライ Lettuce Fry (講談社文庫)

レタス・フライ Lettuce Fry (講談社文庫)

 

 

 

 


ではではまた~

 

 

 

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『濱地健三郎の霊(くしび)なる事件簿』有栖川有栖新シリーズ! 感想・概要

こんばんは、紫栞です。
今回は有栖川有栖さんの新シリーズ『濱地健三郎の霊(くさび)なる事件簿』をご紹介。

濱地健三郎の霊なる事件簿 (幽BOOKS)

装丁からミステリアスで良い。中身の内容にマッチしていますね。30パーセントくらいは装丁につられて買いました(笑)幽BOOKSから刊行の単行本はデザインが凝っていて素敵なのが多いですね。

 

 

概要
新宿に事務所を構える心霊探偵・濱地健三郎が幽霊を視る能力と鋭い推理力を駆使して依頼人が持ち込んでくる奇妙な現象や警察もお手上げの不可思議な事件を解明していく連作短編。
彼には真実も幽霊(ゴースト)も視えている――

 

 

収録作品
●見知らぬ女
●黒々とした孔
●気味の悪い家
●あの日を境に
●分身とアリバイ
●霧氷館の亡霊
●不安な寄り道
の7編。

こちらの濱地健三郎探偵はこの本より先に前回の記事で紹介した『幻坂』に収録の2編「源聖寺坂」「天神坂に登場しております。

 

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元々シリーズ用のキャラクターじゃなく『幻坂』こっきりのつもりが、読者からのお声もあり『濱地は、まだまだ他にも使いようがあるかもしれない』と思い直されたようでシリーズ化。


「有栖川さんが心霊探偵モノのシリーズを書くだって!?見過ごせないわっ!」との思いと先に述べたとおり装丁につられて勢いで購入しました。実は『幻坂』もこの本読むために買ったのですが・・・(^_^;)

 

キャラクター

シリーズ化にあたり、この本から志摩ユリエという若い女性の助手が登場。お話のだいたいはこのユリエちゃんが語り手になっています。やっぱり探偵モノは助手がいた方が楽しいですね。ボスに向かって割と率直な意見をズバズバ言っちゃうところが好感持てます。恐い目に遭ってもボスへの信頼はあついです。


濱地探偵は髪をオールバックにした年齢不詳のダンディな紳士。
ユリエ曰く
『自慢したくなるほど男っぷりのいいボスであったが、まかり間違っても男女の仲になったりはするまい。年齢差が大きいこともあるが、まだ子供っぽい自分のような女は濱地の関心の外だろうし、ユリエにとっての彼も距離がありすぎて、あくまでも〈観賞用の男〉だった』
ですって。
ボスが〈観賞用の男〉かぁ・・・なんとも羨ましい話ですなぁ。
濱地はユリエを「志摩君」と呼んでいるのですが、ダンディな男が女性助手のことを“君”づけで呼ぶの、なんか良いですよね(笑)
“心霊探偵”なんて肩書きは世間一般的にはかなり胡散臭いだろうと思うのですが、見た目や立ち振る舞いが良いせいか、濱地に対して余りあからさまな嫌悪感を態度に出す人物が出てこないです。刑事さんやユリエの彼氏もちょっと物わかりが良すぎるんじゃないかとか思うのですが・・・濱地の資質の賜物なんですかね(^_^;)

 

ミステリーと怪談

本の帯に“端正なミステリーと怪異の融合”と書いてありますが、お話はミステリーってよりは怪談ですね。まぁ怪談専門誌『幽』での連載ですから。と、いっても全然怖くは無いんですけど。がっつりとした推理シーンを期待して読んじゃダメだと思います。そういう本では無いです。霊視+少しの推理と観察力で解決させる感じ。

 

「分身とアリバイ」が一番ミステリーちっくですかね。

「黒々とした孔」はちょうど良いあんばいでミステリーと怪異が融合しているお話だと感じます。

一番ミステリーから離れているのは「不安な寄り道」かな。怪談だな、と。でも個人的には好みのお話です。

「霧氷館の亡霊」みたいな最後に秘められた悪意が見え隠れするお話も好きですね~。

 

探求

あとがきで有栖川さんは

『ミステリの発想を怪談に移植した上で、両者の境界線において新鮮な面白さを探す』

のを目指したとのこと。
ふむふむ。
あとがきを読んで納得しました。確かに、読み終わっての感想としては「探求中なんだな」という印象を受けましたね。有栖川さんは『探求を続けていきたい』と書かれているので、今後シリーズがどのように展開していくのか楽しみです。ユリエちゃんも霊視の力が開花し始めて「境界線」について思い悩んだりしていますからねぇ。このシリーズで長編やっても面白そうだなぁとか思いますが。

 

 

幽霊が出て来る有栖川さんの長編小説と言えば『幽霊刑事』ですかね↓

  

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笑いあり、涙ありでオススメの1冊。

 


『濱地健三郎の霊なる事件簿』読み終わったばっかりですが、私はもうすでに続編が読みたい気分になっています。シリーズ2冊目がでたら即買いですねコリャ(笑)

※出ました!詳しくはこちら↓

 

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怖くない怪談・不思議系話・探偵が好きな人は是非。

 

 

濱地健三郎の霊なる事件簿 (角川文庫)

濱地健三郎の霊なる事件簿 (角川文庫)

 

 

濱地健三郎の霊なる事件簿 (幽BOOKS)

濱地健三郎の霊なる事件簿 (幽BOOKS)

 

『幻坂』もあわせてどうぞ

 

 

幻坂 (角川文庫)

幻坂 (角川文庫)

 

 

 

ではではまた~

 

 

『幻坂』(まぼろしざか) 感想 天王寺七坂が舞台のお話9編

こんばんは、紫栞です。
今回は有栖川有栖さんの『幻坂』(まぼろしざか)をご紹介。

幻坂 (角川文庫)

こちらは大阪の天王寺区にある【天王寺七坂】を舞台にした短編集。有栖川さんは世間一般には本格推理小説のイメージが強いですが、この本は怪談集です。

第5回大阪ほんま本大賞受賞作。なんとも大阪愛に溢れた物語集なので納得の受賞。


目次
清水坂
●愛染坂
●源聖寺坂
●口縄坂
真言
天神坂
●逢坂
●枯野
●夕陽庵
の9編。


後ろの二編は坂にちなんだお話では無く、時代物の短編怪談。でも舞台は大阪です。


私はこの本読むまで【天王寺七坂】ってまったく知らなかったのですが、本の最初の説明によると
『七坂の界隈は寺町を形成して、四天王寺をはじめ多くの神社仏閣が連なる〈最も古い大阪〉であり、古代から現代に至るまでこの都市の記憶を抱く。』
のだそう。地図も載っていて親切(笑)

怪談にはピッタリの舞台ですね。坂の名前がどれも魅力的。狭いエリアに集中しているみたいなので、機会があったら散策してみたいなぁ。読むと凄くそう思わせる短編集なんですよね。大阪観光に一役買っているんじゃ・・・と、思う。各話の題字のページに坂の写真が載っているのも親切で、行きたくなる気持ちに拍車をかけてくれます。どれも素敵な写真ですよ~。表紙絵も内容を的確に表したもので良い。作った人達の思いが詰まった“一冊の作品”ですね。

 

 

 

 

あとがきで有栖川さん自身も書かれていますが、怪談集といってもゾッとするようなお話が入っている訳ではなく(「口縄坂」はちょっとゾッとするかな)全然怖くないです。9編全てに『幽霊』が絡んでいるので怪談なのですが。
七坂や周辺の歴史を織り交ぜつつ、無常観・せつなさ・寂しさが漂うお話が並んでいます。この“せつない”余韻が残る読後感は本格ミステリーのシリーズもふくめた有栖川作品全般にいえる特徴ですね。(私の好きなところです!)

 

私は「愛染坂」「真言坂」「逢坂」が好きです。三つとも男女間の機微に触れるお話。

「口縄坂」は少し官能的なお話ですね。入っているお話の中では一番怪談っぽいです。主人公の女子高生の猫好きっぷりが可笑しい。凄い情熱だ。作者の猫好きを知ってるので笑ってしまう(^o^)
清水坂はノスタルジックで本書の最初を飾るのにふさわしいお話ですね。

 

「源聖寺坂」天神坂の二編には心霊現象専門の探偵・濱地健三郎が出てきます。今年、この探偵を主役にした単行本が発売されました↓

 

濱地健三郎の霊なる事件簿 (幽BOOKS)

濱地健三郎の霊なる事件簿 (幽BOOKS)

 

 文庫も出ました↓

  

濱地健三郎の霊なる事件簿 (角川文庫)

濱地健三郎の霊なる事件簿 (角川文庫)

 

 

 

詳しくはコチラ↓

 

 

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幻坂の二編でお役御免のつもりでいたところ、読者からのお声でシリーズものの主役に昇格!
「源聖寺坂」は探偵が出て来るだけあってミステリー色が強いです。本書の中ではチト浮いてる。

天神坂は幽霊が食事するってのが新鮮でした。

 


私の住んでいる場所は坂とは無縁な所でして「こんなに雰囲気・歴史ある坂がいっぱい。羨ましいなぁ」とか思ってしまいます。実際には上り下りが大変だとかあるんでしょうけど・・・(^_^;)

 

幻想的な気分に浸りたい人にオススメ。今の季節は夜に窓を開けて読んだりすると良いと思います。虫の音を聴きながら~みたいな。外の音がうるさいところはダメですけどね・・・

 

幻坂 (幽BOOKS)

幻坂 (幽BOOKS)

 

 


ではではまた~

S&Mシリーズ【すべてがFになる】 読む順番・ドラマ・アニメ・・・まとめて紹介

こんばんは、紫栞です。
前回の記事で森博嗣さんのXシリーズの完結編『ダマシ×ダマシ』について書きましたが

 

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今回は壮大な森博嗣ワールド始まりのシリーズ【S&Mシリーズ】について紹介したいと思います。

 

すべてがFになる (講談社文庫)

 

S&Mシリーズとは?
森さんのデビュー作『すべてがFになる』から始まる一連のシリーズ。
国立N大学建築学科の助教授である犀川創平とその教え子で恩師の娘でもある西之園萌絵の二人が次々と起こる殺人事件を解明していく。シリーズ名の「S」と「M」は二人のファーストネームのイニシャルから取られています。「&」を抜かして言うと驚かれる・・・(笑)

シリーズの探偵役は犀川創平ですが、この犀川先生、非常に腰が重く事件への積極性はほぼ無い。なので、お話は常に萌絵の側からもたらされます。萌絵がわざわざ事件持ち込んできたり、巻き込まれたり・・・で、最終的に犀川先生がやむを得ず解明させるって感じですね。

 

コンビものだと探偵役じゃない方は凡庸・普遍的な人物として描かれがちですが(読者の側にたってと探偵役との対比とかでそうなる)この西之園萌絵はとんでもなく金持ちで優秀で美人。毎度の推理も八割方真相は見抜くのですが、詰めが甘いのか最後の最後は犀川先生のご厄介に。
超絶金持ちで美人。優秀でファンクラブまであったりする西之園萌絵ですが、犀川先生一筋で全くぶれません。「私と結婚して下さい」とプロポーズしてみたり、直接的すぎるアピールをするのですが、それをノラリクラリと躱し続ける犀川先生。しかし憎からず思っている様子ではある彼の胸中はいかに・・・
と、いった二人のやり取りもこのシリーズの醍醐味。この二人の関係性は【S&Mシリーズ】終了後も短編集や他シリーズで変化し続けます。

 

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ドラマ
【S&Mシリーズ】は2014年に『すべてがFになる』の題名で連ドラ化されました。

   

TVドラマ すべてがFになる DVD-BOX
 

 

キャストは

犀川創平綾野剛

西之園萌絵武井咲

でしたね。


「キャストとキャラクターのイメージが違う!」という意見が多かったですが(原作ありの実写はみんなそうですけどね・・・)

はい。まぁ違いますよ。

私も萌絵はモデル風の派手な美人を想像していた・・・と、いうか原作にそう書いてあります。「髪が長い!」って意見も多かったですが、髪は原作の中でのばしたりしているんだけど・・・。

犀川先生は「かっこよすぎる!」「若すぎる!」って意見がネットでは多かったですが・・・みんなどんだけ犀川先生のことオヤジの醜男認定してるの?と、個人的には疑問。一応シリーズ開始時点では32歳なんだけど。それに作中に“モテそう”って言われている描写もあるし。私の中では犀川先生は『ぼ~としていてカッコイイわけではないが、なんとなく女にモテそうなタイプ』ってイメージなんだけどな~。まぁ原作だと萌絵と犀川の見た目が不釣り合いって設定だからかな。年齢差がね、もっと感じさせた方が良いとは思いました。
個人的に睦子叔母様が出てこなかったのが残念。結構強烈なキャラクターで面白いのですけどね。

 

肝心のお話の方は一つの事件を二週にわけて放送って形でしたね。原作の半分の話数しか出来てない。ドラマとしては割と真面目に作られていたと思うのですが、理系ミステリィの異名を持つ森博嗣作品はキャラクターの熱量が乏しく淡々とした場面や数学的分野のお話、哲学的な部分が多々あるので映像でやると上手く伝わらないのかなぁ~と。エンタメ的じゃないってことですかね。
連ドラじゃなくって『すべてがFになる』だけを映画とかでやった方が良かったのでは?とか思います。

 

刊行順
※ドラマで何話目にやったかも交えてご紹介。


1『すべてがFになる

 

 

 【S&Mシリーズ】どころか森博嗣ワールドはコレを読まないと何にも始まらない!絶対に必読!

 

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ドラマでは5・6話目。最初にやった方が良かったのでは?何で中盤にしたのか謎。

 

2『冷たい密室と博士たち

 

 

 密室モノ。ドラマでは1・2話目。ちょっと密室の構造が複雑で文章で読むと上手く想像できなかったので、映像化されて助かった(笑)

 

3『笑わない数学者

 

 

 比較的王道の本格推理小説。森さん、今はもうこの手のお話書かないだろうなと思う。貴重。本格ファンにオススメ。

 

4『詩的私的ジャック

 

 

 如何にも森博嗣ミステリィっぽいお話。タイトル通り森さんお得意の詩もいっぱい出てきます。

 

5『封印再度

 

 

 このお話に登場する男の子、なんだか破綻していると思う。然るべき機関で診てもらった方が・・・。ドラマでは3・4話目。婚姻届の話やって欲しかったんだけどな(ええ、すごく)時期的に無理か~。混乱して取り乱している犀川先生は必見です。

 

6『幻惑の死と使途

 

 

 私、このお話好きです。お気に入り。ドラマでやって欲しかったな~。Gシリーズのメグミちゃん初登場。この時中学生ですね。

 

7『夏のレプリカ

 

 

 変化球的なお話。前作の『幻惑の死と使途』と平行しての構造で偶数章のみの表記ですね(『幻惑の死と使途』は奇数章のみ)。しかし、だからといって章ごとに交互に読むのは最初止めた方が良いです(笑)再読でお試しあれ。

 

8『今はもうない』

 

 

 ある意味シリーズ最大の衝撃作。「8作目でこうくるかっ!」と。いつもの調子で読んでいると騙されます。

 

9『数奇にして模型

 

 

 ドラマでは7・8話目。コレ、ドラマでやるのか~とちょっと驚き。犯人像がちょっとアレなんでね(^_^;)女優さんにコスプレさせたかったのかな。

 

10『有限と微笑のパン』

 

 

 シリーズ最長の最終巻。まさに最後にふさわしいお話。ドラマでは9話と最終回。最後の真賀田四季犀川先生の会話が凄く好きなのですが、ドラマでは色々と残念な感じに(T_T)これじゃ伝わらん・・・。このシリーズ完結編は是非原作で!

 

以上、全10作。

 

 


アニメ
2015年にアニメ化もされました。こちらは『すべてがFになる』一つの事件を四季シリーズも交えて全11話かけて放送。

 

 率直な意見としては『もの凄く眠くなる作品』(笑)

原作に対して実直にやるとこうなるのね(^_^;)やっぱりエンタメ的じゃないんだなぁと痛感。一つの事件を11話使ってやるってのはどうしても間延びしちゃいますね。作品としては丁寧に描かれていて原作の雰囲気も表現されているし良いと思います。オープニングが好きでした。個人的にはキャラクター造形は実写ドラマ以上にもの申したい。特に萌絵・・・なんでああなる。

 


最後に(ならない)
今にして思うと、【S&Mシリーズ】は一番普通のシリーズ・・・なんて言うと語弊がありますが、個々の事件がしっかりと描かれた、推理小説の形態にそったシリーズでしたね。この後どんどんと一般的な推理小説の枠組みから離れて森さん独自の世界になりますから。その変化していく過程や繋がりが各シリーズを追っていく楽しみなのです。犀川先生や萌絵は他シリーズにもサブキャラクターとして登場しますし、絶対的に重要な真賀田四季も始まりはココですから。

やっぱり森博嗣ミステリィは【S&Mシリーズ】から・・・と、いうかすべてがFになる』からなので!コレ絶対!!

 

 

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壮大な森博嗣ワールド。まずはこのシリーズからご堪能下さい!

 


ではではまた~

 

 

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『ダマシ×ダマシ』ナオミ?そして・・・ 【森博嗣】Xシリーズ完結!

こんばんは、紫栞です。
今回は森博嗣さんの『ダマシ×ダマシ』について少し。

ダマシ×ダマシ (講談社ノベルス)

 

あらすじ
「私は、その、もしかして、ある人に騙されてしまったかもしれないんです」
上村恵子は、銀行員の鳥坂大介と結婚した――はずだった。
言われるままに銀行口座を新設し、預金の全てを振り込んだ後、彼は消えてしまった。預金全てを引き出して。
鳥坂の捜索依頼を受けたSYアート&リサーチの小川玲子は調査していく中で依頼人の上村の他に彼に騙された女性二人をつきとめる。しかし、追っていた鳥坂は遺体となって発見されて――・・・。

 

 

 

 

森博嗣さんのシリーズ作品であるS&MシリーズVシリーズ四季シリーズGシリーズWシリーズ百年シリーズ・・・これらは全て巧妙に関係し合っているシリーズなのですが・・・そのシリーズ群の中の一つ、Xシリーズの完結編がこの『ダマシ×ダマシ』ですね。

XシリーズはGシリーズと平行しての刊行だったんですが、Gシリーズより一足先に完結となりました。Gシリーズは後期三部作に突入していて『χの悲劇』ドえらぁーことに!

 

χの悲劇 (講談社ノベルス)

χの悲劇 (講談社ノベルス)

 

 

森さんの壮大な一連の物語が終焉に向かっていることを感じさせる一冊です。後二冊でGシリーズは完結ですが・・・あぁどうなるんだ!Gシリーズの前にWシリーズを続けざまに刊行するみたいですけど・・・。

 

 

以下、ネタバレ~(森作品は何を書いてもネタバレに繋がるって気がしますな・・・)

 

 

 

 

 

Xシリーズって・・・?
このXシリーズなのですが、他シリーズに比べると全体の中でどのような位置づけにあたるシリーズなのかよくわからないんですよね。他シリーズはすべてがFになる真賀田四季の影が見え隠れするのですが、

 

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

 

 

Xシリーズだとその気配がほぼ無い(言い切る自信が無い。どっかにあるのかも^_^;)
毎回の殺人事件もVシリーズ以降はあってないようなものというか、重要ではない扱いですよね。今回の『ダマシ×ダマシ』もそうだった。


椙田(保呂草)さん関係のスピンオフ的な雰囲気でお話は進んでいたんです。で、今回完結なので最後に真賀田四季の何かくるか!?と身構えたりもしたんですが、特にありませんでした。


しかし、棚上げにされた謎が・・・

一番気になるのはナオミさんの正体ですかね。あと、このシリーズに割と毎回登場していた鷹知祐一郎もたぶん他シリーズの誰かだと思うんだけど・・・真相は明かされないままでした。
このXシリーズ自体の役割が明かされるのはもうちょっと後でになりそうですね。Gシリーズの最後とかでわかるのかな?本当にただのスピンオフって事もありえますが・・・でも森博嗣だからなぁ・・・

 

 

小川玲子
完結編の『ダマシ×ダマシ』を読んでこのシリーズは小川さんの“大切な人の死を受け入れるまで”のお話だったのだなぁ~とシミジミ。個人的に「新しい人と~・・・」とかってよりもこういう感じに終わる方が好みです。まぁ「信じられない我が儘」ですけどね。


実は、私、この主人公の小川玲子さんね・・・・・・Xシリーズの前に何処に出てきた人なのかずっとわからなかったのですよ・・・!

他シリーズをパラパラ読んでみてもわからずじまいで(^_^;)

自分の中で保留にしたままシリーズ完結まで読んでしまったのですが・・・。改めて調べてみたところ、短編集のレタス・フライ講談社文庫版のみに収録されているライ麦畑で増幅して」に登場しているとのこと。

 

レタス・フライ Lettuce Fry (講談社文庫)

レタス・フライ Lettuce Fry (講談社文庫)

 

 


・・・私は森作品ずっと講談社ノベルスで読んでいたのでわからんかったとです・・・なんということだっ!私はずっと講談社ノベルスを信じて(?)いたのに!なんでか裏切られた気分ですが・・・これから文庫版買って読んでみようと思います。

 

ライ麦畑で増幅して」読みました~!詳しくはコチラ↓

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小川さん以外の事務所メンバーも将来への展望が開けて良かった。真鍋君、またあっさりと決断を・・・森作品の男どもはどうしてこう、熱量に乏しいのか・・・びっくりしますね。永田ちゃん的には「言ってみるモンだな」って感じだなコレ。


それぞれの巣立ちの時で若干寂しいなぁ~と、思ったら最後にまさかのアノ人物・・・メグミちゃんがっ!!
※メグミちゃんを知らない人はS&Mシリーズの幻惑の死と使途Gシリーズを読みましょう↓

 

幻惑の死と使途 (講談社文庫)

幻惑の死と使途 (講談社文庫)

 

 

 

φは壊れたね PATH CONNECTED φ BROKE Gシリーズ (講談社文庫)

φは壊れたね PATH CONNECTED φ BROKE Gシリーズ (講談社文庫)

 

 

いやぁ、お話の終盤「おや?この上村恵子、怪しいぞ?さては他シリーズの誰か・・・?」と思ったらねぇ・・・

メグミちゃんのその後がこんな形で読めて良かった。
これによって寂しさが軽減されました(笑)小川さんとメグミちゃんの二人で楽しくやっていけそうですね。


気になる謎は残されていますが、登場人物達の物語は綺麗にまとまって終わったので“シリーズ完結”を堪能できて満足でした。他シリーズの今後の展開も楽しみですね。

 

レタス・フライ Lettuce Fry (講談社文庫)

レタス・フライ Lettuce Fry (講談社文庫)

 

 

 

ダマシ×ダマシ (講談社ノベルス)

ダマシ×ダマシ (講談社ノベルス)

 

 

 

  

ではではまた~