夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『砂の器』原作小説・映画・ドラマ・・・違いを解説。意外とおかしい(?)松本清張の有名作~

こんばんは、紫栞です。
今回は松本清張砂の器について色々とまとめたいと思います。

砂の器 デジタルリマスター版

あらすじ
東京・国電蒲田操車場で男の扼殺死体が発見される。死体は線路を枕に仰向けに寝かされており、顔は判別が付かぬほどに潰されていた。
聞き込みにより、蒲田駅近くのトリスバーで被害者と思われる男と連れの客が話し込んでいたことが判明するが、被害者が東北訛りのズーズー弁だったこと、連れの客が「カメダは今も相変わらずでしょうね?」という言葉を発していたこと以外にめぼしい情報は得られず、捜査は被害者の身元も犯人と思われる連れの客の正体も見当がつかぬ八方塞がりとなる。
捜査本部は当初「カメダ」は人名だろうと広範囲な捜査を開始するが、ベテラン刑事の今西栄太郎は「カメダ」は地名で、秋田県にある「羽後亀田」近辺を指しているのではないかと指摘。若手刑事の吉村弘と共に彼の地に捜査に訪れるが、付近をあやしい男がうろついていたとの情報はあったものの、それ以上に有力な情報は得られずに捜査は芳しくない結果に終わった。

その後の必死の捜査も空しく、捜査本部は解散。だが今西は諦めきれず、他の事件の合間をぬって執拗に事件を追い続ける。今西の独自の調査によって少しずつだが捜査は進展し始めるが、事態を混乱させるように第二、第三の事件が発生し――。

 

 

 


時代をこえて話題になる名作
砂の器』は1960年~1961年にかけて新聞連載され、同年に光文社から刊行された長編小説。『点と線』

 

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ゼロの焦点などと同様、数ある清張作品の中でも特に著名な作品で各時代に何度も映像化され、その度に話題になる有名作です。
私は新潮文庫版で読んだのですが、上下巻にわかれていて2冊とも400ページ程あるので結構なボリュームの長編小説ですね。

 

 

本格推理小説と銘打たれていますが、探偵役が鋭い洞察と驚きの閃きでバーンと解決するといったものではなく、ベテラン刑事がわずかな手がかりから、とにかく足を使って粘り強い捜査をしていくことで少しずつ、確実に、真相が明かされていくといった実直な犯罪捜査ミステリ。それだけではなく、事件の根底・背景には深刻な社会問題が描かれているといった清張作品ではお馴染みの社会派ミステリでもあります。
方言に基づく捜査とハンセン病(作中では癩病と表記されています)が扱われているのが作品の特色で印象的な点ですね。

 

 

 

 

 

以下、犯人についてのネタバレあるのでご注意~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


映画・ドラマ
砂の器』は今までに映画が一本、テレビドラマが五本制作されています。そして今月、2019年3月28日にはフジテレビ開局60周年記念の単発ドラマとして放送が決定います。

映画
1974年 松竹株式会社・橋本プロダクション

 

砂の器 デジタルリマスター版
 

 

●今西栄太郎-丹波哲郎
●吉村弘-森田健作
●和賀英良-加藤剛

 

ドラマ


1962年 TBS系列(全2回)

●今西栄太郎-高松英郎
●吉村弘-月田昌也
●関川重雄-天知茂
●和賀英良-夏目俊二

 

 

1977年 フジテレビ系列(全6回)

 

砂の器 [DVD]

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●今西栄太郎-仲代達矢
吉田弘山本亘
●関川重雄-中尾彬
●和賀英良-田村正和

 

1991年 テレビ朝日系列(全1回)

 

砂の器 [VHS]

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●今西栄太郎-田中邦衛
●吉村弘-伊原剛志
●関川重雄-船越英一郎
●和賀英良-佐藤浩市

 

2004年 TBS系列(全11回)

 

 

●和賀英良-中居正広
●成瀬あさみ(ドラマオリジナルキャラクター)-松雪泰子
●関川-武田真治
●今西-渡辺謙

 

 

2011年 テレビ朝日系列(全2回)

 

 

●吉村弘-玉木宏
●山下洋子(ドラマオリジナルキャラクター)-中谷美紀
●今西栄太郎-小林薫
●和賀英良-佐々木蔵之介

 

 

放送予定
2019年 フジテレビ系列(全1回)
●今西栄太郎-東山紀之
●和賀英良-中島健人
●本浦千代吉-柄本明

 

こうやってみると、どの作品もそうそうたるメンバーが出演されていて驚きますね。

映像化作品が云々以前に、砂の器』という作品自体がここまでの有名作になっているのは1974年の映画の功績が大きいようです。その後のテレビドラマ作品は設定などをみると原作以上に映画の影響を強く受けている印象ですね。
今回原作を読み終わってこの記事を書く為に色々調べていたのですが、どこでも事あるごとに「とにかく映画を観ろ」という記述が散見していたので「そんなにアレなら観てみようか」と、気軽な感じでレンタルしてきて観たのですが、あまりにも良すぎる。

 

<あの頃映画> 砂の器 デジタルリマスター版 [DVD]

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「名作とはいっても原作読んで筋知っているし、かなり昔の作品だし、楽しめるかな~」とか観る前は侮っていたのですが、感動して泣いてしまいました。

ラストの40分、「宿命」という組曲が演奏される中で犯人の幼少期の回想がセリフ無しで流され、描かれる部分が圧巻です。かなり大胆な脚本ですが、原作を損なうことなく良作に仕上がっている映画だと思います。その後のドラマ作品が影響を受けるのも納得ですね。「宿命」もシネマコンサートがされる程の名曲です。

私はリアルタイムで見ていたのは2004年の中居正広さん主演の連ドラと、2011年の玉木宏さん主演の単発ドラマですが、この時原作は未読でした。他作品は未視聴か観たとしても記憶に残ってないかですね(^_^;)

 

中居正広さん主演の連ドラの印象が強かったので、原作もてっきり倒叙形式のお話なんだと思っていたのですが(清張作品は犯罪者が主役のものが多いですし)、連ドラでは犯人視点をメインに作り替えがされていたということなんですね。
2011年の玉木宏さん主演のものは時代設定は原作のままですが、原作の今西刑事から若手刑事の吉村弘視点に変更されています。「なんで吉村君視点?」と、原作読んだ今としては思いますが、散々映像化されている作品だから新しい視点で描いて他作品と差をつけようって目論みだったのではないかと。テレビ朝日は清張作品をよくやっているイメージですね。

 

両作品とも、視点を替えているだけあって原作とは違うオリジナルキャラクターが登場したり、設定も大幅に変更されていますが、コレはコレで原作とは別で愉しめる作品になっていると思います。

2019年版は公式サイトによると、現在設定で事件はハロウィーン当日の渋谷なんだとか。「ハ、ハロウィ~ン?何故?」って感じですが・・・どうなることでしょう。他設定は原作よりも映画版の方に全面的に寄せていますね。

『点と線』ゼロの焦点は映像化するにしてもお話の都合上、原作の時代設定のままで展開されるものが殆どですが、『砂の器』は映像化の度に時代設定を現在に変更されているものが殆どとなります。

 


原作と映像化作品との違い
上記の映像化作品ですと和賀英良が犯人である前提が最初っから示されているものが殆どで、そういった犯人心理を描くお話なんだと思われている方も多いでしょうが(私がそうでした)、原作はこの前提部分がまず違います。


原作の大まかな流れは・・・
遺体が発見され「東北訛りのカメダ」を唯一の手がかりとしての警察の捜査が今西刑事視点で延々描かれる。
→合間合間に“ヌーボー・グループ”なる新進芸術家達の集団の一人である関川重雄の動向が描かれる。
→第二第三の事件が起き、ついには関川の愛人で妊娠していた三浦恵美子も流産の果てに死亡する。
→今西は被害者が立ち寄った映画館で加賀英良の写った写真を発見する。
→今西が捜査会議で捜査の末判明した加賀の本名と素性を説明。加賀を犯人として逮捕状を請求する。
→渡米のため皆に華々しく送り出された和賀だが、空港で逮捕状を突き付けられ、今西、吉村の手によって連行される。

完。

と、いった流れでして。小説の大部分は今西の視点で描かれており、思わせ振りに愛人とのやり取りなどが挿入されている関川重雄が犯人であるかのように読者をミスリードしますが、結果的には関川が度々意識して陰口を叩いていた加賀英良が犯人でした。と、いう読者の意表を突くストーリー展開となっています。

 

映像化作品ですとそもそも関川重雄とその周辺人物自体がカットされ、原作にあるようなミスリードの手法も放棄されていることが多いです。
映像化作品と原作でなぜこんなに乖離しているのかというと、やはり1974年の映画の存在が大きいと思われます。

原作は長大作ですので、映画の時間内で全ての内容をやるのは不可能。原作ではほんの数行書かれているだけの加賀の過去「父・本浦千代吉との遍路の旅路」を主軸にお話は作り替えられ、簡略化されて、映画として観るのに最適でストレートな構成になっています。なので、この映画では話を複雑にしている新進芸術家集団・“ヌーボー・グループ”や関川重雄は登場せず、第二第三の事件もカット。あくまで「東北訛りのカメダ」を手がかりにした今西刑事の捜査過程と、和賀の動向のみが描かれています。

 

“不運な境遇から脱却しようともがき、虚構を作り上げて必死の思いでやっと成功をつかみかけている人間が、突如現われた“過去”を葬るために殺人を犯してしまう“といったテーマが創作意欲をかき立てるのか、映画の後続作品は和賀の生い立ちを色々な角度から突っ込んで描写しようと試みられています。

 

 

 

 

 

以下、さらに突っ込んだネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ハンセン病
原作での加賀の犯行理由というのは、ハンセン病を患っていた人間の息子だという過去を葬り去るためのもの。自分が「本浦秀夫」だった頃のことを唯一知っているかつての恩人を、秘密を守るために殺害してしまいます。
今でこそ“ハンセン病”“癩病”と言われてもピンと来ませんが、かつてこの病気は「業病」(前世の悪行の報いでかかるとされた病)とされ、隔離されたり村八分にされたりと酷い差別を受けていました。家族にハンセン病患者がいるというだけで差別の対象にされたのです。
加賀(本浦秀夫)の父・本浦千代吉ハンセン病になり、妻に離縁され、村を追われ、引き取った六つの息子・秀夫を連れて信仰をかね、遍路姿で流浪の旅に出ます。
旅の途中でこの親子の様子をみかね、巡査だった三木謙一は千代吉を病院に入れ、秀夫を引き取って育てようとするものの、秀夫は三木の元を飛び出して行方知れずに。その後、戦中のどさくさを利用して偽の戸籍と「加賀英良」という名前を手に入れ、前衛音楽家となります。名声を得、政治家の娘との結婚も決まり、順風満帆だったところにかつての恩人・三木が現われ、偽の経歴と今の名声を守るため殺害するに至るという訳です。

 

原作は本当にこういった事実が今西の口から捜査会議で説明として語られるだけで、父親の本浦千代吉も既に死んでいる設定であり、三木はただ昔を懐かしんで訪ねてきただけとなっていますが、映画だと千代吉がまだ生きていて、三木は秀夫と父親をどうしても会わせたいと躍起になっていたため殺害されたことになっています。
原作と違い、映画は遍路の旅路の最中、差別に晒される中での親子の絆がこれでもかと描かれ涙を誘ってくるため、この殺害動機の微妙な違いが深々と心に突き刺さってきます。
慕っていた父との過去を自分の名前と共に捨て、過去を振り切るために虚構でも虚しくとも成功に向かって突き進んでいくしかなかった和賀にとっては、父に会うことはどうしても避けなければいけないことだった。たとえどんなに会いたくとも。
しかし、このような和賀の心情は三木のように何よりも情を重んじて生きてきた人間にとっては理解出来るものではなく、悲劇が起こってしまう。なんともやるせない話ですね。
原作には無い千代吉の登場シーンでの、和賀の写真を見せられ秀夫の面影を見つけるも秀夫を庇うために「こんな男は知らない」と泣きながら言うところと、最後に今西刑事が「彼はもう音楽の中でしか父親に会うことは出来ないんだ」と言うのがなんとも悲しい。

 

こういった感動ややるせなさは“ハンセン病患者の苦悩と差別”という点をなくしては成立しないと思われますが、映画以外のドラマ作品ですと、この千代吉のハンセン病設定は全て変更されてしまっています。
ハンセン病はデリケートな部分を多く孕んでおり、特効薬が出来て完治する病気となっても作品で扱うのはどこかタブー視されているようです。原作で事件背景として取り入れたのも当時は大きく話題になり、映画化のさいも抗議の声が上がったのだとか。そのため、ドラマ作品ではどれも設定が変更になってしまうんですかね。まぁ、現在設定だと病気をしてお遍路しているというのは時代にそぐわないので、変更は当たり前かなとも思いますが。(今度の2019年版もおそらくハンセン病の設定は変更されているんじゃないかと思います)
しかし、変更のために千代吉が犯罪者で逃亡していた設定にされるのは原作や映画を知る人間からするとやっぱり釈然としませんね。

 

ドラマの設定変更に対しての抗議や、原作や映画に対しても「ハンセン病が表面的にしか描かれていない」とのコメントも結構見ますが、『砂の器』は別にハンセン病を描こうとしている作品ではなく、あくまで当時の社会事情として取り入れているだけなので、あんまり声高に病気のことばかり指摘するのは何か違うかなとも思います。

 

 

おかしい
実はこの小説、結構おかしい点というか、何がしたいんだかよく解らなくってご都合主義なところが多いんですよね。
まず、犯行時に着ていた血の付いたシャツの処分を愛人に頼むのですが、この愛人、どうやって処分するのかというとシャツを細かく切って紙切れみたいな状態にして汽車の窓からばらまくんですよね。で、その様子を新聞のコラムに書かれて、その記事を読んだ今西が線路を歩いて探し回り、やっとの思いで血痕が付いたシャツの切れ端を発見するという流れ。


シャツの処分を愛人に頼むのも変ですし、そんな処分の仕方をすること自体がかなりおかしい。美人が汽車の窓から紙切れのようなものをばらまき、それが風に散って紙吹雪となるというのは、画を想像するとなんとも情緒的ですが、ちょっとロマンチストが過ぎる。この愛人はそういう感傷的なことがしたい気分だったってことなんですかね?複雑な心境に陥っている愛人に証拠隠滅なんて頼むべきじゃないとつくづく感じますね。


今西も今西で、どうしてこの記事を読んで事件と関係しているのではないかと疑うのか甚だ疑問。この記事を読んで「愛人が証拠を処分したんだ!」なんて発想に、何故、なるのか。

今西の妹のアパートに引っ越してきた女性が犯人の愛人なのではないかと結びつけるのも、どこをどう結びつけてそんな考えに行着くのか解らない。そもそも、何でまた都合良く越してくるのか。

直感が鋭いとかを通り越して、霊能者なんじゃってな勢いです。

 

第二第三の事件ですが、前衛音楽家である和賀が技術を利用し、超音波を聴かせて心臓が弱い人間や妊婦を死に追いやるといった奇抜な方法で殺害しています(妊婦は関川の愛人で、関川に頼まれて流産させようとしたら結果的に死んでしまったのですが。関川、本当に酷い男だなぁ)。
コレがですね、読んでいると「なにか変なこと言い始めたぞ」と、当惑してしまうんですよね。「どうした??」と。まぁ超音波聴かされ続ければ具合も悪くなるでしょうけど・・・・・・う~ん(^^;)
最新技術を駆使しての犯罪というのを盛込みたかったらしいですが、第一の事件の「カメダ」の情報だけを頼りにした今西刑事の足を使ったクラシカルな捜査と、このハイテク(?)な方法の第二第三の事件はかみ合わなすぎてどうしても異質に見えます。第二第三の事件があるせいで犯人の和賀にも同情出来なくなりますし、やるなら別作品にすれば良かったのに・・・と素人ながら思ってしまいます。

 

映画は原作でのこういった不自然な部分がほぼ無しになっている構成ですね。超音波云々が無いので、和賀の職業は原作の前衛音楽家からピアニストの作曲家に変更されています。映画以降のドラマ作品でも超音波云々は省かれ、和賀の職業も映画の設定を引き継いでピアニストになっていますね。まぁ、その方が感動や共感は得られやすいですからねぇ・・・。

 


意欲作
話の纏まりが良く、感動するのは原作よりも映画の方ではありますが、原作は感動させることが目的の物語として書かれているものではないので、この違いは当然のものです。

原作は非常に意欲的な小説だと思います。当時実際にあった前衛芸術集団をモデルに“ヌーボー・グループ”を登場させて皮肉ったり、最新技術の装置をトリックに使ったり、きわどい題材を動機に盛込んだり。今までにない小説を書いてやろうという著者の意気込みを感じますね。

 

個人的に映画観て感動したばかりなので、なんだか映画の事ばかり書いてしまいましたが(^_^;)
原作も勿論面白いです。今西刑事の、前進したと思ったら振り出しに戻るもどかしい捜査で少しずつ解っていく真相、予想がつかない展開と、二転三転する事実などなど、長大な作品ですが最後まで飽きずに読ませてくれる名作ミステリです。

 

まずは小説と映画の両方に触れて違いを楽しみ、気に入ったなら他のドラマ作品も観て・・・と、楽しみを広げていって欲しいです。『砂の器』というタイトルの意味も読みながら、観ながら、想いをめぐらして感慨に耽るのが良いかと。タイトルの意味がより強調されているのはやっぱり映画の方ですかね。※ちなみに、原作では映画のように物理的に砂で器を作るシーンは出て来ません。

 

とにかく、小説と映画は必須!

 

 

 

 

砂の器 デジタルリマスター版
 

 


ではではまた~

 

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『金田一37歳の事件簿』3巻 ネタバレ・感想 「ワカメ頭」登場~

こんばんは、紫栞です。
今回は金田一37歳の事件簿』3巻、発売されました~。あらすじ・内容・読んでみての感想など、簡単に紹介したいと思います。

金田一37歳の事件簿(3) (イブニングKC)

 

1巻2巻同様、今回も限定版と通常版の二形態での刊行。3巻までくると、もうずっとこのまま二形態での刊行なんじゃないかって気がしてきましたね。
オレンジの方が通常版(680円)、

 

金田一37歳の事件簿(3) (イブニングKC)

金田一37歳の事件簿(3) (イブニングKC)

 

 

限定版は紫で(1998円)

 

 3巻の限定版は
●「容疑者になれる権」応募専用ハガキ
●「高遠遙一クリアファイル」
●「特製ステーショナリーケース」
の三大特典付き。
今回、限定版には結構な大きさの箱が付いているので通常版と間違えて買う心配とかはないかなと思います。
それはそうと、値段がお高い。ほぼ二千円ですよ。特典内容をみるとそんなにたいしたものは入っていなさそうなんですが・・・(私が買ったのは通常版なので、ちゃんとモノを見たわけじゃないから何とも言えませんけど)

「容疑者になれる権」は1巻の特装版にも付いていましたね。

 

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今回は第二弾。そういや、1巻の「容疑者になれる権」の当選結果は?とか思ったんですが、結果は第三シーズン(つまり三つ目の事件)でとのことらしいので、コミックスだと結果がわかるのは次巻の4巻ですね。


通常版・限定版とも2月22日同時発売。私の住んでいるところは地方なのでコミックスや雑誌は一日遅れで入荷されることがほとんどなのですが、何故か限定版だけ22日に店頭に並んでいました。店員さんに聞いてみたら「通常版が入ってくるのは明日です」と言われ「あ、そうなんですね~」と返答しつつも内心「え?なんで?」って感じだった(笑)地方の不思議。

 

 

「タワマンマダム殺人事件」あらすじ
隣人の森下桃香に頼まれて会社の後輩・葉山まりんと一緒にタワーマンションでのケータリングの手伝いに来た金田一。しかし、前日までうるさく注文を付けていたケータリングの依頼主・美咲雛がパーティの当日になって姿が見えない。
美咲は同じタワーマンションの友人、姉小路牧子・九条美音子・園森紗英の三人に身ぐるみを剥がされ、猿ぐつわをされ手足を縛られて監禁されていた。美咲の友人であるはずの三人はこれから何をしようというのか。華やかなパーティの裏で恐ろしい犯罪計画が動き出す――。

 

 

 

 

 

 


倒叙
今巻は前巻に1話収録されていた

 

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「タワマンマダム殺人事件」で1冊占められています。お話としてはいわゆる倒叙モノで、最初っから犯人が明かされていて、犯人視点で金田一との攻防戦が描かれています。“コロンボ形式”と言えばわかりやすいですかね。
作品雰囲気は金田一少年の事件簿短編集収録の「殺人レストラン」と、

 

 

 「女医の奇妙な企み」

 

 に似ているかと。

犯人が金田一に突き詰められてオロオロする様子がギャグテイスト強めで描かれています。


元々個人的に短編の「殺人レストラン」「女医の奇妙な企み」がお気に入りなので今巻は全体的には楽しく読めたのですが、まぁちょっと長いですね。2巻の第1話を読んだときはてっきり短めのお話だと思っていたので、1冊以上使うのには驚きました。しかもこの巻では完全に終わらず、動機面の詳細が次巻に持ち越しです。一つの事件で巻を二つ跨ぐのはちょっと頂けないよなぁと思っちゃいますね。残りはあと1話だったんだろうし、何とか出来なかったのかってな気が。
倒叙モノは短編によく用いられる手法なので余計にお話が間延びしているように感じてしまうかと。犯人たちも小者感が漂っていますし、高遠さん絡みでもないからやっぱり“一休み”の印象が強いので「一休みだと思ったら長いな・・・」という驚きと意外性。

 

 


登場キャラクター
今作では【金田一少年の事件簿】からのお馴染みキャラクターとして真壁誠が出て来ます。ワカメ頭のミス研部員・真壁先輩ですね。なんと刑事さんになっている。意外。やっぱり小説はスッパリ諦めたんですね(まぁ自分が書いていたんじゃないしね・・・)「学園七不思議殺人事件」

 

 

で初登場のときはそれはそれは嫌な奴でひたすら気持ち悪い真壁先輩でしたが、今作では結構まともに刑事さんやっています。ざっくばらんで比較的物わかりも融通も利くので、読んでいてストレスになりません(笑)。白金署勤務とのことですが、剣持のオッサンはもう退職しているし、明智さんは階級が警視長にまでなってしまっているから、今後別の事件でも真壁先輩は登場するかもしれないですね。
真壁先輩といえば、鷹島さんとはどうなったんですかね?「学園七不思議殺人事件」の最後で金田一「あいつはもう鷹島から一生はなれられないんじゃないかな」とか言われていましたが・・・。もし今後鷹島さんについての事柄が出て来たら楽しそうですね。期待したいところです(^^)

他は今作では高校時代の馴染みの方々は出て来ませんね。隣人の森下さんとまりんちゃんがいるだけ。でもこの二人も今作は犯人視点が多いのでお話に登場している印象は薄いです。この二人はやっぱり金田一に気があるんでしょうか・・・。美雪の話が出たとき微妙な表情していましたが・・・。
予想通り、今作ではやっぱり美雪についての新事実などは出て来ませんでしたね。はぁ~・・・(-_-)

 

 

 

 


以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 


ハイテク・古典
事件についてですが、前作同様にギャグテイスト強めで面白いは面白いんですが、やっぱり動機面までギャグっぽくされるのは抵抗がありますね。今回は浮気だなんだで“モロ”な絵も出て来るんですが、まぁ下品です。これは青年誌掲載なのを意識してなんですかね。裸描けば良いってもんじゃないと思いますが。昔の妖しげで艶っぽい絵柄と人間関係の設定が恋しい・・・。

美咲の浮気相手、インストラクターの悠也先生ですが、美咲の部屋からジャケット引っ張り出して「これ僕のジャケットなんですよ~~」と言うのにはビックリしました。「ですよ~~」って、馬鹿か。不倫相手ですと宣言しているようなもんだし、続くいい訳も下手くそ過ぎる。真壁の「ハイ不倫っ!!自白取れましたー!!!」が笑えました。
ビックリしたといえば、ゴキブリわしづかみにするのは衝撃的でした「ぎゃああ~~!!」ですね。


トリックですが、変装のときに一回カメラに写っているスカーフを使うのはいくらなんでも迂闊。スーツケースを「内側からうまい具合に閉じた」という一ちゃんのセリフがぼかしまくりの言い方で何だか可笑しい。

3Dプリンターを使う点などは“今どき”で、犯人も昭和ミステリは今の時代の推理には意味がないとか金田一耕助を揶揄するような物言いをしていましたけど、メイントリックはかなりの古典でしたね。それこそ科学捜査とかすればすぐバレちゃうじゃん、みたいな。自殺でかたづけられて検視とかされなければ大丈夫だと思っていたってことなんですかね。

しかし、推理に対して現在後ろ向きな一ちゃんも、やっぱりジッチャンの事馬鹿にされるのは我慢できない模様でなんか嬉しい。まぁ名にかけまくってきたからなぁ(^^;)前回の事件よりもキリッとした推理シーンで高校時代っぽかったですね。この方がやっぱり好き。

 

 


空白の20年間に何があったのかとか、美雪のことや高遠さん関連のことが気になるのは勿論ですが、理由はともかくとして一ちゃんにはまた推理への自信ややる気を取り戻して欲しいというのが第一としてあるので、これから徐々に調子を取り戻していく過程も楽しみに次巻を待ちたいと思います。

第4巻は2019年6月発売予定とのこと。

 

※4巻について、詳しくはこちら↓

 

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ではではまた~

 

 

 

 

秘密-トップ・シークレット3巻「チャッピー連続殺人事件」あらすじ ネタバレ

こんばんは、紫栞です。
今回は清水玲子さんの『秘密-トップ・シークレット』

 

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3巻に収録の土屋雅紀殺人事件/チャッピー連続殺人事件」をご紹介。

新装版 秘密 THE TOP SECRET 3 (花とゆめCOMICS)

 

あらすじ
2061年8月。有名私立大生の土屋雅紀の他殺体が白泉公園で発見される。遺体は左手左足が粉々に粉砕され、全身の皮を剥がれたうえ首を落された凄惨な状態のものだった。
「第九」MRI捜査されることとなり、被害者の脳映像を確認したところ、犯人は「チャッピー」という動物公園のキャラクターの着ぐるみ姿で犯行に及んでいた。さらに、被害者は生前に「5年前の死神がおまえをむかえにいく」「5年前に一体何を見た?」などの脅迫めいた手紙やメールを受け取っており、MRIで5年前の映像も確認したところ、被害者が2056年8月に進学塾の合宿中に殺人事件を目撃していたことが判明。その犯人も「チャッピー」の着ぐるみ姿で凶行に及んでおり、少なくとも4人以上の子供を殺害していた。
しかし、このような事件が報告された事実はない。土屋を含め事件を目撃したのは6人の学生。彼等は何故事件を通報しなかったのか?
土屋の葬儀後、目撃者である他5人は皆行方不明となる。

その目撃者のうちの4人、片岡・石崎・境・竹内は、同じく目撃者の1人の西澤に呼び出され、悪天候のなか山奥の廃墟に集められていた。そこで4人は冷蔵庫から西澤の皮剥遺体を発見する。この状況は5年前の事件と類似していた。山を降りようとする4人だが、車が何者かの手によって破壊されていて――。

 

 

 

 

 

 

 

 

サスペンス
3巻は土屋雅紀殺人事件/チャッピー連続殺人事件」と短編読み切りの「不思議な秘密」清水玲子先生による“脳”解説(?)「現実の秘密」が収録されています。シリーズの中でもページ数が多くって、280ページほどある大ボリューム。このシリーズはコミックスにする際はページ数関係なく事件を丸々収録してくれるところが良いですね。

「チャッピー連続殺人事件」は「第九」の事件捜査の過程と片岡ら閉じ込められた4人の様子が並行して描かれる物語構成になっています。薪さんら「第九」の捜査で5年前の事件の詳細が明らかになっていく過程も勿論面白いですが、片岡たち4人がクローズド・サークルちっくに閉じ込められ、得体の知れない犯人に怯えながら精神的に追い詰められて戦々兢々としていく描写が凄く面白いです。シリーズの中でもサスペンス色が強い事件ですね。

着ぐるみ姿の犯人や過去に罪のある者達が悪天候で交通手段が断たれ、閉じ込められたところに事件が起こるなど、舞台設定はミステリの王道そのものですが(近未来SF漫画だってこと忘れるくらいにね・・・)、後半の真相部分はこのシリーズならではの“秘密”にどっぷりとまつわるもので「ベタだけど特徴的」な感じ。美人でミステリアスな犯人も出て来て、個人的にも特に好きな作品です。

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


自己保身
5年前、片岡たち6人の学生が事件を通報しなかったのは、合宿最終日でハメを外し、夜遊びをしてドラッグ、アルコール、タバコ等を大量摂取していたから。バレれば受験はダメになるという自己保身のため。
今回、片岡たち4人を閉じ込めた犯人は5年前の被害者の子供の一人である篠崎佳人。5年前の加害者である大倉正が自分に抱いている愛情を利用して今回の犯罪計画を実行しています。


片岡たちは逃げる途中で「たすけて」という子供を聞いたにも関わらず、子供たちよりも受験を控えた自分たちの将来の方が大事で見殺しにした。結果、片岡たちが去った後に佳人は被害を受け、一緒に捕まっていた佳人の妹・香里は殺された。「あのとき通報してくれていれば・・・」と、佳人は片岡たちに復讐をする訳です。
片岡たちは直接殺害に関わった訳ではない。しかし、自己保身のために子供を見殺しにして、その後はバレないことに安堵し、“あの夜のこと”を忘れて何事もなかったように有名大学に通っている。これは当事者からしてみれば実際に手を下した犯人と同等、ひょっとしたらそれ以上に罪深く思えるんじゃないかと思いますね。「助かるかも」という希望を抱いたぶん、切り捨てられたショックは大きいでしょうし、無関係を装って忘れようとしている行為はとても許せることじゃないでしょう。

 

 


女・男
黒幕の佳人ですが、「チャッピー」の着ぐるみの仕事をしているときは男性として働いていますが、5年ぶりに母親に電話する場面や片岡の妹に接触するときなどは女性として、亡くなった妹の香里として振る舞っています。終盤までずっと男なのか女なのかわからないままお話が進んでいきまして、読み手としては「なんで性別があやふやな描写なのか」と疑問を抱くのですが、最後にはこれらの疑問がすべて繋がる結末・“秘密”が用意されています。佳人の声が高いのも伏線になっていますね。


佳人がこのような事件を起こしたのは、復讐は勿論ですが自分が5年前に“されたこと”の秘密を知る者をすべて葬り去ることも目的。

せっかく生きのびて逃げられたのに、一番に帰りたい両親のもとに帰れないというのはあまりにも辛すぎますね。最後、両親に知られる前に死のうとする佳人に嘘をついて必死で止める青木との場面が何とも印象的。薪さんがその嘘にのって佳人の自尊心を守る為に証拠を改ざんするのもまた感慨深いです。

 

しかし、作中で佳人の髪の毛が短くなったり長くなったりしていたのは何故なんでしょうか?かつらなのかな?
あと、絵柄の問題なんでしょうけど、佳人と薪さんの顔が似ていますよね!(1巻のマシュー・ハーヴェイにも似ていましたけどね・・・^^;)

 

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青木の「もしかしてオレ今両手に花?」が可笑しいです。公園の名前とかゴリラのところとか小ネタが多いですね。

 

 


ラスト
物語の最後は事件のその後の経過が箇条書きで綴られています。
佳人の処分は「医療少年院送致」に決定しますが、両親とも嫌がらせをうけて引っ越しを余儀なくされたり、被害者の大学生たちの親が損害賠償請求をしたりと、やり切れない顛末が箇条書きで淡泊に書かれているところがもの凄いリアリティを感じさせますね。簡単に割り切れるものではないというか。佳人の側からの視点で描かれているから肯定的にみてしまいますけど、大学生の親族からすれば復讐の仕方が苛烈過ぎると感じるだろうし、これだけの罪を犯した犯人が「医療少年院送致」では納得いかないし許せないと思うのは当然ですよね。
世間では事件は忘れ去られるが、当事者達の間ではいつまでも恨み辛みが繰り返される。どこまでもやり切れないですね。

 

 


おまけ
この「チャッピー連続殺人事件」の後に収録されている読み切り「不思議な秘密」は心霊現象を扱っているお話で完全に「耳袋」的怪談話で怖いです。夜に薄暗い建物の中でMRI映像を見るってよくよく考えるとめっちゃ怖い状況ですね(^^;)短いお話ですが“よく出来た話”で作者の技量を感じます。最後に2巻の天地のことが少し出て来ますね。

 

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作者のページ(?)な「現実の秘密」も面白いですので必見。作者のページは毎巻あればいいのになぁ~。「秘密」はこの巻以降はこういったものが収録されていないので残念です。清水先生のお話ユーモアもあって面白いんですけどねぇ。

 

 

 

 

3巻収録のお話はシリーズ全体の伏線に絡むようなものではないですが、単純に物語りとして、サスペンスとして面白いので気になった方は是非是非。

 

 

 

ではではまた~

 

 

 

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『ダイイング・アイ』原作小説のあらすじ・ネタバレ

こんばんは、紫栞です。
今回は東野圭吾さんの『ダイイング・アイ』をご紹介。

ダイイング・アイ (光文社文庫 ひ 6-11)

2019年3月からWOWOWで放送予定の連続ドラマの原作小説です。

 

あらすじ
許さない、恨み抜いてやる、たとえ肉体が滅びても――。
雨村慎介は「茗荷」という店で働くバーテンダー。ある日、仕事帰りに何者かに頭を殴打されて重傷を負ってしまう。二日後に病院で目を覚ますが、頭に損傷を負ったせいか“ある記憶”の一部が欠落してしまっていることに気付く。“ある記憶”とは1年半前に自らが運転する車で死亡事故を起こしたことだった。慎介は現在執行猶予中の身だったのだ。
慎介を襲った人物はその事故の被害者・岸中美菜絵の夫でマネキン制作会社勤務の岸中玲二だったことが判明。だが警察がつきとめたとき、岸中玲二はすでに自宅で服毒自殺をしていた。
退院し、事故について断片的には思い出せたものの、肝心の事故を起こした瞬間の記憶はどうしても思い出せない慎介。
自分は何故、事故のことだけ忘れてしまったのか――。
周りに事故についての詳細を聞くうち、自分の運転や行動に疑問を感じた慎介は事故のことについて独自に調べ始める。
そんな中、慎介の前に喪服姿の妖しい魅力に満ちた謎の女が現われ、慎介は次第にこの女に溺れていくが、女の顔は岸中玲二が妻に似せて作ったマネキンに瓜二つだった。
果たしてこの女は何者で、何が目的で慎介に近づいてきたのか?そして、事故の真相は?

 

 

 

 

 


東野圭吾のホラー小説
大人気作家なだけあって作品の映像化数が凄まじい東野圭吾作品。最近は書けば遅かれ早かれ全て映像化されるのではないかといった勢いですよね(^^;)。
この『ダイイング・アイ』は2007年刊行で十年以上前の作品。ドラマの公式サイトの東野さんのコメントによると「『ダイイング・アイ』は扱っている題材からして、まずそういう話(映像化の話)は来ないだろうと予想しておりました」とのこと。ドラマ化と、この東野さんのコメントが気になったので読んでみた次第です。


今作なんですが、ネットで調べると「ハードサスペンス」と説明されています。ハードな、サスペンス・・・かぁ・・・といった感じですが、読み終わっての率直な感想としては「ホラー小説」ですね。
謎が明かされていく過程は一般的な東野圭吾ミステリとして十分楽しませてくれますが、お話の根本はホラーそのもの。結末も途中の場面も色々と怖いです。東野圭吾作品でこういったものは読んだことがなかったので新鮮でしたね。
登場人物達が悪人ばかりというのも東野圭吾作品では珍しいなと思いました(全著作を読んでいる訳ではないのでハッキリとは言えませんが)。前にこのブログで紹介した乾くるみさんの『リピート』と同じように、

 

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『ダイイング・アイ』では人間の欲深さ、浅ましさなどを描くのが主題なんだと思います。

 


ドラマ

 

 


3月からの連続ドラマWでのキャストは以下の通り

雨村慎介三浦春馬
岸中美菜絵/瑠璃子高橋メアリージュン
村上成美松本まりか
岸中玲二柿澤勇人
岡部義幸小野塚勇人
木内春彦淵上泰史
小塚洋平木村祐一
小野千都子堀内敬子
江島光一生瀬勝久

 

最初に映像化を知ったときは映画なのかと勘違いしましたが、こちらはWOWOWでの全6話編成の連続ドラマ。原作は400ページちょっとのボリュームなので6話編成は丁度良いのではないかと思います。


主人公の雨村慎介は原作では感傷的だったりドライだったり悪人な部分もあったりと、結構一筋縄ではいかない人物ですので、三浦春馬さんがどんな風に演じるのか見物ですね。バーテンダー姿も楽しみです(^^)
原作にはアイリッシュクリーム」を始めとして数々のカクテルが出て来ますので、カクテル好きな人には観ていて愉しめるんじゃないかと思います。

 

主演はもちろんですが、原作を読んだ人間ならまず気になるのは「瑠璃子役」は誰がするのかですね。これは高橋メアリージュンさんが岸中美菜絵との一人二役で演じられるそうです。瑠璃子は原作だと妖艶で大胆なシーンが多いのでドラマではどの様に描かれるのか気になるところですね。
映像としては大量のマネキンをどの様に映すのかも見所なんじゃないかと。妖しげで魅惑的な映像に期待です。

 

 

 

 


以下がっつりとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


“ダイイング・アイ” 意味
タイトルの「ダイイング・アイ」というのはミステリによく出て来る「ダイイング・メッセージ」から採ったものだと思います。
通常の「ダイイング・メッセージ」とは死亡した被害者が死の間際に残すメッセージのこと。
この『ダイイング・アイ』ではプロローグで車の死亡事故の被害者・岸中美菜絵視点で美奈子が事故に遭い、死ぬまでの瞬間が描かれています。美菜絵は車にぶつけられて飛ばされた後、壁と車に挟まれるのですが、今死ぬといったまさにその瞬間、恨みのこもった目で車の運転手を睨みつけます。

美菜絵の目は、真っ直ぐに前に向けられていた。彼女の身体を押し潰した車を運転している人間の顔に、だった。
許さない、恨み抜いてやる、たとえ肉体が滅びても――。

身体が潰されて骨が折れ、内臓が次々破裂する様子や、走馬灯のように美菜絵が今までの自分の人生、まだまだ続くはずだった夫との幸福な日常に想いをめぐらせる部分など、これらの描写が相まってこのシーンは読者に強烈な印象を与えています。
今作のタイトル「ダイイング・アイ」とは、この美菜絵の“死に際の恨みのこもった眼光”のこと。美菜絵は眼光によってこの世に恨みを残して逝き、眼光を向けられたことで、この“恨み”を受け継いだ“ある人物“が事件を引き起こしていくのがこのお話。

 

 


事故
今作では「交通事故による加害者側の責任意識の低さ」が題材になっています。
美菜絵が死んだ交通事故の加害者は二人で、慎介と木内春彦。最初に美菜絵にぶつかったのは慎介が運転していた車で、その車に進路妨害をされた結果、ハンドルをきりそこねて美菜絵を押し潰したのは木内が運転していた車。
しかし、実際に車を運転していたのは慎介が勤めていた店のオーナーの江島光一と、木内の婚約者で社長令嬢である上原ミドリ
慎介は三千万円と引き替えに、木内は飲酒をしていた婚約者を庇って身代わりを引き受けたというのが事件の真相。慎介が事故を起こした瞬間のことを思い出せなかったのは、実際に車を運転していたのが自分じゃなかったからなんですね。

 

お金や立場があるとはいえ、慎介も木内も何故簡単に身代わりを引き受けたのかというと、実刑が下らないだろうことがわかっていたから。

人が一人死んでいても、交通事故によって加害者側に下される罪状は軽いもの。加害者が二人いるというのも両者に「直接被害者を死亡させたのはあちらだ」「事故原因を作ったのは向こうだ」と、いった具合に罪悪感は薄まってしまう。加害者の一人である江島は「一年間に交通事故で死んでいる人数は約一万人。サイコロの目みたいなもので、たまたま悪い目が出てしまったというだけ。運が悪かっただけ。こっちだって被害者だ」という風に思っています。

年間一万人の交通事故死者がいるということは、それに近い数の加害者も存在するはずだ。彼等はたぶん以外に軽い量刑にほっとしながらも、ただひたすら自分に起きた災いを忘れようとしているのだろう。そして加害者が忘れることで、被害者は二重に傷つけられる。

忘れることなど出来ない被害者側としては、加害者側のこういった態度はあまりにも無責任に見えるはず。被害者側と加害者側での認識の落差が激しいのが交通事故の問題点で悲痛なところなんですね。

 

 

 

 

モヤモヤ・考察
「瑠璃子」の正体は手術で美菜絵の顔に似せた上原ミドリ。直接美菜絵を押し潰した車を運転していたミドリは、死に際の美菜絵に睨みつけられたことで気が触れてしまい、自分自身が被害者の美菜絵であるかのように振る舞い(または眼光によって美菜絵の想いが乗り移って本当に美菜絵自身になっていたのか)、慎介に近づいてきたのも“美菜絵として”慎介に復讐するため・・・・・・らしい。
お話の要となる部分なんですが、コレが何というか~・・・どうもよくわからない(^^;)

 

璃子(ミドリ)は慎介に思わせ振りに接触。その度に積極的に性行為を求め、慎介をマンションに監禁までしますが、何故か殺そうとはしない。妊娠することが目的だと受け取れる言動がありますが、それに続く言葉は「やめさせたいなら私を殺して」というもので、殺させてミドリが味わった苦しみを同じ加害者の一人である慎介に追体験させるのが目的なのかな?とは思うんですけど、妊娠しようとした動機はよくわからないですね。必要ないとも感じますし。
終盤で瑠璃子(ミドリ)は本当の加害者の一人は慎介ではなく江島だと知って、江島に自分を殺させる訳ですが、江島には
「そうして今度こそ忘れないで。あなたがわたしを殺したということを。あなたが殺した女の顔を、女の目を」
と言い放ち、江島は逮捕後に「女の目がいつも自分を見ている」と怯えて発作的に両目を自分で潰して失明。
“忘れることは許さない”というのが、瑠璃子が考えていた殺す以上の復讐なんですよね、やっぱり。妊娠しようとしたのはより忘れられなくする為の後押しというか嫌がらせだったのでしょうか。

 

そもそも、瑠璃子が見つめるだけで相手の身体が動かなくなったり、行動を誘導されたりするのにはカラクリがなく、ただ摩訶不思議な力だというのはミステリだと思って読んでいた読者としては拍子抜けでモヤモヤしてしまいます。「催眠術みたいなもの」と出て来ますが、催眠術にかかる状況も作らないで、見つめるだけで身体が動かなくなるというのは催眠術ではなくって、もはやただの魔法ですよね。推理小説として読んでいたのにそれはちょっと・・・。
まぁ拍子抜けしてしまうのは東野圭吾作品だからミステリ的カラクリにより期待しちゃうというのもあると思いますが。「ホラーならホラーと言っておいてよ」と言いたくはなりましたね。


他にも慎介の彼女である成美の行動は突拍子もなくって解せないですね。あんなに健気に慎介に尽くしているように描かれてしたのに金を持ち逃げ、あげく欲が出て江島にさらにせびりに行くとは・・・。失踪した後は作中に登場しないまま「殺されたんだろう」という憶測で終わりだし、色々と残念です。
刑事の小塚さんが知らない間に殺されてしまっていたのもショックでした。事件自体には直接関係なくって、作中では唯一の善人だくらいの人だったのに・・・(-_-)

 

 


最後に
色々とモヤモヤはしますが、ホラー小説なんだと思えばこのモヤモヤ感も納得出来るものだと思います。
謎を紐解いていく過程やスリリングな展開は文句なしで面白く、ぐいぐい読ませてくれる一気読み必須の本なので、気になった方は是非是非。

 

 

 


ではではまた~

 

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『ダリの繭』(作家アリスシリーズ) あらすじ・ネタバレ感想

こんばんは、紫栞です。
今回は有栖川有栖さんの『ダリの繭』をご紹介。

ダリの繭 「火村英生」シリーズ (角川文庫)

あらすじ
推理作家の有栖川有栖は自身の最新作の完成と、犯罪学者の友人・火村英生の誕生日を祝して料理店でささやかな宴をしていたところ、宝石チェーンの名物社長・堂条秀一を見かける。堂条秀一は幻想を愛し、奇行で知られたシュールレアリスムの巨匠・サルバドール・ダリの心酔者で、ダリを真似た“ダリ髭”がトレードマークの有名社長だった。
それから一週間とたたないうちに、堂条秀一が神戸の別宅で殺害される事件が発生。堂条の遺体は“フロートカプセル”の中に入った状態で発見され、奇妙なことにトレードマークの“ダリ髭”が無くなっていた。他にも数々の不可解な点が・・・。
容疑者のうちの一人として有栖の友人・吉住訓夫の名前が挙がり、気になった有栖はフィールドワークでこの事件の警察への捜査協力をすることになった火村に事件の詳細を聞き、一緒にフィールドワークに参加することに。しかし、捜査が進むにつれ友人の吉住は窮地に立たされて――。

 

 

 

 

 

 


装丁いろいろ
『ダリの繭』は【作家アリスシリーズ】(火村英生シリーズ)の長編2作目。

 

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最初に刊行されたのは1993年。現在、通常の文庫版はこちらですが↓

 

 

 

1999年には愛蔵版が刊行。

 

 

2013年には角川ビーンズ文庫版の上下巻で刊行されています。

 

 

 愛蔵版と角川ビーンズ文庫版の下巻には巻末には書き下ろし拳編シュルレアリスムの午後」という、アリスとお隣さんの真野さんとのお話が収録されています。この挙編は元々は愛蔵版の特典サービスとして書かれたものですね。

内容は道端で会った際の二人の会話といったもので、事件には直接関係ないです。麻々原絵里依さんによるコミカライズでは『朱色の研究Ⅰ』

 

 

 

 

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の巻末にこのお話が入っています。会話の内容はほぼ同じですが、こちらの漫画ではアリスと火村とのお話に変更されています。

文章だけで愉しみたい方は愛蔵版、挿絵ありが好きな人はビーンズ文庫版がオススメ。有栖川さんは文庫化の度にあとがきを書いてくれるのでそちらも必見。個人的に、有栖川さんはあとがきが面白い作家さんの一人だと思っております。

 


新婚ごっこ
シリーズの第1作目というのはどうしても説明的な部分が多くなってしまいがちなので

 

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2作目の長編は主要人物たちの個性や関係性の掘り下げが多くされる傾向が強いです。【作家アリスシリーズ】(火村英生シリーズ)もご多分に漏れず、この2作目の『ダリの繭』ではアリスと火村の関係性の掘り下げ・・・と、いうか、端的に言えば二人の仲良しっぷりがこれでもかと描かれています。

まず、初っ端からフランス料理店で火村の33歳の誕生日を祝って(アリスの本の完成もですが)シャンパンで乾杯しているところから始まります。
コレはですね、大抵のことは本で書かれていると「そんなもんか」と受け入れてしまう私でも「流石におかしいな」と思いましたね。

しかも、

つまらないことを言いながら周りをふと見渡すと、楽しげに語らい合うカップルで私たちが包囲されていることに気がついた。結構なことだ。他人の幸せそうな様子を見ることは私の喜びである。

確かに結構なことですけど。「ア、アリス、あのさ、もっと気にするべき点があるのでは~・・・」と読みながら思いました。「え?私の方がおかしいのかな?」とか(^^;)。

ちなみに、二人のこの日の予定は

ここで上品な料理とうま酒を賞味しながら互いに祝い合った後、御堂筋を走る車を眺めながら路上でラーメンを食べ、それから私のマンションに彼を引っぱり込んでうだうだ言いながら飲み続ける、というのが素晴らしき今宵の予定であった。

らしい。
この独身万歳!な感じ(笑)学生のままのノリのようで、フランス料理店で乾杯というのが社会的地位のある大人を表している(のか?)。いずれにせよ羨ましい。
しかし、この地の文、大好きっぷりが滲み出ていますよね・・・。語り手のアリスは探偵役の火村のことを普通に(?)友人として好意的に接しているのが示されてします。これはコンビの推理物シリーズでは結構珍しいんですよね。探偵役に振り回されて語り手が苛ついたりで、表面上は反発し合っているが実は・・・・・・みたいなのが一般的には多いですから。このシリーズではどちらかというと語り手のアリスの方が振り回していますしね。

 

角川ビーンズ文庫版のあとがきで有栖川さんは「私は男三人でフランス料理店で食事するけどどうよ?」みたいな事を書いていらっしゃいます。わかってないわねっ!二人と三人じゃ全然違うわよっ!
・・・と、物申したい気分になりますが。
やはり私と同じような疑問を感じてしまう人々からお声が多数あったようですね(^^;)

 

今作の“そういった部分”で特に有名なのが「新婚ごっこ」。ネットで『ダリの繭』を検索すると「新婚ごっこ」と出て来るくらいにファンの間では有名です。


これは何だというと、もうそのまんまで、アリスと火村の二人で新婚ごっこをしているんですよね。フィールドワークの都合上、火村がアリスのマンションに五日ほど入り浸っていたので(その間、大学の講義はずっと休講)、その間のアレコレが色々。本人たちも「新婚ごっこもどきをしている場合ではない」「新婚ごっこはもう終わりだぜ」などと作中で言っています。

これらの部分は著者としては二人の良好でフラットな関係を表したいんだとは思うんですが・・・ちょっと気になってしまいますよね、女子としてはね。しかしコレ、有栖川さん自身はそういった方面のウケ狙いで書いているのではなく、あくまで自然なやり取りのつもりで書いているんだと個人的には思っています。

 

 

ドラマ
『ダリの繭』は2016年放送の日本テレビ系連続ドラマの第4話で実写映像化されました。

 

臨床犯罪学者 火村英生の推理(DVD-BOX)

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ハッキリ言って、ドラマのこの回はなかったことにしたい。と、いうのが個人的な感想です。
長編なのに一週のみの構成で詰め込みすぎだし、大胆すぎるカットがされているし、原作での丁寧な心情描写が雑すぎだし・・・・・・と、まぁ言いたいことはいっぱいある(-_-)「新婚ごっこがやりたかっただけだろ」とか言われてしまうもの納得です。(ちなみに、私は原作の「新婚ごっこ」の方がずっと好きです)でもドラマだと二人の仲がギクシャクする展開でしたね。原作は上記のようにひたすら仲良しな内容なんですけど。

この連ドラは短編はともかく、長編の回がダメダメでしたね。『朱色の研究』は二週にわたってだったので期待したんですが、後半が「なぜあの原作がこうなる」ってな感じで当時は観ていて怒り心頭でした。原作ファンとしてはコレを観て『ダリの繭』をわかった気になられては困るってなものです。原作読んで下さいね!

 

 

 

※『朱色の研究』もね!

 

 

 

 

 

 


以下若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


今作は被害者から“ダリ髭”がなくなっていたことなどの複数の不自然な点が綺麗に繋がっていくのが爽快な王道の推理小説ですが、推理部分以上にタイトルの『ダリの繭』にお話の主題が込められています。
被害者の堂条秀一は別宅にフロートカプセルを置いており、そのフロートカプセルの中で遺体となって発見されるんですが、このフロートカプセル云々から個々の“避難場所”へのお話が描かれていきます。
堂条秀一はフロートカプセルで胎内回帰願望を満たしていたらしく、これはサルバドール・ダリが生前「私は母親の子宮内にいたときのことをはっきりと覚えている」と公言していたことに由来するのですが、堂条本人は別宅のフロートカプセルのことを「繭」と呼んでいました。作中ではコクーニング現象と結びつけて語られています。

 

「(略)八十年代の終わり頃にコクーニング現象というものが言われました。コクーニングとは繭作りという英語ですね。この場合の繭とは、家庭を意味したもので、蚕がせっせと繭を作るように、自分を優しく包んでくれる家庭を再構成しようという姿勢を指したのがコクーニング現象。家庭への回帰。自分が愛せるもの、自分に敵意を向けないものだけに囲まれていたい、という態度」

 

上記は火村先生の解説。
まぁ簡単にいうと精神面での避難場所(シェルター)ってことですね。この話題の延長線上で事件関係者たちのそれぞれの「繭」、そして、アリスと火村にとっての「繭」が語られます。

 

アリスにとっての「繭」は小説を書くということ。
アリスが小説を書き始めた日は高校二年生、十七歳の夏で七月九日の蒸し暑い夜。七月七日の夜にしたためた恋文を翌日クラスメイトの女の子に渡すも、その女の子はその日の夜に自殺未遂を起こす。2ヶ月経って学校に復帰したとき、その子が友人に語った自殺未遂の理由は
――生きていてもつまらないと思って。

この出来事でのショックからアリスは本格推理小説という論理世界の虚構に逃げ込むように推理小説を書くことに没頭。そして、いつしか推理小説を書くことを職業に。

・・・何というか、絶妙にエグいトラウマですよね。
このアリスのトラウマ話は以後シリーズの中で結構引っぱっていく事柄なので、ファンには重要です。菩提樹荘の殺人』でやっとこさ振り切れている感じですね。

 

 

一方、火村にとっての「繭」は

「学問にかこつけて人間を狩ることさ」

警察に協力してフィールドワークをしている理由は「俺自身、人を殺したいと真剣に考えたことがあるからだ」と言う火村先生。コレについてはシリーズで一貫して出て来る事柄で、今だに詳細が明らかにされていないシリーズ最大の謎。毎度のことではありますが、読んでいると危なっかしくって苦しそうな火村に読者は胸を痛ませる訳です。

私が今作で特に好きな場面は、アリスのマンションで火村が「何らかの避難場所は誰にとっても必要だ」と言った後に、ローリング・ストーンズの『ギミー・シェルター』を口笛で吹き散らしているのを壁越しに聴きながらアリスがくすりと笑って就寝するところ。

火村にとって、アリスという友人の存在が少しでも気を抜くことが出来る“避難場所”として機能してくれていたら良いな。そうでありますように。といった願望というか、想いが込められている気がして好きですね。今作で仲良しな描写がたくさんあるのもこういった意味合いがあるのかな~とか(^^)。

 

 

このように、アリスのトラウマ話や二人の関係性の深み、ついでにたまにアリスに鳴かないカナリアを預けていくお隣さんの真野さんも登場するので(真野さんはこれ以降度々シリーズに登場する人物)、シリーズの中でも『ダリの繭』は必見なお話です。もちろん本格推理小説としてのロジックも堂条秀一とサルバドール・ダリを関連づけてのお話の纏め方も見事ですし、93年の作品ですが古くささもさほど感じずに読めますので是非是非。

 

 

 


余談ですが、今作の終わり方、アリスと真野さんが今後恋仲になるのかなぁ~とか読んだ当時は思ったものですが、2019年現在でも今のところそのような展開にはなっていないですね・・・(^^;)いつまでも独身万歳!な様子を楽しみたいのでまぁ良いんですが。

 

 

 

ではではまた~

 

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『本と鍵の季節』感想 米澤穂信の新シリーズ(?)開幕~

こんばんは、紫栞です。
今回は米澤穂信さんの『本と鍵の季節』の紹介と感想を少し。

本と鍵の季節 (単行本)

 

久しぶりの青春ミステリ
2018年12月に発売された米澤穂信さんの2年ぶりの新刊ですね。
米澤さんは量産型の作家さんではないので、私個人としては新刊をいつも待ち望んでいる状態なんですが、1ヶ月ほど発売されていることに気づけていませんでした・・・(-_-)
まったく小説の新刊ってのは知らないうちに出ていますよねぇ。そう思うのは私だけでしょうか。特に集英社刊行の文芸は見落としがち。漫画はすぐわかるんですけどね。米澤さんの本が集英社から刊行されるのは追想五断章』以来でしょうか。

 

 

今作は図書委員の高校生男子二人が主役の謎解き青春ミステリで全6編収録の連作短編集。


古典部シリーズ】を始めとして学生が主役の青春日常ミステリで知られる米澤さんですが、

 

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近年は『満願』『王とサーカス』など、社会人が主役の大人向けミステリが多かったので、学生が主役の青春ミステリは久しぶりです。
古典部シリーズ】【小市民シリーズ】が何年も停滞しているので、新しい青春ミステリを書く前にそっちを・・・・・・とか、若干思ってしまったんですが(^^;)、読んでの率直な感想は「めちゃくちゃ面白いじゃないの」と、いったものでした。やはり米澤さんは期待を裏切らない作家さんですね・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


目次
●913
●ロックオンロッカー
●金曜に彼は何をしたのか
●ない本
●昔話を聞かせておくれよ
●友よ知るなかれ

の、6編収録。

古典部シリーズ】が完全な日常謎解きなのに対し、今作は青春ミステリとはいっても、他の学生シリーズと比べると扱う事柄はもっと重めというか、もろに犯罪が絡んでいるものもあるので、『満願』などで興味を持った人にも受け入れられやすい連作短編だと思います。

 

 

『満願』『真実の100メートル手前』『王とサーカス』などの大人向けミステリを経たからこそ、お馴染みの青春ミステリがより洗練されたものになっている印象も受けますね。


私は最初、てっきり他学生シリーズと同じ日常謎解きものだと思っていたので、1話目の「913」は途中からの展開に驚いてしまいました。
公式サイトの米澤さんと青崎有吾さんの対談によると、1話目の「913」を書き上げたときは独立した短編のつもりだったものの、編集さんに登場する男子高校生たちの先を読みたいと言われて連作小説として再構成したのだそうです。編集さんに感謝ですね。

 

 

 

堀川と松倉
ともに高校2年生の図書委員である堀川次郎と松倉詩門の二人が、利用者のほとんどいない放課後の図書室に持ち込まれる謎に挑む様子が描かれる今作。

堀川次郎は童顔で頼まれ事の多い人物。今作の6編は全てこの堀川が「僕」として語り手を務めています。語り手なので容姿などの描写は少なめですね。松倉詩門は背が高く顔もよくて目立つ存在。「快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋のいいやつ」と、語り手の堀川は称しています。かなり大人びた言動をする人物ですね。まぁ堀川もずいぶん大人びているんですが。高校生男子ってもっと馬鹿な言動するもんじゃないかなぁ~とか思うんですけど。進学校だと違うんですかね?

米澤さんの作品で男子二人がメインのものは珍しく感じますが、今作では男子高校生二人の小気味よい掛け合いが楽しいです。


コンビもののミステリで一方が語り手を務めている場合は、もう片方が探偵役で語り手はその探偵の助手的役割をし、活躍を読者に伝えるワトスン役方式を採られることがほとんどですが、この『本と鍵の季節』ではそうではなく(最初はそう見せかけていますが)、堀川と松倉の二人ともがW探偵役を務めています。互いに考えを補い合って真相を導いていく形ですね。

 

「俺にとって、疑うってのは性悪説だ。自分に笑顔で近づいてくる人間はどいつもこいつも嘘つきで、本音を見抜くにはこっちにも策がいると考える。ところがお前は、そうじゃない。性善説と言えば言いすぎだが、相手の言葉の枝葉に嘘はあっても、その根底にはなにか真っ当なものがあると信じている節がある」

 

上記は松倉が堀川の事を称していうセリフ。


それぞれ違ったアプローチが出来るということで、言ってみれば二人三脚で謎を解明していきます。
堀川のこういった部分は本の後半で幅を利かせてきくるもの。序盤は松倉の謎解きがクローズアップされていますが、後半ではいつのまにか堀川の謎解きに主軸が移るという構造ですね。

 

図書委員活動に着眼されている設定もなかなか珍しいですよね。私も高校時代は図書委員だったのですが、図書室自体が小規模な学校だったので、貸し出しの受付作業以外はほとんど司書さんがやってくれていた覚えが。当時は本好きでもなかったし、今作の二人のように書籍の分類に関してとか、装丁とかサイズとか、全然詳しくなかったですね。設定では堀川も松倉も読書家ではないってことなのですが、「詳しすぎでしょあんたら」って感じでした。進学校だと図書委員をやるからにはこれくらいの知識はあって当然なんですかね?
図書委員の知識が遺憾なく発揮されているのは4話目の「ない本」。図書委員の設定がフルに活用されていて今作ならではです。

 

 

 

 

 

 


推理と友情
公式サイトの対談によると、今作では色々なパターンのミステリに挑戦するのが目的だったのだそう。確かに色々な切り口からの謎解きが展開されつつ、そのどれもが綺麗な道筋を経て着地する手腕はいつもながらお見事です。


それにくわえてさらに見事なのは、今作では推理と堀川・松倉の二人の友情が密接に関わっている点です。それぞれのお話を通してお互いを知り、お互いに知り得ないことを知っていく連作ミステリで、この本の中のどのお話が欠けてもこの本は駄目なんだということが最後まで読むとよく分かります。二人の友情自体が大きなミステリになっている感覚ですね。

流れとしては、3話目の「金曜に彼は何をしたのか」のラストでなにやら不穏な空気が漂い始め、終盤の2作「昔話を聞かせておくれよ」「友よ知るなかれ」で友人の思わぬ苦しみが明らかになり・・・てな展開です。

 

米澤さんの青春ミステリは青春のキラキラ感ではなく、青春のやるせない苦さが描かれているものがほとんどですが、今作もやはりかなりのほろ苦さ・ビター感がつきまとっています。終盤の2作で決定的になっていますね。ですが、今作では苦さの先に友情が浮かび上がってくるので、読後は爽やかで穏やかな気分になれます。

 

終盤、二人はお互いの間でどうにも解り合えない部分があることを痛いほど実感します。それを知ったうえで友人関係を続けるのか、続けることが出来るのか。
しかし、そもそも人と人が完全に解り合うことなど不可能だし、友人だからといって解り合う必要なんて端からない。理解ではなく、問われるのは“受け入れるか否か”。さて、二人はどのような答えを出すのか・・・・・・と、まぁコレは読んでのお楽しみで。

 

 


続編
さて、公式サイトの対談で青崎さんからの「今回の次郎と詩門の物語は今後も続いていくんでしょうか?」の質問に対し、米澤さんは「続けてみたいなとは思っています」と返答しています。
なんと嬉しい御言葉!ちょっと含みを持たせた言い方ではありますが・・・(^^;)


いやぁ、もう是非シリーズ化して欲しいところです。今作のラストが綺麗な形で終わっているので、続きを書くのは野暮なのかもって気がしなくもないですが、堀川と松倉の二人はまだまだ読み足りない魅力的なキャラクターなので、個人的には続編を熱望です。編集さんにまた頑張って貰いたいところですね(笑)

 

※2022年11月に続編発売されました!詳しくはこちら↓

 

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とにかく多くの人に読んで欲しいオススメの本ですのでちょっとでも気になった方は是非是非。

 

 

 

 

ではではまた~

 

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『絶対正義』ドラマ 原作小説・あらすじ ネタバレ

こんばんは、紫栞です。
今回は秋吉理香子さんの『絶対正義』をご紹介。

絶対正義

2019年2月から東海テレビ・フジテレビ系で放送予定の連続テレビドラマの原作小説です。

 

あらすじ
「正義こそ、この世で一番大切なものよ」
4人の女たちに届いた一通の招待状。紫色の上品な封筒に、リンドウの花のエンボス加工を施した紙、リンドウの図柄の切手。差出人は高規範子。5年前に殺したはずのあの女――。

高校に入学して間もない頃、和樹・由美子・理穂・麗香の4人は自分たちの仲良しグループに範子を招き入れた。範子は礼儀正しく、一つのルール違反も犯さず、また他者に対しても決してルール違反を許さない。いつでも罪を指摘し、正義を愛していた。
範子はすごい。えらい。誇りだ。
高校時代、範子の「正義」に和樹たち4人は窮地を助けられてきた。
だが、同窓会をきっかけに社会人になってから再開し、また5人で集まるようになると、範子の正義は和樹たち4人に牙をむき始める。それは高校時代から4人の間にそれぞれあった範子への違和感。範子の正義は強烈で異常だった。間違えを一つも許さず、罪をあら探しし、人の揚げ足ばかり取って偉そうに指摘する・・・――あんな女、ほんとはずっと大っ嫌いだった。

範子の「絶対正義」に4人は追い詰められ、殺害し、遺体を隠した。範子は確かに死んでいた。5年経った今、なぜ死んだはずの範子から招待状が届くのか?範子殺害後、順風満帆に過ごしていた4人に混乱と恐怖が襲う――。

 

 

 

 

 

 

 

 

イヤミス
『絶対正義』は2016年に単行本が刊行。ドラマ化をうけてか、今年1月に文庫版が発売されたので、

 

絶対正義 (幻冬舎文庫)

絶対正義 (幻冬舎文庫)

 

 

ドラマ化と秋吉理香子さんの作品だということで気になって読んでみました。

作者の秋吉理香子さんは映画化もされた『暗黒女子』の原作者として有名ですかね。『暗黒女子』については以前にこのブログでも本を紹介しましたが↓

 

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読んだ後に嫌な気分になるミステリ「イヤミス」のジャンルで有名な秋吉理香子さん。

今回も嫌な気分になりつつも読み進めることを辞められない面白さで一気読みでした。
『暗黒女子』同様、この『絶対正義』もド直球のイヤミスです。各章、視点が一人一人順番に描かれる構成や、女友達間での人間関係を描いている点、周りを振り回す強烈な人物が話しの中心になって展開する流れなども同様ですが、『暗黒女子』はお嬢様学校という、ある意味閉鎖空間での特殊な空間や雰囲気を楽しむのに対し、この『絶対正義』では学生生活を経て社会人となってからの女性たちの生活がそれぞれ描かれているので、読者に「私もこんな人と関わってしまったら・・・」と、リアリティのある、思わず想像してしまう恐怖を感じさせるお話になっています。

あと、『暗黒女子』は突き抜けすぎていてもはや嫌とか通り越して爽快感があるラストでしたが、『絶対正義』のラストはひたすら後味が悪いです。ほんと嫌です。イヤミス(-_-)

 

 

ドラマ
ドラマは東海テレビ制作の「オトナの土ドラ」枠での放送です。この枠は通常のドラマ1クールである3ヶ月ではなく、2ヶ月間での放送らしいですね。原作は280ページほどで長編としてはそこまでのボリュームはないので、それくらいの放送期間が丁度良いのかもしれません。

 

キャスト
高規範子山口紗弥加
西山由美子美村里江
理穂 ウイリアム片瀬那奈
今村和樹桜井ユキ
西森麗香田中みな実


公式サイトによると、主演の山口紗弥加さんは前クール『ブラックスキャンダル』に続いて2作目の主演作となっていますね。原作ですと範子は心情描写が一切無い人物ですので、主演となるとドラマでは範子がどのように描かれるのか気になるところ。各話、他キャストの一人一人と順番に対峙していくんでしょうかね?バチバチの女優対決に期待です。

田中みな実さんは今作が初女優デビュー。麗香は芸歴の長い中堅の演技派女優という設定なんですが・・・デビュー作がこの設定の役なんて何だか過酷ですね。こちらも気になるところです。

 

 

 

 

 

 

 


以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正義
高規律子は名前の真ん中の二文字が表すように、みんなの「規範」である人物。頭が良く、服装や髪型は地味、礼儀正しく、規則違反は絶対に犯さない。学生時代は親たちにとっての「理想の子供」、社会人になってからは「尊い人」。
しかし、関わるうちに分かってくるのは、範子の「正義」はどう見ても行き過ぎで、もはやクレーマーのようなものだということ。人間味は欠片も無く、友情も愛情も到底持っているとは思えず、融通は一切利かず、ただただ法律違反者を断罪することに耽っている依存者で異常者。

和樹たち4人は学生時代から範子の異常なほどの「正義」に息苦しさを感じつつも、範子の「正義」の主張に度々助けられて恩を感じ、周りも範子の「正義」を賞賛するので、「間違い無く正しい範子を疎ましく思う私は愚かしい」と思ってしまい、負の感情を周りに吐露することが出来ない。範子を批判すれば自分が批判される。どんなに異常で常識外れなことをしていても、範子の行いは規則・法律の上では「正義」だからです。

正しければ、どんなことをしても良い。
正しければ、全てが許される。
正しいことは、万能なのだ。

よく、「こんな世の中では真面目に規則を守って生活していても馬鹿馬鹿しい目に遭うだけだ」といった意見を抱いたり、実際に開き直って傍若無人に振る舞ったりする人もいますが、何かあって公の場に立たされたとき、やはり圧倒的に強いのは正しい行いをしていた方。
範子は善意から「正義」を遂行しているわけではない。目的は人を糾弾し、断罪して快感を得ること。“それ”には法律が、「正義」が、都合が良い。それだけのこと。

 

範子は法律が「絶対の正義」と位置づけて一連の行動をしていますが、法律が絶対の正義だなんて、現実的には強引すぎる意見です。結局は人が作ったものだから“絶対”なんてある訳ないし、目安ってだけであやふやなもの。と、いうか、「絶対」なんて断言出来るものなどこの世の中では無いに等しい。だからまぁ、あやふやな中で折り合いを付けて生活しているのが社会生活の現実。

 

フリーライターの和樹は本を完成させるために懸命にはたらいている。

主婦の由美子は働かない夫に苦しめられつつも子供を守ろうと奮闘している。

起業家の理穂は不妊治療で思い悩んでいる。

女優の麗香はワケアリの恋人との関係を周りに迷惑がかからぬように気を配りながらひっそりと続けている。

 

4人とも苦悩しつつも善良に生きようと頑張っている無害な人間ですが、範子は無害な人間にも容赦ない。あやふやを許さず、「絶対の正義」を狂気のように押し付ける。追い詰められた4人は善良に生きようとしていたにも関わらず、「正義」の押し付けによって最大の過ちを犯すことになってしまう。
まさに行き逢ってしまった不幸。ホラーの定石。

 

 

 

以下さらにネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

ラスト
招待状を4人に送ったのは範子の娘・律子。ドライブレコーダーの映像を観て4人が犯人だということを知り、「思い出の会」で大勢の人間の前で映像を晒して公開処刑してやろうとワザと思わせぶりな招待状を送って罠を仕掛けたというのが真相。

 

ですがこの娘、4人を憎んでいたわけではなく、むしろ大いに感謝しています。「母を殺してくれてありがとう」と。範子はあのような「正義」しかみていない人間。友人である4人があんなに苦しめられていたのなら、一緒に生活している娘の苦痛は想像するに堅くないところ。排除したがり、日々母に対して死に繋がる小さな罠を仕掛けていたのです(※いわゆるプロバビリティーの犯罪)。結果的に4人が都合良く殺してくれた訳ですが。
こんなことをしたのは母親の復讐の為ではない。では何のためなのか


――4人を断罪したいという欲求が抑えられなくなったから。

 

つまり、母親と同じように人を断罪する快感を得てしまったんですね。範子は死んでも、娘である律子が母と同じ所業を繰り返していく。実は範子も母が存命中は躾の厳しさに反発していたが、母が事故死した後にあんな様になったらしく・・・。

もしかしたら・・・・・・母も律子と同じように、罪を犯さない方法で祖母を排除したのではないか?そしてそのことをきっかけに正義に目覚めたのではないだろうか?
 だとしたら母も、いつか娘に排除される可能性を考えていたかもしれない。しかし、その方法が法を犯すものでさえなければ、わたしに葬り去られても良いと思っていたのでは――


人間というものは正義によって誰かを断罪すると、脳の快楽をつかさどる部位が活性化し、麻薬を摂取した時と似たような快感を得られるらしい。母の場合、その傾向が通常の何倍も強かったのではないか。そしてそれが、きっと律子にも受け継がれているのだ。


律子は断罪に目覚め、次の獲物を探して舌なめずりしているシーンでお話は終わっています。家系で受け継がれていく、連鎖ラスト。個人的にはこういった「世に放たれっぱなしです」ラストは好きではないのですが、こういった終わり方もまたホラーの定石ですね。

 

 

不自然
恐ろしくも面白く読めた今作ですが、読んでいると所々不自然さは感じます。


範子ですが、これ、ワザワザ4人に自分を殺すようにプレッシャーをかけているようにしか思えませんね。しかも脅迫じみた行いをするのも4人同時期で、そんな中で4人と一緒に車に乗って山に行く・・・。今日この日に皆で私を殺してくれと言わんばかりで、行動のしかたがあまりに馬鹿すぎるような(^^;)
人間らしい感情が欠落していたから、4人の自分への嫌悪感がわからなかったんですかね?それとも破滅願望でもあったんでしょうか。娘を覚醒させる為なんていったらファンタジック過ぎますしねぇ・・・。

 

範子が六法全書丸暗記しているわりには専業主婦なのも疑問。法律家にでもなりゃいいのに。まぁこんなに融通が利かない人間には無理か。でもそれだと、こんなでよく家庭生活が出来たなとも思いますね。結末を読む前から「こんなで旦那や娘、まともでいられるのかい?」と疑問でした。娘はラストでやっぱり苦痛を感じていたことが明かされていますが、夫はどう思っていたのか・・・分からずじまいです。

 

そもそも、こんな融通が利かない人間が女友達の輪に溶け込み続けていること、周りに受け入れられていることも不自然だと思います。実際はどんな人間も毒を吐きたいものだし、いくら正しいとはいえ、一々法律を持ち出してベラベラ言い出すような面倒な人、皆距離をおいて疎外するのが自然かと。

 

個人的に一番ドン引きしたのは、範子が理穂に卵子提供を持ち出すところですね。なんでこの行為が「正義」なのかというと、アメリカでは卵子精子の提供、代理母出産が広く認められていて法も整備されている。つまり、子供を持つ権利が法的に認められている。であれば、不妊である理穂は夫の権利を侵害している」と、いうのが言い分・・・・・・。
飛躍しすぎだし、もはや正義とか関係なくただのお前の持論じゃないかって感じですが(^_^;)
しかし、嫌いな女と亭主の子供を自分がお腹を痛めて産む・・・・・・考えただけでゾッとしますね。一番のホラーでした。


そんなこんなで、ミステリというよりはホラーを読んでいる感覚でした。(ハッキリ言って、娘が招待状の送り主なのは予想がつきますからね・・・)一気読み必須の作品ですので、ホラー映画を観る要領で夜長に読んでゾッとしてみてはどうでしょう。ドラマで気になった人も是非是非。

 

絶対正義 (幻冬舎文庫)

絶対正義 (幻冬舎文庫)

 

 

 

暗黒女子

暗黒女子

 

 


ではではまた~