夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『母性』湊かなえ あらすじ・ネタバレ感想 ”作家を辞めてもいい”渾身の小説!

こんばんは、紫栞です。

今回は湊かなえさんの『母性』をご紹介。

母性(新潮文庫)

 

あらすじ

県営住宅の中庭で、市内の県立高校に通う女子生徒(17)が倒れているのを、母親が見つけ、警察に通報した。4階にある自宅から転落したとして、警察は自殺と事故の両方で原因を詳しく調べている。

母親は「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて信じられません」と言葉を詰まらせた。

 

“私は愛能う限り、娘を大切に育ててきました”――そうやって始まる母の手記と、漆黒の闇の中での娘の回想。

十一年前の台風の日、「美しい家」での一家三人での生活はある悲劇によって唐突に終わり、その悲劇によって母娘はすれ違い、捩れて更なる悲劇を生む。これは事故か、自殺か、それとも――。

 

 

 

 

 

 

渾身の書き下ろし

『母性』は2012年に刊行された長編小説。2022年秋にこの小説を原作とした映画が公開予定です。

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当時、単行本が発売されてすぐに買って読んだ記憶。あの頃は湊かなえさんの新作が発表されればすぐ購入していたんですよね。あんまりバンバン本出されるようになったのでそのうち追えなくなっちゃったんですけど・・・(^_^;)十年目にしての映画化で久しぶりに再読してみた次第です。

 

この本は作者の湊かなえさんが「これが書けたら、作家を辞めてもいい。その思いを込めたて書き上げました」という、渾身の書き下ろし小説。

湊さんは母娘の関係をよく作品に取り入れる作家さんなのですが、

 

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この『母性』では超直球でそれがテーマで書かれているとあって、作者の本領が発揮されまくりのシンプルな長編小説となっております。

 

 

 

 

母と娘

湊さんはこの本を書こうと思った経緯について、

「永遠に愛され、庇護される立場(娘)でありたい母親と、その母親から愛されたい娘の物語です。毒親でもなく、虐待でもなく、だけど大切なものが欠けた関係。それを、自分が母親と娘の両方の気持ちを持っているあいだに書きたいと、このテーマに挑みました」

と、映画化決定の際にコメントされています。

書き上げてから十年の月日が経ち、「今はもうどちらの気持ちも持っていません」とのこと。

母親であり娘である意識が混在しているほんのわずかな期間にのみ書けた小説ということですね。

 

この本は最初に女子高生が自宅の庭で倒れていたのが発見されたという新聞記事が出されており、各章、最初の新聞記事に疑問を持つ学校教員が視点の【母性について】、神父さま相手に文章を書いている母親(ルリ子)視点の【母の手記】、暗闇の中で今までの出来事を思い出している娘(清佳)視点の【娘の回想】という順番で展開していきます。※名前に関し、作中では終盤まで読者にわからないように書かれています。

 

学校教員による視点の今現在の時間軸である【母性について】は各章ほんの少し。ほぼ【母の手記】と【娘の回想】によって物語は構成されています。ルリ子の手記は結婚して娘を産むところから始まっており、【娘の回想】と並行して手記の中で回想しています。

母親からの視点の後に娘の視点が書かれることで、同じ出来事がまったく違う印象になる訳で、「人は、自分が見たいようにしか物事を見ていない」というのが浮き彫りになる空恐ろしい構成。

 

湊さんは“イヤミスの女王”で有名で、ミステリ要素が強い作品を書くのが特徴なのですが、今作はミステリかどうかといわれると結構微妙。トリックがあって云々というお話ではないですからね。

しかしながら、母と娘の謎・不思議を追求するというミステリ小説ということではあるのかとは思います。

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母性について

“永遠に愛され、庇護される立場(娘)でありたい母親と、その母親から愛されたい娘の物語

と、作者が仰っているように、この小説は親になりきれない未熟な母と、得られようもないものを求める娘、二人の女性の苦しいすれ違いの物語。

 

ルリ子は母親(清佳にとっては祖母)にべったりな人生を送ってきた女性。いつでも自分に無償の愛を与えてくれる母を盲目的に慕い、「どうすれば母が喜んでくれるか、褒めてもらえるか」を第一の行動理由にして生きてきた。母を尊ぶをこえてもはや宗教的に崇めているといっても過言ではない。

そんなルリ子なので、結婚相手も母のウケが良かった田所とあれよあれよと流れるままにしてしまう。清佳を出産するが、子育ての第一方針は“母が喜んでくれるような孫に育てること”。それで「貴方の育て方が良いのね」と褒めてもらいたい訳で。それでいて可愛がられている清佳を見て「母の愛はいつも私が独占していたのに・・・」と嫉妬する始末である。

 

この時点で子供を育てるには何かが致命的に足りないんですけれども。それでも母が生きていたうちは表面上親子として問題なく取り繕えていました。

高台にある洋風の家、庭に植えられた色とりどりの花、はしゃぐ娘、自分と一緒にリルケ詩集を暗唱しながら絵を描く夫・・・これぞ「美しい家」

って、端から聞いているとちょっと寒々しいというか、ハッキリ言って気持ち悪い家なのですが(^_^;)。これはルリ子の手記によるものなので、ちょっと変な方向に美化して盛ってあるらしい。【娘の回想】の方でそれらが少し明らかになっています。

 

しかし、台風の日に起こった土砂崩れによって母が命を落し、「美しい家」もなくなって田所の実家で暮らすこととなり状況は一変する。

 

田所の家は農家。お嬢さん育ちだったルリ子は義母に嫌みを言われながら無償でこき使われる日々になんとか耐えるなかで鬱憤が溜まっていき、この不幸はすべて娘の清佳のせいではないかと思い込むようになる。

台風の日の隠された真相が遺恨となり、度重なるタイミングの悪さやすれ違いがいやらがあってなのはもちろんですが、こんな思考になってしまう最大の原因は根本的に娘への“無償の愛”をルリ子が持てていないためです。

 

表面上は親として問題のないルリ子ですが、娘の清佳にはやはり自分が母に無条件で愛されている訳ではないというのが伝わってしまう訳で。いつもルリ子の顔色をうかがい、愛されよう、母を守ろうと奮闘するのですが、ルリ子から見ると清佳のそんな行動は“娘として可愛げのない姿”に見える。そうさせているのは自分であるにもかかわらず、です。

 

ルリ子は娘を愛そう愛そうと努めているのですが、「愛そう」と意識している時点でそれはもう“無償の愛”ではない。

「愛能う限り、娘を大切に育ててきました」それはなんて胡散臭い言葉であることか。

 

ルリ子に清佳が求める母性はない。“ない”ものを求めても不幸になるだけ。清佳はどん詰まりに追い込まれていくのです。

 

 

 

 

 

家族のリアル

回想の最後、父親の浮気を暴き、さらに祖母の死の真相を知らされた清佳は母に問い質す。その結果、ルリ子に首を絞められそうになった清佳は母の手を汚してはいけないと思い、自ら首を吊って命を絶とうとする。

 

この時点で、物語の最初に提示されていた新聞記事の内容は清佳の事ではないのだということが読者に明らかとなる。新聞記事の女子高生は「4階から飛び降りた」ということでしたからね。庭の木で首を吊ろうとした清佳とはまた別の子なのですよ。

 

そして、新聞記者を読んで「愛能う限り」という言葉に疑問を持った学校教員、各章の冒頭に挿入されている【母性について】の部分の語り手が成長した清佳であることが判明する。トリックというほどのものではないですが、ちょっとした読者への引っ掛けですね。ルリ子の手記が神父さま相手になっているのも、まるで刑務所で書いているかのように思わせるミスリードです。

 

清佳が高校生の時に自殺未遂をして一命を取り留めた後、ルリ子との関係はとりあえず改善された。浮気した挙げ句、清佳が自殺未遂をしたことを知ってトンズラこいていた父は十二年経ってひょっこり戻ってきて、ルリ子に許してもらってまた一緒に住んでいる。施設に入った義母も頼れるのはもはやルリ子だけだということを悟り、優しく接するようになった。清佳は教員になり、高校時代に付き合っていた彼と結婚。今度出産を控えている――。

 

と、ま、何やら自殺未遂後にすべてが丸く収まったかのように描かれていますが、現在でもルリ子は母性を持たないままだし、あいかわらず「愛能う限り」とかのたまっているし、結局清佳が家や母と折り合いをつけられるようになったのは家を出たからではないかという気がする。そもそも清佳は自分のこと殺そうとした(と、清佳は思っている)母と関係修復なんて出来るのか?とか・・・。

ハッピーエンドとは言い難い、モヤモヤ感が残るラストとなっている。

 

自殺未遂の直前、清佳はルリ子に首を絞められそうになったと認識していますが、ルリ子は抱きしめようとしたと認識しているという矛盾点があるのですが、本当はどっちだったのかわからずじまいですしね。

最後が「ページ数足りないのか?」と言わんばかりの急速なまとめ方なので余計に釈然としない。(ま、この本は書き下ろしなんですけども)

 

しかし、これが家族のリアルなのかなと思います。歪んでいるのかもしれないけれども、「家族」として取り繕って形を成していく。桜庭一樹さんの『少女七竈と七人の可哀想な大人』でもありましたが、

 

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母娘というのは許す許さないの長くて終わらない旅なのかなぁと。

 

 

最初十年前に読んだ時、“褒められたい”という自分の願望ばかりが先に来る幼稚なルリ子に終始腹が立ってしょうがなかったのですが、今改めて読み直してみると清佳の回想にも疑わしいところが割とある。

結局二人とも自分の都合の良いようにしか見ていないってことなのでしょうね。なんだかんだいっても、ルリ子はルリ子で農家の嫁として確りと努めているのは間違いないし。

 

それにしても、ルリ子の「イヤよ、イヤ。私はお母さんを助けたいの。子どもなんてまた産めるじゃない」って言葉にはやはり酷い嫌悪感がありますが。

 

後、父親の田所もかなり酷かったなぁと。妻に家も義母も押し付けて浮気相手と逃げて、捨てられてにっちもさっちもいかなくなったんで十二年後に帰って来ましたって・・・なにそれ?

半端に良い部分もある父親で夫だったんで、なにやら余計に腹が立つ。これもまたリアルな家族の歪さということなのか・・・?

 

 

 

けして読んで気分が良くなる物語ではないのですが、湊かなえさんの筆力は存分に味わえますし、読んだ人それぞれに解釈して愉しめる小説だと思いますので、映画化などで気になった方は是非。

 

 

ではではまた~

 

 

 

 

『空の境界』順番・解説 わからない?難しい?盛大にこじらせてる〇〇小説

こんばんは、紫栞です。

今回は、奈須きのこさんの空の境界(からのきょうかい)について簡単にご紹介。

空の境界(上) (講談社文庫)

 

伝奇小説

空の境界』は奈須きのこさんによる長編伝奇小説。

元は1998年~1999年にかけて奈須きのこさんのホームページ「竹箒」に分割掲載されたものを、長編小説として2001年にコミック・マーケットで売り出された自費出版の同人小説。その後、2004年に講談社から一般書籍として刊行されたという当時としては異例の出版経緯を持つ小説作品で、劇場アニメ公開、コミカライズもされた伝説的な人気作です。

 

 

 

 

昏睡状態から目覚めた末に直死の魔眼という能力を得た少女・両儀式が奇怪な事件と対峙していく伝奇小説である今作。

 

かつて文芸雑誌「ファウスト」で編集者である太田克史さんが新伝綺という文言を提唱したとかで、商業本の裏にある説明には「“新伝綺”ムーブメントの到来を告げる傑作中の傑作」「“新伝綺”ムーブメントの起点にして頂点」「新伝綺ムーブメントを打ち立てた歴史的傑作」などと書かれていますが、浅学なもので「伝奇小説」と「新伝綺小説」の違いもよくわからないし、そもそも「伝奇小説」の定義もよくわかっていない私。

 

読んだきっかけは数年前にWOWOWでアニメが一挙無料放送されていた時に偶々チラ見して、本屋で講談社ノベルスから本が出ていることを知ってでした。私は京極夏彦ファンなもんで、ちょっと気になっただけのものでも講談社ノベルスで刊行されているのを見ると軽率に読みたくなってしまうんですよね。

 

作者の奈須さんも講談社ノベルスが大好きなんだそうで、自費出版した同人小説版はオマージュとして講談社ノベルスそっくりの装丁のものだったのだとか。その後本当に講談社ノベルスで刊行されたってんですから、凄い話ですよねぇ。

 

講談社ノベルスで上下2巻(もちろん段組)なのでかなりボリュームがある物語なのですが、伝奇小説というジャンルではあるものの、SFやミステリの要素もあって伝奇小説慣れしていない私でも面白く読めました。今回この記事を書くために再読したんですけど、再読すればするほど面白さが増す作品だと思います。

 

奈須きのこさんはノベルゲームの作者として有名な方。奈須さんによる月姫Fateシリーズ』などのノベルゲームとこの『空の境界』は世界線を同じくしているということで、これら他作との繋がりを楽しむのもまた醍醐味なようなのですが、私は本当にゲームをやらない人間でそっち方面はまったくの無知ですので、ここでは『空の境界』という作品にのみスポットを当てて紹介していきます。

 

 

 

 

 

順番

空の境界』は小説本としては講談社ノベルスから刊行された上下巻2冊

 

 

(※文庫版だと3冊)

 

 

 

と、後に講談社の子会社である星海社から刊行された未来福音

 

 

 

未来福音」の劇場アニメでの来場者特典として配布された「終末録音」も含めると、本としては3冊(文庫版なら4冊)、話数というか章の数でいうなら全部で10個あります。来場者特典として配布だった「終末録音」は、2018年に20周年記念版として発売された豪華版の単行本にのみ収録されています。

 

 

 

 

 

正当な読む順番は以下の通り↓

 

第一章「俯瞰風景」

第二章「殺人考察(前)」

第三章「痛覚残留」

第四章「伽藍の洞」

第五章「矛盾螺旋

第六章「忘却録音

第七章「殺人考察(後)」

終章 「空の境界

未来福音

終末録音

 

 

劇場アニメですと終章までは小説と同じく8作品この通りの章の順番で公開されているのですが、「未来福音」の前に未来福音extre chorus」という原作小説ではなく漫画版の方の小話集的なものが1本公開されています。

 

 

なので、来場者特典の「終末録音」はアニメ化していないものの、劇場アニメも全部で10作品ですね。

 

タイトルのせいでどちらを先に観ればいいのかわからなくなるかと思いますが、公開された順で「終章」の後は「未来福音extre chorus」「未来福音」の順で観るのがオススメです。話としてはどちらが先でも問題は無いのですが、未来福音」を最後に観た方がより感慨深くなりますので・・・。

 

劇場アニメは概ね原作に忠実なものとなっていますが、人形師で魔術師の蒼崎橙子のキャラクターデザインが原作とアニメでは大きく異なります(性格など中身は同じ)。最初にアニメ版をチラ見していたせいか、個人的にはアニメ版のデザインの方が好み。

 

 

 

 

 

時系列

さて、読む順番としては上記した通りで、最初は絶対にこの順番で読んで欲しいのはもちろんなのですが、『空の境界』は時系列が各章で入れ替えられていまして、これが読者やアニメ視聴者にとってはハッキリ言って非常にわかりにくい。

 

なので、自分用も兼ねて時系列をまとめてみます

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1995年

3月 

黒桐幹也が『両儀式』と出会う。

4月 

高校入学。高校で幹也は式と再会する。

9月 

観布子市内で猟奇連続殺人事件が発生。「殺人考察(前)」

 

1996年

2月 

式が事故により昏睡状態に。

 

 

1998年

3月 

幹也、高校を卒業。

4月 

幹也、大学に入学。

5月 

幹也、人形師の蒼崎橙子と知り合い、大学を辞めて橙子の事務所で働くことに。

 

6月 

式が昏睡から目覚める。「伽藍の洞」

7月 

無痛病で物体を曲げる能力を持つ浅上藤乃と式が対決。「痛覚残留」

8月 

幹也、未来視の少女・瀬尾静音と出会う。式、未来視の爆弾魔に命を狙われる。未来福音

9月 

霊体を操る余命僅かの入院患者・巫条霧絵と式が対決。「俯瞰風景」

11月

式、臙条巴と知り合い、小川マンションで荒耶宗蓮と対決。矛盾螺旋

 

 

1999年

1月 

式、令園女学院に潜入し事件調査。統一言語師・玄霧皐月と対決。忘却録音

2月 

式が幹也の前から姿を消す。それと同時に二年前の連続猟奇殺人事件が再開される。「殺人考察(後)」

3月 

雪降る夜、幹也は四年前と同じ場所で『両儀式』と再会する。空の境界

 

 

2010年

夏 未来福音 序」

 

 

 

つまり、時系列で各章を並べると・・・

 

第二章「殺人考察(前)」

第四章「伽藍の洞」

第三章「痛覚残留」

未来福音

第一章「俯瞰風景」

第五章「矛盾螺旋

第六章「忘却録音

第七章「殺人考察(後)」

終章「空の境界

未来福音 序」

 

ですね。

 

いったん物語が終了した後に書き下ろされた『未来福音』は本の中で2編に分かれていまして、未来福音」は1998年8月の出来事、「未来福音 序」は時間が一気に飛んで2010年の出来事です。“序”の方が後に起こった出来事ってことで、これまたややこしい。

 

だいたい、時系列を入れ替えることがこの物語にとってプラスに作用しているのかどうかは微妙なところ。個人的には解りにくくなっているだけでは?って気もする。

第一章の「俯瞰風景」とか、人物や状況説明もほぼされないからこれだけ読んでも(観ても)チンプンカンプンだし。「俯瞰風景」は式が男性だと思わせるような叙述トリック的な仕掛けが施されていますが、表紙絵や挿絵で女性だってまるわかりだし。

 

あと、来場者特典だった「終末録音」に関しては、実は私、読めていないので詳しくはわからないんですよね・・・(最近まで「終末録音」という書き下ろしがあることも知らなかったし^_^;)。今度20周年記念版を買って読みたいなぁと思っております。

 

 

 

 

純愛小説

空の境界』は両儀式黒桐幹也荒耶宗蓮の三人の物語。

簡単にいうと、魔術師・荒耶宗蓮が“ある目的”のため、「両義式」という“器”を手に入れるために自らが素質を見抜いた人物たちを刺客に仕立て上げ、式にちょっかいを出してくるというもの。

第五章の「矛盾螺旋」で荒耶宗蓮とは決着がつくのですが、その後に荒耶宗蓮の置き土産的なものの後始末がある。そんな一連の騒動に式と幹也、二人の物語が絡むといった具合ですね。

 

作者の奈須きのこさんは影響を受けた作家の一人として「京極夏彦」を挙げているのですが(それもあって京極夏彦ファンの私としては取っきやすく読みやすい)、『空の境界』は文章も内容も京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズ】に強く影響を受けているのが見て取れる。

 

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特に荒耶宗蓮関連の話は魍魎の匣とテーマが似通っていますかね。“境界”が云々という話も。『魍魎の匣』は“不思議なことなど何もない”話ですけど。

 

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伝奇小説部分や作中で語られている理屈など、深読みするとキリがない物語なのですが、私個人としてはこの本はもう式と幹也の純愛小説として読んでいました。

 

殺人衝動だとか、グロい猟奇殺人だとか、別人格だ、虚無だ、何だと、物騒で小難しいことをポエミーに思い詰めているんですけども、実際は単純に恋しているだけ。

 

特殊すぎる少女が、普通すぎて逆に普通じゃない少年に恋をした。今までの自分を見失ってしまいそうな想いに恐れをなし、遠ざけようとするのだけれども相手も熱烈で上手くいかず。殺したいほど好きなんだけれども、好きだから殺せない。好きで好きでたまらない!どうしたらいいの!?と、一人右往左往している、盛大にこじらせている面倒くさい純愛ラブストーリーが『空の境界』なんだ、と。

ま、しかし、そこが良い。

 

 

 

伝奇小説だったり、ミステリだったり、グロテスクだったり、ラブストーリーだったりと、人によって色々な愉しみかたが出来る作品ですので、小説もアニメも漫画も気になったなら是非。

 

 

 

 

 

 

 

ではではまた~

『マスカレード・ゲーム』シリーズ4作目 これで完結?あらすじ・感想

こんばんは、紫栞です。

今回は東野圭吾さんの『マスカレード・ゲーム』について紹介と感想を少し。

マスカレード・ゲーム

 

あらすじ

「ホテル・コルテシア東京」での未遂事件から数年。

捜査一課の係長となった新田浩介は、入江悠人という青年が刺殺された事件の捜査をしていた。入江は十七歳のときに暴行によって人を死なせた過去を持っており、その事件で亡くなった被害者の母親・神谷良美が容疑者候補としてあがるが、神谷には完璧なアリバイがあり、捜査は行き詰まる。

そんな最中、都内で起こった別の殺人事件二件が同一犯である可能性が浮上。三つの殺人事件の共通点は、ナイフで正面から刺すという殺害方法。そして、どの被害者も過去に人を死なせる罪を犯していながらいずれも軽罰ですんでいること。

三つの班合同で捜査を進めてみると、各事件の容疑者である犯罪被害者遺族たちがそろいもそろってクリスマスに「ホテル・コルテシア東京」に宿泊予定であることが明らかに。事件を未然に防ぐべく、新田はまたもホテルマンとして潜入捜査をすることになるが――。

 

 

 

 

 

 

シリーズ4作目

『マスカレード・ゲーム』は2022年4月に刊行された長編小説で【マスカレードシリーズ】の4作目。

 

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刑事がホテルマンに扮して潜入捜査するという、高級ホテルを舞台に展開されるミステリシリーズであるこちら。今までに長編が2冊、短編集が1冊出ている訳ですが、

 

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正直、刑事がホテルに潜入捜査という特殊すぎる設定のため、こんなにシリーズとして続くとは思っていなかった。舞台もずっと同じコルテシア東京だし。

 

今回は三つの殺人事件の共通点から、仇討ち殺人をチームで行なっている、つまり、自分が殺したい相手を他のメンバーに殺してもらって完璧なアリバイを確保し、自分も他の人の標的を代わりに殺すという方法で犯行を重ねているのでは?と、警察が推測した矢先に容疑者たちが皆そろいもそろって同じ日に同じホテルに宿泊予約をしていることが判明。

 

奴らいったい何をする気なんだ!?会議?それとも新たな犯行?他の宿泊客の中にターゲットがいる?それとも4人目の仲間がいる?これは見張らないと!!

 

って、ことで、またもやコルテシア東京に捜査本部を設置。潜入捜査することに。

 

作中では“ローテーション殺人”と言っていますが、新田たちが推測しているのはいわば交換殺人のバリエーション版。

「交換殺人ものは前やったじゃん」とシリーズ読者としては思ってしまうところなので序盤からちょっとテンションが下がってしまいますが、そこは東野圭吾作品で【マスカレードシリーズ】ですから、ちゃんとそれだけではない意外な真相がラストには用意されているので御安心を。

 

前2作の長編では殺人事件捜査と並行してホテルならではの小事件が描かれていくという短編的要素が盛込まれていましたが、今作はシンプルな構成になっていてホテルの宿泊客が起す日常ミステリなどはなし。そっち方面はネタ切れということなのかもしれない・・・とか思ってしまったり。ま、同じホテルでばかり事件が起きそうになるってのがそもそも無理のある話ではありますからね(^_^;)。

 

新田の他に山岸能勢本宮、稲垣とシリーズお馴染みのメンバーが勢揃いなのがやはり読んでいて嬉しいところ。

本の帯には「シリーズ総決算」とあるのですが・・・“総決算”ってなんともボンヤリした謳い文句だなぁ・・・。

 

 

 

 

成長

シリーズ4作目となる今作ですが、前作の長編『マスカレード・ナイト』から数年が経った設定になっています。これが何年経っているのかが正確にはわからないままでして。作中で「何年も前のことだ」とか「なつかしい」とか言っているので結構経っているのは確かみたいですが。能勢さんも退職間近になっていますしね。

 

とにかく、シリーズ1作目では生意気でイキった若手刑事だった新田も四十代となり、警部に出世して捜査一課の係長に。1作目での荒ぶりはどこへやら。すっかり落ち着いた大人の男になっています。

 

今回はホテルでの潜入捜査をかき回す役回りとして、頭は切れるが強引で違法捜査も辞さない女警部・が新キャラクターとして登場しているのですが、ホテルに迷惑が掛かりかねない梓の遣り方に反発する新田の言動もうホテルマンのソレ。ホテルマンに扮することを甘く見ている梓警部はまるで1作目での新田の姿を見ているようであり、ホテルマンとしての(ホテルマンではないのだけれども)新田の成長を強く感じることが出来る。それにしても、ホテル内で制服着てソファでふんぞり返ったり仁王立ちしたりする梓警部はどうかしすぎだろうと思いますが。客商売なめてるでしょ。

 

しかし、梓警部がいるおかげでサブの謎解きがなくっても退屈せずに読み進められる。最終的には梓警部には梓警部なりの矜持があるのだとわかるのですが。でもちょっと人物設定が漫画っぽいというか、定型的過ぎる気がしましたかね。

 

 

ガリレオシリーズ】とかもそうですけど、

 

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作者は最近シリーズものの時間をリアルと差が無いように進めようとしているのですかね。私は東野圭吾作品をすべて読んでいる訳ではないのでわからないんですけども。時代と連動したストーリーを書きたいということなのか。主人公の成長を書きたいということなのか。

 

私個人としては、シリーズものの主人公がどんどん年取って丸くなっちゃうのってちょっと淋しいなぁと思ってしまうのですが。新田は部下にも捜査協力してくれているホテル側にもちゃんと気配りが出来る大人になっていて好ましいですけどね。1作目のときは「若いから許せる」みたいな人物像だった・・・。

 

 

前作のラストで栄転してロサンゼルスへと旅立っていった山岸尚美ですが、三度の潜入捜査で慣れている人間がいた方が良いだろうと一時的に東京に呼び戻されて登場。

正直、この登場のさせかたは結構無理がありましたかね。何年も経っているということなら少し前に異動で戻ってきていたってことで良かったんじゃって気がしますが・・・満を持して登場!感を出したかったのだろうか。

 

山岸さんは相変わらず真面目で有能なフロントクラークですが、ホテル従業員としてのお客様至上主義と事件を防ぐための警察の捜査との間で板挟みに。怒ったかと思ったらすぐに態度を軟化させてみせるなど、割とブレブレなところが気になる。ま、でも、山岸さんって毎度そうだったかも(^_^;)。

 

新田と山岸さんの関係性ですが、やはり仕事上の付き合い以上に発展させる気はなさそうですね。二人とも独身のままではあるみたいですが。

じゃあ何で1作目のラストに期待させる描写入れたんだって感じですけど。シリーズとして続けるにはくっつけると支障があるのですかね、やはり。

 

 

 

 

 

 

 

 

シリーズ完結?

事件の真相ですが、意外は意外なんですけど、東野圭吾作品だとその“意外性”がもはや想像通りなのでファンには驚きはないかなと思います。

 

前作もそうでしたが、詳細を犯人の独白で済ませるのは手抜き感がどうしても漂う。

「罪」「罰」「償い」といったものを事件のテーマにしているのなら、もっと踏み込んだ描写が欲しいところですね。

 

上記したように、単行本の帯に「シリーズ総決算」とある訳ですが、今作のラストはシリーズ完結を匂わせるようなものになっています。

能勢さんも退職だというし、登場人物達も皆結構な歳になったし、これで終わりなのかな~?なのですが、あくまで“匂わせ”に留まっているので、続けようと思えば続けられるように余地があるようにしている?

映像化もされているシリーズだしなぁ。大人の事情が出たらまた出来るようにしているのかと勘ぐってしまう。

 

今作のラストで新田の立場が変わっているので、続くとしたら今度は今までの警察の潜入捜査というのとはまた違うものになるでしょうから、それはそれで愉しそうですけどね。

 

今作も映画化されるかもですし、今後の動きに注目したいと思います。

 

シリーズファンや映画で好きになった人は是非。

 

 

 

 

ではではまた~

『金田一37歳の事件簿』12巻 ネタバレ・感想 恐怖!乱歩展での連続殺人

こんばんは、紫栞です。

今回は、金田一37歳の事件簿』12巻について感想を少し。

金田一37歳の事件簿(12) (イブニングコミックス)

 

コミックスの帯に連ドラ情報と、

 

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原作者の天樹征丸さんと歴代担当編集者たちによる金田一シリーズ連載30周年記念トークイベント『編集たちの事件簿』2022年5月21日14時からあるらしいのですが、帯の折り返し部分にQRコードがついていて、そこからとんだ人だけトークイベントのオンライン視聴が完全無料になるらしいです。リアルタイム配信とのことですが・・・アーカイブとかあるのかな・・・。

 

12巻は1冊丸々前巻

 

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からの続きである『殺人二十面相』収録。

 

あらすじ

池袋ハロウィンに合わせてミクサライブで開催される「江戸川乱歩展」のイベント運営を請け負うことになった音羽ブラックPR社の金田一一と葉山まりん。

会場でイベント責任者と打ち合わせをした際、金田一怪人二十面相の人形が“殺人二十面相”と書かれたカードを持っているのを発見。嫌な予感を感じつつもマスコミ関係者を集めての本番前の内覧会を行なうが、皆で案内通りに展示を見ていた最中にメンバーの一人が『赤い部屋』のアトラクションの中で殺害される事件が発生。死体がくわえていたカードには“殺人二十面相”の文字。その裏には「出入り口は閉ざされた 無理に出ようとすれば全員爆死する」と書かれていた。

出るに出られず、ビルに閉じこめられることとなってしまった内覧会メンバーたちは脱出方法を探るが、さらに第二第三の事件が発生して――。

 

 

 

 

以下、ネタバレ感想と考察~

 

 

 

 

 

 

 

前巻で

「東京は安心感があるよ・・・!」

「東京なら携帯の電波が繋がらないこともないし」

「突然の嵐で船が出なくて島に閉じこめられることもないし」

と、一ちゃんが言っていましたが、やはり東京も平気ではなく、携帯を通じなくさせる装置オンにされて圏外になるし、出入り口に爆弾仕掛けたとかで閉じ込められることとなる。

 

東京のど真ん中だけれども今回はクローズド・サークルもの。皆で一緒に乱歩展のアトラクションを見て廻っているなかで、一人ずつ消えていって他殺体で発見されていくという、お化け屋敷ツアー的なホラー展開が今までにない感じで面白い。このシリーズの長編だと数日かけての話が主なので、短時間の間に立て続けに三人殺されるというスピード感も珍しいですね。

江戸川乱歩展」の会場が舞台ってことで、江戸川乱歩の作品にまつわるお話も多いです。ミステリ評論家の青鬼蒼作先生が解説要員ですね。青鬼蒼作って名前、如何にも「乱歩が好きです!」って名前だなぁ。

 

提示されている謎は主に二つで、第一の事件の『赤い部屋』のアトラクションの一室に突如死体が出現したことと、第二の事件での蔵のアトラクション内での密室殺人

 

死体を突如出現させた謎に関しては、双眼鏡を覗いて云々といったアトラクションの性質を利用したものだろうと思われる。あの短時間で暗闇の中殺害して椅子に座らしてカード口にくわえさせて・・・というのは無理があるので、死体は最初からあの部屋の中にあったんのだろうと思うのですが・・・どうなんだろう?

ホチキスでとめられていた両面テープの切れ端が発見されているので、なんというかこう、双眼鏡を覗く部分にはっつけてあったとか?

仕事放棄した挙げ句に殺されることになってしまった船橋さんはこのトリックの“タネ”を見てしまったために殺されたんだと思われ。責任者なんですから、職務放棄はやめましょうね。だいたい、単独行動の方が絶対危ないのになんでバラバラになるかな・・・(-_-)。

 

“赤い部屋”っていわれると、この漫画シリーズのファンとしては異人館ホテル殺人事件』連想しちゃいますね。

 

 

あれも乱歩作品からの着想だったのかな?

 

 

蔵(アトラクション)での密室殺人ですが、裏が真っ黒く塗られたタペストリーが落ちていたってことなので、扉と扉の隙間にタペストリー持って犯人が隠れてったってことでしょうか。それだとまるっきり忍者みたいですけど。

 

そうなると、怪しいのはウェブデザイナー億野冴月とキャスターの魚森流菜子の二人。

 

魚森さんだと蔵で合流した時の「葉山さんたち五人はずっと一緒だったんですか?」という台詞が怪しいし、億野さんは黄金仮面が云々といった台詞と度々皆を誘導するような発言をしているのが怪しい。

 

 

やっぱりというかなんというか、この巻では事件はまだまだ終わらない。金田一「ジッチャンの名にかけて・・・!」と言ったところで次巻に続く!です。

 

動機面はこの巻の内容ではまったく見当がつかない。正体不明のアーティスト・亜良木壕も確実に犯行に絡んでいるのでしょうが、こちらもまだわかりませんね。諸々の事を考えると、次の巻もほぼ丸々この事件に使うのではないかと思います。

イブニング本誌では今“少年”の方の話を連載中らしいので、そちらとの兼ね合いもありますかね。次巻の収録がいかようになるか気になるところです。もちろん事件の真相も。

 

 

次巻、金田一37歳の事件簿』13巻は2022年6月発売予定とのこと。楽しみに待ちたいと思います。

 

※出ました!詳細はこちら↓

 

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ではではまた~

 

 

『鳩の撃退法』映画 「難しい?」原作小説との違いはいかに!?

こんばんは、紫栞です。

映画『鳩の撃退法』を観たので、感想を少し。

鳩の撃退法

 

原作の小説については前に当ブログで紹介しましたので、あらすじなど詳しくはこちら↓

 

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原作小説が大変面白かったので映画も観に行きたいと思っていたのですが、結局劇場には行けずじまいでしたのでレンタルにて鑑賞。

 

原作は上下巻にわかれて結構なボリュームがあり、なおかつ時系列の入れ替えやダラダラとりとめのない描写が続いたり場面や視点がいきなり切り替わったりなど、のらりくらりとしていて読者を煙に巻くような独特の作品なので、いったいどんな風に映像化するのかが気になるところでした。

 

概ねのストーリーは原作とほぼ同じ。ですが、やっぱり原作のボリュームがボリュームですので、映画の二時間におさめるためには全部を忠実な映像化は無理。

原作のどこをどんな風にカットするかがこの映画の出来を左右するところですが、この映画は上手くまとめられていたと思います。

 

主人公の津田(藤原竜也)はロクデナシで女性にだらしない設定なので、原作では交際女性が何人も登場していたのですが、映画だと人数が減らされていました。

事件を追うのに必要な情報は原作では後半からしか登場しない編集者・鳥飼(土屋太鳳)が序盤から登場して役割が増やされていた印象。津田が書いている小説が“本当にあった事”かどうかを見極めるため、現地に取材に行くのは映画オリジナルですね。

 

原作は津田の軽妙な台詞返しも読んでいて楽しいところだったのですが、映画だとそこら辺の台詞のやり取りは少なめ。ま、尺の都合上しょうが無いのでしょうけど。

それでも沼本(西野七瀬)との掛け合いがそのままだったのは嬉しかったですね。沼本は原作よりも津田に気がありそうに見えた。なので、バーでの津田の仕打ちがよりいたたまれなかったなぁ。ロクデナシの演技、上手いですねぇ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

原作と大きく違う点は、房州老人(ミッキー・カーチス)がニセ札だと気がつかないままだったところですね。

原作だと房州老人のニセ札だと解った上での意図的な行動がラストの解明の要になっていたのですが、映画は津田と幸地(風間俊介)交わした些細な会話、津田が“この小説を書いている理由”にスポットを絞るためにあえて省いたのかなと。

 

タイトルの意味に重点が置かれていた感じですね。“小説でなら皆を幸せにすることが出来る”、鳩(ニセ札・元凶)の撃退法(小説を書くこと)。

 

幸地家族を全員死なせないラストに導くために虚構として小説を書いていた津田ですが、最後に虚構と現実が融合。津田が小説のタイトルを決めるところで映画は終わっています。

原作だと虚構と現実が融合した場面の後にニセ札の行方を最初から順に追っていくという説明的な解明が描かれているのですが、映画では物語の中で一番盛り上がる融合部分をラストに持ってくることで“洒落た締め”になっていたなぁと。映画として綺麗なラストになっていましたし、役者さんの演技も皆良かったと思います。

 

とはいえ、時系列の入れ替えや場面の切り替わりは多いので、原作未読の人は一回観ただけでわかるのかどうか・・・。二回は観るのがオススメですかね。再度観てくれるのを狙っているのかも知れないですが。

幸地が手を叩くところが印象的に演出されていましたが、これはピーターパンのお話を知らないと意味が伝わらないので、『ピーターパンとウエンディ』の内容についてもっと説明があった方が良かったかなと。

 

ただの事件ものではない、虚構と現実を行ったり来たりする異色ミステリになっていますので、繰り返し観て愉しんで欲しい映画です。原作もオススメですのでセットで是非。

 

 

 

 

 

ではではまた~

『眼の壁』あらすじ・ネタバレ ドラマ原作!恐ろしいトリックにはモデルあり!?

こんばんは、紫栞です。

今回は、松本清張『眼の壁』をご紹介。

眼の壁(新潮文庫)

 

あらすじ

従業員の給料遅配を防ぐため、資金調達に奔走していた昭和電業制作所の会計課長・関野徳一郎は、白昼の銀行の一室を利用した手形詐欺に引っ掛かり、三千万円を詐取されてしまう。会社に大損害をもたらしてしまったことに責任を感じた関野は、妻と社長と専務、直属の部下である萩崎竜雄にあてて四通の手紙を書き、山中にて自殺した。

 

萩崎にあてられた手紙には手形詐欺事件の詳細が詳細に書かれていた。関野課長に恩義を感じて慕っていた萩崎は、罪に問われぬままの手形詐欺グループに憤怒し、独自に事件を追跡してみようと決意する。

友人である新聞記者・田村満吉の協力を得ながら事件を調べるうち、この手形詐欺には代議士や右翼団体の領袖である船坂英明、高利貸の女秘書・上崎絵津子などの得体の知れない人物たちが関わっていることを突き止める萩崎だったが、事態は次第に危険な方向へと進んでいく。さらには殺人事件が発生して――。

 

 

 

 

 

 

 

 

手形詐欺に端を発する社会派ミステリ

『眼の壁』は1957年4月~1957年12月まで「週刊読売」にて連載された長編小説。2022年6月に小泉孝太郎さん主演でWOWOWでの連続ドラマ化が決定しています。

 

松本清張の代表作の一つである『点と線』と同時期に連載された作品でして、

 

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今では『点と線』の方が世間での認知度は高いんですけれど、連載当時はこちらの『眼の壁』のほうが反響は大きかったんだそうな。

 

信じられないほど映像化されてきている清張作品ですが、『眼の壁』が映像化されるのは1958年に公開された佐田啓二さん主演の映画以来。

 

2022年は松本清張の没後30年の節目ってことで、今回初の連続ドラマ化だそうです。記念とか節目とか関係なく、清張作品は毎年なにかしら映像化されている気もしますが。

 

この原作は刊行当時の1950年代の設定で書かれていますが、今度のWOWOW連続ドラマではバブル期に時代設定を変更して描かれるのだそうです。

こちら↓

 

 

繰り返し映像化されている作品ではなく、清張作品の中では知名度もさほどなので「どうかな?」と思っていたのですが、実際読んでみたら凄く面白かったです。

文庫で500ページほどのボリュームですが、スリリングな展開もあって飽きずに読む事が出来ます。

 

“パクリ屋”と呼ばれる手形詐欺を素材として選んだのは、当時の検察庁検事河合信太郎氏に勧められたからなんだとか。当時の小説では汚職や詐欺などの捜査二課が担当する知能犯による犯罪を扱う例が少ないから、書いてみてはどうかということだったらしい。今ではその手の犯罪を扱った作品も多いですので、この分野でもやはり松本清張は先駆者なんだということかもしれない。

 

手形詐欺から端を発する物語ということで読む前は取っつきにくさを感じるかもですが、手形詐欺については発端として描かれているだけで、そんなに難しいところや解りにくいところはないので心配はご無用です。組織的で巧妙な方法での殺人事件ものとして、確りと推理を楽しめるミステリ小説となっています。

 

 

 

 

 

素人探偵の奮闘

今作は亡き上司の無念を晴らすべく奮闘する会社員・萩崎竜雄が事件を追う素人探偵ものとなっています。素人探偵ものだとゼロの焦点のように主人公自身が事件の当事者の一人で云々という流れが多いですが、

 

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萩崎は直接事件に関わっていないし、特別被害を被っていないにも関わらず、自殺してしまった上司の恩義に報いるべく事件を調べる。

もはやこの調査動機だけで好感が持てる主人公ですね。順調に出世していたのに、最悪会社を辞めることになっても良いと亡き上司のために長期休暇までとって事件を追う訳ですから。

 

萩崎だけでなく、会社の専務も社長も善良な人物として描かれていて、社長に至っては「強く言い過ぎた」と関野課長を自殺に追いやってしまった原因は自分にあると悔いており(社長は「責任をとれ」と言っただけなんですけどね。関野課長は責任感の強い人物だったので、社長が思っていたのとは違う形で責任をとってしまったと)、萩崎が事件を独自に追っていると知ってさらなる異例の長期休暇を萩崎に与えてくれる。

 

会社の人間関係、特に上役たちというのはミステリ作品ではドライに描かれがちですが、この物語ではどの人物も従業員思いで、読んでいて嫌な気持ちにならなくて良いなぁと。従業員が五千人近くいる大きな会社ですが、昭和電業制作所はさぞかし良い会社なのでしょう。辞めちゃ駄目だよ、萩崎。

 

素人探偵に新聞記者の友達がいるというのは定番のご都合主義ではありますが、田村も良いヤツで、単独スクープをとる野心を持っているとはいえ、親身になって旅費と労力も厭わずに萩崎の調査に付き合ってくれる。

 

清張作品は電車での移動調査や捜査が多く描かれるのも特徴の一つですが、『眼の壁』でも中央本線木曽山脈の線を行ったり来たり忙しく動き回っています。

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清張作品はやはり地道な調査・捜査過程が面白いですね。

 

 

 

 

 

 

以下、若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

衆人環視のなかでの犯行

手形詐欺に端を発するこの物語。代議士や右翼団体が絡んでいることで萩崎も身の危険を感じたりしてスリリングな目に遭うのですが、途中で衝動的な殺人事件が発生したことで事態はいよいよ物騒なことになっていく。

 

黒幕には手下が多くいまして、その手下たちを使って黒幕は白昼堂々、衆人環視のなかで巧妙に犯行計画を実行する。

犯罪は普通、人目を忍んで実行されるもので、誰にも目撃されないように気を遣いながらするものなんでしょうけど、この黒幕は周りの眼を気にしないで、寧ろ逆手にとった大胆な方法をとるんですね。これは捜査二課が担当する知能犯的な犯行方法だともいえる。堂々としているぶん、かえって気がつかれないという盲点ですね。

 

目撃者はいっぱいいて、眼前で拉致や遺体搬送といった恐ろしい犯罪が行なわれているにも関わらず、誰も気にとめることがない。見逃してしまうという恐怖。

 

“建物も、電車も、自動車も、人も、彼の視界にさりげなく映っている。眼にうつっていることが現実なのか。しかし、じっさいの現代の現実は、この視界の具象のかなたにありそうだ。眼は、それを遮蔽した壁を眺めているにすぎない。”

 

松本清張の作品タイトルってのは大抵が抽象的なのですが、今作のタイトルはこの“人の眼はほんの表層部しか見ていないし、映していない”という現実を表しているものなのかなと。

 

 

 

 

 

壮絶なラスト

今作はメイントリックが結構えげつないといいますか、非人道的でグロテスクで「いやいや、そんな・・・」な、血の気も引くおぞましさなんですけども、このトリックは1956年に足立区の工場で実際に起こった事件をヒントにしているのだとか。

フィクションだと思っていたからまだアレだったのに・・・。いやぁ、人間って本当にこんな酷いことが出来るもんですかね。

 

このトリックに関連しまして、終盤に事件の黒幕は壮絶な行動をとる。追い詰められたとはいえ、よりにもよってこんな方法を最後に選ぶのは唐突すぎて読んでいて疑問でした。あの黒幕はそんなタマじゃなさそうだし。

 

人物確認のために連れて来られた人の良いおじいさんいましたが、目の前で再会したばかりの懐かしい人物があんなことになって、さぞかしショックだったろうと思う。トラウマ確実ですよ。

 

“無理やり感”が垣間見えるラストで少し残念ですね。部落差別などにも作中で動機として触れているのですが、サラッとしすぎかなと思います。もっと深掘りして欲しかったですね。

 

 

事件には右翼団体を率いている船坂英明の他に、高利貸で秘書をしていた上崎絵津子が実体は見せぬままに影のごとくつきまとうのですが、萩崎は一回面会しただけの上崎絵津子に妙に惹かれてしまったらしく、事件を追いながらも何故か庇い立てし続けて、事件に深く関与しているのは間違いないと確信しながらも誰にも打ち明けない。

 

一目惚れってことなのかもしれませんが、本当にたいした対面をした訳でもないので、萩崎が何故そんなに上崎絵津子に肩入れするのかが解せない。なので、事件調査が佳境を迎えても協力してくれている田村に打ち明けないのにはなんだかイライラさせられました。田村が良いヤツだから余計に・・・。

しかし、たいした接触も持ってないのに何故か心に深く刻まれて、訳も無く庇いたいという感情がわき起こることはあるのかもなぁとも思う。上崎絵津子という“幻の女”の真相も今作の大きな見所ですね。

 

松本清張作品ならではの面白さが詰まった作品で読みやすいボリュームですので、初めて清張作品を読む人にもオススメです。

ドラマ化などで気になった方は是非。

 

 

ではではまた~

『秘密』7巻 ネタバレ・解説 圧巻!執念の復讐劇

こんばんは、紫栞です。

今回は清水玲子さんの『秘密-トップ・シークレット』7巻に収録されている

新装版 秘密 THE TOP SECRET 7 (花とゆめCOMICS)

 

 

※シリーズの概要につきましてはこちらを御参照↓

 

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「千堂咲誘拐事件」をご紹介。

 

あらすじ

2062年3月末。千堂外務大臣の14歳の一人娘・咲が突如として行方不明となる。捜索願が出されたものの見つからず、4月に入り「千堂大臣の娘を一人さらった」との犯行声明がマスコミ各社に送られた。

捜査により、警察は吉田さなえという63歳の女性を容疑者として絞り込むが、吉田さなえは自宅に警官隊が踏み込んだ際に大臣へのメッセージを残して頸動脈を切って自殺。大臣の娘の行方が不明のまま容疑者死亡という事態となり、捜査は「第九」に全指揮権継承が決定。吉田さなえの脳を見るMRI捜査が主体となって行なわれることとなり、薪、青木らは捜査に乗り出す。

 

吉田さなえは「デルナ集団拉致事件」の被害者遺族だった。20年前に起こったこの事件当時、中東アフリカ局長だった千堂は国交を優先し、被害者家族の捜査活動継続の訴えを却下。吉田さなえはこの決断を恨み、復讐するべく犯行に至ったと仮定されたが、MRI映像から吉田さなえは拉致誘拐には直接関わっていないことが確認されたため、共犯者がいることを視野に入れ捜査は進められていった。

 

また、MRI映像から千堂咲は中東の貨物船「アルタイル」のコンテナに入れられたことが確認されるが、船はすでに公海上で「アルタイル」は停船命令を無視して走り続ける。咲が少量の水と食料と共にコンテナに入れられて既に一週間。10日以内に救出しなければ生存は絶望的な状態だと分かり救出を急ごうとするが、そこには国交の壁が――。

 

さらに、捜査の結果行着いた吉田さなえの元夫で共犯者であり首謀者・淡路真人が大臣に思わぬ“宣言”を突き付けて・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分厚い7巻

前巻の6巻は青木が「第九」に来る前のエピソードで岡部さんが主役の番外編であり、シリーズ史上最薄だったのですが、

 

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この7巻は通常の時間軸に戻り、前巻とは打って変わっての分厚い巻となっております。

この漫画シリーズは基本的には事件ごとに巻が区切られているので、このような厚さの違いが出るんですね。ひょっとしたら6巻の番外編は長い事件の前の骨休め的なつもりだったのかもしれない。骨休めにしては重すぎる内容でしたけど。

 

長いだけあって、国交や大臣が関わるスケールのデカイお話となっています。一段と社会派色が強いので最初はとっつきにくさを感じるかもですが、構造や犯行動機はいつもの『秘密』らしい人間味溢れるもので理解しやすく、堅苦しさもさほどではないのでページ数があるのもなんのその。

結末はズッシリと重いですが。いつも重いんですけども、今作はまた違うズッシリさがある。

 

個人的にはこの重た~い結末も含めてシリーズの中ではかなり好きな作品です。

 

5巻の最後で青木が三好先生に空気を読まない唐突なプロポーズをした後ということで、

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薪さん、青木、三好先生、三人の人間関係や心情が大きく変化しており、青木も驚きの行動をしていますので見所満載です。

 

 

 

 

 

以下、若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

「人命」と「国交」

中東の貨物船コンテナに攫われた娘が紛れ込まされたらしいと分ったものの、その船はもう日本の領海内を出ており、輸送禁止物資を積んでいるためか海上保安庁からの停船命令に応じない。

国交上、確かな証拠もなく、何をされたわけでもないのに、他国の船を無理に停めさせて強制調査するわけにはいかないってことで、救助は困難な状況・・・な、はずですが、娘を助けるために千堂大臣は自らの権限を駆使して威嚇射撃と強制調査を強行しようとする。

 

「大臣」のように絶大な権限が与えられている人間というのは公平性が求められるもの。大臣の権限を私的な希望のために使おうとするのはあってはならないことですが、千堂大臣は公私混同を承知の上で外務大臣の娘じゃなければ狙われることはなかった。大臣の力を使って助けようとして何が悪い」と言い放ち、強行に出ようとする。20年前の「デルナ集団拉致事件」では国交を優先して拉致被害者を見捨てたくせに。

 

まだ人命優先のためだと言われたなら筋が通るところですが、堂々と「自分の娘だから大臣の力を使って特別に助ける」と言ってしまっているわけで、気持ちは人としてはわかるところですが、「大臣」としてはそれじゃあやっぱりダメでしょう。

 

それでまたこの千堂大臣、コンテナに入れられたのが咲ではなく別の女性だと判明するやいなや態度を一変、

「どこの誰ともわからないたった一人の命を救うためにほんの少しでも国家の安全が脅かされるような事になってはならない 絶対に!」

「それにそうやって国の安全を守ったとなれば犠牲になった命もうかばれるというものだ」

と、のたまって船の追跡も威嚇射撃も立入調査も救助も中止させる。

 

はぁぁ~?さっきまでの自分の行動を棚に上げて何言ってんだ!怒るとすぐ手が出る野蛮人だし、選民意識ばっか高いし、作中で薪さんが言うように“「外務大臣」の職を辞するべき”人物で、もう、本当に怒りが湧いてくる。

 

20年前、「人命」よりも「国交」を優先させ、今回もまた同じ選択をするということは、それが千堂大臣にとっては揺るがぬ姿勢で信念なんでしょうが、それなら自分の身内が渦中にいるときも同じ対応をとるべきで、実際、こういった権限を持たされている職務の人は同じような局面に立っても表立って身内を特別扱いは出来ないものだと思う。政治家の権限は本人が持っているものではなく、国民に与えられているものですから。

 

 

 

 

復讐

こんな調子の千堂大臣だからこそ、「デルナ集団拉致事件」の被害者遺族である淡路真人は20年間ずっと恨み続けてきた訳で、癌で余命宣告を受けたことで今回の一世一代の復讐計画を立てる。この物語は淡路の執念の復讐劇なんですね。

 

一年かけて調べ上げた“ある秘密”と、自分と元妻の命を最大限に利用した淡路の復讐計画は用意周到で緻密なもの。それでいて偶発的な危険要素を孕んでいる危ない計画でした。

復讐が成功するかどうかはターゲットの選択に委ねられているというのがこの計画の狡知で恐ろしいところ。

 

ただ危害を加えるのではなく、選択によっては救済が用意されている。“この結果を招いたのは自分の選択だ”とターゲットに思わせる。権力の座から一番遠い立場に引きずり落とし、一生涯の苦しみを。20年間憎み続けたから淡路だからこそ練り上げることが出来た復讐計画なんですね。

 

この復讐方法は、犯人の淡路としても自分の復讐心を千堂に委ねる賭けだったのだと思います。千堂が淡路の思うのとは違う選択をして、その結果計画が失敗するのなら、それは千堂大臣が復讐するに値しない人物だということ。自分は千堂の人間性を見込み違えていたのだと、その場合は見逃してやろうと、思っていたのではないかと。

 

しかして、千堂は淡路が思っていた通りの決断と行動をした。自分の復讐は完遂されるのだと確信して、淡路は最後に笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

この物語は、余命宣告を受けた淡路が「私はこれから鬼になりますから」と告げるところから始まっています。

 

千堂大臣自身ではなく、何の罪もない娘達を巻き込み、元妻・吉田さなえの自殺を前提(この元奥さんも相当な覚悟でのことだったと思います。淡路とは違って余命僅かというわけでもないのですから。それだけこの元奥さんも恨みが強かったということなのか・・・。淡路を主に展開するためなんでしょうが、吉田さなえの描写が少ないのはちょっと残念なところですね)としたこの復讐計画は、人であることを捨てて「鬼」にならなければ実行出来ない犯行だったでしょう。

 

青木のお人好しな無茶な行動により、淡路が望んでいた完璧な形での復讐は成らなかったのですが、頓挫しかけた淡路の復讐は犯行計画の詳細の解明と“秘密”が暴かれることによって、薪さんの手で別の形で完遂されることとなる。

 

薪さんとしては前段階のネタばらしで千堂を追い詰めるのは止めるつもりだったのでしょうが、血にばかりこだわって「咲には会わない」「絆じゃない。私は裏切られていた」「あかの他人のためにこんなバカなことはしなかった」と言い出す千堂を目の当たりにして見限ったのか、淡路の復讐を引き継ぐかのように千堂を糾弾し、最後に一生悩まされ続けるだろうキッツ呪いの言葉を投げかけて立ち去るところで物語は終わっています。

 

最後の薪さんの言葉にはそばで聞いていた岡部さんも青ざめるほど。「鬼」です薪さんは。

なんとも物々しいというか、ズゥウ~ンと読者も精神的にやられる終わり方ですね。

 

この事件で味わうことになった心境が、シリーズの今後の薪さんの行動に影響を与えることとなっているので必見。復讐劇としての見所が存分に詰められている作品ですので是非。

 

 

 

ではではまた~