夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『犯人たちの事件簿』11巻 30周年でこちらも復活!犯人たちの闘いは終わらない!

こんばんは、紫栞です。

今回は金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』11巻について感想を少し。

金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(11) (週刊少年マガジンコミックス)

金田一少年の事件簿』のスピンオフコメディ漫画であるこちら、2020年に刊行された10巻で完結していたのですが、

 

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この度【金田一少年の事件簿】シリーズ連載30周年記念ということで、単行本一冊分だけ復活。まさかの11巻発売です。※本編も30周年記念で復活しています。

 

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復活の11巻も相変わらずのパロディで楽しませてくれていまして、この表紙はKCコミック錬金術殺人事件(上)」のパロディ。

金田一少年の事件簿 錬金術殺人事件(上) (講談社コミックス)

 

あらためて見るとこの表紙絵の金田一、なんかよくわからないポーズしてる・・・。

 

外伝復活記念で「やはり暴力」Tシャツを抽選で100名様にプレゼント!ってことで、単行本の帯に応募券が付いています。シリーズファンじゃない人は「やはり暴力Tシャツって何?」でしょうが、これは7巻で桐江想子が言っていた「やはり暴力・・・・!!暴力はすべてを解決する・・・・!!」という名台詞(?)ですね。

 

 

今回収録されているのは「剣持警部の殺人」「錬金術殺人事件」「ゲームの館殺人事件」の三つ。書き下ろし漫画などはなし。一度連載終了した後に復活したシリーズの後ろ三つで本編の順番通り。・・・・・・と、いっても、この説明じゃわかりにくいですね(^_^;)。本編漫画のシリーズ順番についてはこちらを御参照下さい↓

 

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復活ばっかりしていて訳が分からんのだ・・・(-_-)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「剣持警部の殺人」

犯人:毒島陸

本家の「剣持警部の殺人」は被害者たちがクズすぎて発端となった事件も胸糞悪いしで、個人的に再読が厳しくってあまり読み込めていないのですが、この『犯人たちの事件簿』は本家でのそんな辛さはおくびにも出さずに笑わせてくれるので流石だなと思う。

高遠さんプロデュース事件。思えば指名手配中のくせに素顔のまま少年院にくる高遠さんからしてぶっ飛んでいましたが、昼間っから公園でガタイの良い中年男性背負って運べとか、襲われたと偽装するために自らの耳と肩撃ってダッシュしろとか、いくらなんでも高遠さんのムチャブリが過ぎた計画だった。ま、高遠さんプロデュースはいつもこんなもんかもしれませんがね・・・。

 

 

 

錬金術殺人事件」

犯人:神丘風間

錬金術殺人事件」は本家を読んだ当初もトリックが大変すぎるというか、職人すぎてビックリした記憶。夜のうちの数時間で完璧な溶接するって・・・なんだよ(^_^;)。

後、トイレで用を足したとこで殺されるって凄く嫌だなぁとも思った記憶。犯人男性だし。良い訳対策でストーカーじみたオタクのふりするのは周到だなと。アレで読者も騙された。

最後に多岐川さんが言う「2回目・3回目の殺人で使っていた剣はどう用意してどう処分したのかとか繭村をどう運んだのかとか」は、確かに読者の気になるところ。だって1回目の殺人で“凶器をどうしたか”をメイントリックの一つとして説明していたくせに。「細かいことは気にするべからず!」か・・・・・・。

 

 

 

 

「ゲームの館殺人事件」

犯人:麦林美佳

娘の借金返済のため、お金が欲しくってすることにしたわりには、やたらとお金が掛かる殺人計画だなぁと本家を読んだ時に思った「ゲームの館殺人事件」。テレビショー的な展開は新鮮で面白かったですけど。

毒針をびっしり仕込むって、この間のドラマのピンポン球でもやっていましたけど、犯人的に用意するのは地味に大変だよね、やっぱり。

麦林さんが金田一の事を「昔のテレビの匂いがする・・・・」というのが妙に可笑しい。それを受けての金田一・・あんたはいつだって今をときめいているのね・・・・とんだなにわ男子だわ・・・・」が今のドラマに繋げていて上手い締めだなと。

 

 

 

 

 

また復活しそう

上記した三つの事件の犯人の他、ベテラン犯人(ベテラン犯人って何だ)有森的場先生かほるさんの三人が要所要所で登場しています。もはやこの三人は『犯人たちの事件簿』の顔なんですねぇ。

最後に有森が「犯人たちに・・・・最終回なんてないんだ!!また会おう!!」と宣言してこの巻は終わっています。

帯に“名探偵がちょこちょこ復活するなら、犯人だってちょこちょこ現われる”と、あるように、本家漫画同様に『犯人たちの事件簿』も今後また復帰があるのだろうなと。

 

またの復活を楽しみに待ちたいと思います。

 

 

ではではまた~

 

 

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』ネタバレ解説 ”すべてが、伏線”に偽りなし!驚愕小説

こんばんは、紫栞です。

今回は相沢沙呼さんの『medium (メディウム)霊媒探偵城塚翡翠をご紹介。

medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)

 

あらすじ

ここ数年、世間を騒がしている連続死体遺棄事件。判明しているだけで女性ばかり八人を殺害しているとみられる事件だか、犯人はいっさいの証拠も痕跡も残さずに狡猾に犯行を繰り返し、いっこうに尻尾を掴ませない。捜査関係者は途方に暮れていた。まるで死神。死をまき散らす、この世ならざる者。

 

推理作家の香月史郎は、被害者遺族の婦人に犯人を見つけ出してほしいと依頼される。香月が霊能力者と一緒にいくつもの殺人事件を解決しているという、週刊誌やネットでの噂を聞きつけてのことだった。

 

夢物語のような噂話。しかし、その噂は正しいものだ。香月は城塚翡翠という霊媒師の娘と共に、霊媒の力を使って数多の事件を解決してきた。

だが、香月は依頼を引き受けることを躊躇する。翡翠は以前から「防ぎようのない死が、すぐそこまでこの身に近づいているのを感じるのです」と言っていた。香月は連続殺人鬼と相対することでその予感している死が訪れるのではないかという思いに駆られる。翡翠の予感は“絶対”なのだ。

しかし、死神のような殺人犯の脅威となり得るのは翡翠霊媒の能力だけなのではないかとも思える・・・。

翡翠の持っている能力で犯人特定は可能なのか。香月は思考を整理するためこれまでの事件を振り返っていく。

だが、そうしている間にも予感された死は少しずつ翡翠に迫っていた――。

 

 

 

 

 

 

2019年ミステリ界の話題作

『medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠』は2019年に刊行された長編小説。

作者の相沢沙呼さんはそれまで映画化もされた小説の神様

 

などの青春小説が代表作というふうに認識されていたようですが、元々は鮎川哲也賞を受賞してデビューした本格推理小説畑のお方。

相沢さん自身も、青春モノの方が喜ばれるし、自分にはミステリを書く才能がないのではないかと思い悩んでいた時もあったようですが、“作家になって10年目、自分なりの「本格ミステリ」を書こうと決意しました”とのことで、いずれ書いてみたいと眠らせていた作品を発表したとのこと。

 

また、相沢さんはミステリでもそれまでは「日常の謎」もののジャンルを書いてきたため、「殺人」を扱ったミステリ作品はこれが初なのだとか。

 

そんな満を持して書かれた今作。大ヒットしまして、2019年ミステリ界の超話題作となりました。

第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019年ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位と、ミステリランキング5冠を獲得。とにかくミステリ界の話題を攫いまくった凄い作品です。

 

私は相沢沙呼さんの作品を読んだことはなかったのですが、「とにかく長編ミステリ読んで驚きたい気分!」ってなりまして、話題作だったこの本の文庫版が発売されているのを見て購入した次第。期待通りというかなんといいますか、大変に驚愕と満足を与えてくれる作品でした。

 

近年のミステリ界話題作で遠田志帆さんの美しい表紙絵とのコンボは、今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』

 

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を連想する人も多いと思います。出版社は違いますが、これ、遠田志保さんに描いてもらったのは意図があってのことだと思いますね。装丁からもう心理的な作用があるようにしているのだろうなぁと。表紙絵は作中の一場面を描いたものとなっています。

 

 

 

 

三つの事件、殺人鬼との対決

今作は霊媒師の美少女・城塚翡翠(じょうづかひすい)と推理作家・香月史郎(こうげつしろう)が織りなす物語となっています。

上記のあらすじの通り、香月が連続死体遺棄事件の犯人特定を依頼されて、翡翠の超常の能力を道筋に香月が論理を構築して解決してきた三つの事件、「泣き女の殺人」「水鏡荘の殺人」「女子高生連続絞殺事件」と順に回想していき、その合間合間に連続死体遺棄事件の犯人・鶴丘文樹(つるおかふみき)の視点が挿入されていて、最終話 「VSエリミネーターで鶴丘と対決するという四話構成。エリミネーターってのは「排除する者」って意味ですね。

 

霊媒の能力という超常現象が前提となっているものの、その能力を元にあくまでロジックで謎を解くという、特殊設定ものの本格ミステリとして物語は展開していきます。

 

しかしながら、特殊設定ものでは重要なはずの超常現象(この本の場合は翡翠霊媒能力)のルール規定があやふやでご都合主義だったり、謎が解かれた後もなんだか所々提示されていた手掛かりが回収しきられてなかったりと、最終話前に語られている三つの事件はいずれも推理小説好き的には釈然としないものが残る読後感となっています。

 

「う~ん・・・ま、連続死体遺棄事件の犯人の正体で驚かしてくれるのかな?」と、不安を感じつつ最終話を読むと度肝を抜かれることになる。三つの事件で感じた“釈然としなさ”は最終話で最高の形で綺麗に回収されるのです。まさに「すべてが、伏線。」本の帯の文句に偽りなしです。

 

個人的に長編ミステリが読みたくってこの本を買ったので、「長編といいつつ連作短編風味か~」と、当てが外れたかもという気にも最初なったのですが、これは決して独立した話の連なりではなく、すべてが計算された上で組み合わされたもの。連作短編などではなく、完全に長編小説としての構成となっています。

 

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~(未読の方は絶対にこの先は読まないで下さい!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香月史郎

この物語は、エピローグ以外はすべて推理作家の香月史郎が語り手となっています。この香月史郎ですが、翡翠に会う前から懇意にしている刑事さんがいたり、事件解決のために捜査協力していたりと、“いかにも推理小説に出て来るキャラクター”といった人物像をしている。

 

霊媒師の翡翠と共に事件を解決していくなかで、二人の関係も“良い感じ”になっていって――な、オキマリだが読者が嬉しくなる展開もしてくれます。

 

意外なのが、この手の人物なら真っ向から否定しそうな霊媒能力を割と簡単に受け入れてしまうところ。

確かに、翡翠が示してみせる能力は「本物なんだ」と信じるに値するものではあるのでしょうが、それにしてもスンナリしたもんです。出会って間もない霊媒師の言葉を前提に推理を組み立てるのですからね。男心をくすぐる美女とはいえ、“霊媒師”なんて、普通胡散臭さが拭えませんよ。ま、美女だとなんでも受け入れてしまうものなのかもしれませんが・・・。

 

読んでいると、香月は推理作家で論理的思考を重んじているが、一方で“死後の世界があって欲しい”という願望を持っている人物なのだと分かってくる。過去の経験からそのような願望を持っていて、死者が視えると謳う霊媒師のことも信じたいのだと。翡翠の言葉を前提に推理し、事件が解決されることで確信を強めていく訳ですね。

 

あと、語り手にもかかわらず何を考えているのかわかりにくい人物でもある。物語の冒頭で依頼を受けるかどうか悩むのもハッキリ言って「なんで?」って感じ。翡翠が危険にさらされるかもと考えるなら単純に断れば良いし、そもそも翡翠に相談もせず依頼を受けるかどうするか決めようとするのも解せない。

 

しかし、これらの香月史郎に対してのモヤモヤ感は最終話の序盤で解消される。連続死体遺棄事件の犯人・鶴丘文樹は香月史郎のことなのだと判明するからです。「香月史郎」はペンネームで、鶴丘文樹が本名なのですね。

 

依頼を受けるかどうか悩んでいるようにみえたのは、実は翡翠を殺すかどうするかを悩んでいる描写で、翡翠とこのままの関係を続けたいという願望と、殺人鬼としての抗いがたい欲求とで悩み苦しんでいた訳です。シリアルキラーですが、香月が翡翠のことを愛おしく想っている気持ちは本当なんですね。

 

けれども結局、殺人鬼の香月は運命が後押ししている気になって翡翠を殺すことを決意してしまう。拉致して縛り上げ、ナイフを振り翳しながら最後に“ある人の霊を降ろしてくれ”と翡翠を脅す。

 

 

 

 

霊媒探偵 城塚翡翠

しかし、絶体絶命のこの状況で翡翠は突如可笑しくてしょうがないという風に笑いだす。そして、香月にとってだけでなく読者にとっても衝撃の告白をするのです。

 

「わたしが、ほんものの霊媒だって、ずっと信じていらしたんですか――?」

 

と。

そう、城塚翡翠はインチキ霊媒。今まで香月に見せてきた超常の力は嘘っぱちで、奇術師として“不可能の演出”をしていたすぎないと言う。香月が何かよからぬことをしているのではないかと初対面でピンときて、探るために近づいた。このような社会の敵を排除するのが霊媒探偵・城塚翡翠の仕事なのです。

 

「わたしは霊媒ですよ。ただの詐欺師であり、その本質は、ただの奇術師でもある・・・・・・。現代の日本では、メンタリストという言葉も認知されていますね。コインマンがコインを弄ぶように、カーディシャンがカードを弄ぶように、わたしは人間の心理を弄ぶ・・・・・・」

 

これまでの事件も、翡翠霊媒の力なんかではなく、推理で誰よりも先に真相を見抜いていて、霊視と称して答えにたどり着くように香月を誘導していた。

 

しかして、翡翠が本物の霊媒師だと信じて滑稽にも脅してまで降霊術をさせようとした香月は翡翠のこの告白を簡単に信じようとはしない。

で、何を始めるかというと、一度解明された三つの事件を、霊媒の力なしで翡翠がどう推理を組み立てたかの説明をしだす。

 

すでに解決している事件を別の視点から解明しなおす。これがこのミステリ小説の最大の特色で秀逸なところとなっています。

“人間は自ら謎を解いたり、秘密を見つけたりすると、愚かにもそこにそれ以上の謎や秘密があるとは考えない”

香月史郎と同様に、読者も提示された謎を解くことで踊らされることになる。疑り深く読んでいるミステリファンは、語り手の香月史郎が連続死体遺棄事件の犯人なのではないかという考えには比較的簡単に至るでしょう。この手の驚き展開は近年のミステリファンは慣れっこになっていますからね。

この大きな謎を「解いてやったぜ!」の後で翡翠のこの告白ですから、ミステリ慣れしている読者も驚愕してしまう。

作者の術中にまんまとはまってしまっている訳ですね。近年流行の特殊設定ものの裏をかく仕掛け。いやはや、おみごとです。

 

タイトルの「medium」は霊媒という意味。霊媒というのは、奇術から生まれました。そして奇術は、霊媒から生まれた」と作中で翡翠が言うように、オカルトの語源は“隠されたもの”

途中のプロセスを隠すことで奇跡を演出する。まさにこの本を表すのにピッタリのタイトルですね。作者の相沢沙呼さんはアマチュア・マジシャンでもあるのだそうで、奇術の本質が描かれた物語なのかとも思います。

 

 

命に危機にさらされているにもかかわらず、殺人鬼の香月相手に煽りまくって嘲笑する翡翠の姿はとにかく痛快で面白いです。愛を育んでいるとみせかけて、その実盛大に騙し合いをしていた二人ですが、自分本位な男性が甘く見ていた小娘に言い負かされ圧倒されるというのは愉快でしょうがないですね。

 

最初、読みながら「あざとすぎる!こんな男性の妄想みたいな女がいるか!」と思っていたので、「なんてあざとい演技だろうと自分で呆れてしまっていました。女性の目から見れば、明らかに芝居だと見抜けるでしょうけれど、ほとんどの男性は信じ込んでしまうんですから、不思議なものです」という翡翠の台詞がとても可笑しかった。「そうそう!そうだよ!」ですね。

 

 

二転三転して読者を驚かしてくれる今作ですが、エピローグでさらにどんでん返しをしてきます。このエピローグを読むと、霊媒探偵・城塚翡翠がさらに魅力的に感じること請け合いです。

これだけの話題作ですから、いずれ映像化されるんじゃないかなぁ~とも思いますが・・・今後に期待ですね。

 

物語の構成上、続編は難しいだろうところですが、すでに『invent 城塚翡翠倒叙集』

 

 

 

という中編集の続編が発売されているようですので、こちらもまた読んでみたいと思います。

※読みました!詳しくはこちら↓

 

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ではではまた~

『沈みかけの船より、愛をこめて』実はみんな乙一!奇想天外アンソロジー11編

こんばんは、紫栞です。

今回は『沈みかけの船より、愛をこめて』をご紹介。

沈みかけの船より、愛をこめて 幻夢コレクション

 

乙一の「ひとりで四人」アンソロジー

『沈みかけの船より、愛をこめて』は、乙一中田永一山白朝子、三名の作家と安達寛高の作品解説によるアンソロジー

と、言っても、中田永一も山白朝子も乙一の別名義ってだけなので、実質乙一ひとりの短編集なんですけども。作品解説をしている「安達寛高」ってのも乙一の本名。自分で自分の作品の解説をしているという訳です。

 

乙一さんは今年で作家生活25周年なのですが、2005年ごろから正体を明かさず、プロフィールも偽って別名義で作品を発表するという実験的というか挑戦的な事をしておりました。中田永一名義で発表したくちびるに歌を

 

 

小学館児童出版文化賞を受賞したことで2011年に別名義で活動していたことが明らかにされたのですが。別名義でやっていても賞を受賞しちゃうって凄いですね。明かされる前から気がついていたファンも結構いたって話ですけど。そのファンも凄い。

 

この本は、そんな別名義の垣根を越えた“ひとりで四人”アンソロジー

「幻夢コレクション」と銘打たれたこの形式での本はメアリー・スーを殺して』

に続き2冊目。

 

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目次

本の総ページ数は340ページほど。短いお話が多く、収録作品数は11作です。

 

では、一つずつ簡単にご紹介。

 

 

●五分間の永遠 乙一

児童書アンソロジー用に書かれたもので、お題は【五分間】。初稿では「キモイ少年」だったらしいのですが、後に改題されたようです。20ページほどの短編で、男子小学生二人のささやかな交流が描かれています。

 

 

無人島と一冊の本 中田永一

地域雑誌に寄稿されたシュートストーリー。無人島に漂着した男性が奇妙な猿たちに出会うお話で、ページ数は10ページちょっと。キリスト教的な寓意を含んでいる内容で、映画『2001年宇宙の旅』の一場面のオマージュのようでもあるとのことです。

確かにSF映画的な寓話小説って感じですね。

 

 

●パン、買ってこい 中田永一

スポーツ雑誌用に書かれたもので、テーマは【走る】。タイトルから察せられる通り、不良に使い走りをさせられている男子学生のお話で、10ページほどのショートストーリー。パシリを肯定するようなストーリーともとれるため、ボツになる可能性もあったが何とか無事掲載されたのだとか。

男子学生がちょっと変わった思考をしているのでそんなことになったのだと思われ。よく分らないけど(?)私はこの男子学生、前向きで良いと思いますよ。

 

 

●電話が逃げていく 乙一

超短編!大どんでん返し』という、【どんでん返し】がテーマのアンソロジー集のために書かれた掌編で、およそ3ページの本当に短いお話。電話が生きているみたいに手から逃げるという内容。

説明だけ読むと「何じゃそりゃ」ですが、実はブラックでリアルなお話。

 

 

●東京 乙一

性行為をした覚えもないままに、得体の知れない子を産んだ女性のお話で、伝奇小説に分類されるもの。タイトルはサニーディ・サービスの『東京』という、当時よく聴いていたアルバムからとられているのだとか。ページ数は10ページと少し。

気味悪さはありますが、愛に溢れたお話となっています。

 

 

●蟹喰丸 中田永一

地域雑誌に寄稿されたもの。【酒】をテーマに組まれた特集記事用だったので、お酒が登場する内容になったのだとか。余命宣告をうけてヤケ酒をしていた男が、異世界に迷い込んで蟹喰丸(かにくいまる)という鬼と一緒にお酒を飲むことになるといったストーリーで、ページ数は10ページちょっと。

主人公の最後の選択が切ない。これぐらいの事しないと知らしめることが出来ないというのが歯がゆいところですね。

 

 

●背景の人々 山白朝子

小説現代」での百物語企画のために書かれた15ページほどの短編。【嵐の夜、都内のある舞台稽古スタジオで停電が発生し、参加しているキャストたちが百物語を始めた・・・・・・】という設定が提示されて、各作家たちシチュエーションに合わせて短編を書くという企画ものだったようです。

この本で山白朝子として収録されているのは今作のみ。怪談話だから山白朝子名義なのですかね。定番の怪談話って感じですが、生きている人間の怖さも垣間見えるお話。

 

 

●カー・オブ・ザ・デッド 乙一

ゾンビパニックもの作品で、ページ数は50ページと少し。Amazon電子書籍サービスに個人で短編小説を販売できるというものがあるのですが、Amazonに転職した編集者さんにこのサービスを使って何か出版してほしいと頼まれて書いた作品なんだとか。

“ホラーコメディ作品”と解説には書かれていますが、コメディ部分は薄めで結構グロい。これぞゾンビものだといった具合にハラハラビクビクします。

 

 

●地球に磔にされた男 中田永一

『十年交差点』という【十年】をテーマにしたアンソロジー集のために書かれた30ページほどの短編。時間旅行もので、現代にしか行けないタイムマシンが登場する・・・んですけど、タイムマシンものというよりはパラレルワールドものっぽい。出て来る装置のシステムがちょっと難しいですかね。

2011年の震災について触れているところは前作に収録されていた山白朝子名義の「トランシーバー」思い出す。それだけ当時作者の心情に影響を及ぼしていたってことなのでしょうか。イヤな展開になるかと思いきや爽やかな結末でよかった。

 

 

●沈みかけの船より、愛をこめて 乙一

表題作。【迷う・惑う】がテーマのアンソロジー集に寄稿されたもので、ページ数は30ページほど。両親が離婚することになり、女子中学生の主人公がどちらについていくかを悩むお話。

愛情で両親をはかることが出来ないので、幼い弟のためにも情をひとまず排除してドライに父と母を品定めする主人公。中学生にしては大人びているのでは?と、読んでいると思うのですが、実際は中学生だってこれぐらい冷静に考えているものかも。“正直なところ、どちらも選びたくないし、どちらも選びたいのだ”という一文が印象的。

 

 

●二つの顔と表面 Two faces and a surface 乙一

【人面瘡】がテーマの作品。90ページほどあって、収録されているものの中では一番の長さ。

物語の語りは「人面瘡」の宿主の方ではなく、「人面瘡」側。宿主のユイは人面瘡にアイと名前をつけて友好な関係を築く。人面瘡のアイがユイの幸福を願い、学校で起きた冤罪事件を晴らそうとするストーリーは意外性があって面白い。実はかなり本格推理小説的な謎解きものとなっている。

新興宗教の二世問題についても描かれています。新興宗教に関しての話ってのは、読んでいて苦しくなる題材ですね。ユイはまだ幼い子供なので余計に。終わりはこれからの闘いが示唆されて、応援する気持ちと辛さが混在する。

 

 

 

 

 

幻夢コレクション

11作品のうち、乙一名義のものが6作、中田永一名義のものが5作、山白朝子名義のものが1作。

中田永一名義だと青春・爽やか系、山白朝子名義だと怪談・奇譚系といったふうにざっくり分かれて書かれているイメージなのですが、この本に収録されている中田永一名義のものは奇妙さが際立っているものが多いので、複数名義アンソロジーとはいえ、本来の乙一の特色が強い短編集になっているかなと思います。

 

ファンタジックで乙一らしい奇想天外な物語が多いですが、痛切なリアルが描かれている物語もあって色々と愉しめる作品集になっているかなと。ユーモアはちょっと薄めですかね。

表題となっている「沈みかけの船より、愛をこめて」はこの本全体を表すものとなっていると感じる。いずれも現状は悪いが、“この状況だからこそ込められる愛情”が窺える物語たちで、ホラーでもどこか暖かな気持ちになる物語が集まっていますね。

 

 

ひとりで四人の幻夢コレクション、気になった方は是非。

 

 

ではではまた~

 

 

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『野良犬イギー』乙一によるジョジョ3部前日譚!感想と注意

こんばんは、紫栞です。

今回は乙一さんの『野良犬イギー』をご紹介。

野良犬イギー (ジャンプジェイブックスDIGITAL)

 

ジョジョ3部の前日譚

こちら、荒木飛呂彦さんの漫画作品ジョジョの奇妙な冒険の第3部の前日譚を乙一さんが小説化してくれたという代物。

 

乙一さんは前にジョジョ4部のオリジナル長編小説を書いているのですが、

 

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この度、3部の前日譚を書いてくれたと。

私はジョジョだと3部が一番好きなので、好きな小説家である乙一さんが3部の前日譚書いてくれるなんて夢のようですよ!って、なって値段も気にせず、詳細もさほど調べずに速攻で買いました。

 

 

この本で描かれるのは、イギ-とアヴドゥルの出会い。原作漫画のイギ-初登場の際に作中で「ニューヨークのノラ犬狩りにも決してつかまらなかったのをアヴドゥルが見つけてやっとの思いでつかまえたのだ」と、ジョセフが言っているのですが、そこら辺の詳細が描かれているという訳です。

 

表紙だけでなく、カバー裏にもイギーがいっぱい。挿絵も細々といっぱい入っているのですが、いずれも3部の漫画から引っ張ってきた絵で描き下ろしではありません。最後のページの絵が唯一描き下ろしかなって感じですが。でも違うかもしれない。

 

ページ数は160ページほど。しかし、挿絵がそこら中に入っているので文量はもっと少ない。サクッと読める小話って感じですね。

 

4部のオリジナル小説である『The Book』は結構な文量でストーリーも重厚、乙一らしいミステリ要素のあるよく練られた物語となっていましたが、こちらは特にミステリらしい仕掛けや捻りはなく、ストレートにイギーとアヴドゥルの出会いとスタンド勝負が描かれています。

100%ジョジョファンに向けて書かれている物語で、ハッキリ言って漫画を知らない人は愉しめないかなと。なので、乙一ファンだからって理由だけで買うのはやめておいた方が良いですかね。そんな人は「ジョジョ3部を全部読んでから出直してこいッ!」ってなるのが確実。

 

漫画だと犬であるイギーの視点で描かれるお話もありましたが(※ペットショップ戦)、今作はそのようなイギーの“心の声”の描写は無く、一貫してアヴドゥルの視点となっています。タイトルや装丁はイギーが全面に出されていますが、実質この物語の主人公はアヴドゥルですね。あとちょろっとジョセフが登場していますが、前日譚なので承太郎や花京院、ポルナレフは出て来ません。

 

この本ではアヴドゥルの生い立ちや内面が描写されています。だからこそ、アヴドゥルがイギーにどの様な感情を持って接していたのかが分るようになっているといいますか。

ジョジョの読者はアヴドゥルとイギーの顛末を知っている訳で、それを踏まえると切なくなってくるなぁと。アヴドゥルの両親の話とかは読んでいてしみじみと納得してしまいました。哀しいなぁ。

 

 

 

 

 

ムック本もあるよ

さて、読み終わった後気がついたのですが、今作はJOJO magazine 2022 SPRING』に掲載されたものを単行本化したもののようです。

 

 

JOJO magazine 2022 SPRING』たるムック本には、岸辺露伴は動かない」の新作、アニメ関係者、俳優のインタビュー、真藤順丈さんの小説も掲載されているようです。お値段は紙媒体で1650円。そして、この単行本『野良犬イギー』も同じく1650円。

・・・え?このムック本を買った方が良かったんでない?

インタビューなどはともかく荒木先生の露伴の新作読めるしッ!

 

って、ことを知って今ちょっと微妙な気分になってしまっているのですが・・・。

 

単行本はムック本に掲載されたものを加筆・修正してあると巻末に書かれている一文で、なんとか自分の気持ちをなだめているのですけども(^_^;)。ま!良いんですよ。私は乙一さんの新作の単行本は必ず買ってきている人間ですから。

 

しかしながら、今から買おうとしている人には忠告じゃないですけど、同じ値段でプラスアルファもっと色々読めるムック本あるよという事は書いておこうと思います。吟味してから、ご購入をご検討下さい。

 

※結局ムック本も買いました。詳しくはこちら↓

 

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なにはともあれ、ジョジョファンで乙一ファンである方は是非。

 

 

ではではまた~

 

 

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『さよならに反する現象』乙一が贈る”お別れに背く物語”5編

こんばんは、紫栞です。

今回は乙一さんの『さよならに反する現象』をご紹介。

さよならに反する現象 (角川書店単行本)

 

作家生活25周年

『さよならに反する現象』は2022年4月に刊行された短編小説集。

本の帯に“作家生活25周年を迎えた乙一が贈る”と書かれているように、節目の年だからなのかなんなのか、同時期に単行本3冊続けざまに出されてビビってしまった

 

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普段が全然出してくれない作家ってイメージですからね。それでも近年は映画との連動企画とかでまだ本出してくれていたなぁとは思いますけど。

 

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それで「またしばらく期間空くかな~」と油断していたぶんビビったというのもある。短編を得意とする作家さんなので、一冊の本としてまとまるまでに時間がかかるってことなのでしょうが。

ま、出費は痛いですけどファンとしては嬉しいです。角川の単行本は毎度装丁が凝っていて素敵だなぁと思う。作家生活25周年おめでとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各話・あらすじ感想

『さよならに反する現象』は五編収録。

 

●「そしてクマになる」

会社をリストラされ、妻子に内緒でクマの着ぐるみを着るアルバイトをする男性のお話。住宅展示場でのバイトの最中、“ある人”を目撃したことで疑心暗鬼に陥っていく。

主人公は穏やかな男性なのですが、どんどんと不穏で危うい心境になっていく過程が空恐ろしい。最後どうなっちゃうのかとハラハラしましたが、家族愛を感じられる終わり方で良かった。現実と虚構が曖昧になる話なのですが、この“レベル”がなんだかリアリティあるなぁと。

 

 

 

●「なごみ探偵おそ松さん・リターンズ」

イヤミの邸宅でカラ松の他殺体が発見される。犯人は誰なのか?ピリピリするイヤミ宅に場をなごませるだけの名探偵・おそ松さんが訪れる!

と、いった乙一らしいシュールで、ヘンテコで、絶妙におかしい短編小説。

私はおそ松さんに関しては幼少期に『天才バカボン』の再放送を観てのおぼろげな記憶がある程度なので、詳しい人はもっと楽しめるように書かれているのかもしれない。ま、無知でも十分楽しく読めましたけど。

シュールなだけでなく、驚きの真相と意外な解決も用意されています。

 

 

 

●「家政婦」

霊の通り道となっている場所に建っている有名作家の屋敷に家政婦として住み込みで働くことになった女性のお話。

“霊の通り道”ネタはオカルトものだと定番ですね。普通は怖がって長続きしないだろうところですが、ナイスミドルの作家とイケメンの息子を鑑賞する楽しみが勝って家政婦を続ける気の多い主人公が面白い。作中で「畳地獄」というボードゲームが出て来るのですが、実際にあるゲームらしいです。

主人公の性格がお気楽だからと油断していると足をすくわれる。個人的にはこの本の中では一番怖くて好きなお話でしたね。

 

 

●「フィルム」

星野源さんの「フィルム」という曲にインスパイアされて生まれたというショートショート


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本にはこの曲の歌詞が全部掲載されています。この歌詞と同様、辛さと喜びに溢れた人生そのものを感じさせるショートショートになっています。

 

 

 

●「悠川さんは写りたい」

部屋に引き籠もり、画像編集ソフトで作ったインチキ心霊写真を投稿することをひそかな楽しみにしている男性。ある日、合成に使用する素材写真を撮るためにカメラを持って町をうろついていたところ、本物の幽霊である女性・悠川さんに遭遇。取り憑かれ、成仏のために悠川さんの願いを叶えるべく協力することとなるが――な、お話。

いつも心霊写真を作っているのに、ガチの幽霊である悠川さんはカメラに写すことが出来ないため回りくどい苦労をするといった、「過去を引きずる男性と陽気な女子大生幽霊との交流ものかぁ~」と、ほんわかしていると、またも最後に小型爆弾を落される。

とはいえ、この手の交流ものはやはり読んでいて楽しくも切なくなりますね。

“そう思っていた時期が、僕にもありました”と、いきなり敬語で書かれている一文がなにやら不気味でゾッとしてしまった。多分杞憂なんでしょうけど。多分。

 

 

 

 

 

さよならに反する物語集

短編集というのは収録作品の一つを表題にしているものが多いですが、この本のタイトルである「さよならに反する現象」は収録作からとられたものではなく、本全体をまとめて付けられたタイトルとなっています。これは乙一さんの単行本では珍しいことですね。

 

タイトルの通り、この本に収録されている五編はいずれもお別れすべきところでそれに反する現象が描かれています。ストーリーも雰囲気もバラバラですが、“お別れに背く不可思議な現象”という部分が共通している物語集なのですね。

 

ホラー寄りになってはいますが、乙一作品特有のユーモア、シュールさ、切なさが一挙に味わえる短編集となっていますので、気になった方は是非。

 

 

 

ではではまた~

 

 

 

『金田一少年の事件簿30th』1巻 高校生の金田一ふたたび!八咫烏村殺人事件

こんばんは、紫栞です。

今回は金田一少年の事件簿30th(1)』について感想を少し。

金田一少年の事件簿30th(1) (イブニングコミックス)

 

30周年記念

金田一少年の事件簿R』14巻で少年時代が終わり、

 

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金田一37歳の事件簿』

 

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へと移行した金田一少年の事件簿シリーズ】ですが、この度連載30周年記念ということで、17歳の高校生金田一が帰ってまいりました。今作はその新シリーズの1巻目です。

 

37歳のサラリーマンになっても金田一は相変わらずジッチャンの名にかけて事件の謎を解いていて、漫画としてはさほど代わり映えのないことになっているのですけれども。少年時代の金田一の活躍はもう読めないのかなぁ~と、ファンとしてはやはり淋しい思いもあったので、また“高校時代”の新作が読めて嬉しいです。

 

“R”で14冊出す前は「20周年記念シリーズ」をやっていたんですよねぇ。復活の連続でなんともゴチャゴチャしたことになっている【金田一少年の事件簿】ですけど※シリーズ全体の順番について、詳しくはこちら↓

 

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あれからまた十年が経って今度は30周年。ドラマもまたやっていますし、何やかんや凄い漫画ですよね。金田一少年の事件簿は。

 

 

今回は通常版と限定版での発売。通常版が赤で、

 

 

限定版は黄色ですね。

 

 

こちらの限定版、1650円で通常版の倍以上のお値段なのですが、何の違いがあるのかというと、30周年記念限定NFT(3Dカード)のギフトコード付きフルカラー小冊子『金田一NFTの事件簿』が付録でついてくるらしいです。内容は金田一たちが昨今話題の“NFT”とは何かを教えてくれるといったもので、小冊子の裏側には限定NFTが取得できるコードが掲載されているのだとか。

 

限定NFTは当時のトラウマ(笑)と思い出が蘇る「レジェンド怪人&名場面3Dカード」で全10種類。限定版1冊につき、全10種類のうち1種類をランダムに取得できちゃいます!

・・・って、これ、読者の複数買いを狙っての商法なんだろうか。熱心に10種類集めようと思う人いるのかな?

私はストーリーさえ読めれば良い派でグッズも関心がないので通常版買いましたけど(^_^;)。

 

限定版は紙の単行本のみ。小冊子も限定NFTも描き下ろしではないとのこと。

 

“NFT”って何だと思って少し調べたんですけど、さっぱりわからなかった。昨今話題なのは確かみたいですけど。ま、私のようにわからない人のために小冊子で金田一たちが説明してくれるのでしょうが。

しかし、描き下ろしじゃないとはいったいどういうことなのか。じゃあどう説明してくれるってんだ?わからん・・・。

 

 

 

 

この巻に収録されているのは八咫烏村殺人事件」

あらすじ

高校生の金田一一七瀬美雪は、剣持警部に頼まれて6年前の弁護士失踪事件を調べるために2週間後にはダムの底に沈み廃村となる「八咫烏村」を訪れる。

村での最後の来客として残っている村民全員に歓迎され、村で何百年も続いてきた神事“八咫烏詣”に参加した金田一たちだったが、五重密室状態の社の中で村人の生首となって現われるという事件が発生。

八咫烏様の怒りに触れたため、身体を喰われて首だけになってしまったのだ」

「それならまだまだ死人が出るかもしれない」

と、八咫烏荘の女将が言う通りに不可能な状況でまた別の生首が――。

突然の崖崩れによって閉鎖されてしまった村の中で金田一は謎を解くべく奮闘する。

 

 

 

 

 

 

 

 

初っ端から森の中で武将が村人に嬲り殺しにあっているシーンで完全に八つ墓村のパロディ状態。

 

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八咫烏村殺人事件」という題字も昔の火サス風味となっているし、村での神事の最中に生首が発見されるとか、「呪いだ!」と宣う老婆が出て来るなど、横溝正史色が強い、なにやらコテコテでゴリゴリな事件内容となっています。

30周年記念だし、これぞ「金田一少年の事件簿だ!」なド定番でキタなという感じ。八咫烏ってのがまたなんともアレですね。

 

作品雰囲気もですが、剣持警部の旧友の頼みで村を訪れるという流れや“生首”など、「飛騨からくり屋敷殺人事件」を思い出す。

 

 

 

37歳の事件簿だと不在な美雪が当たり前に居る喜び。はじめちゃんが溌剌とちゃらんぽらんな高校生しているのも、剣持警部と一緒に行動するのも懐かしさが込み上げてきてなにやら嬉しい。37歳の方だと剣持警部退職しちゃっていますからね。

 

37歳の事件簿と同じイブニングでの連載なので、短期間でサクッと終わらせる感じの事件かと思っていたのですが、「八咫烏村殺人事件」はこの巻ではまだ折り返し地点状態なので次の巻丸々1冊使いそう。

 

この1巻の段階では第一の事件の五重密室と、第二の事件のアリバイ工作が謎として出て来ている訳ですが、第三の事件でも犯人は不可能犯罪の演出を用意してくれているようで。

 

事件も出揃ってないのでまだどうとも推測出来ない常態なのですが、五重密室とアリバイ工作の設定はややこしいものの、ぶっちゃけ、“首だけ”の状態ならなんとかなりそうな気が。

暗闇の中で「踏み外した」「鍵を落した」と言っていたのがヒントなのかな?首から下の身体をどうしたのかも気になるところ。

ま、首だけの状態にすることに意味があるトリックになっているのは間違いないと思います。

 

 

20周年記念シリーズは全5巻だったのですが、この30周年記念の方は何巻出すつもりなのですかね。でもやっぱり37歳の事件簿の方もありますし、「八咫烏村殺人事件」を終わらせて次の2巻目で終了でしょうか。37歳の事件簿に繋がるような描写が次の巻であったりすればテンションが上がるのですがねぇ。どうなのでしょう。

 

金田一少年の事件簿30th』2巻は2022年10月発売予定。

※出ました!詳細はこちら↓

 

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金田一37歳の事件簿』と連ドラと、並行してファンとして愉しんでいきたいと思います。

 

 

ではではまた~

 

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『いぬやしき』映画 ネタバレ・感想 ラストシーンについての考察

こんばんは、紫栞です。

今回は映画のいぬやしきについて感想を少し。

いぬやしき

 

こちらは奥浩哉さんの漫画作品が原作の映画。

 

 

ある日いきなり機械の身体になってしまった初老の男性と高校生男子が対決する物語で、(見た目が)さえないおじいさんの方がヒーローで、イケメン高校生の方が悪役という珍しい設定が漫画連載当初話題になっていたなぁと記憶していますが、私は漫画の方はチラホラひろい読みした事はあるもののほぼ未読。CGアクションが前面に押し出されている作品もさほど好んで観ないのですが、機会があって、2018年公開の映画ながら今更鑑賞した次第。

なので、私がこれから書くのはあくまで『いぬやしき』の映画にみについての感想となります。

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

序盤、犬屋敷(木梨憲武)が家族や会社に冷たく当たられる場面が延々続いて世代じゃなくとも割と気が滅入る。特に娘の麻里(三吉彩花)が何か強い怨みでもあるのかというレベルでいちいち怒り顔で接してくるのが理不尽。

同級生にも「厳しすぎない?」と言われているあたり、ありふれた思春期の男親への嫌悪感を越えた態度だと思うのですが、何でここまで嫌っているのかは描かれないのでモヤモヤする。

あと、家族に買った家を「小さい」とバカにされていますが、あの家十分デカイと思う。

 

ダメ押しのように病院で余命宣告までされた後、公園で途方に暮れていたらいきなりピッカーン!ドッカーン!で、身体が兵器に全振りした機械になる訳ですが、何故、誰が“そんな事をしたのか”は最後まで観ても解らずじまい。

画面見ているだけで撃たれるとか、水が動力源とかも普通に考えると大いに疑問で、十代の頃の私ならこういった謎は気になってしょうがなかったろう部分ですが、今はいい加減大人ですから、この映画はそういった謎の解明はあえて省いているのだとわかる。描きたいテーマは別にあるのだと。

 

とはいえ、劇中で「おそらく高度な知的生命体」ですましてしまっているのは「いや、そんな安直な・・・モルダーじゃあるまいし」と、思いましたけど(^_^;)。

 

ヒーローは犬屋敷さんの方であるものの、観ているとやっぱり獅子神(佐藤健)サイドの方が気になる。

当時、獅子神を演じた佐藤健さんは二十代後半でしたので、最初に制服姿で出て来たときは「無理がある!!」ってなったんですけど、ま、役者の実年齢を知っているからそうなるのであって、知らなきゃ意外と大丈夫なのか・・・も・・・?ま、他の同級生役の方々も皆20代だったし。

獅子神は難役なので、未熟な役者さんじゃ駄目だった・・・というか、盛大に事故ることになったでしょうから、良いんじゃないかと。悪役っぷりもやはり格好良かったですし。

他の役者さんも含めこの配役で良かったと思います。木梨さんも芸人のイメージが強くてコントに見えるなんて意見もありましたが、私は気にならなかったですね。伊勢谷友介さんや生瀬勝久さんがすごいチョイ役で出演していてビックリしました。

 

 

犬屋敷と獅子神を繋ぐ役割をしている友達の安堂(本郷奏多)がすごいマトモでなにやら安心する。虐められて引き籠もっていたのによく擦れずに真っ当さを保てるもんだ。バンバン人が死んで悪意ばっか見せつけられる物語なので、こういう子いると無性に安心する。人としての当たり前の感情を思い出させてくれるというか。

 

一家惨殺をした事が発端となり、獅子神は追い詰められて最悪の殺人鬼に成り果ててしまう訳ですが、その肝心の一家惨殺をした理由がわからない。浮気して別の女と家庭を持っている父親を殺すのを思いとどまったのは母親(斉藤由貴)の想いを受けてのことだとは察することができるのですが、その後になんでまったく関係ない一家を殺しちゃうのか。

 

獅子神に告白してきて匿ってくれるクラスメイトの女子・渡辺(二階堂ふみ)の存在も唐突すぎて無理やりとってつけたように感じてしまう。

 

観ながら、多分原作の漫画では獅子神の感情描写はもっと丁寧で、渡辺も大変に重要な人物なのだろうなぁ~と。

こう感じさせてしまうのは映画として問題があるのでしょうが、原作漫画は全10巻あるとのことなので、説明不足になってしまうのは致し方ないことでしょうかね。

 

 

 

 

 

 

 

ラストシーンについて

と、思い返してみると気になるところは多々あるのですが、ラストシーンがすべてを払拭してくれるぐらい良くて個人的に満足しました。

単純なもんで、映像もので最後が良い、或は気に入ると作品全体が良かったような気分になる。終わりよければ何とやらってヤツですね。今回この記事を書こうと思ったのもこのラストシーンがあったためです。

 

本編は犬屋敷さんが娘の麻里に優しげな眼差しで見られながらお味噌汁を飲んでいるところで「いぬやしき」と映画のタイトルがバーンと画面に出てエンディングが流れるのですが(ところで犬屋敷さん、仕事は大丈夫なのか?サボりまくってたけど)、このエンディング、途中で止まって犬屋敷家とは別の場面が流れる。

 

なんでエンディング途中にシーンが差し込まれているのかなぁと最初疑問でしたが(せっかちな人はエンディング流れてすぐに退室したり、ディスク停止させちゃったりしますからねぇ・・・)、犬屋敷さんを主人公とする『いぬやしき』の物語はあそこで終了だからなのかなと。このラストシーンには犬屋敷さんは関係ないですからね。

 

で、その本当のラストシーンはというと、右腕(おそらく右脇腹も)失った状態の獅子神が、序盤でのシーンのように漫画雑誌を持って安堂の部屋を訪ねてくるといったもの。

 

「こわいか?」と聞く獅子神に、「こわいけどうれしい」と雑誌を受けとり、「生きてたんだね」という言葉の後に“良かった”とは続けないところが安堂の感情がせめぎ合っているのだと窺える。そんな姿に獅子神は「お前はかわらないな」と言ったんでしょう。

だからこそ、「友達だもん」と言う安堂の言葉も本心からのものだと獅子神は受け止められたのだろうなぁと。

安堂が目を離した隙に獅子神は消えてしまい、開け放たれたベランダの窓を切なそうな何とも言えない表情で見る安堂の姿でこの映画は終わっています。

 

 

獅子神が生きているラストなので続編があるのではないかとも噂されていたらしいのですが、私はこのラストだからこそ続編はないだろうという気がする。もう獅子神はあんな殺戮行為をしないだろうと確信が持てるラストになっていると思うので。

 

お二方の演技が良いのも相まって感動的なラストになっているのですが、このラスト、原作漫画とは全然違うものらしい。

漫画でも同じように殺戮を繰り返した後の獅子神が安堂の部屋を訪れる場面があるけれど、友達に会いに来ただけの獅子神に対し、安堂は酷い事を言って突き放してしまい(獅子神はそれだけの事してるので当然なのですが)、後になって獅子神がとった行動を知って後悔することになるのだとか。

 

映画のあのラストシーンは安堂の幻覚だったのでは?なんて説もあるらしいです。獅子神が部屋を立ち去る時に音がしないのはおかしいとかで。

漫画雑誌を受けとっていたし、幻覚ではないんじゃないかとは思うのですが、映画は原作漫画のifストーリーというか、一種のマルチエンディング的なものとして描いているのかもしれない。あの時こうしていたら・・・みたいな。

 

いぬやしき』は映画公開前の2017年にアニメ化されていて(アニメは概ね原作通りのストーリー)、

 

#3 安堂直行

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安堂直行のみアニメ版も実写映画版も同じ本郷奏多さんが演じているのですが、安堂くんだけ同じ俳優を起用しているのはそのためなのかもしれない・・・と、いうのは考えすぎか。

 

 

この映画が気になった方は是非、エンディング流れた後も少しお待ちいただいて、本当のラストシーンまで観てほしいと思います。

 

 

ではではまた~