夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『近畿地方のある場所について』考察もしたくないほど怖い!夏のオススメ本~⑬

こんばんは、紫栞です。

今回は、背筋さんの近畿地方のある場所について』を読んだので感想を少し。

 

近畿地方のある場所について

 

2023年話題のホラー本

こちら、2023年1月~4月まで小説投稿サイトカクヨムにて連載されていたもので、書籍は同年の8月に刊行されました。

kakuyomu.jp

 

カクヨム】発のホラー小説ですと、当ブログでは前に芦花公園さんの『ほねがらみ』を紹介しましたが、

 

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この『近畿地方のある場所について』も『ほねがらみ』同様にネットや口コミで話題になっての書籍化。世間が騒いでいるのが気になって、毎度の事ながら興味本位で読んでみた次第です。

 

あらすじはCMを見てもらうと分かりやすいのですが↓

 


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ライターの私(背筋)は、新人編集者で友人の小沢くんに「オカルト雑誌の特集記事に協力して下さい」と依頼される。

初仕事で休刊したオカルト雑誌の別冊編集を任された彼は、雑誌のバックナンバーや資料、読者からの手紙などをあさっているうちに、“近畿地方のある場所”が共通する怪談が散見していることに気がつき、それをテーマに特集を組もうとしていた。

しかし、二人で調査と考察をしていた最中に小沢くんは「現地に行ってみようと思う」と言い残して消息を絶ってしまう。

私は小沢くんを捜す情報を募るため、これまでに調べた怪異や資料を“近畿地方のある場所について”と題して本にまとめていくが――。

 

 

 

 

 

 

 

ってことで、本には“近畿地方のある場所”が関わっていると思われる怪異体験談、ネット掲示板の書き込み、読者の手紙、過去のオカルト特集記事等々が幾つも収録されていて、合間合間に「私」(背筋)視点で小沢くんとのやり取りや考察が描かれるという構成。

 

バラバラの出来事が、読み進めていくと繋がっていって“恐ろしいもの”に行着くこととなる。

 

 

小野不由美さんの残穢

 

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上記した『ほねがらみ』などと同じく、“まるで実話のように”描かれるモキュメンタリーホラーで、怖い話を収集していたら恐ろしい目にあうこととなる点も共通しています。ミステリー要素があるところも。

 

モキュメンタリーホラーだと、どうしてもパターンが決まってしまうのですかね。ミステリー要素があるのは読者を最後まで惹きつけるためか。

 

とはいえもちろん、各作品描き方やテイストは異なります。『近畿地方のある場所について』は、なんだか本当にオカルト雑誌の別冊版を読んでいる気分になる作りで、小説作品としての印象がかなり薄いため、より実話感が漂う一冊です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダメです

ネット普及のせいか、昨今の話題作ホラーはモキュメンタリーものが多い印象ですね。元々、ホラーというのは実話だという前提で語られる方がやっぱり怖いですし、怖い話を集めると怪に行き逢うといった設定のルーツは百物語などから来ているのかと思う。

どんなに時代が進もうと、ホラーってのは古臭い要素が含まれるものです。人間の本質が変わらないので、怖がるものも変わらないということでしょうか。

 

ホラーを映像で見るのは苦手ですが、文章でなら比較的平気な私。

今まで読んできたホラー小説、近年怖さレベルの指針にされたりする最凶ホラーと名高い『残穢』なども、鈍感なのか、読んでいる時はさほど怖さを感じなかったのですが(※後から何だか怖くなる)、この『近畿地方のある場所について』は怖かったですね。

 

「ジャンプ女」「戸から顔だけを出す男」など、想像するとダメでした。怪談なので、どの話もありきたりと言えばありきたりなのですが、どうもこの本はダメだった。

 

モキュメンタリーで全部創作だとは分かっているのですが、絶対に夜に一人では読みたくない本です。

 

伏線が凄いというミステリー要素に惹かれて購入したのですが、超常現象が前提なので話が繋がっていっても釈然としない気がしちゃいますし、なおかつ、伏線回収の面白さを感じる余裕が私にはなかったです。怖くって。

 

いつもは細部の繋がりや謎が気になる質なのですが、この作品に関してはもはや考察もしたくないと思わされました。

 

 

 

 

袋とじ

この書籍、最後の最後に読者にとどめを刺すものが待ちかまえています。「取材資料」と題した袋とじが巻末に付いているのです。

 

正直、一番恐怖した瞬間はこの袋とじに気がついた時でした。

これが、真っ黒なところに「取材資料」と白抜き文字で書かれていて見るからに怖い。しかも袋とじ。一方で、どうりで中古本が出回っていない訳だと納得した。

 

もう、戦慄して。封を切るのだいぶ躊躇しましたよ。こんなの絶対に怖いに決まっていますもの。ホラー書籍に袋とじって。

かなり恐る恐る、ビビりながら袋とじの中身を見ていったのですが・・・・・・やっぱり、やられましたよ、最後の“アレ”に。

 

知らない人にとってはなんてことないものなのだろうと思いますが、読んだ後に見ると何とも禍々しい。

もう見たくないですし、本を部屋に置いているのも嫌。燃やしたい。瞬間的にこの本をお焚き上げしたい衝動に駆られましたよ。

 

 

そんなわけで、怖くってあまり深く考えたくない感じになってしまったのですけども。

強いて言うなら、目次がないのは不便さを感じましたね。本は300ページほどのボリュームですが、10ページ以下の話が多数なので、目次がないと繋がりらしきものを見つけても振り返るのが大変。でも、これもある種恐怖の演出なのかも?

 

仕掛けに関しては、オカルトライターへの自身の勝手な思い込みを痛感させられました。何も明記されていないし、誘導する描写もないのに。いやはや、ダメですね。

 

ホラーが苦手な人にはオススメ出来ないですが、「とにかく怖いのが好き!」な人は是非。

 

 

見つけてくださってありがとうございます。

 

 

ではではまた~

映画『変な家』感想 怖い?ひどい?原作との根本的な違いを解説

こんばんは、紫栞です。

『変な家』の映画を観てきました!ので、今回はそれについての感想を少し。

 


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原作は2021年に刊行してからというもの、売れに売れている雨穴さんの同名小説。

 

雨穴さんはウェブライター、YouTuberなど、インターネットを中心に活動をしているホラー作家で、『変な家』は先にウェブサイトのオモコロでの記事、YouTubeチャンネルの動画が発表された後、完全版として出版された作品です。

 


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原作の『変な家』について、詳しくはこちら↓

 

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雨穴さんのことをよく知らない友達二人も漫画広告などで内容が気になっていたらしく、

 

映画に興味をそそられていて、なおかつ、私がオススメで「おせち動画」

 


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を見せたらノリで「じゃあ三人で映画観に行こうぜ!」ってなりまして。※おせち動画、本当にオススメです。

 

実質、雨穴さんファンの私に友達が付き合ってくれる形になった訳ですが・・・映画を観終わった後で、今回友達二人が付き合ってくれて本当に良かったと感謝しましたね。私一人じゃ、無理でした。そういう映画だった・・・・・・。

 

 

 

前評判

私が観たのは公開二週目の日曜日だったのですが、最初の週の時点で結構「賛否両論」「原作と違う」「怖い」等々の意見がネットで飛び交っておりました。

 

原作ありの映像化ものですと私は原作を先に読んでから観ることが大半なので、原作と違うだろうことも、原作にファンが多いものほど賛否が分かれるものだということも、もはや慣れっこ。

 

「ハイハイ、想定内ですよ」なんて、どっしり構えていたのですが、「怖い」という意見が多いのには「?」でした。

原作も怖いちゃぁ怖いですが、心霊現象が起こったり襲われたりするようなストーリーではないので、そんな皆がビビるようなものになっているとは思えないのだけど・・・と、困惑いたしました。

 

そして意外だったのが、公開初週の興行ランキングが1位発進だったこと。

お金がいっぱい使われている超スペクタクルではないし、派手さのない地味な邦画だし、失礼ながら豪華キャスト勢揃いっていう代物でもない。興行1位狙いの映画ではなかろうと思っていたため、驚きました。ホント失礼ですけど。

 

雨穴さんが人気なのはもちろんですが、『変な家』という作品に対して前々から興味を持っていた人が殊の外多いようで。私の友達もそうでしたけど、このタイトルとか間取り図での導入部分とか、「どんなお話なんだろう」って関心を引くのでしょうね。つくづく戦略が上手いなぁと改めて感服です。

 

 

読むのは比較的平気でも、映像でホラーを観るのは得意ではない私。

「え?怖いの?」と、少しビビりながらも「いやいや、でも私、原作読んで内容知ってるからね。大丈夫大丈夫」な~んて言っていたのですが・・・劇場で観終わって友達と口々に言ったのは「怖いじゃん!完全にホラー映画じゃん!」でした。

 

 

 

 

 

以下、若干のネタバレを含む感想となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

原作との違い

家の間取り図というわずかな手掛かりから考察をしていく過程が面白い書籍『変な家』。

行着く真相がゾッとする内容なので大きなくくりでいうならホラー小説で間違ってはいないのですが、“間取り図ミステリー”と銘打たれている通り、原作はあくまでミステリーが主軸です。

雨穴さんが描くのは「ホラーミステリー」。怖いのは怪奇現象などではなくって、恐ろしい事を企てる人間の情念と執念。

理論的に推理していった結果、人の悪意に触れる訳です。

 

雨穴さんは苦手意識がある人でも受け入れやすいようにと、書籍では図解を多用、文章表現はなるべく簡素にするなど、読書初心者向けの作品作りをされています。

YouTubeチャンネルのホラーミステリー動画では、映像や音声による脅かし・心霊現象・グロ表現といった、ホラーでの定番技法をあえて使わないことで、ホラーが苦手な人でも観やすいように、楽しめるようになっている。

 

 

で、映画はどうなっているかというと・・・。

 

ツメが剥がれるほど床をひっかくグロテクスな子供、長い髪を振り乱したやたら怖い顔の女、脅かす気満々のBGM、暗い画面、どう考えても行かない方が良い場所に単身乗り込んでいく主人公たち、襲いかかってくる“イッチマッテル”人々、解決したと見せかけてからの“終わってませんよ”なラスト。

 

原作ではあえてやっていなかったホラーの定番技法をすべて網羅するかのような、ド直球ホラーな映画に仕上がっている。

 

そんなですので、必然的に原作のミステリー部分はおざなりになっています。

肝心の間取り図からの考察がよく解らないし、そもそもさほど推理シーンがない。辻褄が合わない部分が多々あり、原作での入り組んだ箇所は簡素にされて、丸々省かれている事件もあり。真相も結末も違う。

 

 

原作ファンが「全然違う!」となるのも、ミステリーだと思って観に行ったらガチガチホラーで「思っていたのと違う!」となるのも、当然。

 

賛否が分かれるのは火を見るよりも明らかな代物。これは“あえて”なのですかね。原作の“あえて”の“あえて返し”なのかこれは。

 

原作と同じなのは、近代的ホラーから古典的日本ホラーへと移行するところぐらいですかね。

 

 

 

 

怖い!

とはいえ、原作とは別物だと割り切れば、ホラー映画として充分な面白さがあると思います。私はホラーに詳しくはないですが、ホラー好きが求めることを確りやっている映画だという印象を受けました。

実際、一緒に行った友達も「怖かったけど面白かった」と言っていましたしね。

 

 

原作は本当にテーブル囲んでお喋りしている場面でしか構成されていないので、原作ファンとしても愚直に再現するだけじゃ画的に耐えられない、映画としては地味すぎてダメだろうというのは分かるのですよ。

 

なので、説明が難しところは大胆にすっ飛ばし、ホラーとしてのエンタメに振り切ったのだろうと理解は出来る。実際、半端に煮え切らない感じでやるよりは潔くって良いのではないかと思います。

 

しかし、映画っていうのは2000円払って暗い箱の中で鑑賞する特別なものですからね。苦手な映像を二時間、お金払って足を運んで観るなんて物好きはまずいない。

ホラーは苦手な人が多いジャンルですから、ミステリーだと見せかけてガチホラーっていう騙し討ちはやはり不親切かと。事前に注意しておいて欲しいものです。

 

 

私も、序盤でいきなり怖い女の人が出て来て「えええ。何この怖い人。知らないんだけど」ってなって慌てましたよ。

人物設定やシチュエーションの違いは「フムフム、そう変えますか」と観ていたのですが、こんな怖い女の人に心当たりはマジでない。原作の何処の要素を探しても見当たらない。何が起こったのか、私は何の映画を観に来たのか!?ってなりました。

 

それ以降はもうずっとハラハラしっぱなし。原作を知っているのにこんなに終始ハラハラしながら予想も立てられずに観た映画は初めてかもしれません。

 

主人公の雨宮(間宮祥太郎)視点のカメラで暗いところを進むという演出も多くあり、お化け屋敷気分を味わわされました。これもホラーでは定番の演出なのでしょうが。私はホラー目的で観に来たんじゃないからさ・・・(^_^;)。

 

もはやなんでも怖く見えてくるといいますか。

 

出演している川栄李奈さん、前髪がやたら長くって最初は顔がほとんど見えない。これもまた得体の知れなさを演出するためのものなのでしょうけど(※ちなみに、原作だとこの人物はシュートヘア)。

「前髪切れよ」って終始思いながら観ていたのですが、この髪型が劇中に出て来る怖いお面に似ていて、観ているうちに川栄李奈さんの顔もなんだかお面に似ているように見えてきて、疑念が晴れた後も顔が怖く見える瞬間が何度もありました。もちろん、川栄李奈さんの顔を怖いなどと思ったことは今まで一度も無いのですが・・・。

 

とにかくお面が怖いんですよ。妙にリアルで精巧で。美術優秀だなとか変に感心しました。

雑なつくりである雨男の配信の時の仮面は雨穴さんを意識してのものでしょうけど、雨穴さんってよりもスクリームみたいで怖い。本来の雨穴さんは人格も含めてもっとカワイイです。

 

誰か分からないといえば、エンドロールで石坂浩二さんの名前があった時も「え!?どこに出てた?」と、なりました。問題の家のお祖父さん役ですね。髭とヘアスタイルでまったく分からなかった。

お祖母さん役を根岸季衣が演じているのも気が付かなかった。ひょっとしたら、私が怖がってちゃんと画面見てなかっただけなのかも知れませんが。

高嶋政伸さんは分からないなんてことはないですが、これまた前髪がウザいほど長い。

 

 

 

 

 

 

 

原作を読もう!

栗原さん役を佐藤二朗さんが演じているのですが、これが

「栗原さん」というより“ただの二郎さん”

なんですよね(^_^;)。せっかく容姿イメージが原作と近いので、もうちょっと「栗原さん」に寄せた演技をして欲しかった。

実は真っ先に浮かぶ不満点はそこだったりする。

 

映画の雨宮と栗原コンビは、これはこれで良かったです。雨穴さんの動画のように、コミカルなやり取りとかももっと見たかったところですが。最後コンビで締めてくれていたのは嬉しかった。

 

しかし、あの最後はおかしすぎましたね。

 

なんでアンタの家にそんなモノがあるのさ。関係ないのに。つーか、アパートでしょ、ここ。

 

このラストについて考察しようとしている人もいるようですが、しなくて良いと思いますよ。考察するような意味は無いでしょうから。

こういう終わり方、ホラーの定番なんでしょうかね。理屈に合わなくっても怖ければいい!みたいな(こんな断言をするとホラーファンに怒られるだろうか・・・)。それにしたっておかしいですが。ケーキ食べるとこ、見たかったなぁ・・・。

 

鑑賞後に冷静になってみると、最後だけじゃなくって、序盤からツッコミどころだらけなのですけど。

売り家なのに爪痕や血痕が残っていて、隠し通路もふさいでないとか。不動産屋さん何やってるの?と、いうか、爪痕や血痕があること自体が真相と照らし合わせるとおかしいし。

 

鑑賞後、ご飯食べながら友達と「アレがおかしい」「ここが変だと」と言い合いましたよ。「ち、違うんだ!原作は、もっと、え~と・・・」と、しどろもどろになった。別物すぎて説明が難しいのですよね。帰宅後、思わず原作丸々読み返しましたよ。

 

 

ホラー映画として割り切るなら出来は悪くないと思いますが、やはり原作ファンとしてはミステリー要素がこんなに薄まってしまっているのは不満です。

結末の喜江さん(斉藤由貴)に関してのどんでん返しも、原作は非常に入り組んでいるからやりにくかったのでしょうけど、やっぱり原作の方が好き。ゾッとして考察する余地が残るあの感じが。

 

 

不満はありますが、観た後に友達が「原作も読んでみたい」って言ってくれたので、結果的に御の字でした。原作普及に役立っているなら、映画化された意味もあるかと。

 

原作ファンとしてはこの映画で『変な家』を解った気になられちゃ困りますから、色々疑問に思った人は是非、是非原作を。

原作は怖くないし、ちゃんと“間取り図ミステリー”していますので、よろしく!

 

 

 

ではではまた~

 

 

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『りら荘事件』『リラ荘殺人事件』違い、大幅改稿・・・”館もの”の先駆的作品、諸々解説

こんばんは、紫栞です。

今回は、鮎川哲也さんの『りら荘事件』について少し。

 

りら荘事件 (講談社文庫)

 

あらすじ

荒川の上流、埼玉県と長野県の境にある《りら荘》。レクリエーションの場として学生に開放されているこの寮に、夏期休暇を過ごすため七名の学生がやって来た。

その日から、殺人事件が次々と発生。地元民の転落死を皮切りに、次々と殺されていく《りら荘》の人々。遺体の側には必ずスペードのカードが番号順に置かれていた。

止まらない連続殺人事件。捜査中にもかかわらず繰り返される凶行、掴みきれない犯人像。手詰まりとなった刑事たちは状況を打開するべく、とある男に解決を依頼するが――。

 

 

 

 

 

 

“館もの”の先駆的作品

『りら荘事件』は1956年9月~1957年12月の間、世文社の『探偵実話』で連載されていた長編推理小説

鮎川哲也さんは戦後に活躍した作家で、今ですと鮎川哲也賞という賞の名前で知っている、耳にしたことがある人も多いですかね。(かくいう私がそうなのですが)

本格推理小説界に多大な貢献をした作家で、ゴリゴリの、真っ正面からの、これぞ!という本格推理ものの作家さんってイメージ。私の中で「鮎川哲也賞」がそのイメージなので、作家さんもそのままのイメージになっているのですが。

 

現在の本格推理界の様々な作家がよく作品名をあげている『りら荘事件』が気になって買ったものの、読まないまま積み本にしてしまっていたのですが、この度やっと読んだ次第です。

 

一般的には鮎川哲也作品ですと【鬼貫警部シリーズ】が有名で代表作。昔、火曜サスペンス劇場で放送されていた糖尿病の刑事さんのシリーズって言われるとピンとくる人が多いですかね?火サス世代じゃないと分らないでしょうが・・・(^_^;)。ちなみに、糖尿病故に家族と繰り広げられるコミカルなやり取りは完全なドラマ版オリジナル要素で、原作の鬼貫警部は独身設定。

 

『りら荘事件』は【鬼貫警部シリーズ】ではなく、貿易商の星影竜三が探偵役を務める【星影竜三シリーズ】の長編。このシリーズは長編が三作品刊行されているのですが、『りら荘事件』は長編の第一作目。先に創作同人誌に掲載された「呪縛再現」という中編を原型として長編化したもので、鮎川哲也作品の中でも初期の作品ですね。

 

本格推理の世界では定番のジャンルの一つ、“館もの”の先駆的作品だと色々な紹介文で書かれています。

 

確かに、館に泊まりに来た客達が次々と殺されるというのは館ものの“それ”ですが、物語の幕開け早々に警察が介入してくるし、一旦館を離れて東京に行ってしまう人物やら、途中からちょこちょこと外部からやって来た人物が増えていくなど、本来館ものとセットとされる閉鎖空間設定のクローズド・サークルでは全然無いです。

 

こんなにオープン状態なのにね、頑なに「りら荘」で殺人事件が起き続けるのですよ。「ちょっと警察!もっとちゃんとして!」と言いたくなりますね。ま、そこら辺の不自然さが考慮されて進化したのが、現在で一般的とされる館もののクローズド・サークルなのかも。

 

松本清張などリアリティのある社会派ミステリが人気を博していた時代に発表されたため、

 

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天才的名探偵がババンと解決する正統派推理小説の『りら荘事件』は「古臭い」「荒唐無稽だ」との声が当時はあったようです。

 

しかし、今読むとこの古臭さや荒唐無稽さが逆に新鮮で面白い。驚く展開ばかりで、犯人も最後まで解らなかったし、名探偵が最後に鮮やかに解き明かしてくれるのはやはり気持ちいいです。

 

 

 

 

『リラ荘殺人事件』との違い

『りら荘事件』には『リラ荘殺人事件』という別タイトルが存在します。検索するとタイトルが二つ出て来て「どういうこと?」となってしまう。

 

連載時から、本来のタイトルは『りら荘事件』です。

 

講談社文庫版に収録されている新保博久さんの解説によると、1958年に世文社から『りら荘事件』のタイトルで刊行されて以来、この長編推理小説はいろんな出版社から版を改めて刊行されていて十種類以上あるのですが、どうも、1960年に小説刊行社から再刊される際に出版社の方で勝手に『リラ荘殺人事件』と改題して出し、これが定着してしまったがために、後に別の出版社から再刊されるときにも二つのタイトルが出回る事態になったのだとか。

作者の鮎川哲也さんも「自分が知らないうちに『リラ荘殺人事件』ってタイトルが定着してしまっている・・・」と、なっていたそうな。

 

どうもこの「小説刊行社」たる出版社、作者の意向を無視して本を出す悪癖があったようで、他の作家さんの本でも色々やらかしていたらしい。今ではなかなか考えられない横暴ぶり。時代を感じますね・・・。

 

 

さらに厄介なことに、この長編推理小説1968年に大幅改稿されており、改稿前の「旧稿」と改稿後の「新稿」、二つの内容が存在している。

 

上記したように、タイトルで旧稿と新稿を分類しているなんてこともまったくないので、一時期はタイトル違いと内容違いでそれぞれ出回るという、混乱の極みになっていたようです。

 

気になる改稿部分ですが、最大の違いは最後の殺人に関して新稿ではトリックが一つ追加されて物語全体の整合性が高められているのだとか。「そりゃかなりの違いじゃないか!」って感じですね。

後、刑事さんがシリーズ馴染みの人物に変更されていたりするようです。鮎川哲也さんは再刊の度に加筆修正をするタイプだったらしく、本によって表現など細かな違いは沢山あるとのこと。

 

新保博久さん曰く、大幅改稿前後を見分ける方法は、第八章が「由木の出京」なら旧稿で、「熱い街で」なら新稿。

 

とはいえ、今出回っているのはほぼ新稿の方で、旧稿の方は入手困難になっていますかね。

 

私が読んだのは文庫版では初の定本化といっていい講談社文庫版。因みに、りら荘は講談社の別館を意識して書いたものだとか。

 

 

他、今出に入れやすいのは東京創元社

 

 

 

 

KADOKAWA

 

 

 

ですかね。

いずれも内容は同じ大幅改稿後の新稿です。

 

 

 

 

以下若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パズル小説

個人的に、今作は読んでいて驚きの連続でした。

とにかく、どんどん人が死ぬ。連続殺人ものだとは読む前から知っていたのですが、2~3人ぐらいだろうと思っていたら、あれよあれよと7、8人も殺される。

 

そして、探偵役すらも見当が付けられない。途中参加の警部かと思えば違い、さらにその後に急に登場した先輩かと思えば違い・・・。

 

解決の兆しが全然見えないままに終盤へと突入。なので、最後に星影竜三が颯爽と現われて鮮やかに推理を披露するシーンはやたらに痛快に感じることが出来るのですが。本の裏表紙などに“星影竜三シリーズ”と書かれているのでアレですけど、本当は【星影竜三シリーズ】だと知らないで読む方が楽しめる本ですね。

 

館ものですとメンバーのうちの一人が探偵役を務めるのが定石なので、外部の人間がいきなり出て来てあっという間に解決するのは新鮮に思えますが、事件が全部終わった後にやって来て天才的謎解きを皆の前で披露するというのは“探偵小説”のあるべき姿。この小説はまごうことなき“本格推理小説”なのです。

 

社会派ミステリが人気だった刊行当初、この小説のような探偵小説、推理小説には冷ややかな声が多々あったようです。

やれリアリティがない、子供だましだ、文学的でない、等々。

 

『りら荘事件』は犯人の動機がどう考えても軽薄だし、人が死にすぎだし、感情移入出来る人物もいない。文学として“人間を描く”のは度外視していて、確かに「クイズ本」「パズル小説」と揶揄されても致し方ないのかもしれません。

 

しかし、読者を楽しませる通俗娯楽として書いているのですから、これはこれで良いじゃんと私は思います。文学的でないとか、お門違いな意見ですよ。

 

揶揄だろうが何だろうが、『りら荘事件』はパズル小説として充分な面白さがあります。

先の展開が読めず、メイントリックと呼べるようなハデなトリックがないながらも各事件に仕掛けが用意されていて、細部まで密に作り込まれている。

 

そして何より、最後まで犯人が解らない。殺されまくって容疑者が二人しか残らないなんて事態になるのですが、それでも全然解らないのです。これって凄いことですよね。

 

 

伝統的な探偵小説を愉しみたい方は是非。

 

 

 

 

ではではまた~

『ノイズ』映画 ネタバレ感想 絵日記と銃声の謎とは?

こんばんは、紫栞です。

今回は、映画『ノイズ』を観たので感想を少し。

 

ノイズ 通常版 DVD

 

こちら、2022年に劇場公開された日本映画。

2018年~2020年まで「グランドジャンプ」で連載された筒井哲也さんによる漫画作品『ノイズ noise』が原作。

 

 

映画化される漫画作品となると長期連載ものが多いですが(人気作だと連載期間が長くなるのは当然ですが、そのぶん、映画化となると編集・構成力が問われることとなる)、この原作漫画は手に取りやすいボリュームで全3巻。

 

AmazonPrimeの見放題対象作品になっていたので、観てみました。

 

 

公開当初にTVCM見て気になっていたのですよね。↓

 


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私は原作漫画ほぼ未読です。映画公開当初に何話か無料になっていたのを読んだだけですね。

 

 

 

あらすじは、

愛知県のとある島。過疎化が進んでいたこの島では、泉圭太(藤原竜也)が栽培に成功した黒イチジクで島起こしをしようと活気に溢れていた。

そんな矢先、島に不審な男が現われる。家の敷地内に侵入し、怪しげな言動をする男に詰め寄った圭太は、突き飛ばした拍子に男を殺害してしまった。

島起こしの要である圭太が殺人を犯したとなれば、島の再興が頓挫してしまう。その場に居合わせた幼馴染みの猟師・田辺純(松山ケンイチ)と、島の駐在・守屋真一郎(神木隆之介)にそう説得された圭太は、三人で協力して事件を隠蔽することを決意するが――・・・。

 

と、いったもの。

 

藤原竜也さんと松山ケンイチさんという組み合わせといったらデスノート

 

 

映画のPRもお二方の15年ぶりの再共演を全面に出してのものでした。

とはいえ、関係性も役柄もまったく違うので、この映画を観ながら頭の中でかつての『デスノート』がちらつくなんてことは全然ないです。『デスノート』での松山ケンイチさんは漫画に寄せた印象的なメイクをしていたので見た目が違いますしね・・・。もちろん、お二人の演技に依るところが大きいのもあるでしょうが。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

やり切れてない

何もない孤立した島に来たヨソ者の男。死体を埋めてしまえば簡単に事件を隠蔽出来るだろうと算段していた幼馴染み三人ですが、ヨソ者の男の正体は元受刑者で、保護司を殺害して島をうろついているところだった。

消息不明になった二人を追って県警が島に来てしまったことで死体の処理が思ったように進められず、右往左往しているうちに事態は悪化していってしまうと。

 

村、町、島など、小さな共同体の中で起こる連鎖殺人や恐慌状態を描くパニック・サスペンスで、ミステリ的仕掛けもあるものかと思って観たのですが・・・どうも、私が期待していたものとは違いましたね。

 

全体的に、ストーリーが弱いといいますか。連鎖殺人もそこまで連鎖しないですし、島全体でパニックや暴動が起きる訳でもない。県警の刑事さん(永瀬正敏)が一人で興奮して怒鳴り散らしているだけで、ハラハラドキドキもしない。

最後の仕掛け・裏切り者に関しても、途中で何度も匂わせる描写があるし、他に候補者もいないので驚きはない。

 

そもそもの発端となる事件が、噛みつかれて突き飛ばしたら打ち所が悪くって死んじゃったという、殺人というよりほぼ事故と呼べるようなもので、「バレたらお終いだ」という緊迫感がさほどないんですよね。

その後に起こった出来事も、外野の二人が勝手にヤリ合ったって感じだし。バレちゃっても別に・・・って気がしてしまう。むしろ、正当防衛だったとさっさと白状してしまえばいいのに~って。

 

圭太が捕まってもそこまで長期間刑務所に入ることにはならないだろうし、イチジク栽培も別の人に引き継いでで大丈夫でしょうよ。現に、終盤のシーンでは妻の加奈(黒木華)が特に問題も無くイチジク栽培続けているみたいだったし。

 

もっと島全体でとんでもない、酷いことになる物語でどんでん返しがあるのだろうと思っていたので、

※こんな感じの↓

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肩透かしでしたね。

CMから受ける印象とは大分違う映画でした。

 

パニックものとしても、サスペンスとしても、ミステリとしても、“やり切れていない感”ですね。終わり方もスッキリしないし、疑問が残る。

 

 

 

 

 

 

 

 

絵日記と銃声

幼馴染みである純の画策により、圭太は逮捕されることとなりますが、捕まった後で圭太が言う「気づいていたのに見て見ぬふりをしていた」は分るんですけど、「信じてやってくれ」って罪をかぶっているのは納得出来ない。今まで苦しめてきたからおわびってこと?でも、陥れられて尚そんなことしてあげるのはなぁ・・・。

 

映画の最初に娘のえりなちゃんが書いた絵日記の文章が読み上げられ、終盤では文章と共に絵も出て来るのですが、この絵が何やら意味深。ひまわりと圭太達家族三人に加えて純も描かれている絵で、加奈が圭太に見せながら「覚えてる?」と聞くのですが・・・。これは、単純に幸せだった日常が一変してしまったことを哀しんでいるのか、それとも別に何かあるのか・・・。

 

ちょっと意図が解りにくいし、最初と最後に出して物語をまとめるのに、この絵日記はあまり相応しくないような気がする。唐突なんですよね。子供はこの映画では空気状態ですから。

純視点の何かを最初と最後で挿入しての方が良かったのではないかと思います。

 

 

出来が良く、自分が欲しいものすべてを持っている圭太に幼少から劣等感を抱いていた純。

予期せぬ殺人が起こり、この事態を利用して圭太を陥れることに成功しますが、圭太を排除したところで、圭太が持っていたものが自分のものになる訳ではないと突き付けられる。

残るのは真一郎を自殺に追い込んでしまった後悔と、親友を裏切った罪悪感だけ。

 

 

最後の銃声ですが、絵日記と同様に様々な考察がされているようですね。加奈とえりなを撃ったのだろうとか、自害したのだろうとか。

 

私は単に、あんな事があった後も前と同じ日常に戻って狩猟しているのを見せることで、悲愴感や焦燥感を示す演出なのだと思っただけだったのですが、状況としては自害したととる方が自然なのかも。真一郎も拳銃自殺しているし、墓参り後にそのまま・・・ってのは、如何にも“それっぽい”。

個人的に、加奈とえりなを殺害したなんてことはないと思います。と、いうか、思いたいですね。

 

 

 

 

演技の力

ストーリーは映画にするには弱いと感じてしまいますが、終盤の“わかりにくさ”を抜かせば、不穏さ漂う演出は悪くありません。

純の部屋のストーカーのような大量写真はいただけなかったですが。あれは本当に不要な演出だったと思う。

タイトルの「ノイズ」を町長(余貴美子)に言わせるのも何か無理矢理感あり。

 

 

この映画、なんといっても俳優さんたちが皆素晴らしいです。

藤原竜也さんと松山ケンイチさんはもちろんとして、思い詰めてしまう駐在・真一郎役の神木隆之介さん、リアルすぎる不快感と嫌悪感漂う受刑者・睦雄役の渡辺大さん、圭太の妻・加奈役の黒木華さんも素晴らしい。主要人物以外にも脇役で実力のある豪華なキャスティングがされていて、無茶な場面にも説得力を与えてくれています。

 

と、いいますか、役者さんの演技によって見応えのある映画に“ギリギリ”なれているのではないかと。

役者の力が無かったら相当酷い出来になっていたと思いますね。演技の重要さを改めて感じさせてくれる映画でした。

 

 

諸々含め、気になった方は是非。

 

 

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

『ゲームの名は誘拐』ネタバレ・解説 原作小説と映画の違い

こんばんは、紫栞です。

今回は、東野圭吾さんのゲームの名は誘拐をご紹介。

 

ゲームの名は誘拐 (光文社文庫)

 

あらすじ

腕利きの広告プランナーである佐久間駿介。金を稼ぎ、適当に女遊びをして順風満帆な日々を過していた彼だったが、ある日、手掛けてきた一大プロジェクトをクライアントの副社長・葛城勝俊の鶴の一声によって潰され、プロジェクトのリーダーからも外されてしまう。

屈辱感に満たされて酒に酔った佐久間は、出来心から直接会って問い質してやろうと葛城の屋敷へと出向く。葛城邸を前にして逡巡していると、若い女が屋敷から塀を跳び越えて抜け出す場面に遭遇した。

女は葛城勝俊の娘・樹理で、血の繋がりがない母や異母姉妹との折り合いが悪くて家出してきたのだという。

とりあえず樹理をなだめる佐久間だったが、翌日、会社を訪れた葛城と直接対面し、「私はゲームには些か自信がある」という言葉を聞いて葛城にゲームでの勝負を挑もうと決意する。

佐久間は樹理と結託して「誘拐ゲーム」を仕掛けるが――。

 

 

 

 

 

 

 

狂言誘拐

ゲームの名は誘拐』は、2002年に刊行された長編小説。2003年に藤木直人さんと仲間由紀恵さん出演で『g@me』(※ゲームと読む)というタイトルで映画化されていますので、

 

 

そちらの方で知っている人が多いですかね。とはいえ、映画も20年以上前なので覚えている人はあまりいないかもですが。しかし、2002年に刊行して2003年って・・・メチャはやな映像化ですね。東野圭吾だと日常茶飯事かもしれないですけど。

 

今度は2024年6月にWOWOWで連続ドラマ化されるとのことで、

 

www.wowow.co.jp

 

 

改めて原作小説を読んで、映画も観てみました。

 

 

タイトルや上記のあらすじからお分かりかと思いますが、今作は狂言誘拐もののミステリ。

連載時は『青春のデスマスク』というタイトルだったようですが、改題されて『ゲームの名は誘拐』になったようです。中身を読んだ後なら『青春のデスマスク』というタイトルが何を意図してつけられたものか分りますが、このタイトルだと内容を誤解する人が殆どでしょうから改題されたのは納得ですね。『ゲームの名は誘拐』というタイトルですと狂言誘拐ものなのだとすぐに分る。

 

映画だと『g@me』と改題されていて、これまた内容が分りにくいタイトルになっているのですけども。今度のWOWOWドラマでは『ゲームの名は誘拐』ってタイトルのままやってくれるようです。

 

狂言誘拐ものですと犯行手段に重きを置かれるミステリが多いですが、従来の狂言誘拐ものの面白さも踏まえつつ、東野圭吾作品らしい展開で驚かせてくれるミステリとなっています。

物語は一貫して佐久間の視点で描かれているので、犯罪小説としても愉しめるかと。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

気持ちが悪い

 

偶然樹理の家出に遭遇した事を利用し、佐久間は携帯電話やインターネット掲示板などを駆使して身代金三億円の奪取に成功。

樹理と金を分け合い、最後に樹理が誘拐犯に解放されたのを装って葛城邸に帰ることでこの狂言誘拐はリスク無く終了するはずでしたが、翌日になっても誘拐事件が報じられず、樹理が家に帰らずじまいであるらしいことを知って佐久間はにわかに不安になる。

数日経ってやっと誘拐事件が報じられますが、そこで佐久間は驚愕することに。テレビに映った葛城樹理の顔写真は、佐久間の前で樹理だと名乗っていた女とは別人だったのです。そしてさらに数日後には、葛城樹理が遺体で発見されたと報じられた・・・。

 

佐久間に樹理だと名乗っていた女の正体は、異母姉妹で樹理の妹である千春。

つまらない口論の末に勢いで姉の樹理を殺害してしまった千春は、動転して後先考えず館から抜け出した。そこに佐久間が接触してきて狂言誘拐を提案してきたので、千春はこっそりと父親の葛城勝俊に相談。葛城はこの事態を利用して娘が加害者であることを隠蔽し、あわよくば佐久間に罪をなすりつけようと画策した、と。

 

 

なんとも東野圭吾作品らしいどんでん返し展開ですが、序盤で「こいつ、妹の千春の方なのだろうな」と察してしまう人は多いだろうと思います。東野圭吾作品作品を読み慣れている人はもちろんですが、この手の犯人による一視点語りのミステリですと共犯者の素性を疑うのは定石ですからね。

 

ま、千春の方だとして、何故このようなまどろっこしいことをするのか、相手の目的が定かでないので気になってドンドン読み進めてしまうのですけども。

 

 

私の読み終わっての率直な感想は「気持ち悪い話だな」です。

 

男女で狂言誘拐計画ってことで、お約束的に犯行途中に二人は肉体関係を持ってしまうのですが、実は千春はその際に佐久間の精液と陰毛を採取。これを使って樹理の事件を強姦殺人に偽装する。

 

これのなにが気持ち悪いって、娘が男と肉体関係を持つことで採取してきたこれらを使って、娘の遺体に偽装を施し、ありもしない強姦を“態々”でっち上げて世間に晒す、葛城勝俊が気持ち悪い。

 

直接指示された訳ではないが、そうして欲しいのだろうなと父親が思っているのを察して、千春が自分の意思で佐久間と関係を持って採取したとのことですが、こんなものをやり取りする親子って気持ち悪い。

そもそも、自分を恨んでいる男と娘が二人きりで寝泊まりするのを許容するのも父親の感覚としておかしい。千春はまだ高校生ですよ?いつなにされるか分ったもんじゃないってのに。実際、ヤっちまっているし。

 

男の犯行だと印象づけたいって狙いなのでしょうが、強姦されたことにする必要なんてまったくないし。むしろ、好奇の目にさらされることになってマイナスだと思うし。

 

実の娘にこんなことやらせて、こんなものを受け取って、それを使って実の娘の遺体にこんな工作して。娘は強姦されたんですと世間に嘘のアピールをして。

 

 

父親として、本当に気持ちが悪い。理解しがたいし、虫酸が走る。

 

 

個人的に、真相のここの部分に大いに引っかかってしまって、物語やミステリの仕掛け云々は脇に追いやられて「気持ち悪い」に全部持って行かれてしまいました。

 

殺されて、家族は誰も悲しんでくれず、死後に父親の手でこんな屈辱的なことされて、樹理がひたすらに不憫です。

 

 

はて、ではこのまま佐久間は誘拐と強姦と殺人の罪を着せられてしまうのか――?

なのですが、狂言誘拐中、千春が佐久間の部屋で料理を作って運んでいる写真を切り札に、葛城と対峙して駆け引きする場面でこの物語は終わっています。

 

男女の狂言誘拐物語ではなく、佐久間と葛城とのゲームによる勝負として物語を締めている訳ですね。

 

 

 

 

映画 原作との違い

上記したように、この物語の主要人物たちは悪人ばかりです。作者の東野圭吾さんが「良い人が出てこない物語を作りたかった」らしく、このような仕上がりになっているようです。東野圭吾作品だと前に当ブログで紹介した『ダイイング・アイ』とかもそのようなコンセプトで描かれていましたかね。

 

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2003年の映画『g@me』では、エンタメとして観客が感情移入出来るようにと人物像が変更されています。

 

主要の三人とも、完全に悪人になりきれない人間味溢れる人物像になっていて、私が原作で嫌悪した強姦云々の偽装工作も丸々カット。大賛成ですよ、このカットは。

 

殺害された樹理は薬物中毒でいつも家族が手を焼かされる存在だったことになっており、ラリって刃物を手にした樹理が千春に襲いかかってきて、もみ合っていたら誤って刺してしまったという、正当防衛的なものとなっていて、千春に同情できるものとなっています。

樹理が薬物中毒だったことを隠したいがために葛城が佐久間を利用する計画を画策したと、原作とは別に理由付けもされている。

確かに、原作を読んでいても「こんな面倒くさいことする必要ある・・・?」と少し疑問ですからねぇ。しかし、警察に樹理の遺体を調べられれば薬物中毒だったことはバレてしまうんじゃ・・・?と、これはこれで疑問ですが。

 

三分の二まではほぼ原作通りのストーリーですが、そこから先が映画による完全オリジナル展開で、原作よりさらに二転三転のどんでん返しをしています。

ツッコミどころが多いし、ちょっとやり過ぎ感もありますが、原作を先に読んでいた人でも楽しめますし、原作よりも分りやすく葛城に一矢報いることが出来ていてスカッとする。

 

原作より恋愛要素が強くなっていて、ラストシーンも佐久間と千春の二人。なんだかんだ、佐久間と葛城とのシーンで締めている原作のラストは釈然としなさがやはりありますので、映画のラストの方が良いと思う人もいるかと。これはこれで取って付けた感ありますが・・・。

 

 

当時のスタイリッシュさ(?)を意識しての仕上がりだからか、今観ると演出や台詞回しなど色々とダサい。タイトルの『g@me』からして時代を感じますが(当時も子供心に「なんで@なんだよ」って困惑しましたけどね)、終盤の電話シーンの合成とか謎演出過ぎて笑ってしまう。一周回って斬新な面白さがありますよ。

 

藤木直人さんと仲間由紀恵さんの二人が美男美女で画は文句なく美しいです。特にこの当時の仲間さんが凄く綺麗でそれだけでも観る価値あり。

流石に、原作の高校生設定から大学生設定に変更されていますが。でも大学生設定も違和感ありますけどね・・・。

 

 

このように、映画は原作からはかなり変更されています。

 

小説の文庫版には佐久間役を演じた藤木直人さんによる文章が収録されていまして、藤木さんも最初に台本をもらった時、原作とかけ離れた内容に「こんなふうに変わってしまっていいんだろうか」と悩まれたようですが、記者会見で東野さんとお会いした際に「どうぞ気兼ねせずに思いっ切り演じて下さい」と言葉をかけられて気が楽になったとのこと。

東野圭吾さんは作品を発表した時点で自分の手からは離れるので、映像化は制作の方々にお任せするというスタンスなんですよね。

原作ありきの映像化は昨今何かと話題になる事柄ですが、作家さんによって意見は様々です。大事なのは制作側の姿勢、原作へのリスペクトだと個人的には思いますが。

 

 

今度のドラマは東野圭吾作品を何度も映像化しているWOWOWですし、

 

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この映画ほど大胆な変更はないのではと思うのですが、二時間もあれば十分なボリュームの原作を全4話の連続ドラマでやるようですので、設定やストーリーの細部を膨らませたりはするでしょうね。

20年前と携帯電話事情が激変しているので、身代金受け渡し方法も変更しないとダメだろうなぁ。

 

 

小説、映画、ドラマ。それぞれに面白さを見出してストーリーや時代の違いを楽しめる作品ですので、気になった方は是非。

 

 

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

『ミギとダリ』アニメ 感想・紹介 サスペンスミステリとシュールギャグの成長物語

こんばんは、紫栞です。

今回は、アニメ『ミギとダリ』を観たので感想を少し。

 

コロスコロスコロスコロスコロス

 

 

こちらは2017年から2021年まで連載されていた、佐野菜見さんによる同名漫画作品

 

 

を原作とするアニメで、2023年末のクールで放送されたもの。全13話。

 

アマプラの見放題対象だったのと、作画の雰囲気に惹かれて観てみました。原作は未読です。

 

 

あらすじ

舞台は1990年の神戸。オリゴン村在住の園山修洋子の老夫婦は、養護施設から秘鳥(ヒトリ)という少年を養子として迎え入れる。

しかし、秘鳥は実は双子の少年「ミギ」「ダリ」が入れ替わりながら演じている、“二人一役”で成り立っているものであった。

二人の目的はオリゴン村にいるはずである実母を殺した犯人を突き止め、復讐すること。園山家に引き取られるように画策して老夫婦に取り入ることに成功し、園山家を根城にしながら、二人は双子だという正体を隠してオリゴン村の村民達に探りを入れていくが――。

 

 

 

 

 

 

 

最初に誰もが多少困惑するのは舞台設定かと思います。アニメだと特に。

ミギとダリは金髪の美少年だし、村の景観も西洋の片田舎って感じなので、てっきり海外が舞台だと思ってしまうところですが、舞台は日本の神戸市北区。オリゴン村は架空の村ですが、アメリカ郊外を模しているニュータウンって設定なのですね。

 

神戸は60年代後半から80年代終わりまで外国人居留地がありましたので、西洋人や文化が混在しているってことかなどとも思ってしまいますが、登場人物は皆ゴリゴリの日本名ですので、西洋人っぽく見える人も、あくまで村のコンセプトに合わせてアメリカ風に振る舞っている日本人ってことのようです。洋子ママとかね。洋子ママが困惑の元なのよ・・・。

 

とはいえ、ミギとダリは正真正銘の金髪碧眼美少年で、実母も金髪で名前はメトリーなので、やはり外国人居留地があったことも設定に盛込まれているのでしょうけど。

でも、元孤児だとからかわれるシーンはあっても、髪の色などを揶揄されるシーンはないんですよね。日本なのにアメリカ風という独特の世界観自体が、漫画的ファンタジー設定なのかも。いずれ、今作では深く考える必要のないことなのですが。

 

 

舞台設定以上に困惑するのが、美麗な画による耽美な雰囲気の中で繰り出されるシュールなシーンの数々。

全く前情報無しで観ていると「何だこれ」なのですが、原作者の佐野菜見さんはこういったシュールギャグが持ち味の作家さんなのだそうで、

 

 

 

 

慣れてくるとこの独特さがクセになって面白い。クスクス笑ってしまいます。

 

とはいえ途中、ジャグだとしてもちょっと引いてしまうシーンもありますので(^_^;)、観る人を選ぶといいますか、好みがハッキリ分かれる作品ではあるでしょうね。

 

導入部分の一話二話で荒唐無稽なシュール展開がドンドンと描かれるので、この調子で事件についても真面目にはやらずにギャグ一辺倒でいくのかと思ってしまうのですが、これがちゃんと、サスペンスミステリ部分は想像以上に確りとしており、人物の成長や青春はことのほか爽やかに描かれ、決着しています。

 

シュールギャグとサスペンスミステリと青春ドラマ。諸々の“混然”を愉しむ作品ですね。

 

 

「オリゴン村」に何かあるのではというところからミステリ部分が展開されていきますが、この物語では描かれるのはほぼ「園山家」と一条家のみ。なので容疑者の推測も容易で、奇をてらった展開や度肝を抜かすようなどんでん返しなどはありません(あくまで“ミステリ部分は”ですけど)。どこか怖い、おどろおどろしい雰囲気で実直にサスペンスミステリを魅せてくれます。

 

綺麗にキチンと終わっていて申し分のない最終回ですが、兄弟として顔の相異に気がつかなかったのかという疑問と、一条英二の妹・華怜についての説明の不十分さは個人的に引っかかりましたね。

 

ま、そんな些細なこと、吹っ飛ぶぐらいの良い最終回だったので「ま、いっか」ではあるんですけど。

 

 

私はですね、サリーちゃんがとてもツボでしたね。あのミステリアスな容姿と男を手玉に取る立ち振る舞いが非常に好み。〇装なのが残念なくらいです。別の声優さんを使っているのかと思ったのですが、村瀬歩さんが演じ分けていらっしゃるのですね。全く違和感なく、キャラクターデザインにも合っている声で凄いなと感服いたしました。

 

おかしみ溢れる秋山や、誰よりも冷静な最年少・華怜ちゃんも好き。みっちゃんには色々と驚かされましたね。最終回でもあのようなご活躍をされるとは。

 

 

原作者の佐野菜見さんは癌で2023年8月に36歳の若さで他界されたため、2021年末に連載を終えた『ミギとダリ』が最後の漫画作品となりました。

このアニメは佐野さんが他界されてから2ヶ月後に放送開始というタイミングに。佐野さんは原作者としてギリギリまで制作に関わっていたそうで、最終回には追悼メッセージが出されました。フランス語なのでわからなかったのですが、佐野菜見さんを偲んで」と書かれていたようです。

 

『ミギとダリ』を書き切ってくれたことに感謝ですが、佐野先生の次回作がもう見られないというのは残念でなりません。

アニメ制作の方々も先生に完成品を見ていただくことが出来なかったのは無念だったろうと思います。そんな先生への想いもあって、このアニメは極上の仕上がりになったのでしょうね。

 

 

気になった方は是非。

 

 

 

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

 

 

 

【小市民シリーズ】4作品まとめ紹介 〈冬季〉とアニメ化前におさらい!青春スイーツミステリ

こんばんは、紫栞です。

今回は、米澤穂信さんの【小市民シリーズ】をご紹介。

 

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

 

小市民シリーズとは

【小市民シリーズ】は米澤穂信さん初期の代表作である2大青春ミステリ小説シリーズの内の一つ。※もう一つは【古典部シリーズ】ですね。

 

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シリーズ第一作が刊行されたのが2004年で、今からおよそ20年前。その語、2006年に二作目、2009年に三作目と続けて刊行されましたが、それ以降長らく音沙汰無し状態が続き、11年後の2020年に番外編の作品集発売。

 

やっとシリーズ再始動か!?と思いきや、また4年音沙汰無しだったのですが、なんと、2024年7月にこのシリーズを原作としたアニメ放映が決定

shoshimin-anime.com

 

そして、小説の方も本編の完全新作「冬季限定ボンボンショコラ事件」が4月に発売予定とのことで「やっとか~」と、一報を聞いて歓喜いたしました。

 

www.tsogen.co.jp

 

 

 

しかしながら、番外編の短編集はともかく、本編の三作品は15~20年前で内容をかなり忘れてしまっているので、改めて再読。記事にまとめつつ、今一度このシリーズについておさらいと考察をしてみたいと思います。

 

 

“恋愛関係にも依存関係にもない互恵関係にある”同級生、小鳩常悟朗と小佐内ゆきの二人が、高校生活を送る中で遭遇する些細だったりきな臭かったりする様々な謎・事件を、解いたり籠絡したりするシリーズ。

 

「互恵関係」とは聞き慣れない言葉ですが、意味は利益を与え合い、損をしない関係のこと。

 

小鳩常悟朗は並外れて推理力が高い男子。様々な事に首を突っ込んでは謎を解き、皆の前で披露するのに快感を覚えていましたが、中学時代にその気質のせいで痛い目に遭い、出しゃばることをしない、穏やかで慎ましい「小市民」を目指す。

 

ホームズ的“推理のひけらかし”ですね。ホームズは探偵だし、高機能社会不適合者として突っ走りますが、小鳩君は学生生活を送る少年。“ひけらかし”は学校というコミュニティでやられると鬱陶しいし不快なものだと気がついた思春期ボーイの小鳩君は、謎から回避して自分の気質を封印し、普通の学生として社会に適合しようと努める。

 

そんな小鳩君と中学三年生の時から互恵関係を結んでいるのが小佐内ゆき。彼女もまた特殊で厄介な気質を持ち合わせており、封印するべく「小市民」であろうとしている。

 

小鳩君と小佐内さんは目的を同じくする同志。何かから逃げたいときはお互いの存在を言い訳に使い、楯にする。二人一緒に行動することで助け合い、本来の気質が暴走しないように互いに見張り合う関係。

なんだけれども、頻繁に事件に遭遇してしまって・・・なかなか二人が目指すところの「小市民」にはなれないのでありました――・・・

 

こんな具合に、少し特殊な関係の男女コンビが織り成すミステリシリーズです。

 

また、小佐内さんが大のスイーツ好きという設定でして、美味しそうなスイーツ描写があるのもシリーズの特徴の一つ。本のタイトルには必ずお菓子の名称が含まれています。

 

青春×スイーツ×ミステリ

 

と、一見ライトなミステリですが、それだけではない米澤穂信作品特有のほろ苦さや毒っ気もちゃんとあるので必見。

 

主要二人の他にレギュラーで登場するのは小鳩常悟朗の馴染みで“まぎれもなく良いヤツ”、荒事に担ぎ出されがちな島健ぐらい。

 

基本的に、このシリーズは探偵役の小鳩常悟朗による一人称語りが主です。小佐内さんの心情は意図的に全く描かれておらず、得体の知れないミステリアスな存在として終始読者を惹きつけています。

 

 

 

 

 

 

 

 

シリーズ順番

では、刊行順にご紹介。

 

●「春期限定いちごタルト事件

 

目次

プロローグ

羊の着ぐるみ

For your eyes only

おいしいココアの作り方

はらふくるるわざ

孤狼の心

エピローグ

 

短編集。高校入学からの春の出来事・謎解き話が時系列順に描かれています。お話しはそれぞれ単体で楽しめるように描かれていますが、ところどころラストのお話への伏線が張られているので長編ともいえる構成。

 

 

●「夏期限定トロピカルパフェ事件

 

目次

序 章 まるで綿菓子のよう

第一章 シャルロットだけはぼくのもの

第二章 シェイク・ハーフ

第三章 激辛大盛り

第四章 おいで、キャンディをあげる

終 章 スイート・メモリー

 

長編。とはいえ、各章で謎解きが用意されているので連作短編風味。高校二年生になった二人の夏休み中の出来事が描かれる。

 

 

 

●「秋限定栗きんとん事件」

 

 

 

 

目次

第一章 おもいがけない秋

第二章 あたたかな冬

第三章 とまどう春

第四章 うたがわしい夏

第五章 真夏の夜

第六章 ふたたびの秋

 

長編。上下巻で今のところシリーズ最長の作品。描かれる次期も高校二年生の秋~三年生の秋までと、約一年間の出来事で最長時間となっています。

 

 

「巴里マカロンの謎」

 

収録作

巴里マカロンの謎

紐育チーズケーキの謎

伯林あげぱんの謎

花府シュークリームの謎

 

番外編で短編作品集。一作目~二作目までの作目までの間にあった謎解きエピソードが収録された一冊。各タイトルはクィーンの国名シリーズを意識したものですね。

この本については、詳しくはこちら↓

 

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以上。2024年2月現在で四冊。

 

 

 

 

以下、ネタバレ含みますので注意~

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の高校生活と互恵関係

このシリーズ、

 

春期限定いちごタルト事件」では高校一年の春、詐欺事件に関わって二人とも本来の気質が出てしまって反省。

夏期限定トロピカルパフェ事件」では高校二年の夏休み中、誘拐事件が起こり、その事件の真相をきっかけに小鳩君が小佐内さんに互恵関係解消を提案し、二人は別れることに。

「秋限定栗きんとん事件」では高校二年生の秋~高校三年生の秋までの約一年間、連続放火事件を追った末に二人は改めて互いの存在の必要性を再認識。ふたたび互恵関係を結ぶ。

 

大まかにはこういった流れになっております。

 

日常ミステリでありながら、詐欺・誘拐・放火と、どの本も最終的にはモロに犯罪絡みの事件に関わる「小市民」なはずの二人。

完全な日常ミステリである【古典部シリーズ】とは似ているようでまったく違うのですね。テイストとしては近年開始された【図書委員シリーズ】に近いかと思います。

 

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一作目でまず二人の関係がどんなものかを示し、二作目で片方がルール違反をしたために互恵関係が破綻して別れる、三作目で互いに別の人と一年間過した結果「あなたが、きみが、いまのところ最善の相棒」と気がついて関係修復。

 

このシリーズでテーマとして描かれるのはやはり“互恵関係”。高校生活を通して二人の関係性の変化を追っていく青春物語なのです。

 

学校ではいつも二人で行動しているため周囲にはカップルだと思われているし、そう思わせておいた方が言い訳に使うときに都合がいいのでそのままにしているが、あくまで利益ありきの関係で恋愛感情はないよ~という「互恵関係」。

 

しかし、放課後や休みの日にスイーツを二人で食べに行く場面などが頻発するので、読者的には最初からこの「互恵関係」って疑問なんですよね。「小市民」のスローガンも。

小鳩君の語りを読んでいても正直、よくわからないし。新手の中二病的といいますか、子供がひねくれた考えを持ち出して態々事態を小難しくしている印象。

 

三作目の「秋限定栗きんとん事件」でようやく、

 

”そうじゃない。必要なのは「小市民」の着ぐるみじゃない。

たったひとり、わかってくれるひとがそばにいれば充分なのだ、と。”

 

やっと気がつく訳ですが。

頭がいいのに、このシンプルな答えに行き着くのに三年間かかっている。ま、これが青春。思春期なんでしょうね。どんなに大人びていても子供は子供。

 

 

 

来る冬季!

「お!自覚もできたし、次が楽しみ!」と、読者がなったところで、上記したように、このシリーズは長らく音沙汰なし状態になっていました。ヤキモキさせられたというものです。

 

2024年、やっとやっとで「冬季限定ボンボンショコラ事件」が読める!

 

タイトルが春夏秋ときているため、読者の間ではずっと「冬季限定」がシリーズ最終作となるのだろうと言われてきました。しかし、特報の文章を読んでみると「最新作」「四部作〈冬〉」とは書かれているものの、「シリーズ完結」という文字は見当たらない。

ひょっとして、四部作刊行後にも同シリーズで何か予定しているのですかね?とりあえず、卒業までは必ず描かれると思うのですが。

 

一作目「春季限定いちごタルト事件」のラストで、小佐内さんが「自分に危害を加える人間を、謀をめぐらして完膚なきまでに叩き伏せることに快感を得る」という復讐大好き娘だと判明。

小市民を目指す同志でありつつも、謀っている側と謎を解く側で腹の探り合いをする状態になったりするのもこのシリーズの醍醐味。

そんな二人が小市民になるべく互恵関係を結んだのは中学三年生の時とのことですが、そのきっかけとなった過去の出来事の詳細については未だに双方明かされずじまいのまま。

「冬季限定ボンボンショコラ事件」ではそこら辺のことについても満を持して語られると思いますので、とても楽しみです。

※出ました!詳しくはこちら↓

 

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シリーズ開始が20年前ですので、読み返してみて結構時代を感じました。携帯電話はもちろんですが、学校や公共機関の運用とか。この20年で世の中大きく変わったなぁと再認識。

アニメの予告映像にはスマホが出てきているので現在設定にするようですが、割と原作から変更しなければいけない部分が多々出てくるのではないかと。

「夏季限定トロピカルパフェ事件」までのストーリーをやるようですが、それだとラストが・・・・・・どうするのでしょう。

あとタイトルも、まさか「小市民シリーズ」のままではないだろうと思うのですが・・・どうなのでしょう?

非常に気になるところ。アニメもどんな風になるのか楽しみですね。

 

 

どちらもワクワクしながら待ちたいと思います。

 

 

ではではまた~