夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『カッコウの卵は誰のもの』原作 ドラマ 疑問 諸々感想

こんばんは、紫栞です。

今回は、東野圭吾さんのカッコウの卵は誰のもの』について感想を少し。

カッコウの卵は誰のもの (光文社文庫)

あらすじ

かつてはオリンピックにも数回出場したトップスキーヤーだった緋田宏昌の娘・風美は、幼い頃から目覚ましい才能を発揮し、宏昌以上のスキーヤーに成長しつつあった。

高校を卒業し、風美は「新世開発」に入社。すると、「新世開発スポーツ科学研究所」の副所長で、才能と遺伝子の関係を研究している柚木が「あなたたち親子の遺伝子を科学的に調べさせて欲しい」としつこく宏昌にアプローチしてくるようになった。

宏昌は「才能に遺伝は関係ない」と柚木への協力を拒み続ける。

風美の才能は、宏昌とは何の関係もない。風美は宏昌の実子ではなく、妻がよそから“盗ってきた”子なのだから。宏昌は妻の死後にその事実を知り、苦悩し続けていたのだ。

 

そんな中、風美の大会出場を辞退させろという脅迫状が「新世開発」に届き、宏昌の前には「風美さんのことで話がある」と会社社長の上条伸行が現われた。さらに、風美の合宿先でバス事故が発生して――。

 

 

 

 

 

 

 

 

こちら、2010年刊行の長編小説。2016年にWOWOWで連続ドラマ化もされています。

 

 

WOWOWはよく東野圭吾作品ドラマ化していますね~。

 

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「才能」をテーマに、「脅迫状とバス事件の犯人追及」と「風美の出生の謎」を解き明かすストーリー。タイトルから察することが出来ると思いますが、事件内容諸々をカッコウの習性である托卵で表しています。

 

主な語り手は宏昌柚木で、合間にスポーツ遺伝子を持っているからっていう理由でスカウトされて、父親の就職先の面倒と引き換えに渋々スキー競技をすることになった鳥越伸吾の語りが入っています。

ミステリだけでなく、スキー競技についても多く描かれている物語ですね。主役は宏昌って感じですが、調査能力を発揮するのは柚木の方。

 

この柚木、悪い人ではないのですが、スポーツ遺伝子の研究にのめり込んでいるためか「才能」「遺伝」とうるさい。選手としては頑張って練習している横で「生まれ持った才能が~」とかばっかり言われるとそりゃ面白くなかろうと思う。努力して出した結果を「才能」の一言で済ませてしまうのですからね。嬉しくないし腹立たしいですわ。

 

「才能がない」という言葉を使って逃げるな!などと指導の場では言われたりする。スポ根根性。努力至上主義。結果が出ないのは、努力が足りないから。

しかしながら、努力で補えない壁というものがあるのは否定出来ない事実。努力はもちろん必要だが、世界的な選手となるには「才能」と呼ばれるものが必要。凡人が納得するための都合の良い言葉として「才能」が使われている部分ももちろんあると思いますが。「努力できるかどうかも才能のうち」という言葉もある。

 

 

作中の柚木はスポーツの才能を“身体能力が生まれつきどれ程優れているか”ではかっている訳で、その証明として外国人選手に比べて日本人選手は身体の違いで活躍出来ていないじゃないかなどと言うのですが、個人的にはスポーツ競技はそもそもの競技にふれる機会、環境、精神力、運など、「これだけが理由!」ってものではなく、もっと総合的なものだろうと思う。

 

身体能力の優れている人物を見つけ出し、その能力に適した競技をさせて才能を伸ばしてあげることが本人にとっての幸福であるはずだと柚木は信じて研究していたし、デリカシーのない事も言っていたのですが、「才能」で人生を曲げられて不服な様子の伸吾をみて考えが少し変わる。

 

自分が欲しがっているものが、皆が欲しがるものとは限らないってことですね。

とはいえ、作中の伸吾がそうだったように、嫌々やらされ始めたことでも練習の成果が出れば愉しさを見出して気持ちが追いついてくるということもあるかと。どんな事でも上手く出来れば嬉しいものですしね。結局、「自分で選んだ」って気持ちが大事ってことでしょうか。

カッコウの卵」、金の卵である“金”、「才能」は本人のもので、どうするのも本人自身。

 

 

 

 

 

 

 

おかしい

「才能」がテーマなのは分りますが、ミステリ部分との折り合いがいまいちなのか、掘り下げきれていない印象。

ミステリ部分にしても、トリックがあるようなものではなく単に意外な繋がり、意外な犯人といったもので推理小説的な愉しさもそこまで。無理があるところも多い。

何の接点もない人物に犯行を頼むのは現実的じゃないし、同時期に偶々三人の女性が妊娠していたとか、真相と奥さんが自殺した理由が噛み合わないなど。

 

一番違和感があるのは、ちょっと怪我させたいという動機でバスにあんな仕掛けをする犯行計画ですね。

運転手さん巻き込むのが前提なの酷すぎるし、結局一人死亡者が出ているし。

 

こんな犯行をしておいて、“あなたや風美さんには、何ひとつ非はありません。そういう人たちを不幸な目に遭わせることは私の本意ではないのです。”って・・・何を言っているんだ。おかしすぎる。

 

真相部分を犯人の独白や手紙ですべて説明してしまっているのも、やっぱり手抜き感がありますね。東野圭吾作品って、割とコレやりがちですけど・・・。

“意外な犯人”ってのも、意外っていうか、単純に出番が少なすぎるだけではって気も。コレもやっぱり東野圭吾作品でやりがち・・・。

 

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手紙に従って宏昌がした最後の選択も、個人的には釈然としないですね。手紙の内容に感謝していたけど、それは感謝すべきところなのか?いつかはバレるって思いますしねぇ。読者としては、これで「良かった良かった」とはならないのですが。

 

 

 

 

 

 

ドラマ

2016年のドラマでは風美が主役になっているなど、かなり原作からは変更されています。変更のお陰で、これら原作での疑問点、明らかにおかしい部分がカバーされているし、犯人の思想も「才能」が強く関係していて、心情も犯行理由も物語のテーマもドラマでの方がしっくりくる。全体的にドラマの方が完成度は高いですかね。

この話で6話使うのは長過ぎ感はありますが。補うためか、選手の葛藤などが多めに描かれている。本格的なスキーシーンが見応えあります。

 

しかし、最終回は盛り上げるためとはいえちょっと無理があるのではって感じでしたけど。「前回とはうってかわって体力あるね」みたいな。ま、ドラマオリジナルのあのシーンは良かったですけども。やはり解決シーンは直接対面が良い。

 

原作より犯人当ては容易です。と、いうか、毎回のエンドロールのキャスト順で犯人丸わかりなんではって気が・・・。

 

宏昌の選択も原作とは真逆のものですが、やっぱりこの方がしっくりくる。ちゃんと「良かった良かった」となりますよ。

毎回、お話の最初と最後に「カッコウが、雛鳥が、云々~」と内容を表すナレーション(?)が入っていたので、個人的には最後もそれで締めて欲しかった。

 

 

原作小説とドラマ、気になった方は是非。

 

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

 

 

『屍人荘の殺人』映画 “ひどい”をネタバレ・考察

こんばんは、紫栞です。

今回は、映画『屍人荘の殺人』(しじんそうのさつじん)について感想を少々。

屍人荘の殺人

 

今村晶弘さんの長編推理小説が原作のこちらの映画、公開されたのは2019年で前に当ブログで原作小説の紹介をしたのですが↓

 

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今更ながら映画を観たので思ったところを少し。

 

以下、映画及び原作小説のネタバレ含みますのでご注意~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予想通りの酷評

まずこの映画、各サイトのレビューが散々に酷評されております。公開直後も今現在もそうです。

しかし、それは原作を読んでいて、映画の役者三人がそろったメインビジュアルとコミカルなCMを目にした人なら予想がつく評価なのですよね。「ああ、これじゃあ原作未読の人は“思っていたのと違う!”ってなるだろうなぁ・・・」と。

 

トリオものの定番ミステリで、コメディタッチの映画――そう思って観ると、この映画はことごとく期待を裏切ってくることになる。それは原作を読んだ人間からすると明白なこと。

 

それというのも、この『屍人荘の殺人』は途中で突如として脈絡もなくゾンビと化した者たちに襲われるトンデモ展開となる。

それだけでなく、ホームズ役の一人だと思っていた明智さん(中村倫也)が最初のゾンビ騒動の時点で襲われて早々と退場してしまう。

メインである殺人事件が起きるのは館に数名が逃げ込んでからなので、明智さんは実質事件に参加しないに等しい。当然ながら出番はほぼなしということに。

 

これが、役者の中村倫也さん目当てで観に行った人にとっては受け入れがたいだろうなと。

 

明智さんが序盤で退場してしまうのは、原作小説でも驚きポイントの一つ。

メインの探偵役だと思っていた人物が“あんなこと”になってしまうというのは、ゾンビが出て来るのと同様、いやそれ以上に、読者に衝撃を与える展開で度肝を抜かれる訳です。

デビュー作の小説でやられるなら「斬新なストーリー展開だなぁ」で済みますが(明智さん、少しの登場だけど良い感じのキャラクターだったので私は悲しかったですけどね・・・)、映画で人気役者を起用、メインどころのように触れ回っていたのに蓋を開けたらこれでは、そりゃ役者のファンは文句言いたくなりますよね。

 

映画の制作側としては、原作での驚きを“どう考えてもメインの一人だろう主役級俳優”をキャスティングすることで再現しようとしたのだと思います。メインビジュアルもCMも原作に倣っての“引っ掛け”のつもりなのでしょう。

 

でも、如何せん映画でこれをやられると・・・レンタルや配信で観た人はともかく、映画館で観るのはそれなりの労力とお金がかかりますからね・・・。驚きよりも文句を言いたい気持ちの方が勝ろうというものです。

 

それに加えて予想外のゾンビ登場でのパニック・ホラー的展開に戸惑う人ももちろんいるだろうと。ミステリは好きでもパニック・ホラーが苦手な人はいますからね。苦手なのに観に行ってしまった人は「言っといてよ!」って、これまた文句言いたくなるでしょう。

 

 

 

 

予想以上の酷評

そんな訳で、レビューの低評価の嵐を見ても「そりゃそうなるよね」と一人納得していたのですが、「でも私は原作完読済みだし、全部了解していて心構えも出来ているから!」と、低評価を知りながらも大丈夫だろうと観てみたのです。

 

結果・・・予想の範囲を上回る酷さ加減でした。観終わった直後に凄い怒ってしまった。

 

原作が好きだから許せない!という怒りではなくって、「映画作品」としての出来が酷い。

変更点は多々あるものの大体のストーリーは原作通りだし、役者も良いのだが、演出ですべてを台無しにしてしまっている。

 

 

『99・9』などで知られる監督の木村ひさしさんは、独特のコミカルな小ネタなどを入れる演出をされる監督さんで、この映画でも変わらずにそのような演出を自身の持ち味だと思ってか入れているのですが、これがことごとく作品にミスマッチでスベって見える。何も笑えない。

 

だってそもそも笑える状況じゃないですからね。

明智さんは目の前であんなことになっちゃったし、館の周りはゾンビが囲んでいていつバリケードを破って入ってくるかも分らない、館の中は中で殺人事件が起きている。

なのに、葉村君(神木隆之介)は比留子さん(浜辺美波)にドギマギして終始デレデレ。慕っていた明智さんが目の前であんなことになった直後でのこの葉村君の態度は不自然だし、人間性を疑ってしまう。

 

全体的に不謹慎な感じが漂っていて、コミカルな場面をやられる度に不快になってしまうのですよね。ゾンビにとどめを刺す瞬間をレントゲン写真(?)で表現しているのも個人的には凄く嫌でした。

 

実を言うと、原作小説でも少しこういったコミカルシーンはありました。原作を読んでいてもミスマッチで浮いているので余計だと感じていた部分が、映画だと増大されてしまっていたので悪い意味で驚き。

木村さんのコミカル演出自体が独特で、一歩引いて客観的にみると「これのなにが面白いんだ?」なシュールさなので、元々人を選ぶんですよね。そのくせこの映画は画面が暗くてBGMが少なめなので、鑑賞者の“おいてけぼり感”が際立つ。

 

私は原作の比留子さんがさほど好きではないのでアレですけれども、特徴的なファッションさせたり、妙な口調で喋らせたり、変なポーズとらせたりと、妙ちくりんな人物設定の変更も終始疑問でしたね。ま、かわいいから見ていられるんだけど・・・。

 

 

ゾンビシーンが思いの外長いのに、元凶であるウィルスをばらまいた斑目機関」に関して映画ではノータッチだったのも鑑賞者を困惑させるところかと。

 

原作は、コテコテの本格推理小説→かと思ったらゾンビ登場で予想を裏切る→だけどやっぱり本格推理小説

といった、特殊設定ミステリ。

特殊な設定を踏まえてあくまで論理的思考を愉しむ、奇抜ながらも実のところは古式ゆかしいゴリゴリの本格推理モノなのですが、映画だとなんの脈略もなくいきなりゾンビが登場し、意味不明に緊迫した展開になった印象が強いので、「なぜゾンビ?」って感じで、単に閉鎖空間をつくるためだけにゾンビが機能しているような勘違いをしている人もいるようです。

解決部分をちゃんと観ていればゾンビがいる特殊設定だからこその殺人事件でしっかり作り込まれていることが分るはずなのですが。ゾンビに関しての“ルール説明”が映画だとサラッとしているからですかね。特殊設定ものはルールが大事・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最悪な最後

一番酷いのはなんと言ってもラストシーンです。ゾンビ化した明智さんが葉村君を襲って、比留子さんが「あげない。彼は私のワトソンだ」といって明智さんの頭を槍でぶっさして終わり。

「えええ!?ここで終わり!?」とポカンとしているところで、Perfumeさんの場違いにポップなエンディングが流れてさらにポカン。もう、最悪です。

もちろん、曲が悪いのではありません。このラストシーン後にこの曲を流す、そのセンスが最悪。

 

 

原作にもあるシーンなのですが、状況が全然違いましたし、ラストシーンではありませんでした。

なんでこれをラストに持ってくる?信じられない。本当に何がしたいのか分らない映画。

 

明智さんの最後の言葉、口パク部分が気になる人も多いようですが、原作から考えるなら「うまくいかないもんだな」だと思います。あのシーンで言うセリフではなく、作中で印象的に言っているセリフなんですけど。

ゾンビになると知性は失われるはずなので、完全にゾンビになっているこの状況で言うのはおかしいのですが・・・もはや考察する気力もおきない。

私にとってはそんな気分になる最悪な最後でした。

 

 

原作はシリーズ化して続編がでていますが、

 

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映画はどんなもんでしょうか。

 

キャストは良いので、演出を見直してくれるなら或は・・・ですが。そう考えると、本当に残念ですね。原作小説はミステリ界の話題を攫った高評価の作品なんですよ・・・。

 

 

色々言ってしまいましたが、そこまで言うなんて逆に気になるよって方は是非。

 

 

 

ではではまた~

 

 

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『スイート・マイホーム』ネタバレ・考察 オゾミス?映画のラストはどうなる?

こんばんは、紫栞です。

今回は神津凛子さんの『スイート・マイホーム』をご紹介。

スイート・マイホーム (講談社文庫)

 

あらすじ

三年前に結婚し、長野で妻と幼い娘と共にアパート暮らしをしていた清沢賢二は、ある日ポストに投函されていた“まほうの家”というキャッチコピーに「冬でも半袖一枚で過ごせる暖かさ」と書かれたチラシに心奪われる。

長野の冬は厳しく、東京生まれの賢二は毎年閉口していた。住宅展示場に行き、地下のエアコン一つで予想以上の暖かさを保つ家に感動した賢二は、寒がりの妻と娘のためにもと“まほうの家”を建てる決心をする。

完成した新居は快適だった。二人目の娘も産まれて日々幸せを噛み締めていた清沢一家だったが、周辺で立て続けに異変が起こり、家の中では得体の知れぬ気配が常につきまとうように。さらには一家に関わる人物が不審な死を遂げて――。

 

一体この家では何が起きているのか?家に漂う“それ”の正体とは?

 

 

 

 

 

 

 

オゾミス?

『スイート・マイホーム』は2019年に刊行された長編小説。第13回小説現代長編新人賞受賞作で、神津凛子さんのデビュー作。

監督を斎藤工さん、主演を窪田正孝さんで、この作品を原作とする映画が2023年に公開予定です。

 

私が買った文庫版ですと、とにかく帯での広告文の数やレイアウトが凄まじくって、裏には数人の著名人による怖さとおぞましさを賞賛するコメント、表は「恐怖の声、続々!」「怖い!怖すぎる!!」「まさにオゾミス!」と、でかでかと煽り文句が躍っていました。

週刊誌の表紙ばりで、もう見た目から凄そうな本だなと手を取ってしまう感じ。恐いもの見たさが刺激されるといいますか。

 

“オゾミス”ってなんぞ?ですが、「おぞましいミステリ」の略称ということらしい。

 

後味が悪い、いやぁ~な読後感のミステリの略称“イヤミス”はもうミステリ界隈では知れ渡っているといいますか、もはやミステリの一つのジャンルとして確立されているかなぁといったところですが、“オゾミス”というのはそのイヤミスの後味の悪さの上位版?進化版?で、“嫌”を通り越して“おぞましい”ミステリだよと。

 

本の解説をホラー漫画家の伊藤潤二さんがされているので、「怖い!」のデカ字の売り文句と相まってホラー小説の印象が強くなりがちですが、“オゾミス”というからにはちゃんとミステリです。

殺人事件が起こって、犯人がいて、最後には犯人が判明する。

 

 

読んでみての率直な感想としては、ホラーとミステリが絶妙な匙加減で融合している作品だなと。ホラーもミステリも上手い具合に愉しめる。サスペンスの要素も強いので、ジャンル分けが難しいですかね。

若干わざとらしさはありますが、先が気になる描き方とデビュー作とは思えない巧みな文章でグイグイ読ませてくれます。

 

 

“オゾミス”と銘打たれてはいますが、イヤミス系のものを読み慣れている人にとっては許容範囲なのではないかと。「怖い!」「おぞましい!」の謳い文句に必要以上にビビる必要はなく、かえってホラーやミステリ小説を読み慣れていない人にこそオススメしたい一冊。

 

とはいえ、普通の感覚からすれば十分すぎるほどおぞましいのは間違いないのですけども。実生活でこんな事が起こったら絶対に嫌ですよ。

特にラストは耐えられない人も多いですかね。映画化されるってことですが、原作通りのラストにするのだとしたら私もラストシーンは観たくないなぁと思う。

 

 

 

 

 

マイホーム

言うまでもなく、「家」というのは人生を左右する大きな買い物。住居環境は精神状況・家族関係に直接的に作用するものですが、いざ住んでみて嫌だと思っても大枚叩いて買った家はそうそう手放すことは出来ない。嫌でも「マイホーム」として受け入れ、そこに帰るしかない。

 

この物語は、そんな取り返しのつかない買い物、「家」を購入するところから始まります。

清沢一家が購入を決めたこの“まほうの家”、地下にあるエアコン一つから出る温風が循環パイプを通って家全体が暖まるというセントラルヒーティング方式の家で、年中暖かく快適に過ごせるのだとか。

 

エアコンはずっとつけっぱなしにするのが基本とのことで、それだと電気代が相当いくんじゃ・・・ってなりますが、年中つけておくことで保温状態を保つことになるからそんなにかからないということらしい。

しかし、作中の「毎月二万円程度の電気代ですむ」という説明には「ホントに?」となってしまいますが。

 

舞台が長野で寒さが厳しいので、扉が凍り付くのにも結露にも悩まされないなんて夢のようだなってな感じで“まほうの家”として描かれる。作者の神津凛子さんは長野県生まれの長野県在住で、実際にこの方式の家を建てたんだそうな。

 

寒冷地の人間にとっては夢のような“まほうの家”。しかし、この家の設定がホラーとして、ミステリの仕掛けとして、物語に存分に活かされている。“まほうの家”によって清沢一家は恐怖のどん底にたたきつけられるのです。 

 

「家」が舞台のホラーでは定石。物音がする、変なものが見えた、子供が何もないところを見つめて笑っている…等々、「この家には私たち以外の“なにか”がいる!」現象がはじまる訳ですね。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理想の家族

なにかいる!・・・気配がする訳ですが、その通り、“いる”んですよ。幽霊だなんだではなく、確実に存在していて“モロ”なものが家にいるのです。

 

よくある、もっとも怖いのは生きている人間だよ~なホラーですね。

 

作中では心霊現象だと最初とらえられているんですけど、現実でも心霊現象の中身やカラクリって実はこんな事が多いのではないかという気がする。常軌を逸した行動をとる者がいて、それによって起こった出来事を怪異と結び付けてしまう。

これは深く考えることを無意識に拒否しているってことなのですかね。幽霊の仕業だと思うよりも、人間の仕業だと認める方がずっと怖いしおぞましいという状況はありますよ。

 

印象としては貴志祐介さんの『黒い家』ぽい怖さですけど、

 

 

 

全然、あの、あそこまでではないというか、大丈夫です。(『黒い家』がとにかく怖すぎるのですよね・・・)

 

 

主人公の清沢賢二はイケメンのスポーツインストラクターで、可愛らしい妻と娘と共に過している。

犯人は外見の良さと家族の形に強いこだわりがあり、容姿が優れている夫婦と一人娘という三人家族の清沢一家を「理想の家族」として自己投影し、執着する。(何故一人娘じゃないとダメなのかは不明)

 

しかし、主人公の賢二は事が起こる前から職場の同僚と浮気をしていまして、この時点でもう犯人の思う「理想の家族」とは違う。そもそも他人の家族で自分の理想をかなえようというのが無理なことですが、犯人は「浮気相手」「二人目の娘」と、自分の理想とは違うものを過激なやりかたで排除しようとして怖い事になる訳です。

 

 

『スイート・マイホーム』というタイトルなだけあって、この物語は「家族」がテーマ。

「理想の家族」を狂気的に追求する犯人に遭遇することによって、主人公である賢二の妻子に対する想いだけでなく、実家に関しての隠された真相も明らかになる。

 

読み始めは「イケメンインストラクターの浮気男ムカツクぜ」って感じですが、賢二の実家関連の話が進行している事件同様に物語を引っ張ってくれます。

夫婦、母と子、父と子、兄弟と、家族の関係性が諸々一冊に詰め込まれている家族小説で、それが主なのかなと。欲張りすぎたためか、各要素突き詰めきれていない感は少しありますけどね。

 

犯人も、賢二の実家の事に関しての真相も、読者には中盤で察しがつくように書かれていてその予想のまま結末を迎えるので、ミステリとしてはもう一捻り欲しいと思ってしまうところですが、あえてホラーやミステリ要素がいきすぎないようにバランスをとっているのかとも思います。

 

最後のショッキングな結末も、序文でほぼ明かされていますので驚きはないんですよね。個人的にはこの結末はとってつけたような“やりすぎ感”で「ちょっとなぁ・・・」でしたけど。アレをやるなら、もっと人物の感情の揺れ動きを描いてくれないと説得力に欠けてしまう。

 

櫛木理宇さんの『死刑にいたる病』とかもそうでしたが、この手の話は最後のダメ押しをしたくなるものなのですかね。

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“許せない。私の家族に手を出す者、壊そうとする者を許せない。”

と、犯人と対峙している賢二が、実際のところは自分の身勝手さで妻子と実家、自分の二つの家族を壊してしまっているというのが皮肉。そもそも、浮気していたくせに何言ってんだではありますがね。

 

これもまたホラーでの“オキマリ”ではありますが、善人である甘利さんや賢二の兄・聡、無垢なユキが酷い目に遭ってしまうのは読んでいて辛い。特に賢二のお兄さん、あんな部屋で長年住み続ければそりゃ病気にもなるよなぁ・・・。

 

 

この物語をどう映画化するのか気になるところです。ホラー、ミステリ、サスペンス、家族・・・どの要素を強くするかで作品の印象が大きく左右されそうですね。統合失調症など、デリケートな部分もありますし。

個人的に、主人公と役者さんのイメージが違うので、ストーリーや設定を変えるのかもなぁという気も。やっぱり一番気になるのはラストですけどね。

 

※映画観ました!詳しくはこちら↓

 

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ホラーやミステリに慣れてない人でも読みやすい作品ですので、映画化などで気になった方は是非。

 

 

 

 

 

ではではまた~

『栞と噓の季節』感想「本と鍵の季節」続編!図書委員シリーズ第2弾

こんばんは、紫栞です。

今回は、米澤穂信さんの『栞と噓の季節』をご紹介。

栞と嘘の季節 (集英社文芸単行本)

 

あらすじ

二月。高校二年生の堀川次郎は、図書委員の仕事として図書室で一人督促状を書いていた最中、返却箱に一冊の本が置かれたことに気が付く。顔を上げてみたが、目撃したのは部屋を出て行く女生徒の後ろ姿のみだった。

その数分後、長らく図書委員の仕事をさぼっていた松倉詩門が図書室にやってきて一緒に当番の仕事をこなすことに。二人で返却本の中身をチェックしていると、先ほど置かれた本の中に花の栞を見つける。その花は猛毒のトリカブトだった。

 

そのまま忘れ物入れに入れることも躊躇われ、二人は張り紙をして名乗り出て来る人物がいるかどうか様子を見ることにしたが、思いがけず校舎裏でトリカブトが栽培されているのを発見し、さらには毒を盛られて倒れたと思わしき被害者が出る事態に発展。校内は異様な空気に包まれる。

 

張り紙を見て「自分の栞だ」と嘘をついて接近してきた女生徒・瀬野と共に、二人は猛毒の栞の謎を追うが――。

 

 

 

 

 

 

 

 

図書委員シリーズ第2弾!

こちら、2018年に刊行された堀川次郎松倉詩門の図書委員二人が様々な謎に挑む連作短編集『本と鍵の季節』の続編。

 

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前作が刊行された段階ではシリーズ化は未定だったので名称がありませんでしたが、今作の帯で【図書委員シリーズ】と書かれているのでそういうことらしいです。

 

シリーズ第2弾の今作は長編。短編も好きですけど、シリーズものの長編となるとやはりテンションが上がる。

 

前作は終盤で松倉が抱えている問題が明らかとなり、堀川は友人が一線を越えないことを願いつつ図書室で待つところで終わっていました。

 

その後、松倉は図書委員の仕事をさぼって堀川とはいったん距離を置いていたようですが、踏ん切りが付いたということなのか、およそ二ヶ月を経て図書委員の仕事に復帰(委員のさぼりを他の委員たちと教師がスルーしているのはどうかと思いますが)。復帰してコンビが復活した矢先に間髪入れずに犯罪めいた事件に遭遇してしまう訳です。

 

相変わらず司書さんはほぼ不在。図書委員は忙しく働いております(ホント、司書さん何してんだって感じ。仕事ほぼやってもらってない?私の高校では司書さんってずっと図書室に居たぞ!?)

米澤さんが描く高校生が皆大人びているというのもあって、学校の委員活動というより職場といった感じ。

 

高校生の図書委員二人による謎解きという設定を聞くと「日常の謎モノ」なのかと思ってしまうところですが、このシリーズはあからさまに警察が介入してきたりはしないものの、犯罪性が高いものを扱うのが特徴。

今回の長編もトリカブトの栞を巡る物語とあって図書委員らしからぬ物騒さ。普通の学校生活を送る中での“犯罪的な非日常”ですね。

 

事件だけでなく、堀川と松倉の軽快なやり取りは面白いし、友情物語としての進展も見所です。

 

堀川と松倉の二人に加え、今回は嘘つきで事情を抱えている美人女生徒・瀬野と一緒に謎を追うことに。前作で登場していた図書委員の後輩・植田や、嫌われ者教師・横瀬は今作でも登場しています。単独でも愉しめるようにはなっていますが、登場人物たちの事情などを知っていた方がもちろん面白さは増すので、やはり順番に読むのがオススメです。

 

 

 

 

 

以下、若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

猛毒であるトリカブトの栞。「配り手」によって数個作られ、様々な理由で苦悩している人々の手に渡ったことにより校内全体でパニックが起こるような事態に発展するのですが、発端は数年前に友人同士二人が互いの人生の苦境に耐えるため、“切り札”として作ったもの。

 

「(略)何があっても、誰にどんなことをされても、お前が生きていられるのはわたしが生かしてやっているからなんだと思うために、わたしたちは切り札を持たなきゃいけなかった」

 

二人の間だけの言わば「おそろいのお守り」だったはずが、この栞の存在を知った第三者が模倣して“お守り”を広めるべく配った。

 

これは1998年に起こったドクター・キリコ事件」がモデルというか、要素として組み込まれているのだと思われますね。

自殺幇助事件だとされていますが、ウェブサイトの掲示板を使って青酸カリを送付していた男性は自殺を幇助するためではなく、自殺を踏みとどまるための“お守り”として送付していた。

猛毒を持ち、「これを飲めばいつでも楽になれるんだから」と思うことで精神状態を保とうという考えですね。

 

『栞と嘘の季節』でのトリカブトの栞は自分にではなく他者に使うことに意識がむいていますが、考え方の根本は同一のもの。

危険物を持つことが危険行動を起さない抑止になる。この“お守り”は確かに効果があるのでしょうが、やはり人は皆それぞれ違う。「ドクター・キリコ事件」もそうですが、実際に手にしたことで背中を押されてしまう、使ってしまう人間が出て来る。

 

トリカブトの栞のオリジナルを作った二人は、“切り札”と言っていることから“お守り”ではすまないだろうこの栞の危険性を見越していたのでしょう。

 

“切り札は切らないのが一番だけど、切らなきゃいけないときは切るもの”

 

武器を持つ理由は主に二つ。自身を守る為と他者に危害を加えるため。

毒花の栞という、危険だけれどもどこかお手軽でしゃれっ気もあるこの代物は、辛い思いをしている子供を何人も惑わせる訳です。

 

 

 

 

この物語は嘘つきだらけの物語です。

登場人物は皆それぞれに嘘をつく。その嘘はいったい何のための嘘なのか、なぜ嘘をつくのか。幾重もの嘘を一つ一つ暴いていって真相に迫っていく物語で、メインは事件の犯人当てよりもそれぞれの人物の秘めた想いですね。

とある人物が嘘をつき続ける選択をするラストは痛々しくも感慨深い。今作もやはり友情の物語ですね。

 

 

“毒花の栞”というアイテムはビターな青春ミステリである【図書委員シリーズ】にベストマッチなものだったと思います。

 

突き止めるべき犯人である「配り手」に関してはちょっと「何だかなぁ・・・」な人物造形でしたかね。いきがって少しサイコパス“ぶっている”といいますか・・・。結局何したかったんだかよく分らんし。ま、思春期ですから、これぐらいの浅はかさ、深みのなさがむしろリアルなのかもしれないですけど。

 

堀川と松倉、友人ながらも踏み込みがたい距離を保ち続ける二人にも微妙だが重大な変化あり。このべったりじゃない友情関係もこのシリーズの特色ですね。

松倉にとっての「解決すべき問題と、検討すべき選択肢」の答えはどうなったのかももちろん分りますよ。

 

嫌われ者の問題教師・横瀬の事情など含みが持たせてあったので、今後のシリーズでまた描かれるのではないかと思います。植田も心配ではある。

 

シリーズがまだまだ続いてくれそうなのは嬉しいですね。これもやはり他シリーズ同様に高校卒業までが最終地点となっているのでしょうか。いやぁ、他シリーズもまだ卒業できてないですけどねぇ・・・。

 

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他シリーズと同じように、【図書委員シリーズ】も今後追っていきたいなと。

 

 

米澤さんのビターな青春ミステリ。気になった方は是非。

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

 

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『ルー=ガルー2』続編!ネタバレ・解説 これは“あの作品“の完結編でもある?

こんばんは、紫栞です。

今回は、京極夏彦さんの『ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔をご紹介。

文庫版 ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔 (講談社文庫)

 

あらすじ

二十一世紀半ば。日本のとある都市で十四五歳の少女ばかりが狙われた禍々しく陰謀めいた連続殺人事件から三ヶ月。

犯人に捕らえられたものの九死に一生を得た二少女・来生律子のもとに、ともに拉致監禁されてあの夜を共に過した少女・作倉雛子が訪ねてきた。雛子は毒が入っているという小瓶を律子に託して姿を消す。

一方、刑事をやめた橡は三ヶ月前の事件で奔走した少女のうちの一人・神埜歩から過去の事件に関しての話を聞き、真相究明のため独自に調べ始める。

 

それと同時に、町では児童たちの突然の凶暴化、未登録住民の暴動など事件が多発。橡と少女たちはまたもおぞましい事件に巻き込まれていく。

一連の騒動は“未知なる毒”がもたらしているものなのか?

 

――呪いを解き放とうとする時にこの毒を使え。

 

 

 

 

 

 

 

 

近未来武侠小説第2弾!

こちらは2001年に刊行された二十一世紀半ばの近未来が舞台の長編小説『ルー=ガルー 忌避すべき狼』の続編。※前作について、詳しくはこちら↓

 

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刊行されたのは2011年で、前作から十年経ってからのまさかの続編でした。続編が出ると聞いたときはファンながら予想外で驚いた記憶が。

 

現実世界では十年経っているものの、作中設定は前作の事件から三ヶ月後が舞台。

前作で拉致監禁されていたところを助け出された被害者で本当にチラッと登場していた少女・来生律子の視点と、前作でカウンセラーである不破静枝と共に行動していた刑事・橡兜次(今作では刑事を辞めている)の視点とで交互に描かれる構成となっています。

 

前作との繋がりはもちろんですが、“とある毒”が物語に密接に関わっているということで他シリーズとの繋がりにも注目の1冊です。

 

前作での語り手だった牧野葉月不破静枝の出番はちょっと少なく感じますが、神埜歩都築美緒麗猫(レイミャオ)は前作同様にドタバタと大活躍。

 

特に、美緒の天才っぷりには今作でも頼りまくり。デジタルによる完全な監視社会なので、それを突破できる天才がいないと活劇も何も始められないんですよね。もちろん、“ルー=ガルー”も終盤めちゃくちゃな強さで貢献。麗猫は今回橡さんとのやり取りが多い。

 

引っ込み思案だった葉月は前作よりも若干行動力が増し、ツンツンしていた静枝は人前で笑顔を見せるようになっています。前作と同じ店で橡と食事するシーンもありますよ。

 

少女たちの大立ち回りだけでなく、ミステリ部分もかなりの読み応えがありますので、前作以上に京極ファンの期待に応えてくれる続編となっています。

 

 

前作は最初の単行本は徳間書店からの刊行だったのですが、今作は講談社からの刊行だったのですが、この本は出版史上初の

単行本

 

 

 

ノベルス

 

 

分冊文庫版(上下巻)、

 

 

電子書籍(二分冊)、と、4形態での同時発売でした。

 

正直、「いったい何故・・・」って感じでしたが、当時はまだ今ほど世間に電子書籍が受け入れられていなかったので、出版社側で広めたいという意図があったのですかね。

ノベルス版は1400円、文庫が上下巻で各700円、電子書籍も二分冊で各700円だったので単行本以外の3形態は実質同じ値段ですね。3200円の単行本は記念品的な位置付けなんだろうなと。

 

今は1冊にまとまっている文庫版と電子書籍が出ています↓

 

 

相当なファンじゃないと同時発売なのにわざわざ値段が倍以上の単行本買わないですよね・・・。発売当初も本屋さんに置いてあるのをなかなか見なかった。

私は講談社ノベルスが大好きなのでノベルス版で買いましたよ。

 

 

 

 

 

 

“あの”毒を巡る物語

前作は牧野葉月をはじめとした四人の少女たちと、カウンセラーである不破静枝と刑事の橡兜次の大人コンビとで同時進行で展開されるものでしたが、今作は前作で少し登場していた来生律子と作倉雛子が主で、橡が事件を独自で調べつつ前作の少女たちと関わっていくストーリー展開。

前作は「少女たちと大人コンビ」って感じでしたが、今作は「少女たちと一人の中年男性」って感じですね。

 

来生律子は関西弁のバイクいじりが好きな少女(この時代、バイクは骨董品扱いになっているという設定)で、作倉雛子は占いを嗜む(?)いつもゴスロリちっくな黒ずくめの格好をしている“お葬式娘”。

律子が雛子から毒が入っているという小瓶を託されたところから物語は始まる。

 

 

物語が進むにつれ、この毒は“経口摂取せずとも吸収され人を死に至らしめる”、一滴垂らすだけで殺すことが出来るという、第二次世界大戦時に軍隊が“ある人物”に開発させた毒薬、暗号名『しずく』の製法を元につくられたものだと判明する。

 

これは邪魅の雫で一連の事件の発端となった“あの毒”ですよ。

 

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前作同様、百鬼夜行シリーズ】と密接な繋がりがあるという訳ですね。

 

邪魅の雫』を読んだ人なら「え?あの毒は物語の最後に破棄されていたはず・・・」となるところだと思いますが、あの毒の特殊な浸透性に着目したとかで、製法がまた妙な具合に受け継がれてしまったらしい。この毒が絡んでいるのですから、もちろん“あの”大企業が物語に関与していますよ。

 

前作は結構マニアックな繋がり方でしたが、今作は「毒」と出て来た時点で京極作品ファンなら序盤から(なんなら本の裏表紙の説明や帯で)すぐにピンとくるかと。

 

 

橡さんの方は前作で自身の過去のトラウマ話(?)として静枝に語っていた、「仲が良かった同級生が、女児を殺害後に自分の家族を皆殺しにした」という話の、その友だち・霧島タクヤが、前作で神埜歩が“行き遭ってしまった”男だったという事実を知り、三十年前の事件に疑問を抱いて調べ始める。

 

律子と雛子が主となるのもそうですが、橡さんの過去話がこんな風に繋がるのも読者としては盲点。前作から十年空いているとは思えない計算された繋がり方で感服ものです。

 

正直、今作発売当初は「前作の内容忘れちゃったよ~」って人も多かったと思いますけど、既に読んでいて忘れてしまった人は再読して、これから読むよって人は一作目完読後になるべく期間を空けずに今作を読んで欲しいですね。

なんせ、作中設定では前の事件から三ヶ月後なので。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ含みます~(※『邪魅の雫』のネタバレも含みますのでご注意)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢魔

タイトルにインクブス×スクブス 相容れぬ夢魔と付いていますので、今作もまた近未来設定ではあるものの京極的妖怪小説です。

 

インクブスとスクブスは古代ローマ神話とキリスト教で語られる悪魔の一つで、人に姿を変えて人と交わる淫魔のこと。男性の淫魔をインクブス、女性の淫魔をスクブスと言う。眠っているところを犯すことから「夢魔」とも呼ばれる。

 

淫魔と言われるとどうしても性的なイメージが強くなりますが、そういった要素もあるものの、この物語で着目されているのは「夢魔」という呼称の方ですね。

 

今作でインクブス、スクブスはそれぞれ毒の名前として出て来ます。このインクブス、スクブスの存在によって、荒唐無稽な「夢」をみた人々が陰謀やら狂気やら妄執やらを炸裂させて事件を引き起こす。

 

人を犯す「夢」。魔、邪に魅入られし夢。その発端はあの『しずく』。

 

ただ繋がっているというだけでなく、今作は邪魅の雫』を踏まえた上での物語となっていると。

 

 

邪魅の雫』で出て来た「神崎家」。困ったことに、百年経ったこの世界でも忌まわしい事件を起してくれちゃっている訳でして。本当に人間の業は深いといいますか。

 

神崎家の人間である雛子の祖父は、DNAを強化して体内時間が十倍に変化する「インクブス」と、その還元剤としてDNA情報を凡て書き換える作用を持つ「スクブス」、相反する薬(毒)をつくり、死に際にそれぞれを二人の孫に託した。

 

相反するものをそれぞれ別の人間に託して結果を委ねるという行為は、『邪魅の雫』での神崎宏美の行為と似通っている。

 

行動実験ともいえるものですが、その実は「どっちつかずで、直接的な行動も判断も自分では出来ないから、他の人間に丸投げしてしまおう」ってな具合の、中途半端で無責任なものです。

 

そのせいで「夢」に取り憑かれることとなった人々が方々で画策して前代未聞の大事となったのですが、雛子の祖父の本来の望みは「神崎家の血を絶やすこと」

雛子の祖父が置かれた状況としては、その望みは一人息子が子供を作る前に殺せば容易く達成されるものでしたが、さすがに実子を殺害するなどということはしたくなかった。

それで遺伝子情報を書き換る研究に没頭してしまったと。

 

 

 

 

 

「雫」の呪いを解き放つ

「なんだ、そのあさっての方角の考え方は」って感じですが、なまじ『しずく』があったせいでそんな方向にいってしまったのですね。

研究のために未登録住民を使って違法な人体実験をしているし、結局は投薬実験で息子を殺すことになってしまうのですが。

 

忌まわしいものだと分っていながら毒の完成を目指してしまう――これを先祖がした行為と結び付け、雛子の祖父は「邪なモノにどうしようもなく誘惑されてしまうのは神崎の血のせいだ」と考えて、血統をどうしても残したくないと思ったのでしょうか。

 

「ケットウなあ」

くだらねーと美緒は草を蹴った。

「そんなもんで人間が決まると考えること自体が犯罪的に頭悪いよ。そんなもん関係ねーよ。そんなもんに拘るからアホなことが起きるんじゃないか」

 

まったく、「そのとウりだ!」ですけれど。

 

 

そんな訳で、今作は『ルー=ガルー 忌避すべき狼』の続編であると同時に、邪魅の雫』の続編であり完結編でもある。今作で神崎家の呪いは完全に解かれるのですからね。

 

 

 

 

『ルー=ガルー3』はあるのか?

物語の中盤で公安のヒゲオヤジ・小山田さんという“如何にも”な人物が登場し、終盤では「皆今後は私の監視下に入り働いてもらう」などと言っていることから、さらなるシリーズ化を期待させる終わり方をしているのですが、この本が刊行されたのは2011年。そして今は2022年。

 

十年以上経ちましたが音沙汰なしです。

 

ファンとしては『ルー=ガルー』のシリーズ続編より、ずっと予告されている【百鬼夜行シリーズ】の新作を出してくれ!ではありますが、『ルー=ガルー』は特に【百鬼夜行シリーズ】との繋がりが強いもののようなので、新作が出れば連動して『ルー=ガルー3』も出るかもやもしれないですよ。なので、新作!お願いします!ですね。

 

 

京極作品ファンとして、めげずに色々新作を楽しみに待ちたいと思います!

 

 

 

ではではまた~

 

 

 

『オメガ城の惨劇』感想 犀川創平 最後の事件とは!?

こんばんは、紫栞です。

今回は、森博嗣さんの『オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case』を読んだので感想を少し。

オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case (講談社ノベルス)

 

あらすじ

招待状に導かれて孤島に聳えるオメガ城にやってきた訪問者たち。物理学者、数学者、心理学者、医者、画家、記者、そして研究者であるサイカワ・ソウヘイ。

まったく繋がりも関係もない招待客七人は、オメガ城での集いがどんな種類のものかも知らずに招待に応じた。

招待主として記されていた「マガタ・シキ」の名前に興味と期待を抱いて。

 

城の執事までも主催者の顔を知らず、目的も分らないままだったが、“ある出来事”のお陰で皆高揚し、晩餐会は大いに盛り上がった。しかし、深夜になってオメガ城は惨劇に見舞われることに。

連絡手段が断たれた絶海の孤島で、生存者たちは必死に頭を巡らせるが――。

 

 

 

 

 

 

犀川創平 最後の事件!!

昨年刊行された『夏の終わりは海』の巻末に掲載されていた連載予告から既に心躍っていました『オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case』

 

雑誌から読書クラブの会員に届ける会報誌へとリニューアルした『メフィスト』の目玉作品の一つとして連載されたこちら。なんといってもタイトルが森博嗣作品ファンにとっては「なんだって!」と興奮してしまう。

副題が「SAIKAWA Sohei’s Last Case」

 

イカワソウヘイズ ラストケース

 

犀川創平 最後の事件!!

 

犀川創平は森博嗣ワールドのすべての始まりである【S&Mシリーズ】の主人公で他シリーズにも深い関わりがある森博嗣作品での代表的人物。しかしながら、サブでちょこちょこと登場していた【Gシリーズ】も途中から時間が大幅にぶっ飛んだことで近年はご無沙汰状態でした。

 

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同じ世界線で描かれている一連のシリーズはいずれも時代が進んでの近未来ものとなり、本格ミステリからSF作品へと描かれ方が変わっているので、「もう犀川先生や萌絵は“モロに”作品に登場はしてくれないのかも・・・」と思い始めて数年経過してのこのタイトル。犀川先生が主のお話が読めるのか!?しかも最後って!?」と、ファンは大興奮な訳です。

 

本の帯には“「F」の衝撃、再び。”の文字。

「F」とは森博嗣さんのデビュー作で【S&Mシリーズ】第一作で衝撃の名作であるすべてがFになるのこと。

 

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たしかに舞台設定が「すべてがFになる」を連想させるものとなっていますので、始まりの物語である「すべてがFになる」を連想させる事件で“ラストケース”って事ですかぁ~?とね。非常に煽ってきている帯ですね。

 

それだけでなく、“オメガ城の惨劇”という部分もファンの引っ掛かりポイント。【Gシリーズ】の最終作として告知されているタイトルが『ω(オメガ)の悲劇』ですからね。

 

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「“オメガ”って付いているけど、カタカナ表記だし城だし悲劇じゃなくって惨劇だし・・・う~ん?」てな具合に困惑ですね。

 

ノベルス版と単行本版で同時販売ですので、買うときは注意が必要です。白地の方がノベルス版、

 

 

青い方が単行本ですね。

 

私はずっとノベルス版で買っているし講談社ノベルスが大好きなのでノベルス版で買いましたが、最初検索したときに出て来たのが青い方で、単行本と気づかずに「たっか!何事!?」ってなった(^_^;)。買う前にちゃんと確認しましょうね。

 

 

 

 

 

 

以下、若干のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スペシャルな番外編

 

タイトルでファンの期待値が上がってしまう今作、読後の率直な感想は「欺された!」「嘘つき!」です。

 

この“やられた感”を肯定的に受け入れるファンと否定するファンとで意見が分かれるものになっていると思います。

だって、だって、タイトルが・・・詐欺じゃん・・・!こういった驚きは森ミステリィでは何度も味わっているので慣れてはいますし醍醐味的に面白いのですけども。でも如何せん今回はタイトルが、ね・・・!

 

孤島に聳え立つ城での殺人事件というのは本格推理小説的な感じでミステリ好きはワクワクする設定ではありますが、解決への展開の仕方は本格推理小説でありふれているものとは異なる。いわゆるクローズド・サークルものでのベタ展開はしてくれない。

 

やはり初期の本格ミステリ的な「森ミステリィ」ではなく、近年の「森ミステリィ」だなぁと。(個人的にはベタベタのミステリ設定大好きなので、初期の頃を思い出させるような作品も読みたかったなぁという気がしますが)

近未来設定ではありませんけどね。時代設定についてちゃんとした描写はないのですが、現代設定だと思います。たぶん。

 

終盤で明らかにされる真相だけでなく、一晩で一気に四人殺されるという展開はなかなか驚きでした。

一人ずつ殺すよりも一気にやった方が相手に警戒されないぶん成功率が高いという作中意見には頷くしかないですけど。ミステリでお決まりの閉鎖空間で一人ずつ殺すって、確かに回りくどくってかなり変なんでしょうね。

 

近年の作品はミステリとしてあやふやなまま終わるものも多かったのですが、今作はちゃんとミステリとして確り描かれています。日本と外国との行き来など無理があるのではないかという部分もありますが、犯行も犯人も規格外で面白かったですね。

 

とはいえ、やはりメインは事件の真相ではなくエピローグで明らかになる真相の方。長年森博嗣作品を読んできたファンだけが分るように書かれた真相ですね。

 

ま、人物名が全員カタカナ表記な時点で警戒はしていたし、途中何回も違和感はあったんですけど。終盤のブティック出て来るあたりが決定的におかしい。

 

 

今作の語り手は記者の女性なのですが、彼奴はいくつになっても罪な男ですな。「大勢が泣かされました」ですねぇ・・・。

 

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タイトルが匂わせまくっているものの、今作は【S&Mシリーズ】とも【Gシリーズ】とも違う、シリーズ外作品です。

しかしながら、真賀田四季と【Vシリーズ】のお二方が直接登場、「すべてがFになる」での舞台だった研究所が再び出て来るなど、ファンサービス満載のスペシャルな番外編となっていてタイトルに引っ掛かりつつも個人的には大満足な作品でした。

 

各シリーズを追ってきたならやはり絶対に読むべき本だと思いますので、「森ミステリィ」ファンは是非。

 

 

ではではまた~

『金田一少年の事件簿30th』2巻 「八咫烏村殺人事件」完!ネタバレ・感想

こんばんは、紫栞です。

今回は金田一少年の事件簿30th』2巻の感想を少し。

 

金田一少年の事件簿30th(2) (イブニングコミックス)

 

30周年記念継続中

連載30周年を記念して復活した“少年期”『金田一少年の事件簿30th』2巻目です。

1巻目が出たのは5月だったので結構期間が空いての刊行ですね。1巻は限定版がありましたが、2巻は通常版のみの販売です。

 

 

 

 

連ドラも終わってしばらく経つので30周年気分も薄まってきてしまっていましたが、

 

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まだまだ特別企画は継続中のようで、コミックスの帯には11月13日に配信されるトークイベント第2弾、ミクサライブ東京9階で開催されているCafé「オペラ座館Amazonで購入出来る金田一少年の事件簿30周年記念Tシャツ」発売中!

 

等々のご案内が書かれています。

 

地方在住なので行けないのですが、Café「オペラ座館」が気になる・・・。オペラ座のみに的を絞っているのがなんか良いですね。

 

あと、金田一耕助の名前の元となった言語学者金田一京助先生の曾孫で劇作家である金田一央紀さんと金田一一との特別対談がYouTubeで公開されています。


www.youtube.com

 

(横溝正史作品の金田一耕助の名前の元になった人・・・って、ぶっちゃけ、この作品との繋がり殆どないのではって気しますが・・・)

 

 

 

 

 

以下、ガッツリとネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八咫烏村殺人事件」完

今巻は前巻からの「八咫烏村殺人事件」完結までが収録されています。長くなりそうな事件だと思っていましたが、きっかり2冊使っての事件でしたね。※前巻のあらすじなどについて、詳しくはこちら↓

 

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前巻は元村会議員の黒羽が殺害されたところで終わっていました。今巻は黒羽が密室状態の茶室で前の二人同様に生首となって発見されるところからスタート。

 

第1の事件が社の奥での五重密室、第2の事件は関係者全員アリバイがある状態、第3の事件がシンプルな密室殺人と、いつもながら本格推理的トリック目白押しですね。

しかしながら、今回は数日後にダムの底に沈む村が舞台ということで“とりあえずこの場を乗り切れば良い”といった犯行内容になっています。

どうせダムの底に沈むから、容疑者不在の状況にすれば事件を迷宮入りに出来るだろうという算段で、証拠の隠滅など仕掛けの細部は大雑把。

 

たしかに通常なら警察も深く現場の捜査出来なくってうやむやになってしまうだろうところですが、名探偵はそんな状況でも見落としたりはしてくれませんよと。

 

 

特に第3の事件での密室トリックはあまりにもお粗末。どうせダムの底に沈むとはいえ、警察も鍵穴や釘の後には気が付くだろうと思う・・・と、いうか、犯行後すぐに回収しなくちゃダメだろう。何やってんだ犯人。

 

第1の事件の五重密室ですが、やはり首だけならなんとかなるもんだといったトリックでしたね。色々とリスキーですけども。ま、いつものことか。

密室が五重になっているというのもさほど問題にはなっていない。上は隙間だらけでしたから、実質密室じゃなかったですしね。

傾斜がある建物でのトリックって、島田潔さんの『斜め屋敷の犯罪』を思い出す。(あれはもっとトンデモトリックですけど・・・)

 

 

金田一少年の事件簿では毎度のことですが、ワイヤー張るの大変そー。一度張っているとこ丁寧に見せてくれ。

この手の“列で移動して云々”といった状況下のものは大抵行列の最後の人物が犯人(やっぱり最後尾じゃないと細工するのは難しいですからね・・・)ってことで、花鳥知不美が犯人。

 

三鴨さんが踏み外したり、鷲見さんが車の鍵を落したりはひっかけだったんですね~。惑わされずにストレートに考えれば良いと。

 

第2の事件で八咫烏荘に戻ろうと言い出したことや、車の窓を開けてから火薬の匂いがすると言うなど、不自然な点が多かったと金田一に指摘されていましたね。

 

まだ事件全部発生し終わってないから~って思って前巻を読み終わった段階では犯人当てを放棄していましたが、前巻の時点でちゃんとヒント出ていたのだなと。読者としてもっと推理するべきだったかと反省。しかし、いずれにせよ今巻の足跡の件は見抜けなかっただろうなぁ。

 

アリバイトリックに関してはゴミ袋が実は軽いとかなんだろうなとは予想がついた。紐で引っ張って空気の入った袋を割る、生首を持ち歩いて行動するなど、所々魔術列車殺人事件」が連想されるトリックですね。

 

 

 

6年前に失踪した弁護士さんの行方が実は一番の驚きポイントかもしれない。消息を絶った屋根裏部屋にずっと“いた”という。

 

しかし、警察!失踪者の携帯電話発見したならちゃんと調べなさいよ!滝さん、なに普通に第三者に渡してんだ。え?行方不明での捜査ってそういうものなの?

 

八咫烏様からのお告げ(?)で犯行に及んだといったふうに描かれていましたが、結局自分で全部やらなくちゃいけないなら八咫烏様に「殺してくれ」って頼んだ意味ないよなぁ・・・。

首を捧げて何してくれるってんだ。報酬を示して欲しい。お告げ(?)から6年間経っての犯行というのも疑問でしかない。八咫烏様はなんとも気長ですね。

 

せっかくのベタなおどろおどろしい序盤の雰囲気も後半では殆ど感じられなくなっていて残念。

三人の被害者の首から下の身体について言及がないし、決定的な証拠も「警察が詳しく調べれば分かるだろう」で済ませてしまっているし、犯行内容だけでなく、ストーリー諸々ちょっと雑さが目立つ仕上がりだったかなぁと。

 

 

 

 

 

続くようだ

連載30周年を記念し、『金田一37歳の事件簿』をお休みして始まった『金田一少年の事件簿30th』ですが、この事件で終わらずにまだ続くようです。37歳の方があるからこの事件だけで終わりかなぁと思っていたのですが・・・。どれくらい続ける気なんでしょうかね?

 

次の第3巻は2023年1月発売予定。

金田一史上初の事件が起こる”らしい。いつでも史上初なんではって気もしますが。次の事件は東北の村が舞台で佐木も出て来るようで嬉しい。37歳になってからはチラッと出て来ただけでご無沙汰状態ですからね~。

なんにせよ、また楽しみに待ちたいと思います。

※出ました!詳しくはこちら↓

 

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ではではまた~