夜ふかし閑談

夜更けの無駄話。おもにミステリー中心に小説、漫画、ドラマ、映画などの紹介・感想をお届けします

『御手洗潔シリーズ』ドラマ・映画 悔やまれる、大人の事情・・・

こんばんは、紫栞です。今回は御手洗潔シリーズ】の映像化作品について少し。

 

探偵ミタライの事件簿 星籠の海

 

前の記事で【御手洗潔シリーズ】についてまとめましたが、

 

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このシリーズは2015年に単発スペシャルドラマ『天才探偵ミタライ~難解事件ファイル「傘を折る女」~』(短編集『UFO大通り』に収録されている「傘を折る女」が原作)が、

 

UFO大通り (講談社文庫)

UFO大通り (講談社文庫)

 

 

2016年には『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』のタイトルで映画化されています。

 

 

探偵ミタライの事件簿 星籠の海

探偵ミタライの事件簿 星籠の海

  • 発売日: 2016/12/30
  • メディア: Prime Video
 

 

単発スペシャルドラマですと主演の御手洗潔玉木宏さん、石岡和己役堂本光一さんが演じています。

御手洗潔シリーズ】は生活環境が時代と共に変化するシリーズで、原作では1994年に御手洗が脳科学者として海外に行ってしまって以降、日本に帰らずじまいの設定ですが、このドラマでは御手洗と石岡君が馬車道の部屋で同居生活している設定となっています。

やっぱり同居時代がこのシリーズの黄金期(?)ですからね。映像化するなら御手洗潔と石岡コンビが一緒にいて、ホームズ役とワトソン役やってるパターンですよ。

 

ドラマの原作である「傘を折る女」は短編で、ラジオ番組の投稿からストーリーが展開する流れは面白いのですが、ミステリとしては推理も仕掛けも結構無理がある作品(^_^;)。そこがまた【御手洗潔シリーズ】“らしさ”なのかもですが・・・。

シリーズの特徴である御手洗と石岡君の掛け合いはドラマ用の脚色や改変があるもののコミカルで楽しかったので、ファンの間やネットでは盛り上がりました。

 

この単発スペシャルドラマは映画化を見据えての企画だったらしく、同じく玉木宏さん主演で翌年の2016年に『星籠の海』を原作とする映画が公開されたのですが、

 

星籠の海(上) (講談社文庫)

星籠の海(上) (講談社文庫)

 

 

映画では助手役が石岡くんから変更。広瀬アリスさんが演じる映画オリジナルキャラクターの小川みゆきが助手役となっています。一応電話で少し(本当に少し)石岡くんが登場してはいるのですが、この際の声も堂本光一さんではなくって藤尾勘太郎さんが演じています。

 

この助手役の変更ですが、当初は映画でも堂本光一さんが続投で出演する予定だったのが、ドラマの視聴率が振るわなかったので所属事務所からNG が出たんだ・・・・とか。

原作者の島田荘司さんがツイートしたりして話題になったりもしたのですが・・・実際のところはどうなのでしょう?

個人的に、こんなことを作者がツイートで暴露しちゃうのはファン心理としては微妙ですが、真相はどうあれ“大人の事情”での降板は間違いないでしょう。主演はドラマと同じなのに、ドラマで相棒役をしていた人物が映画で不在なのはかなり不自然ですからね。

制作側も石岡和己が不在なのは痛手だと重々承知しているのか、作中で石岡くんの名前を度々出すなどの配慮がされていましたが、コレ、原作シリーズ知らない人には訳分からないだろうし。

肝心の「御手洗潔」の人物像も映画では説明不足ですね。石岡君が不在な時点で原作ファンにはウケが悪くなってしまうのだから、もっと原作をまったく知らない人でも愉しめるようにした方が良かったのでは。

 

原作の『星籠の海』は「福山を舞台にした映画を創りたい」という映画化ありきで書かれたものなのですが、シリーズの特色であるダイナミックな仕掛けや奇抜さは薄い作品なので、「せっかく御手洗潔シリーズの映画化ならもっと“らしい”過去の作品をやれば良いのに」と個人的には思いましたね。

良くも悪くもね、「そんなバカな!?」という度肝を抜かすものが御手洗シリーズだと思う。

 

映画はドラマ版と制作スタッフが異なり、『相棒』の制作スタッフが担当。全体的に重々しい画と雰囲気で、シリーズのワトソン役である石岡くんがいないし、石岡くんの前じゃないから御手洗の変人ぷりが発揮されないしで(ドラマ版の御手洗も原作よりクールでしたが、映画はより物静かな人物に)結果的に【御手洗潔シリーズ】らしさが皆無の、よく分からない事件ものになってしまっていました。

 

原作とは人物設定など細部が変えられています。原作の事件関係者たちはそれぞれ「うわぁ」っていう女性だったり、情けなさ過ぎる男性だったりと、ムカムカする登場人物たちが多く登場し、(特に女性学者さんは御手洗シリーズでは珍しく仕事第一の女性かと思ったら、やっぱり結婚願望が強い女性で何だかもの凄くガッカリした。どうしても女はそんなもんだと言いたいみたいですね・・・)偽装工作もえげつないのですが、映画ではすべて「普通」になっていた。そもそも事件関係者の内面描写自体が少ないんですけど。原作よりムカムカしないし引かないものの、酷く単調な作品に。

劇場まで観に行ったのですが、観終わっての一番の感想は「退屈」でしたね(^_^;)。

 

私としては、ドラマの方がコミカルで御手洗と石岡くんの掛け合いも楽しかったので好きなのですが、残念ながらDVD化もされていないので今となっては観るのが困難に。ホント、大人の事情が悔やまれる・・・。堂本光一さんの演じる石岡くん、結構良かったんですけどねぇ。ドラマのコンビのまま映画化されて欲しかったなぁ。

 

御手洗役の玉木宏さんは、作者の島田荘司さんご指名でのキャスティングなんだとか。映画化前は【御手洗潔シリーズ】の初期の数冊しか読んでいなかったので(映画館行く前にシリーズ一気読みした)、「そんなにイケメンのつもりで書いていたのか。全然そんなつもりで読んでいなかったぞ」と、驚いた(^_^;)。その後読み進めて、原作でもちゃんと美形設定なんだと理解したのですけども。

 

作者ご指名なのでアレなんですが、役作りなのか声質なのか、セリフが聞き取りにくいのが個人的にちょっと「う~ん」でしたね。推理ものでは探偵役のセリフが聞き取りにくいのは致命的ですから。玉木宏さんは好きな役者さんなんですけど。

 

人気シリーズであるにも関わらず、三十年以上映像化されなかったのは作者の島田さんが作品数の少ないうちに映像化されて悪い影響を受けることを恐れていたためらしい。機が熟し、御手洗潔を演じて欲しい役者を見つけて・・・と、満を持しての映画化だったと思うのですが、色々残念な形になってしまいましたかねぇ・・・。

 

何作もある人気シリーズですので、また新たに映像化されてもいいのではないかと。これで映像化はこれっきりというのは如何にも勿体ない。

ドラマ版のディスク化は今からだってして欲しいもんですが、難しいでしょうか。

 

大人の事情・・・憎い・・・・!

 

 

ではではまた~

 

※漫画も出ています↓

 

 

『御手洗潔シリーズ』 順番・概要まとめ

こんばんは、紫栞です。

今回は島田荘司さんの御手洗潔シリーズ】の概要・順番などをご紹介。

 

御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)

 

御手洗潔シリーズとは

占星術師だったり私立探偵をしていたり脳科学者だったりする変人秀才男・御手洗潔を探偵役とする推理小説のシリーズ。

物語りの語り手は主に御手洗の友人である石岡和己が務めており、「石岡和己が御手洗潔の事件記録を本にして発表している」という形式で描かれています。

御手洗潔がホームズ役を、石岡和己がワトソン役をといった、まさに“和製シャーロック・ホームズ”な代物で、1981年に刊行されたデビュー作『占星術殺人事件』を始めとして、およそ40年経った現在も続いている、日本を代表する本格推理小説シリーズです。

 

映像化もされています↓

 

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シリーズ特徴

御手洗潔シリーズ】は魔法としか思えないような魅力的な謎の提示と、大胆な仕掛けが特徴的。機械トリックものが多く、奇抜で派手さがあるので金田一少年の事件簿名探偵コナンなどの本格推理漫画的な空気感や謎解きを求めて推理小説を読むのなら、まずはこのシリーズをオススメしたい。実際、日本の本格推理漫画は島田作品の影響を少なからず受けているのだろうと思いますが。トリック盗用問題などもありましたしね。

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 もちろん日本本格推理界にも多大な影響を与えていますよ。

 

長年続くシリーズものだと描かれる時代が限定されていたり、主要人物が歳をとらない“サザエさん形式”だったりするものも多いですが、

 

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この【御手洗潔シリーズ】は作中時間がリアルタイム進行していて、登場人物もしっかり歳をとっていくのが特徴の一つ。

主要人物は御手洗と石岡くんの他に暗闇坂の人喰いの木』から登場する御手洗大好き大女優の松崎レオナ『龍臥亭事件』から登場する石岡くんラブの犬坊里美といますが、40年もやっているもんで、皆さんもう結構なお歳。事件の謎解きだけでなく、各人の立場・交友・生活環境の変化や経過もシリーズを愉しむ上で大事な要因になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シリーズ順番

  • 占星術殺人事件(長編)
  • 斜め屋敷の犯罪(長編)
  • 御手洗潔の挨拶(短編集)
  • 異邦の騎士(長編)
  • 御手洗潔のダンス(短編集)
  • 暗闇坂の人喰いの木(長編)※石岡和己が探偵役
  • 水晶のピラミッド(長編)
  • 眩暈(長編)
  • アトポス(長編)
  • 龍臥亭事件(長編)
  • 御手洗潔のメロディ(短編集)
  • Pの密室(中編集)
  • 最後のディナー(短編集)
  • ハリウッド・サーティフィケイト(長編)※松崎レオナが主役のスピンオフ
  • ロシア幽霊軍艦事件(長編)
  • 魔神の遊戯(長編)
  • セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴(中編集)
  • 上高地切り裂きジャック(中編集)
  • ネジ式ザゼツキー(長編)
  • 龍臥亭幻想(長編)
  • 摩天楼の怪人(長編)
  • 溺れる人魚(短編集)
  • UFO大通り(短編集)
  • 最後の一球(長編)
  • リベルタスの寓話(中編集)
  • 犬坊里美の冒険(長編)※犬坊里美が主役のスピンオフ
  • 進々堂世界一周 追憶のカシュガル(短編集)※文庫版で「御手洗潔進々堂珈琲」と改題。
  • 星籠の海 Tne Clockwork Current(長編)
  • 屋上の道化たち(長編)※文庫版で「屋上」と改題
  • 御手洗潔の追憶(短編集)
  • 鳥居の密室 世界にただひとりのサンタクロース(長編)
  • ローズマリーのあまき香り(長編)

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他、『毒を売る女』

 

 

という短編集に収録されている「糸ノコとジグザグ」“演説好きの男”として御手洗が登場。(作中では「御手洗潔」と明記されていないのですが、本の説明文で「御手洗潔シリーズの傑作」と書かれているので“そういうこと”で良いらしい)「糸ノコとジグザグ」は本格推理ものファンや作家さんの間でも名高い短編ですので、シリーズ外の短編集の収録で見落としがちでしょうけど読んでおくべし。

 

切り裂きジャック百年の孤独という長編では偽名で御手洗が登場しています。

 

 

短編集の進々堂世界一周 追憶のカシュガル(文庫版で「御手洗潔進々堂珈琲」と改題)

 

 

 

は御手洗が京大生だった頃のお話たちで、本の紹介に“ミステリ”と書いてありますが、実質ミステリではないらしく(それって詐欺なのでは・・・)、この短編集だけは私は読んでいません。

 

 

『龍臥亭事件』石岡和己が、『ハリウッド・サーティフィケイト』松崎レオナが主役。御手洗は電話での登場でヒントを与えてくれるものの、謎解きするのはそれぞれの主役たちなので、実質スピンオフ作品となります。

スピンオフ作品は『犬坊里美の冒険』もありますが、こちらは御手洗がまったく登場せず、石岡和己が電話で登場しています。※【御手洗潔シリーズ】のスピンオフについて、詳しくはこちら↓

 

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 御手洗が電話のみで登場というのは中編や短編にもあります。1000ページ越えの長編でも御手洗が登場するのは最後の謎解きでチョロッとのみというものも多いので、なんというか、出し惜しみ系名探偵(?)ではある。

 

あと、長編ですと殺人事件の謎解きとは直接関係のない過去の事柄が当時の当事者視点で長々と描かれていて「本来描きたいのはこっちで、推理小説部分はオマケなのでは」と、いったものも。

そういった推理小説部分以外も面白いし読みごたえがあるのですが、御手洗の登場を目当てに読むとなると結構な忍耐が要求されると思われます。

 

私のオススメはやっぱり初期の作品ですかね。好きなのは『異邦の騎士』『暗闇坂の人喰いの木』『眩暈』などの長編。

特に『異邦の騎士』

 

 

 

はシリーズを愉しみたいなら絶対、絶対に外せない長編ですので、是非『異邦の騎士』までは、いや、それを経て御手洗潔のメロディ』収録の「さらば遠い輝き」までは、必ずシリーズの刊行順に読んで欲しい。刊行順に読むのが『異邦の騎士』を、「さらば遠い輝き」を、と、いうかシリーズを、十二分に愉しむためのポイント。

 

 

 

 

 

 

以下多少のネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変化・気になるところ

御手洗潔シリーズ】には大きな転換期があります。石岡くんと横浜の馬車道ルームシェアしていた御手洗ですが、『龍臥亭事件』の前に石岡くんを一人部屋に残し、探偵業を廃業して脳科学者として海外に渡ってしまうのです。

1994年。御手洗潔と石岡和己、二人の別れでありました。

 

その後、シリーズがどのように続いているのかというと、御手洗がまだ日本にいた頃の事件を思い出して石岡くんが書いているというパターン、御手洗が渡欧し研究者となって以降の助手役・ハインリッヒが語り手を務めるパターン、御手洗が電話のみで登場パターンなどですね。

 

この転換期のせいかどうかは分かりませんが、シリーズは後半の方になるとセリフの多い簡素な文章が目立ち始め、初期と比べるとかなり読みやすくなっていきます。

御手洗潔シリーズ】は「そんなバカな」「魔法だ」といった謎の提示が魅力的なシリーズですが、実は最後の謎の解明を聞いても感想は「そんなバカな」「魔法だ」てな作品ばかり。実行するには荒唐無稽で、偶然に頼りすぎだし、辻褄合わせもかなり強引。作品によっては冷静に見るとバカミス寸前・・・いや、もうバカミスなのでは?というものも多い。

 

それでも目の離せないストーリー展開や濃厚な雰囲気、人物の描写で有無を言わせない面白さがあったのですが、文章が簡素になったことで「バカミスなのでは?」感が際立ってしまっている気が。

最近読んだ『犬坊里美の冒険』『屋上の道化たち』(※文庫版で『屋上』と改題)はかなり酷いもので、登場人物もバカバカしい者ばかり。刊行前によく編集者からのダメ出しが入らなかったなというような呆れる作品でした。

最新作である『鳥居の密室』は良かったので、

 

 

 

笑わせようとしてワザとやっているのかもしれませんが。(まったく笑えませんけどね)

 

 

個人的に、登場させる女性がそろいもそろって男に寄生して見栄を張りたがるバカみたいな女ばかりなのが気に障るところ。いかにいい男を捕まえるかという、結婚願望が強い女ばかりで、結婚に興味ないとか、お仕事第一というキャリアウーマンや自立した女性を出してくれないんですよね。(レオナは違いますけど。でもレオナはレオナで読者に嫌われてるね^_^;)

御手洗が女嫌いの設定だからというのもありますが、読んでいるとやっぱり作者自身が女性を嫌悪しているのかなぁと感じてしまう。

なにかというとアメリカを比較に出して日本の制度批判をするのも安直で、諸々視野が狭くなってしまっているのではないかと。こういった部分は初期作品から気になってはいましたが、近年はさらに目立つようになって、読む度イライラさせられてしまうのが私個人の現状です。

 

これで女性人気が高いというのだから驚き。御手洗と石岡くんのコンビがウケているのでしょうけど。島田さんはファンの二次創作に寛容な作家で有名で、公認のパスティーシュ本なども刊行されているのですが、

 

 

 

ある種、こういったファンにサービスしすぎなところも懸念される点な気もする。

 

 

 

 

どうするつもりなのか

御手洗は2020年の今日に至るまで日本に一度も帰国せずですので、御手洗潔と石岡和己のコンビが現在の事件に挑むことはなく、二人が一緒に事件に取り組んでいた日々はもはや遠い思い出となりつつある・・・と、いうか、なっています。御手洗が日本を離れたのが1994年。御手洗も石岡くんももはや70代。余生を楽しもうってなお歳です。

 

あまりに規格外な天才である御手洗と共に過したことで著しく自尊心が低下し、思考停止するようになってしまった石岡くんを慮ってという意図もあって日本を離れた御手洗。(その前に石岡くんに一緒に海外に行かないかと誘っているし、自分が日本を離れても石岡くんが横浜の部屋を出て行かないように指示したりしているので、御手洗の中でも様々な葛藤があるでしょうが)

 

自分の存在が大事な相手をダメにしてしまうとはなんとも苦々しく、哀しいことですが、石岡くんはそれ以来横浜の部屋で一人、昔を思い出しながら本を書き、その稼ぎで糊口をしのぐ日々です。

『龍臥亭事件』などでの謎解き、里美ちゃんの存在などで自己肯定が多少出来るようになった描写はあるものの、石岡くんのこの状態が本当に良好なものなのかどうかは判別しかねる。結局、過去にすがりついての孤独な日々を20年以上過しているってなことになっているのでは・・・と、いう。別にその生活が悪いってなことではないですけど。

 

御手洗に石岡くんの元を去らせ、ホームズ役とワトソン役をバラバラにさせてどう展開させるつもりだと読者に思わせてから、長い年月がたちました。このシリーズが輝いていたのはやはり横浜の馬車道の部屋で二人が探偵業をしていた一期間でしょうが、あれはもはや遠い輝きなのでしょうか。 

 

作者はこのシリーズを最終的にどうさせるつもりなのかと思う。御手洗を日本に一時帰国させる予定でいると仰っていますが、こんなに長い時が経って、今さら二人を再会させるってのは、それはシリーズの完結を意味しているのでしょうか。

 

会わせるなら会わせるで、早くしてあげた方が良いのでは。二人とも余裕がある歳でもないし。縁起でもないですが、生きているうちに再会させて欲しい(^_^;)。

 

読んでいてムカついてしまうこともありますが、ここまできたらシリーズの最後まで付き合うつもりですので、どう完結させるのか、注目して今後も追っていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

ではではまた~

 

 

 

 

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『岸辺露伴は動かない』漫画 1・2巻 あらすじ紹介 露伴の奇妙な見聞録~

こんばんは、紫栞です。

今回は荒木飛呂彦さんの岸辺露伴は動かないを簡単にご紹介。

 

岸辺露伴は動かない 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

岸辺露伴は動かない』は日本を代表する漫画作品の一つで超長期連載されているジョジョの奇妙な冒険の第4部「ダイアモンドは砕けない」に登場する、スタンド能力者の漫画家・岸辺露伴(「だが断る」で有名な人)が物語りのナビゲーターを務める短編漫画集。

 

 

最近ジョジョのアニメシリーズを見返していたのと、今年2020年12月末に実写ドラマが放送されること、荒木さんの短編漫画を読んだことがなくって興味が湧いた・・・など、諸々の切っ掛けで今更ながらに読んでみたら非常に面白かったので、紹介しようじゃあないかと思った次第。

 

 

ジョジョ奇妙な冒険』のスピンオフ作品ですので、もちろん『ジョジョの奇妙な冒険』を知っていた方が十二分に楽しめるのですけども、ジョジョのストーリーや魅力について逐一書いていたらとてもこのブログだけでは収まらない・・・と、いうか、新たに専門ブログを立ち上げなければならなくなるレベルなので(^_^;)ここでは割愛させて頂くのですが、この『岸辺露伴は動かない』は、岸辺露伴「ヘブンス・ドアー」という、“生物を読み書きできる本のようにし、本になった対象の情報を読み取ったり、新たな事項を書き加えて行動を制限することができる”スタンド能力(超能力)を持っている事だけ分かっていれば、読むのに支障のないように描かれているので、最悪『ジョジョ奇妙な冒険』を全く読んだことがない人でも愉しめる短編集です。

スピンオフという要素がなくとも、短編として十分魅力のある作品集ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年12月時点で2巻刊行されています。

 

1巻

 

 ●エピソード16 懺悔室

露伴がイタリアで取材中に教会の懺悔室で耳にした恐怖のお話。

 

●エピソード02 六壁坂

露伴が取材のために買った山で目にした「六壁坂」の妖怪話。

 

●エピソード05 富豪村

富豪ばかりが集まる外界から遮断された村に、露伴と編集者が訪れたときの出来事。

 

●エピソード06 密漁海岸

料理人・トリオに頼まれてクロアワビの密漁を手伝うことになった露伴だが――な、お話。

 

岸辺露伴 グッチへ行く

通訳と共にフィレンツェ郊外にある『グッチの工房』を訪れた露伴。そこで祖母の形見であるグッチのバッグの修理を頼むが――な、お話。

 

 

 

2巻

 

 ●エピソード04 望月家のお月見

一族全員の命日が「中秋の名月」である望月家の、忙しい夜のお話。

 

●エピソード07 月曜日 天気-雨

打ち合わせに向かうため電車に乗ろうとする露伴だが、駅では「何か」おかしな事が起こっていて――な、お話。

 

●エピソード08 D・N・A

事故で夫を失った女性。数年後、彼女は「精子バンク」から提供を受けて娘を授かるが、その娘には色々と奇妙なところがあって――な、お話。

 

●エピソード09 ザ・ラン

モデルにスカウトされ、肉体を鍛え上げることに生活の全てを捧げるようになった男性。露伴はスポーツジムで彼とランニングマシンを使ったゲームをするが――な、お話。

 

※2022年3月に新作のエピソード10が出ました!詳しくはこちら↓

 

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OVAだと今のところ「富豪村」「六壁坂」「懺悔室」「ザ・ラン」の4話、

 

 

 

ドラマはNHKで12月28日~12月30日の三夜連続で「富豪村」「くしゃがら」「D・N・A」の3話を放送予定。

 

「くしゃがら」は漫画ではなく、岸辺露伴は叫ばない』という短編小説集に収録されている作品。書いているのは北國ばらっどさん。

 

 

ドラマの脚本は『ジョジョ奇妙な冒険』のアニメシリーズで脚本を担当している小林靖子さんがそのまま務めるそうです。これだけでとりあえず観てみようってなる・・・。

 

 

 

 

最初の「懺悔室」が雑誌に掲載されたのが1997年で、一番近年に描かれた「ザ・ラン」が2018年。掲載された年代が飛び飛びなので、作品によって絵柄の変化が結構あります。個人的に「六壁坂」のときの露伴先生の顔が好き。

コミックスだと荒木飛呂彦先生の解説が各話の後に書かれていて、そこもまた面白くって見所の一つです。

 

この目次を見て先ず気になるのはエピソードナンバーのバラバラさ加減だと思うのですが、調べてもどういった基準でナンバリングされているのか分からない。

そもそもまだシリーズ化が決まっていなかった最初の「懺悔室」からし“エピソード16”となっているので、単に「いっぱいエピソードがあるよ」ということなのかな?

因みに、「懺悔室」は編集部からの短編執筆依頼の際に「スピンオフ・外伝は絶対禁止」と言われていたのに、ドジャーンとやっちまったらしい。

大丈夫なのか、それで・・・って感じですが、こうしてスピンオフの短編集ができて、アニメになって、ドラマにもなったのだから結果オーライなのでしょうね。

 

「懺悔室」は『岸辺露伴は動かない』より先に刊行された短編集死刑執行中脱獄進行中にも収録されています。

 

 

 

この短編集もオススメ。

 

 

ジョジョ奇妙な冒険』はバトル漫画ですが、この短編集はどれもホラー、サスペンス色が強く、“奇譚”という言葉がピッタリくる代物。ジョジョ自体もホラー、サスペンス、ミステリ、な要素がありますけどね。『岸辺露伴は動かない』は「敵」がいて戦うといったものではないということです。荒木さん版「世にも奇妙な物語り」。

 

 

 

 

 

 

 

私は特に「六壁坂」「富豪村」「月曜日 天気-雨」がお話としては好み。

解説で“「富豪村」の大きな収穫は、登場する女性編集者=泉京香のキャラクター。この女性に対し、ムカつきながら描きました。でもキャラとしては大好きで傑作の出来と自負します。”と、ありますが、今のところ漫画では「富豪村」以降にこの泉京香(名前は小説家の泉鏡花からとっているのだと思われる)は登場していません。

 

 

「密漁海岸」には『ジョジョ奇妙な冒険』4部に登場するトニオ・トラサルディーが、「D・N・A」には同じく4部に登場する山岸由花子がゲスト出演しています。

「密漁海岸」は「密漁します」「だから気に入った」のセリフのくだりがやりたくって描いたとのこと。これ、たしかに露伴は密漁に協力する義理は全くないんですよね。ただトニオさんの決意(?)が気に入ったので手伝うっていう。露伴の人となりが垣間見えるエピソードで良い。密漁は犯罪ですけどね。

「D・N・A」は掲載されたのが「別冊マーガレット」とあって、他と雰囲気が違ってロマンチックなお話。由花子さんの顔が4部のときと全然違う・・・。

 

「ザ・ラン」は「こういう筋肉バカっているよなぁ・・・」って感じで、一番現実的な恐怖のあるお話。

 

岸辺露伴 グッチへ行く」はファッション雑誌「SPUR」に掲載された、『GUCCI』のバッグを題材にした漫画。この漫画では露伴と通訳の女性が着ているものは全てGUCCIの服。とても似合っている。

お話もさることながら、大胆な構図や服装が見所。コミックだとカラーでの収録ではないことが悔やまれる。荒木さんの絵はいつだってカラーで見たい。

と、思ったらカラー版もあるらしい↓

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、短編は作者の力量が問われるものだと思っていて、今までの読書遍歴での経験上、“時代を超えて売れ続けている長編作家さんというのは、短編を描かせてもとんでもなく上手い”という方式が私の中ではあります。今回の『岸辺露伴は動かない』も期待を裏切らない短編作品たちでした。やっぱり天才は天才なのよ。

長編の岸辺露伴 ルーブルへ行く』もあるらしいので今度はこちらを読んでみたい。

 

 ※買ったッ!読んだッ!詳しくはこちら↓

 

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岸辺露伴は動かない』、ジョジョを知らなくとも気後れせずに手に取ってみて欲しいです。

 

 

 

ではではまた~

 

 

 

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『MW(ムウ)』ネタバレ・解説 手塚治虫が描く「同性愛」と「サイコパス」

こんばんは、紫栞です。

今回は手塚治虫さんの『WM(ムウ)』をご紹介。

MW 手塚治虫文庫全集(1)

 あらすじ

エリート銀行員である結城美知夫には、凶悪な連続殺人犯という裏の顔があった。犯行を重ねて追い詰められるたび、神父・賀来巌のいる教会に訪れて懺悔し、逃がしてもらうといった行動を繰り返している。

結城と賀来の二人は15年前に沖ノ真船島で起こった軍の化学兵器「MW(ムウ)」の漏出事故の生き残りであり、それ以来肉体関係を伴う奇妙な関係が続いていた。

「MW」の漏出によりおびただしい数の変死体が転がる地獄絵図を目の当たりにした二人だが、この漏出事故は軍と政治家たちの手によって隠蔽され、跡形もなく処分されてしまう。

 

結城はこの時に「MW」による後遺症で身体を蝕まれ、良心とモラルが欠如し反社会的人格に。賀来は島で見た光景に苦しみ、神に救いを求めて神父となった。

悪行の限りを尽くす結城を救済しようとする賀来だが、結城は聞く耳を持たずに改心する兆しはまったくない。それでいて、結城は賀来を雁字搦めにするように関係を持ち、犯罪に協力させ続ける。

 

やがて、結城のターゲットは15年前の「MW」漏出事故に関わった人物たちに絞られていく。結城の目的は復讐か?それとも――。

 

 

 

 

 

前衛的な作品

『MW(ムウ)』は「ビックコミック」で1976年から1978年の間に連載されていた作品。2009年に実写映画化されたことで知っている人も多いと思います。

 

狂気の殺人者を主役とした所謂ピカレスクもので、残酷な殺人描写と同性愛が描かれるとあって、手塚作品の中では異色作とか問題作と謳われている物語りです。

とはいえ、この時期に「ビックコミック」で連載していた手塚作品はどれもこれも問題作だったんでは・・・と、いう気がしないでもないですが・・・(^_^;)

 

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 他、手塚治虫ピカレスクもので有名なのは『人間昆虫記』ですかね。

 

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 物語りの主役である結城美知夫は今なら“サイコパス”と世間から認知される人物。

生まれながらの悪党だとか、虐待によって精神崩壊した主役のピカレスクものは遙か昔からありますが、この作品の結城は化学兵器の毒ガスによる中毒症状で大脳がおかされ、良心やモラルをなくしてしまったという“後天的な脳疾患によるもの”だという設定が現代的。

 

今でこそ多く見かけるようになったものの、1970年代に「同性愛」を題材にしているというのも当時はかなり珍しいことだったのではないかと思います。「やおい」や「BL」という言葉もまだちゃんとなかった頃ですからね。(ま、この物語りの結城と賀来の関係はやおいとかBLとはちょっと違うのですけども)

 

現在では特別目新しい題材ではない「サイコパスの殺人者」と「同性愛」ですが、1970年代にこれらが描かれているのは作者の先見の明を感じるというか、前衛的な作品だなぁと。

 

私は映画化された2009年に小学館文庫(全2巻)で読みました。

 

 

他、今手に入りやすいのだと、手塚治虫文庫全集」の全2巻と、

 

 

手塚プロダクションから出している電子書籍ですかね。

 

MW 1

MW 1

 

 

 

お高いですが、《オリジナル版》だと雑誌掲載時そのままのカラーや未収録ページ、単行本とは異なるエンディングなど完全収録されているそうです。

 

 

 手塚治虫は単行本刊行時に書き直すことが多い漫画家なのですが、この『MW(ムウ)』もご多分に漏れずという訳ですね。単行本だと改訂されている手塚治虫自身が登場する番外編まで収録されているらしく、大いに気になるところですが・・・入手するのはちょっと躊躇するお値段ですな(^^;)。

エンディングは内容が大きく異なるということではなく、ページ構成やセリフが単行本版と雑誌掲載時では違いがあるらしい。

 

 

 

 

 

モデル

作中での「MW」ガス漏出事件はお話の主軸であり、詳細やそれによる政治的判断、国民の動きなどもかなり具体的に描かれているのですが、この事件やそれに伴う騒動には下敷きになっている実際の事件があります。それが、1969年に起こった沖縄県美里村の知花弾薬庫でのVXガス漏出事故。

被害にあったのは基地にいたアメリカ軍人二十数名とされていますが、これにより極秘裏に毒ガスが貯蔵されていた事実が明るみとなりました。

島民や国民が知らぬ間に化学兵器である大量の毒ガスが持ち込まれていたこと、「機密」だらけで詳細が分からず不審点が多いことなどで、住民を始め日本国内で恐怖や怒りの声が上がり、アメリカ軍で毒ガスの移送作戦がされることとなった事件です。

 

作中では漏出事故で流れ出た「MW」ガスが風によって島をよこぎり、島民八百人以上が死亡。某国と日本政府は双方の利益のために島で起こった出来事を丸々“なかったこと”として大規模な隠蔽工作をする・・・。という、よりダイナミックなお話になっていますが、致死性の高い大量の毒ガスが、民間人が多くいる場所に秘密裏に貯蔵されていたのが事実としてあったからには、この作中のような世にも恐ろしい事態も十分に起こり得るのですよね。決して荒唐無稽なことではないのです。

 

結城が狂気の殺人者になってしまったのは、人間が戦争のために作った化学兵器のせい。犯行を加速させた原因は国の隠蔽体質。

手塚治虫はこの作品でも痛烈な戦争批判をしている訳ですね。

 

 

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男と女

ピカレスクものである今作。主人公の結城美知夫は良心というものが一切ない極悪非道の殺人者なのですが、特徴的なのが男として女性を誑かす一方で、女装・男娼などの行為を巧みに使って犯行を重ねていく点です。 

 

結城には歌舞伎役者の血が流れていて、女性に化けるのが得意だという設定。顔も声も自分が殺した女性そっくりになりすますことが出来て、親にまで見破られないというのはさすがに無理があるだろとは思いますが、男性性と女性性を両方使えるというのは見方によっては究極の万能感であり、その万能性を持つ人物が冷酷な殺人者だというのが恐ろしくて巧妙なところ。

女と寝てた数時間後には男と寝ているという忙しさには若干呆れてしまいましたけどね・・・(^_^;)。

 

タイトルの「MW」は作中では毒ガスの名称として出てきますが、作品内容が暗示されているものなのではないかとされていて色々な説がある。中でも有力だとされているのがMan(男)とWoman(女)を合わせているのではないかという説ですね。結城の性別の変幻自在さを指しているのではないかと。(他に「反転」を意味しているのではないかとかいう説も)

 

結城は賀来と肉体関係を持っていますが、結城にとって男と関係を持つときは同性としてではなくて“女性になっている”という感覚なのではないかと思われる。本来の性別は男性だけれども、女性になることも出来る。二つの性を行き来することを、結城は戸惑いなく自身の最大の武器としてフル活用して満喫しているというか。どっちの性も当たり前に使いこなす、一つの身体の中に男と女“二つの性”が両立している人物。

 

なので、賀来との関係も厳密には「“同性”愛」じゃないのかも。そもそもこの二人は恋愛関係って感じともちょっと違う気が。沖ノ真船島での強烈な体験を共有したが故に、双方相手に執着している印象ですね。

結城は賀来に対しても酷いことばっかりするし、社会的に陥れようとかもするのだけど、賀来が自分から離れることを許さないし、賀来は結城さえいなくなれば自分の悩みが全て解消させる状態で、人類の為にもこんな男は自分が殺すべきなのでは・・・とか思うのだけど、いざ結城が死ぬかもという状況になると「結城!死ぬな!」と必死の行動をする。

 

なんにせよ、相手に対し何やかんやで愛情は強く持っているお二人。ここら辺のやり取りはこの作品の大きな見所の一つです。

 

 

 

 

 

映画

映画は2009年に【手塚治虫生誕80周年企画】で制作されました。

結城が玉木宏さん、賀来が山田孝之さん。

 

MW -ムウ-

MW -ムウ-

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

映画との連動企画で単発ドラマMW-ムウ-第0章~悪魔のゲーム』も放送されました。主演は佐藤健さんで、映画の数ヶ月前を描いた内容になっています。

 

 

 

どちらも設定も細かなストーリー展開もかなり変更されているので、原作というより“原案”レベルですね。

 

原作の特徴である、上記した結城の女装や男娼的行為はまったくないですし、戦争批判・単純な二元論の否定といった原作のメッセージ性も薄いので、「ただ美形が人殺ししまくる映画」といった代物。ま、クライムサスペンスとして観るならそれだけでも良いのかも。

 

「同性愛」の描写については、双方の役者さん事務所からはOKが出ていたものの、スポンサーからのお許しが出なかったために非常にびっみょ~な“匂わせ”をするに留められたらしい。いやぁ、時代ですねぇ。今だったら「同性愛」描写も普通にやるだろうな~。

裏設定としては映画の結城と賀来も肉体関係があるということになってはいるのだとか。いや、そんな伝わらない裏設定を出されてもだな・・・(^_^;)。

 

「同性愛」描写がNG なら、原作通りに実写化しろといってもどだい無理な話ですね。おかげで映画の結城と賀来の関係性はかなりボヤボヤで、観ている側は何も掴めないものになっている。

原作に比べて結城が賀来に対して「おもちゃ扱い」でドライなのがなんだか悲しかった。原作だと賀来の為に涙流したりしていたのにねぇ・・・。

 

他、賀来がやたら女々しくなっているのと、バンコクでの大規模ロケで張り切っているにしても、冒頭30分あまりを誘拐事件での追いかけっこに費やしているのは、いくらなんでも時間を割きすぎだろうと思いました。

しかし、玉木宏さんの悪役っぷりなどは見応えがあるので、役者さん目当てに観るなら楽しめる映画です。

 

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善と悪

「MW」ガスの行方を追って残虐非道な犯罪を重ねていく結城。15年前の漏出事件の隠蔽工作に加担した人物たちを次々と殺していく姿を見て、賀来は結城が「MW」についての真相を告発し、自分たちの人生をめちゃくちゃにした連中に復讐しようとしているのだと思っていましたが、結城の目的は復讐ではなく「MW」を手に入れること。「MW」を分析して大量生産し、それを使って人類を滅亡させることでした。

 

結城には「MW」ガスの後遺症がまだ残っており、時折発作を起したり人事不省になったりで余命幾ばくもない。

「僕の命も長くは持たないだろう 僕が死んでしまえばもうこの地球なんざ用がないよ だから全人類に僕につきあって死んでもらうんだ」

と、この最終目的の為に手段を選ばずに色々する様が描かれているのがこの作品なのですね。

 

 

「そんな そんなバカな」「こいつはもしかしたら完全な狂人なんだろうか?」

賀来が言うように、結城は完全な狂人。この圧倒的理不尽な希望による行いは、悪魔というよりむしろ神の所業に近い。

結城に惚れこんでしまった女性・澄子が作中で言う「悪魔も神さまも結局 同じものなんじゃないのかしら?」というセリフが印象的。

結城のような狂人が出来上がってしまったのは、人間が作りだした兵器のせい。人間は、人間が作り出した物によって自滅の道を進む馬鹿な生き物ということなのか。では、「悪」とは一体何なのか。

 

 

この作品は「男と女」「善と悪」といった“境界の曖昧さ”を結城と賀来の関係を通して描くのが目的の作品なのだと思います。単純な二元論思考の否定がテーマ。

 

ラスト、結城は自分にそっくりな兄と入れ替わることで死を偽装。(ぶっちゃけ、“そっくりな兄”が終盤で登場する時点でこのラストはお察しなところがありますが・・・^_^;)警察や世間をまんまと騙し、ニヤリと笑うところで終わっています。

これからまた新たな悪巧みを企てるのですね~と、匂わせての終わり。

 

個人的に、こういった本当の結末をぼかす終わり方は好きではないのですが、このラストもまた“綺麗で分かりやすい結末”の否定で、「現実の物事は物語りみたいに綺麗に決着がつくものではなく、曖昧なものなんだよ」って示しているのかな?と、後々になって思った次第。(最初読み終わった時は、ひたすらモヤモヤして「終わってないじゃん!」って感想ばかりだった)

 

 

 

手塚治虫の描く「同性愛」と「悪」、気になった方は是非。

 

 

 

 

 

ではではまた~

『ファーストラブ』 原作小説 ネタバレ・感想 秘められた”初恋”の記憶とは?

こんばんは、紫栞です。

今回は島本理生さんの『ファーストラブ』をご紹介。

 

ファーストラヴ (文春文庫)

第159回直木賞三十五賞受賞作。

 

あらすじ

「動機はそちらで見つけてください」

父親を殺害した容疑で逮捕された女子大生・聖山環菜。彼女はキー局の二次面接の直後に父親を刺殺し、多摩川沿いを血まみれで包丁を持ったまま歩いていたという。アナウンサーになることを父親に反対されての犯行だろうみられたが、聖山環菜は「動機は自分でも分からないので見つけてほしいくらいだ」と警察の取り調べで語ったという。

 

この事件を題材に、環菜の半生を描くノンフィクションの執筆を出版社に依頼された臨床心理士の真壁由紀は、拘置所にいる環菜本人や彼女の周りの人々と面会を重ねていくが、自らを「嘘つき」と称する環菜の言動と、食い違う周辺人物たちの証言に事件の謎は深まっていく。やがて、環菜は自身の“初恋”について語りだすが――。

 

彼女はなぜ、父親を殺さなければならなかったのか?

 

由紀は環菜の半生を追うなかで自分の過去と向き合いながら、聖山家の暗部を暴いていく。それは、あまりに悲痛な「家族」の在り方だった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋物語り・・・?

『ファーストラブ』は2018年に刊行された長編小説。直木賞を受賞し、2020年にNHKでドラマ化、2021年に映画公開予定とあって、島本理生さんの代表作の一つですね。

 島本理生さんは濃厚な恋愛小説を書く作家さんというイメージが強かったので、恋愛小説にさほど興味をそそられない私は今まで島本さんの作品は読んだことがなかったのですが、映画の予告編を観て興味をそそられたので読んでみました。

 

島本さんへのそういったイメージがあったのと、本の「ファーストラブ」という題名、血の繋がらない父親を女子大生が殺害したという事件内容から、センセーショナルで濃厚な恋愛要素を盛込んだサスペンスものかと読む前は予想していたのですが、いざ読んでみるとこういった予想はことごとく覆される作品になっています。だからといって期待外れでガッカリするようなことはなく、十分に“読ませる”作品なのですが、人によっては「思ってたのと違う」と戸惑うかもしれません。

 

やっぱり「ファーストラブ」という題名が誤解を招く大きな原因になっていると思うのですが・・・この題名にしたのは本当のテーマを隠すための読者へのミスリードの意図がある・・・かもしれない。

 

ジャンルとしては「家族小説」とするのが一番しっくりくるのかなと。推理小説的な仕掛けなどはないものの、ミステリアスな環菜の存在や、真相を探っていく過程、伏線が綺麗に回収されていくストーリー展開にはミステリとしての面白さがあり、ページ数もそこまでではないので、こういったジャンルに親しみがない人や読書の習慣がない人でもとっつきやすい本だと思います。

 

 

 

 

映画・ドラマ

ドラマはNKK BSプレミアムで2020年2月22日に単発ドラマとして放送されました。

 

特集ドラマ「ファーストラヴ」

特集ドラマ「ファーストラヴ」

  • メディア: Prime Video
 

 

キャスト

 

 

映画は2021年2月に公開予定。監督は堤幸彦さん。『望み』に続いてドシリアスな家族物映画を撮っている訳ですね。

 

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キャスト

 

 

ドラマと映画でキャストを比較するのもまた楽しい。

 

主人公・由紀と大学の同期で親戚でもある弁護士・迦葉は“かしょう”と読ませる変わった名前。お釈迦様の弟子の一人の名前らしいのですが、この人物は由紀に次ぐ主要人物で出番も多いので、一々この慣れない名前が出てくるのは読んでいてなんだか気障り・・・(^_^;)。

他の我聞や聖山(ひじりやま)もそうですが、名前の由来が話に絡んでいるということもないですし、もっと一般的な名前の方が読んでいて邪魔にならないのになぁと。ひょっとしたら仏教に因んだ暗示的な名付けなのかもしらんですが。

ま、取るに足らないことではあるのでしょうけど・・・。文章表現だと人物名一つでも読むのに少なからず影響があるのだということを改めて思い知りました(^^;)。

 

 

 

嘘つき

 

正直に言えば、私、嘘つきなんです。自分に都合が悪いことがあると、頭がぼうっとなって、意識が飛んだり、嘘ついたりしてしまうことがあって。

 

と、物語りの序盤で早々に聖山環菜は面会に来た由紀に自分は嘘つきです宣言をする。

その宣言通り、環菜は言っていることがどこまでが本当でどこから嘘なのか判然とせず、情緒不安定気味で気分にもむらっけがあるので、作中の由紀や迦葉、そして読者も大いに翻弄される訳です。

この環菜の不可解さと、それに並行して由紀と迦葉の間に過去に何かがあったらしき描写がちらつくので、真相が知りたくって読者はドンドンページをめくっていくことに。

 

事件の当事者である環菜だけでなく、事件とは関係ないところで主要人物二人も過去に親から受けた仕打ちから精神的不健康な部分があり、読んでいると「どこもかしこも、どいつもこいつもトラウマだらけで難儀なことだな」って感じで、世間では所謂“メンヘラ”と称されてしまうような登場人物ばかりなので、胸焼けというか、若干気重になってしまうところはあります。

作中でも環菜が迦葉のことを「男メンヘラ」だと言い放つ場面があり、由紀に「そんな言葉は、使うものじゃない」とたしなめられています。

“メンヘラ”という言葉は私も乱用して使われているのには元々嫌悪感を持っていたのですが、ここの部分を読んで、実際に様々な理由で精神的に弱っていて、傷ついている当人に「メンヘラ」と一括りにした、軽薄な言葉をぶつけるのは本当に無神経で腹の立つ事だなと痛感しました。ま、環菜の場合は正直「お前が言うな」というのもありますが・・・(^_^;)。

 

テーマがテーマなので気重になるのは致し方ないところです。それでも先が気になる、読者を最後まで惹きつける描写力は見事ですね。

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口に出してはいけない

この物語りのテーマは“かくれた性虐待”

環菜は十歳から十四歳まで、父親・那雄人が自宅のアトリエで定期的に行っていたデッサン会でモデルをさせられていました。デッサン会の参加者は全員男性で、自分は服を着ているものの、男性のヌードモデルと背中合わせにポーズをとらされてのものでした。

私は美術短大出身なので実際にヌードモデルデッサンも授業でやりましたが、モデルが裸の女性だからといって、絵のモチーフとして観察することと視姦はもちろん別物であり、大半の生徒はちゃんと授業だと割り切って受けているものです。(ま、私は女性だし短大は共学だったので学校によっては違いがあるのでしょうけど)

が、全裸の男性と服を着た少女のモチーフなんて“そういったこと”を意識させてしまうし、デッサン会でモチーフとして選ぶのは不自然だとは思う。

指導者に真顔で提示されれば「芸術とはそういうものだ」と思わされてしまうというのは、美術学校ならではの独特の空気で線引きが難しいところですね。

 

十歳くらいというのは、女性は男性の欲を何となく感じ取り始める過敏な年頃。その多感な時期に、不特定多数の男性にどこか欲を滲ませた視線で見られることは非常に精神的負担が大きいものだろうということは、女性でなくともまともな大人なら分かることのはずですが、父親の権限や芸術の曖昧さで黙認され続けました。

腕を切ったら「傷が塞がるまでは」とモデルを一時解放されたことが切っ掛けで、環菜はモデルをしたくない一心から自傷を繰り返すようになり、そのうちに、この事に関係なくストレスを感じれば自傷をするのが癖となっていく。

 

「知らない男の人の裸がすぐそばにあるとか、小学生の私を酔った男の人たちが触ったり、抱き着いてきたりして、いつなにをされるか分からなくて怖いのに、それをそばで見ている親が助けてくれない。だから腕を切って、傷が塞がるまではデッサン会からも解放されて。つらいことから救ってくれたのは血を流すことだけでした。だから、あの日も私は同じようにしただけです」 

 

直接的にな暴力を受けたことはないものの、典型的なモラルハラスメント加害者である父・那雄人に日頃から「何かあれば戸籍から抜く」と幼少から言われ続け、母親である昭菜は那雄人に従順で、自分が怒られないようにと振る舞うばかりで娘の意見を聞こうとしない。この「家族」のなかでは、環菜は自分の本当の気持ち、様々な苦しみを口にすることが出来ませんでした。それらは口に出してはいけないことだと常識のように思い込まされていたのです。

 

どんな人間にも意思と権利があって、それは声に出していいものだということを、裁判を通じて私は初めて経験できたんです。

 

やっと自分から堂々と言えた場が、裁判で父親を殺した被告人としてというのがやるせないですね。

 

 

 

 

 

初恋の記憶

作中、環菜は自分の初恋は12歳のときに恋人として付き合っていた「祐二くん」という人物だと言い出す。

 

夜一人で留守番をしているときに家に鍵をかけたからという理不尽な理由で父に激怒され、家を追い出された12歳の環菜は、祖父母を頼るも「お前が悪い」と助けてもらえず、途方に暮れて道端でうずくまっていた時に声をかけてくれたのが、当時コンビニ店員で大学生だった小泉祐二。

 

小泉祐二は怪我をしていた環菜の傷を手当てし、「家に帰りたくない」と言う環菜を自分の独り暮らししているアパートに一晩泊め、布団が一組しかないからと一緒に寝て、その後にこのアパートに避難してくるようになった環菜と性的行為をするようになる。

 

環菜は「すごい、楽しかった」「あんなに優しくされたことなかった」「恋愛で一番いい思い出」と由紀に語りますが、普通に考えてこの祐二くんは色々とダメですよ。12歳の子に何しているんだという。間違いなく糾弾されるべき犯罪者です。

 

由紀は、現在は結婚して妻がいる小泉祐二に会いに行って話を聞きますが、やはり祐二の方は環菜のように“あれが恋愛だった”という認識はない。下心が抑えられず、少し手を出したら環菜に言い募られて引けなくなり、関係を持つものの環菜のことも捕まるのも怖くってさっさと別れたというのが本当のところ。

“欲望にも罪悪感にも負けて、世間の目に怯え、少女一人救うこともできずに逃げた。”

半端で、無責任で、罪深い男。

強制わいせつ罪の時効が過ぎているので罪に問えないのが腹立たしいですね。

 

「初恋のいい思い出」などと最初由紀に語った環菜でしたが、祐二が結婚していると知らされると、「あんなことした人が普通の女の人と付き合って結婚するとか意味分からない」と語気を荒げる。

 

本当は、環菜も祐二とのことが初恋の記憶なんかじゃないことは分かっていました。あれは初恋だったと騙っていただけで、環菜にとっては祐二も恐怖の対象である男の一人で、憎い相手なのです。

 

祐二も、デッサン会の生徒も、環菜の今までの交際相手も、皆口をそろえて「あっちが誘ってきた」と言う。「嫌がっていなかった」「笑っていた」「だから自分には非はない」と。

 

しかし、環菜としては男性の下心を感じとって反射のように“相手が望む態度”をとっていただけであり、むしろ嫌悪していました。

幼少の沈黙を強いられた不健全な家庭環境から、自分の気持ちを主張することなど思い付くことも出来ず、けれど誰かに頼っていたいからただただ相手の期待に応え続けるが、最終的にはいつも相手には逃げ出され、周りには“そういう女だ”と蔑まれる。

 

環菜が親から受けた虐待は具体性のない、あやふやなものですが、直接的な事をされた訳ではないぶん、誰にも言えずに苦しみ続けて、環菜と同じような振る舞いをしてしまう人というのは多くいるのだろうと思います。環菜の場合は「初恋」が決定的な切っ掛けとなり、結果として元凶の父親を死なせることになってしまった。

 

 

 

 

 

終盤の裁判で初めて明かされる父親殺害の真相はちょっと意表を突くもので一応の辻褄も通っているのですが、無罪主張はやはり無理があると感じました。だからあの判決は妥当ではあるかなぁと。

由紀の「初恋の記憶」ですが、迦葉とのことだろうと見せかけて夫である我聞のことだったというのも意表を突かれた点。迦葉とのことは「恋愛ではないけど特別で大事な思い出」ということらしい。ちゃんと秘密が氷解して良かった。

 

個人的に、裁判シーンはもっと盛り上げても良かったのではないかというのと、由紀の夫・我聞がいい人で、素敵すぎて、なおかつイケメン。と、都合が良すぎて現実味がないのが気になりましたかね。読んでいて散々腹を立てさせられた、何処までも自分本位な環菜の母・昭菜の過去も詳細は分からずじまいでしたが・・・ま、それはそれであやふやなままで良いのかな。

 

今一度虐待について深く考え直されましたし、家族小説としてもサスペンスとしても十分に没頭して読むことが出来ました。テーマは重いですが、読後には穏やかな気分になれるのでオススメです。ドラマ・映画で気になった方は是非。

 

 

 

ファーストラヴ (文春文庫)

ファーストラヴ (文春文庫)

 

 

 

 

ではではまた~

『今昔百鬼拾遺-月』雑記

こんばんは、紫栞です。

今回は京極夏彦さんの『今昔百鬼拾遺-月』(こんじゃくひゃっきしゅういーつき)について少し。

 

今昔百鬼拾遺 月 (講談社ノベルス)

『今昔百鬼拾遺-月』は2019年4月から6月にかけて「講談社」「角川」「新潮社」の3社横断3ヶ月連続刊行された『今昔百鬼拾遺 鬼』『今昔百鬼拾遺 河童』『今昔百鬼拾遺 天狗』の三冊が一冊に纏められて改めて講談社からノベルスと文庫で刊行されたもの。

 

※ 文庫はこちら↓

 

 

百鬼夜行シリーズ】(京極堂シリーズ)

 

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のスピンオフ連作中編もので、京極堂こと中禅寺秋彦の妹で雑誌編集者の中禅寺敦子と、【百鬼夜行シリーズ】の五作目『絡新婦の理』

 

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に登場した女学生・呉美由紀の二人を主役にそれぞれ「鬼」「河童」「天狗」に因んだ殺人事件が描かれています。

※それぞれの物語りの内容・詳細についてはこちらの記事を御参照下さい↓

 

 

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百鬼夜行シリーズ】は講談社から刊行されているシリーズで、講談社ノベルスでのぶ厚い本が「レンガ本」「鈍器」などと言われて印象強く、特徴的なものになっていたのですが、シリーズ九作目の邪魅の雫以降になんだか大人の事情で出版社とゴタゴタがあったらしく、シリーズのアナザーストーリーズである百鬼夜行-陽』が最初別の出版社から刊行されたりなどしました。

 

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しかし、この『百鬼夜行-陽』は結局その後に講談社ノベルス版、講談社文庫版も刊行されたりして、ファンとしては“大人の事情”がどんなことになっているのかいまいち判らない状態でした。去年のこの『今昔百鬼拾遺』の3社横断刊行企画でまたもや判らないことになっていたのですが・・・これまた講談社からまとめて本が刊行されると相成ったわけですね。

 

ホントどうなっている事やら・・・。今後も【百鬼夜行シリーズ】関連は講談社ノベルス講談社文庫で統一して出しますよ~で、良いということなのでしょうかね?ファンとしては【百鬼夜行シリーズ】は講談社からというイメージが強いし、愛着もあるのでそれならそれで良いのですが。う~ん、わからん・・・・(^_^;)。なんにせよ、作者の京極さんの好きなように書いて欲しいとは思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は『今昔百鬼拾遺』は既に3社横断刊行のときに文庫で購入・完読済みなのですが、本屋で講談社ノベルスのぶ厚い本を見たらばやはり嬉しくなってしまい、さらに本の最後にある注釈「※本書収録にあたり、大幅な加筆修正がなされております」という一文がダメ押しとなって購入してしまいました。

 

気になる加筆修正部分ですが、お話の内容が大きく変わるようなことや情報や展開の付け足しがある訳ではなく、京極ファンの間ではお馴染みの、文がページを跨がないように細かい書き直しや改行などがされているって感じなので、3社横断刊行の文庫を購入した人は態々買い直す必要は特にないかなと思います。

 

ですが、個人的にはやっぱり講談社ノベルスで京極さんの新刊が読めるのはテンションが上がりましたね。講談社ノベルスの段組とぶ厚さが「これぞ京極作品!」感があって良い。持ち運びが不便だろうが、重くて読んでいて手首を痛めようが、段組で文字数に圧倒されようが、そこが良いのさ!

 

 

 

帯に!

三冊がまとまった『今昔百鬼拾遺-月』はノベルス版の刊行の一月後に文庫版が刊行されました。私はノベルス版を購入したのですが、その本の帯には百鬼夜行シリーズの長編一覧の最後に未だ刊行されない長編『鵼の碑』の題名が並び、小さくカッコで“近日刊行予定”の文字が!

やっと刊行なのか!?近日?近日ってどれくらいのこと!?え?

って感じですが・・・どうなのでしょう?

 

あまりにも待たされ続けているせいで過度な期待は禁物だという考えが先に来てしまうのが正直なところですが、帯に態々こんな風に書くということは『鵼の碑』も講談社から出すよ!という宣言のようにも受け取れますね。講談社の「他の出版社には渡さないぜ!」という気合いが滲み出ているような気がしないでもない。

 

『今昔百鬼拾遺』の作中にて、どうやら栃木の方で起こる事件である『鵼の碑』の次に、“東北の方の事件”というさらなる長編を匂わしている描写がありますので、案外『鵼の碑』自体はすでに書き終わっているのではないかという気もしますね。ひょっとしたら数年前とかに。だったら、いつまでも発表されないのは“大人の事情”、及び出版社のゴタゴタのせいだったりして・・・(^^;)。

 

 

何はともあれ、近日刊行されることを夢見てまた日々を過していきたいと思います。

 

 

 

ではではまた~

『金田一37歳の事件簿』8巻 ネタバレ・感想 ポルターガイストで人が死ぬ!?恐怖の館事件

こんばんは、紫栞です。

今回は金田一37歳の事件簿』8巻をご紹介。

 

金田一37歳の事件簿(8) (イブニングコミックス)

今回もオマケ付きの特別版などはなく、通常版のみの刊行。なんか、丸顔に見える絵ですね…。 

 

8巻は前巻から引き続き「騒霊館殺人事件」が収録されています。犯人を指摘する一歩手前までですね。やっぱりというかなんというか、やはりこの巻だけでは終わらずにまた跨ぐことに。

 

 

「騒霊館殺人事件」あらすじ

「壮麗館」というバブル期にスコットランドから移築されたものの廃墟となっていた洋館を再利用するリゾート計画。大手・電報堂の下請けとしてモニター企画の手伝いをすることになった音羽ブラックPR社の金田一一とその部下・葉山まりん。 

壮麗館はポルターガイスト現象が発生するという噂があり、“騒霊館”とも呼ばれていた。その噂の通り、一行が館に着くなり物が勝手に動くなどの怪奇現象が起こり、ついには

抽選で選ばれた9名の参加者の一人がひとりでに飛んできた毒薬に刺されて死亡してしまう。

警察を呼ぼうと橋を渡ろうとした金田一たちだが、渡っている途中にひとりでに火がついて橋は燃え落ちてしまった。

その後も不可解な状態で死人が次々と。はたして、これは“騒霊”の仕業なのか、それとも――。

 

 

 

前巻は玲香ちゃんが登場したり“空白の20年”について少し触れられたりで色々大注目でしたが、

 

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今回はシンプルに通常(?)事件のことについてのみです。少年時代からのゲストもいませんしね。

 

やはりお約束で吊り橋が落ちてクローズド・サークルな「騒霊館殺人事件」。この漫画シリーズは「怪人名」が出てくるのがオキマリですが、今回は“騒霊(ポルターガイスト)”という超常現象の仕業だと見せかけての連続殺人事件で割と珍しいことかもしれない。

 

 

 

以下ネタバレ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回は金田一たちが下請けとして請け負っているということで大手・電報堂から色々と理不尽な目にあうという描写が。こういう社会人ネタは37歳の事件簿ならではですね。後輩が泣き出すのも。

白鳥さんが凄いヤな感じの人に描かれている。事件が加速してからは嫌みを言う余裕もなくしてますけど。しかし、女性もいるのだし泊まりの仕事ならシャワーぐらいは貸して欲しいもんだ。ポルターガイスト現象だとか騒がれないために佐熊さんに色仕掛けして一時黙らせたものの、さほど効果を発揮していないのには少し笑ってしまった。

社会人金田一お客様の安心と安全のため謎を解かせて頂きます!と、宣言。数々の事件を経て事件への取り組み方が強気になってきている気がしますね。

 

 

 

立て続けにバタバタと三人が死亡。ポルターガイスト現象の仕業と見せかけるため、皆何らかの“物”が刺さるなどして亡くなっている。

謎の提示は大きく三つ。

●複数人が見ている眼前で、キャビネットに飾ってあった矢の一本がひとりでに飛んで被害者に刺さった謎。

●扉を開ける直前まで物音がしていた部屋の中で被害者が死んでいた謎。

●内側から板を釘で打ちつけられた密室の中で被害者が死んでいた謎。

 

今巻では矢がひとりでに飛んできた第1の謎が解き明かされて容疑者が四人に絞られたところまで収録されています。

 

大きな謎の他に、蝋燭にひとりでに火が付いたり、グラスがひとりでに割れたり、吊り橋がひとりでに燃え落ちたりといったポルターガイスト現象に見せかけるための細々した仕掛けがありますが、いずれも手品的仕掛けでマジック好きの金田一は難無く解いています。

リチウムだと水で火が付くというのは近年のミステリドラマなどでもよく見るトリックですね。

橋の真ん中よりやや向こう側の所に水の入った倒れやすい器を置き、そのまわりにリチウムのカケラをバラまいて人が渡ったときの揺れで発火させた。と、金田一は説明していますが、揺れやすい橋なのだし、犯人が器を設置するときが割と命がけなのではという気がする・・・(^_^;)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1の謎の“ひとりでに飛んできた矢”ですが、本格推理界の万能道具・テグスを使ったという「なんだ、やっぱりそういうヤツですか・・・」という解答でした。

 

この“ひとりでに飛んできた矢”ですが、キャビネットや扉との位置関係が掴みにくく描かれているので見取り図を表示してくれって感じでしたね。このトリックから犯人は部屋の外にいた四人に絞られる!ってなる訳なのですが、部屋や廊下の位置関係も画からは認識しづらいので読者にはこの時点での犯人指摘がしにくい。この時点では解らせないためにぼかして描いているのでしょうが、ちょっとアンフェアな気はしますね。

 

絞られた四人の容疑者は、事件直後に廊下から現われた白鳥麗桜、隣のリビングにいた鹿野美雨、先に自室に戻っていた花塚衣舞、厨房の方から現われた黒原太

 

鹿野は一人ではなく、二番目の被害者となった久門朝香と一緒に現われたので犯人とは考えにくい。ターゲット全員をモニター企画に参加させる必要がある点などから考えると電報堂の白鳥と黒原が怪しいかな~と(スコットランド出身のハーフで部長の栗原チャールズ達郎たる人物も何やら怪しいですがね)。第二の事件では被害者の部屋に鍵が掛かっていたけど、この二人ならマスターキーも普通に使えるし。

 

 

第二の「扉を開ける直前まで物音がしていた部屋の中で被害者が死んでいた謎」は金田一困難の分割と言っているので、割れた食器などは事前にセットして音を直前に鳴らしたということなのだと思う。

 

第三の「内側から板を釘で打ちつけられた密室の中で被害者が死んでいた謎」は金田一が遺体を見て「そういうことか・・・!」と言っていますが、どういうことか解らない・・・。その後の金田一が“何か”に気付いた様子もどういうことか・・・。携帯がつながらないはずなのに美雪から携帯にメッセージが届いたこと・・・かな?う~ん。

 

事の発端は数年前の大学での肝試しで起こった事件のようですが、犯人とは別に霊の声らしきものが作中に挿入されているのと、次巻予告から推察するに、どうも館のどこかに死体(おそらく女性)があるのではないかと。(学園七不思議思い出しますね・・・)

白鳥さんがエドガー・アラン・ポーの『黒猫』の本を持っているのが暗示的。

 

黒猫

黒猫

 

 

 

 

次巻!ついに彼女が…!?

巻末の予告によると、次の9巻は2021年3月刊行とのこと。

そして、この予告ページには「はじめちゃん」と発言する女性の後ろ姿と「そして!!とうとう“彼女”が金田一のもとへ――!」という煽り文句が。

 

美雪、やっとこさ登場でしょうか!?

 

連絡ツールで金田一とやり取りをしている描写のみで姿も声も登場せずだったので色々な穏やかでない憶測がファンの間では飛び交っていましたが、この予告ページの雰囲気だと読者の憶測を一笑するようなサクッとした登場の仕方しそうですけど…どうなのでしょう?玲香ちゃん登場の予告のときとだいぶ差がある…。 

 

「騒霊館殺人事件」の真相解明と美雪登場か否か。楽しみに待ちたいと思います!

 

※9巻出ました!詳しくはこちら↓

 

www.yofukasikanndann.pink

 

ではではまた~